~不動産の問題ではなく、家族の問題だった~
はじめに
「私は売った方がいいと思っています。」
最初にそう話したのは長男様でした。
その直後、
妹様が言いました。
「私は残したいです。」
会議室の空気が少し止まりました。
今回の相談は、
不動産の価格ではありませんでした。
相続税でもありません。
家族の気持ちの整理でした。
父が亡くなり空き家になった実家
場所は名古屋市中川区。
昭和50年代に建てられた住宅です。
売主様のお父様が購入し、
長年家族で暮らしてきました。
子ども達は独立。
両親だけの生活。
そして父親が亡くなりました。
母親も数年前に他界しています。
誰も住む人がいなくなりました。
長男の考え
長男様は県外在住。
定期的に実家へ来ています。
草刈り。
換気。
郵便物確認。
近隣対応。
想像以上に負担でした。
長男様は言います。
「誰も住まないなら売った方がいいと思います。」
合理的な考えです。
空き家を持ち続ければ、
維持費は増えます。
建物も傷みます。
将来さらに価値が下がる可能性もあります。
妹様の考え
しかし妹様は違いました。
「気持ちの整理がつかないんです。」
そう話されました。
妹様にとって実家は、
単なる不動産ではありません。
父との思い出。
母との思い出。
家族の記憶。
成長した場所。
人生の一部でした。
だから売却という言葉に抵抗があったのです。
どちらも間違っていない
ここで難しいのは、
どちらも正しいことです。
長男様は現実を見ています。
妹様は感情を大切にしています。
どちらも間違っていません。
だからこそ話し合いが難しくなるのです。
相続空き家で最も多い問題
実は、
相続空き家で一番多い問題は、
建物ではありません。
家族の意見です。
売りたい人。
残したい人。
貸したい人。
解体したい人。
考え方が違います。
不動産の問題ではなく、
感情の問題になることが多いのです。
現地確認で見えた現実
私たちは現地を確認しました。
建物は築40年以上。
大きな雨漏りはありません。
しかし、
設備は老朽化しています。
庭木も伸びています。
空き家期間も長くなっていました。
あと5年。
あと10年。
持ち続ければ、
管理負担は確実に増えていきます。
しかし、
それを説明しても、
妹様の気持ちは簡単には変わりませんでした。
父の部屋がそのまま残っていた
実家の二階。
父親が使っていた部屋。
机。
本棚。
写真。
眼鏡。
時計。
亡くなった日から、
時間が止まったような状態でした。
妹様は静かに言いました。
「まだ父がいる気がするんです。」
長男様も何も言えませんでした。
それほど強い思い出が残っていたのです。
私たちが提案したこと
私たちは、
すぐに売却を勧めませんでした。
まず家族で整理する時間を作ってもらいました。
思い出の品を整理する。
写真を残す。
家族で集まる。
最後に家を見直す。
不動産取引の前に、
気持ちの整理が必要だと感じたからです。
そして数か月後、
状況が少しずつ動き始めました。
長男様も、
妹様も、
以前とは違う考え方を持つようになっていたのです。
その変化が、
最終的な結論へつながっていきました。
【名古屋市中川区の実家売却事例】|「兄は売りたい、妹は残したい。相続空き家の結末」
~更地になった実家の前で、妹が言った言葉~
実家がなくなってから、
妹様は初めてこう言いました。
「やっと父と母にありがとうって言えた気がします。」
その言葉を聞いた時、
私は今回の売却は成功だったのだと思いました。
不動産売却というと、
価格の話になりがちです。
いくらで売れたのか。
査定額より高かったのか。
安かったのか。
もちろん大切なことです。
しかし今回、
兄妹が本当に悩んでいたのは価格ではありませんでした。
売却を決めた日ではなく
実は、
兄妹の気持ちが変わったのは、
売却契約の日ではありません。
もっと前です。
ある土曜日。
兄妹で最後の片付けをしていた日でした。
押し入れから出てきたアルバム。
古い通知表。
家族旅行の写真。
父親が使っていた万年筆。
母親の手紙。
一つ見つかるたびに作業は止まります。
片付けは進みません。
しかし、
その時間が必要だったのです。
妹様が気付いたこと
最初、
妹様は売却に反対でした。
思い出が消えてしまう気がしたからです。
家がなくなる。
それは両親との繋がりがなくなることだと思っていました。
しかし、
アルバムを整理している時、
ふとこんなことを話されました。
「思い出って家の中じゃなくて、自分の中にあるんだね。」
私はその言葉が忘れられません。
長男様の本音
一方で、
長男様にも変化がありました。
最初は、
管理が大変だから売りたい。
それが理由でした。
しかし本当は違いました。
父親が亡くなってから、
一人で実家管理を続けていたのです。
草刈り。
換気。
近隣対応。
郵便物確認。
誰にも言わず続けていました。
ある日、
ぽつりと言いました。
「正直、少し疲れていました。」
初めて聞いた本音でした。
相続空き家の現実
私はこれまで数多くの空き家相談を受けてきました。
そこで感じることがあります。
空き家問題は、
建物の問題ではありません。
家族の問題です。
誰が管理するのか。
誰が費用を負担するのか。
誰が決断するのか。
そして、
誰が思い出と向き合うのか。
そこが一番難しいのです。
家族会議の結論
最終的に兄妹は、
ある結論にたどり着きました。
残したい気持ちはある。
しかし、
誰も住まない。
管理も難しい。
将来さらに老朽化する。
近隣へ迷惑をかける可能性もある。
だったら、
感謝して送り出そう。
そんな結論でした。
売却は諦めではありませんでした。
整理でもありませんでした。
一区切りだったのです。
売却後に起きた変化
不思議なことがあります。
売却後、
兄妹は実家の話をするようになりました。
以前は避けていました。
話すと辛くなるからです。
しかし今は違います。
「あの時こんなことあったね。」
「父は本当に頑固だったね。」
「母の料理美味しかったね。」
笑いながら話せるようになりました。
家はなくなりました。
しかし思い出は消えませんでした。
むしろ整理されたように見えました。
私が現場で感じること
不動産会社として言うべきことではないかもしれません。
しかし私は思います。
売却を急がなくてもいい。
気持ちの整理が必要な時もある。
相続した直後に結論が出ないこともある。
それでいいのです。
ただ一つだけ言えることがあります。
放置だけはしない方がいい。
家は待ってくれません。
時間とともに確実に傷みます。
だからこそ、
家族で話し合うことが大切なのです。
まとめ
今回の中川区の実家売却。
兄は売りたい。
妹は残したい。
最初は正反対でした。
しかし最後は、
同じ方向を向いていました。
家を残すことが親孝行ではありません。
売却することが親不孝でもありません。
大切なのは、
家族が納得できる結論を出すことです。
そして更地になった実家の前で、
妹様は静かに言いました。
「やっと父と母にありがとうって言えた気がします。」
その言葉が、
今回の売却のすべてだったように思います。
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