こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
相続した実家を売るべきか。
思い出が残る家だから、もう少し残しておくべきか。
相続空き家のご相談では、税金や価格だけでは決められない迷いを伺います。
その中で、最近特に増えているのが、
「空き家の3,000万円控除を使えば、税金を払わずに売れますか」
というご質問です。
正式名称は、**「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」**です。
一定の要件を満たすと、相続した空き家やその敷地を売却した際の譲渡所得から、最高3,000万円を控除できます。
とても有効な制度ですが、最初に誤解のないようお伝えします。
🟥 3,000万円が受け取れる制度でも、売却代金から3,000万円を差し引く制度でもありません。売却によって生じた「譲渡所得」から控除する制度です。
さらに、すべての相続空き家が対象になるわけではありません。
建築時期。
亡くなった方の居住状況。
相続後の利用状況。
売却価格。
売却期限。
耐震改修や解体の時期。
一つでも要件から外れると、控除を受けられない可能性があります。
この記事では、令和8年9月時点の制度を前提に、空き家3,000万円控除の基本、見落としやすい10の落とし穴、令和6年から加わった売却後の解体・耐震改修、名古屋市昭和区の相談事例、そして税金だけで売り方を決めないための比較方法を、現場の視点からお話しします。
空き家3,000万円控除とは
相続または遺贈によって取得した、亡くなった方の居住用家屋やその敷地を売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。
適用期間は、現行制度では令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。
譲渡所得は、概ね次のように計算します。
売却代金 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得
例えば、売却代金が2,500万円、取得費と譲渡費用の合計が500万円なら、控除前の譲渡所得は2,000万円です。
この2,000万円について特例を適用できれば、課税譲渡所得が0円になる可能性があります。
一方、売却損が出ている場合は、そもそも控除する譲渡所得がありません。
また、売却代金が3,000万円を超えていても、それだけで制度の対象外になるわけではありません。判定するのは売却代金そのものではなく、要件を満たしたうえで計算される譲渡所得です。ただし、制度には別途「売却代金が1億円以下」という要件があります。
🟨 「3,000万円控除が使えるか」と「実際に税金がいくら減るか」は別の問題です。まず取得費、譲渡費用、所有期間を確認して、控除前の税額を試算する必要があります。
令和6年から変わった2つの重要点
1.売却後に買主が解体・耐震改修する方法も対象になった
以前は、耐震性のない古家を売る場合、原則として売主が譲渡前に耐震改修するか、建物を解体して敷地を売る必要がありました。
令和6年1月1日以後の譲渡では、建物付きで売却した後、譲渡した年の翌年2月15日までに買主が建物の全部を解体する、または一定の耐震基準に適合させる方法も対象になりました。
これにより、売主が先に解体費を負担せず、古家付きで販売できる可能性が広がりました。
ただし、売買契約を結べば自動的に適用されるわけではありません。期限までに工事が完了し、その事実を証明できることが必要です。
2.相続人が3人以上の場合は控除上限が2,000万円
令和6年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋と敷地を取得した相続人が3人以上いる場合、控除額の上限は一人当たり2,000万円です。
「相続人が多いほど、一人ずつ3,000万円控除できる」とは限りません。
🟥 古い解説記事には、売却後の解体制度や、相続人3人以上の場合の2,000万円上限が反映されていないことがあります。売却時点の制度で確認してください。
空き家3,000万円控除で見落としやすい10の落とし穴
落とし穴1|新しい住宅は対象にならない
対象となる家屋は、原則として昭和56年5月31日以前に建築された家屋です。
「古い空き家」という印象だけで判断せず、登記事項証明書、固定資産税関係書類、建築確認関係書類などで建築時期を確認します。
また、区分所有建物登記がされたマンションなどは対象外です。
落とし穴2|亡くなった方以外が同居していると原則対象外
原則として、相続開始の直前に亡くなった方が居住し、その方以外に居住していた人がいなかったことが必要です。
例えば、親と子が同居していた家は、単に親が住んでいたというだけでは対象になりません。
住民票だけでなく、実際の居住状況が問題になります。
落とし穴3|老人ホームへ入所していれば必ず対象になるわけではない
亡くなる直前に老人ホームなどへ入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になる可能性があります。
ただし、施設へ入所していたという事実だけでは足りません。
要介護認定等を受けていたか。
入所前までその家に住んでいたか。
入所後も家財などの保管場所として使われていたか。
第三者へ貸していなかったか。
他の人が住んでいなかったか。
こうした事実と書類を確認します。
🟨 施設入所の時期が古いほど、必要書類や当時の利用状況を確認しにくくなります。売却を決める前に、介護保険関係書類や施設の契約書などを探してください。
落とし穴4|相続後に貸す、住む、事業に使うと対象外になることがある
対象となる家屋や敷地は、原則として相続から譲渡まで、事業、貸付け、居住の用に供されていないことが必要です。
「売れるまで知人へ短期間だけ貸す」
「家賃は取らず、親族に住んでもらう」
「荷物を置く以外に、事務所や倉庫として使う」
こうした利用が特例へ影響する可能性があります。
空き家の維持費を補うために賃貸へ出す場合は、税制との比較を先に行う必要があります。
落とし穴5|期限は相続登記の日から数えるのではない
売却期限は、原則として、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。
基準になるのは、通常、亡くなった日です。
相続登記をした日でも、遺産分割協議がまとまった日でもありません。
例えば、令和5年4月10日に相続が開始した場合、原則的な売却期限は令和8年12月31日です。
ただし、現行制度自体の適用期限である令和9年12月31日にも注意が必要です。
売買契約日と引渡日・所有権移転日が年をまたぐ場合、どの年の譲渡になるかは個別確認が必要です。
落とし穴6|1億円以下の判定は、分割売却でも逃れられない
売却代金は1億円以下であることが必要です。
敷地を分けて売った場合や、複数の相続人が別々に売った場合でも、一定期間内の関連する売却代金を合算して判定します。
後から残りの土地を売ったことで合計が1億円を超えると、すでに受けた特例について修正申告と納税が必要になる場合もあります。
落とし穴7|古家付きで売れば、そのまま対象になるわけではない
昭和56年5月31日以前の家屋を建物付きで譲渡する場合、原則として、譲渡時に一定の耐震基準を満たしている必要があります。
または令和6年以後の譲渡であれば、譲渡した年の翌年2月15日までに、買主側で耐震改修または建物全部の解体を完了する方法があります。
「現況のまま売った後、買主がいつか解体する予定」では不十分です。
落とし穴8|買主の工事遅延が、売主の税金へ影響する
売却後の解体・耐震改修を利用する方法では、工事を行うのは買主でも、特例を受けたいのは売主です。
買主の建築計画が遅れた。
解体業者が見つからなかった。
アスベスト調査や近隣調整に時間がかかった。
予定外の事情で翌年2月15日を過ぎれば、売主が必要書類をそろえられない可能性があります。
そのため、売買契約では少なくとも次の内容を検討します。
- 解体または耐震改修を行う期限
- 買主の工事実施義務
- 工事完了を確認できる書類の提供
- 売主による進捗確認への協力
- 未完了時の対応や損害負担
具体的な契約条項は、宅建業者、税理士、必要に応じて弁護士と調整します。
🟥 「買主が壊すと言っているから大丈夫」ではありません。税制上の期限と必要書類を、契約前に買主・仲介会社と共有することが重要です。
落とし穴9|確認書があっても、適用が確定するわけではない
確定申告では、家屋所在地の市区町村が交付する**「被相続人居住用家屋等確認書」**などが必要です。
名古屋市内の家屋であれば、名古屋市へ確認書の交付を申請します。
ただし、この確認書は、市区町村が確認できる所定の事項を証明する書類です。確認書の交付だけで、税務上のすべての要件を満たすことが保証されるわけではありません。
最終的には、必要書類を添えて確定申告を行います。
交付にも書類収集と審査の時間がかかるため、確定申告の直前に初めて準備するのは避けた方がよいでしょう。
落とし穴10|取得費加算の特例とは併用できない
相続税を支払った方が一定期間内に相続財産を売却した場合、相続税額の一部を取得費へ加算できる特例があります。
しかし、同じ不動産の売却について、空き家3,000万円控除と相続税の取得費加算の特例を重ねて使うことはできません。
どちらが有利かは、譲渡所得、相続税額、取得費、相続人の人数などによって変わります。
🟨 制度名の印象だけで選ばず、両方の税額を試算して比較してください。
名古屋市昭和区の相談事例|「先に解体するしかない」と思っていた相続空き家
ここで、複数の相談経験をもとに再構成した事例をご紹介します。
場所は名古屋市昭和区山里町周辺。
駅や生活施設へ行きやすく、土地需要も見込める地域に、昭和50年代前半に建てられた戸建住宅がありました。
売主様は、お母様から実家を相続していました。
ご相談時の希望は、
「空き家の3,000万円控除を使いたい。でも、できれば家を壊さずに引き継いでくれる人を探したい」
というものでした。
室内には欄間や建具が残り、庭には、お母様が大切にしていた木がありました。
しかし、建物は旧耐震期のもので、現状のまま建物付きで譲渡しても、耐震要件を満たせない可能性がありました。
当初、売主様は、
「控除を使うには、売る前に解体するしかないのですね」
と考えていました。
もし、その場で解体を決めていれば、税制上の条件は整理しやすくなったかもしれません。
一方で、古家を利用したい買主へ届ける可能性と、建物を残した状態で現地を見てもらう機会は失われます。
そこで、次の3つを比較しました。
| 売却方法 | 主な利点 | 主な負担・リスク |
|---|---|---|
| 売主が耐震改修して売る | 建物を残せる可能性がある | 改修費と工期。費用を価格へ反映できるとは限らない |
| 売主が解体して土地で売る | 買主が土地を判断しやすい | 解体費を先に負担。建物価値を失う。売却までの保有負担 |
| 古家付きで売り、買主が期限内に改修・解体する | 売主の先行負担を抑えられる可能性 | 買主の工事完了と書類取得を確実に管理する必要がある |
さらに、仲介による想定価格、解体費、測量費、残置物処分費、控除を使えた場合と使えない場合の税額を並べました。
その結果、売主様は「控除のために急いで壊す」と決めるのではなく、一定期間は古家付きで購入希望者を探し、利用希望がなければ解体を含む方法へ切り替える方針を選びました。
重要なのは、どの方法を選んだかではありません。
🟩 税制、建物の価値、売却価格、費用、期限を同じ表へ並べたことで、売主様が自分の意思で選べるようになったことです。
※相談者様および物件を特定できないよう、複数の相談経験をもとに所在地、建築時期、会話、経緯などの一部を調整しています。
控除のために解体すると、本当に得なのか
税金が数百万円減る可能性があっても、解体費や売却価格への影響がそれ以上なら、最終手取りが増えるとは限りません。
例えば、解体によって土地を見やすくできる一方、次のようなことも起こり得ます。
- 狭い道路や旗竿地で解体費が高くなる
- アスベスト対策や残置物処分が必要になる
- 解体後に再建築や接道の問題が判明する
- 古家を改修したい買主を失う
- 解体時期によって土地の固定資産税等の負担が変わる
- 売却前に現金の持ち出しが必要になる
反対に、雨漏りや傾きがあり、安全管理の負担が大きい建物では、早めの解体が合理的な場合もあります。
「残すことが正しい」「壊すことが正しい」と一律には言えません。
私は名古屋市内を歩いていると、古い家の庭木、建具、土間、間取りが、新しい住み手にとって購入理由になる場面を見かけます。
古い家は、築年数だけで価値が決まるものではありません。
だからこそ、解体を決める前に、建物を利用したい人がいる可能性、土地として売った場合の需要、解体費、税額を比較します。
売却価格ではなく「最終手取り」で比べる
次の表を埋めると、税制だけに引っ張られずに判断しやすくなります。
| 比較項目 | 古家付き売却 | 売主解体後に売却 | 買主解体・改修型 |
|---|---|---|---|
| 想定売却価格 | |||
| 解体・耐震改修費 | |||
| 残置物処分費 | |||
| 測量・境界・登記費 | |||
| 仲介手数料等 | |||
| 特例適用前の税額 | |||
| 特例適用後の税額 | |||
| 固定資産税・管理費 | |||
| 売却までの期間 | |||
| 特例を使えないリスク | |||
| 最終手取り見込み |
🟩 節税額が最も大きい方法と、売主様の最終手取りが最も多い方法は、同じとは限りません。
売却前に確認したい12項目
- 家屋は昭和56年5月31日以前に建築されているか
- 区分所有建物ではないか
- 亡くなる直前、被相続人以外に居住者はいなかったか
- 老人ホーム等への入所前後の要件と証拠書類はそろうか
- 相続後、誰かが居住・賃貸・事業利用していないか
- 売却期限はいつか
- 売却代金の合計が1億円以下か
- 相続人は何人か
- 建物は耐震基準を満たすか
- 誰が、いつまでに耐震改修または解体するのか
- 空き家特例と取得費加算のどちらが有利か
- 市区町村の確認書と確定申告書類を準備できるか
この確認は、買主が見つかってからでは遅い場合があります。
特に期限が迫っている場合、解体業者の手配、測量、残置物整理、販売、契約、引渡しを逆算する必要があります。
誰に何を相談するのか
空き家3,000万円控除では、不動産会社だけで税務判断を完結させるべきではありません。
税務署・税理士
特例の適用可否、譲渡所得、取得費、他の特例との比較、確定申告を確認します。
名古屋市
名古屋市内の家屋について、被相続人居住用家屋等確認書の申請方法と必要書類を確認します。ただし、確認書の交付は税制適用の最終判定ではありません。
不動産会社
古家付き、解体後、買主側解体などの販売方法、想定価格、買主層、契約条件、売却日程を整理します。
建築士・耐震診断の専門家・解体業者
耐震適合の可能性、改修範囲、解体方法、工期、費用を確認します。
🟨 相談先を一つに絞るのではなく、それぞれの専門分野をつなぐことが、相続空き家の売却では重要です。
まとめ|3,000万円控除を使うことではなく、後悔のない手取りを残す
空き家3,000万円控除は、相続空き家の売却を後押しする有効な制度です。
しかし、次のような誤解には注意が必要です。
- 親の家を相続すれば誰でも使える
- 3,000万円までの売却なら税金がかからない
- 老人ホームへ入っていても自動的に対象になる
- 古家付きで売り、買主が将来解体すればよい
- 市区町村の確認書が出れば適用が確定する
- 控除を使うためなら、先に解体した方が必ず得になる
売却前に確認すべきなのは、控除の可否だけではありません。
建物を残した場合の価格。
土地として売った場合の価格。
解体・耐震改修・測量・残置物処分の費用。
売却までの時間。
税額。
そして、家をどのような形で次へ引き継ぎたいのか。
これらを並べて初めて、売主様に合った出口が見えてきます。
🟥 税制に合わせて不動産を壊すのではなく、不動産の価値と売主様の希望を確認したうえで、税制を生かす順番が大切です。
🟩 早く売る必要はありません。ただし、期限が来る前に選択肢を調べ始めることは必要です。
名古屋市で相続空き家の売却を考えている方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、相続空き家、古家付き住宅、再建築が難しい土地、旗竿地、私道や境界に問題がある不動産などの売却をお手伝いしています。
次のような段階でも構いません。
- 空き家3,000万円控除を使えるか分からない
- 親が老人ホームへ入所していた
- 相続から時間がたち、期限が心配
- 古家を残すか解体するか迷っている
- 解体費を払う前に売却価格を比較したい
- 買主に解体してもらう契約を検討したい
- 取得費が分かる書類が見つからない
- 税理士へ相談する前に、不動産の売り方を整理したい
私たちは税務の最終判断を行う立場ではありません。
そのため、特例の適用可否や税額は税務署・税理士へ確認しながら、現地調査、売却価格、解体・改修費、販売期間、契約条件を整理します。
控除が使えるかだけでなく、どの方法なら家族の気持ちと最終手取りの両方に納得できるのか、一緒に考えてみませんか。
対応エリア
名古屋市南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区・西区・北区・東区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※本記事は令和8年9月時点の法令・公表情報をもとに作成しています。税制は改正される場合があり、個別事情によって適用可否や税額が異なります。具体的な判断は、所轄税務署または税理士へご確認ください。
※売却後に買主が耐震改修または解体する方法を利用する場合は、工事期限、必要書類、売買契約の内容を事前に専門家へご確認ください。
※本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、複数の相談経験をもとに所在地、建築時期、会話、経緯などの一部を調整しています。


