空き家がつないだ家族~売却の日に初めて父へ感謝を伝えた長男~

「親父にありがとうなんて、一度も言ったことがないですね。」

ご相談者の長男様は、少し照れくさそうにそう話されました。

年齢は60代。

数年前にお父様を亡くし、実家を相続していました。

ご両親が暮らしていた家は空き家となり、管理だけが続いていました。

庭の草刈り。

建物の点検。

固定資産税の支払い。

遠方からの往復。

決して楽ではありません。

しかし長男様が本当に苦労していたのは、空き家の管理ではありませんでした。

父との思い出でした。


名古屋市エリアで″売却サポート”に専門特化した
不動産売却のみを取り扱う専門店です。
空き家売却にともなう煩雑なお手続き、
空き家の遺品整理や不要品の買取まで一括してサポートしております。

〒457-0846
愛知県名古屋市南区道徳通2-51 道徳ビル1F

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目次

厳しい父だった

お父様は昭和一桁生まれの職人気質な方でした。

朝は早い。

仕事に厳しい。

子どもにも厳しい。

褒めることはほとんどない。

愛情表現も苦手。

そんな父親だったそうです。

長男様は幼い頃から父を怖い存在だと思っていました。

学校で良い成績を取っても、

「当たり前だ。」

野球で活躍しても、

「もっと頑張れ。」

そんな言葉ばかりだったそうです。


認めてもらいたかった

子どもの頃。

長男様はいつも父に認めてもらいたかったそうです。

もっと褒めてほしい。

もっと認めてほしい。

もっと見てほしい。

しかし父は最後まで多くを語りませんでした。

そのため大人になってからも、どこか心の奥に引っ掛かりが残っていました。


大人になって分かること

社会人になり、家庭を持ち、自分も父親になりました。

すると少しずつ父の見え方が変わっていったそうです。

毎日働くことの大変さ。

家族を養う責任。

住宅ローン。

教育費。

将来への不安。

若い頃には見えなかったものが見えるようになりました。

それでも父へ感謝を伝える機会はありませんでした。


ありがとうが言えなかった理由

照れくさかったのかもしれません。

今さら言えなかったのかもしれません。

あるいは父もそういう人ではなかったからでしょう。

親子なのに、本音を話さない。

実はそんな家族は少なくありません。

長男様もその一人でした。


父が亡くなった日

ある日突然、その機会は失われました。

お父様が亡くなったのです。

もっと話しておけばよかった。

感謝を伝えればよかった。

そんな後悔が残りました。

しかし人は亡くなった後には返事をしてくれません。

それが現実です。


空き家になった実家

父が亡くなり、母もその後亡くなりました。

実家は空き家になりました。

最初は売却する気になれなかったそうです。

家を見るたびに父を思い出すからです。

玄関。

庭。

作業場。

父の姿が浮かびます。

だから何年もそのままになっていました。


父の足跡

売却の準備で実家を整理していた時でした。

物置から古い工具箱が見つかりました。

庭には父が植えた木がありました。

納戸には修理した記録が残っていました。

その一つひとつが、父の人生そのものでした。

長男様は言いました。

「親父、こんなに家のために頑張ってたんですね。」

それまで気付かなかったことでした。


家が教えてくれたこと

空き家の整理は不思議です。

物を片付けているはずなのに、人の人生が見えてきます。

父がどんな思いで働いていたのか。

どんな気持ちで家を守っていたのか。

どれだけ家族を大切にしていたのか。

言葉ではなく、残された物が教えてくれるのです。


売却を決意した日

長男様は最終的に売却を決断しました。

簡単な決断ではありません。

思い出の詰まった家です。

しかし管理を続けることは難しい。

誰も住まない家を残すことが父の望みとも思えませんでした。

だから前へ進むことにしたのです。


売却契約の日

契約当日。

長男様は少し緊張していました。

契約書へ署名する。

説明を受ける。

手続きが進む。

その間、ほとんど口数はありませんでした。

しかし全てが終わった後でした。


父へ向けた言葉

契約を終え、帰る前。

長男様は窓の外を見ながら小さな声で言いました。

「親父、ありがとう。」

私は隣にいましたが、独り言のようでした。

誰に聞かせるわけでもありません。

空へ向かって言った言葉でした。


初めて伝えた感謝

長男様は少し笑いながら言いました。

「生きている時には言えなかったな。」

その表情は不思議でした。

寂しさもある。

後悔もある。

しかしどこか晴れやかでした。

長年心の中にあった言葉を、ようやく伝えられたからです。


空き家がつないだもの

売却によって家は手放しました。

しかし失ったものばかりではありません。

むしろ取り戻したものがありました。

父への感謝です。

空き家の整理がなければ。

売却の手続きがなければ。

長男様はその気持ちに気付かなかったかもしれません。


本当に相続するもの

相続というと、多くの人は財産を思い浮かべます。

土地。

建物。

預貯金。

有価証券。

もちろんそれも大切です。

しかし現場で感じるのは違います。

本当に相続するものは、親が生きた証なのかもしれません。

生き方。

価値観。

家族への想い。

それらが世代を超えて受け継がれていきます。


空き家マイスターとして感じること

私はこれまで数多くの空き家を見てきました。

その中で気付いたことがあります。

空き家は人を困らせる存在である一方で、人を立ち止まらせる存在でもあります。

忙しい日常の中で忘れていたこと。

伝えられなかった想い。

向き合えなかった感情。

それらと向き合う時間を与えてくれるのです。


まとめ

今回のご相談は空き家売却の話でした。

しかし終わってみれば、不動産の話ではありませんでした。

一人の息子が父へ感謝を伝えるまでの物語でした。

親子だからこそ言えない言葉があります。

近すぎるから伝えられない気持ちがあります。

けれど、その想いは消えていません。

心の奥に残っています。

そして時には、空き家がその気持ちを思い出させてくれることがあります。


空き家マイスターが見たリアルな現実

売却されたのは一軒の空き家でした。

けれど、その日つながったのは親子でした。

生前、一度も言えなかった「ありがとう」。

その言葉は父の耳には届かなかったかもしれません。

それでも長男様の心には、確かに届いていました。

そして空き家は最後にもう一つの役目を果たしたのです。

父と息子を、もう一度つないでくれたのでした。

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