「事故物件だから、売れないですよね」
こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
「事故物件だから、正直、売れないと思っていました」
名古屋市南区にあるご実家について相談に来られた売主様が、最初におっしゃった言葉です。
お父様は、ご実家の室内で一人で亡くなられました。
すぐには発見されず、発見後には室内の清掃や消臭などが必要になりました。
売主様が抱えていたのは、不動産価格への不安だけではありません。
- 孤独死があった家を買う人はいるのか
- どこまで買主へ伝えなければならないのか
- 告知の仕方を誤って、後から責任を問われないか
- 建物を残して売るべきか、解体した方がよいのか
- 近隣に事故のことが広がらないか
- 父が亡くなった部屋へ、もう一度入らなければならないのか
こうした不安が重なり、数か月の間、誰にも相談できなかったそうです。
その後、複数の不動産会社へ査定を依頼しました。
提示された金額は、400万円から500万円前後。
説明は、どの会社もよく似ていました。
「事故物件なので、一般のお客様には難しいです」
「専門業者の買取になります」
「建物を壊さないと厳しいと思います」
売主様は、事故があった以上、仕方がないと思い始めていました。
しかし、最終的な成約価格は約860万円でした。
当初提示された金額より、数百万円高い条件です。
ただし、この記事を、
「事故物件でも簡単に高く売れた」
という話にはしたくありません。
事故がなければ、さらに高い評価になった可能性があります。
購入を見送った方もいました。
販売にも通常より時間と説明が必要でした。
そして何より、売主様は、お父様の死について何度も説明しなければなりませんでした。
今回お伝えしたいのは、事故物件には影響がないということではありません。
🟨 人が亡くなったという事実の影響と、土地・建物が本来持っている価値を分けて考えなければ、必要以上に安く評価されることがあるという現実です。
※本記事は実際の相談・売却経験をもとに、相談者様および物件を特定できないよう、所在地の一部、土地面積、築年数、価格、時期、会話、経緯などを調整して構成しています。
「事故物件」という法律用語はない
一般に「事故物件」と呼ばれる不動産には、自殺、他殺、火災による死亡、孤独死など、人の死に関する事情が含まれます。
ただし、「事故物件」は法律上の正式な物件区分ではありません。
また、住宅内で人が亡くなったからといって、すべてを同じように扱うわけでもありません。
国土交通省は、宅地建物取引業者が人の死についてどのように調査・告知するかを判断する際の指針として、2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しています。
このガイドラインでは、対象不動産で発生した自然死や、日常生活の中での不慮の死については、原則として告げなくてもよいと整理されています。
人は生活している以上、病気や老衰などにより自宅で亡くなることがあるためです。
しかし、自然死や日常生活上の不慮の死であっても、発見までに時間が経過し、特殊清掃や大規模なリフォームなどが行われた場合は、買主・借主の判断へ影響する可能性があるため、扱いが変わります。
自殺や他殺なども含め、個別の事情に応じた確認が必要です。
ここで特に注意したいのは、売買と賃貸ではガイドライン上の整理が同じではないことです。
賃貸については、一定のケースで、おおむね3年が経過した後は原則として告げなくてもよいとする目安があります。
一方、売買には一律の「3年ルール」は示されていません。
「3年たてば、売買でも告知しなくてよい」
と単純に考えるのは危険です。
また、買主から具体的に質問された場合や、社会的影響が特に大きい事案などでは、ガイドライン上の原則だけで機械的に判断できないこともあります。
制度の原文は、国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で確認できます。
🟥 「自然死だから何も伝えなくてよい」「孤独死だから必ず事故物件」と、言葉だけで決めることはできません。死亡の態様、発見までの状況、特殊清掃の有無、取引形態、買主の判断への影響を個別に確認する必要があります。
今回の孤独死では、特殊清掃が行われていた
今回のお父様は、病気により室内で亡くなられたとみられていました。
しかし、発見までに一定の時間が経過していました。
室内には清掃と消臭が必要な状態があり、専門業者による作業が行われていました。
床材の一部も撤去されていました。
そのため、単に、
「高齢の父が自宅で病死した」
という情報だけでは、買主が物件の状態を判断できません。
いつ頃亡くなったのか。
発見されたのはいつか。
どの部屋だったのか。
どのような清掃や撤去が行われたのか。
臭気や汚損は現在どうなっているのか。
施工記録や領収書は残っているのか。
確認できる情報を整理する必要がありました。
ここで難しいのは、必要な事実を伝えることと、故人の尊厳やご家族のプライバシーを守ることの両立です。
買主の判断に必要のない、過度に生々しい説明まで行う必要はありません。
一方、売れにくくなることを恐れて、事実を曖昧にすることもできません。
今回、私たちは、確認できた客観的な事実を時系列で整理し、どこまで書面へ記載するかを検討しました。
売主様が一番恐れていたのは、安値ではなかった
売主様は、査定額が低いことにも不安を感じていました。
しかし、話を聞いていくと、もっと深い不安がありました。
「父の亡くなり方を、何度も知らない人へ説明しなければならないのでしょうか」
「事故物件として、近所の人にまで知られるのでしょうか」
「父が何か悪いことをしたように思われるのがつらいです」
孤独死があった住宅の売却では、所有者様が罪悪感を抱くことがあります。
もっと早く電話すればよかった。
近くに住んでいれば、早く見つけられたかもしれない。
一人にしてしまった。
売却相談の場で、不動産とは直接関係のない後悔が言葉になることがあります。
しかし、子どもが遠方で暮らしていることも、親が一人暮らしを選ぶことも、珍しいことではありません。
孤独死が起きたからといって、ご家族が無責任だったと決めつけることはできません。
それでも売主様は、家を見るたびに自分を責めていました。
事故物件の売却で扱うのは、価格だけではありません。
亡くなった場所を、次の人へどう引き継ぐかという問題でもあります。
400万円から500万円の査定には、理由があった
最初に提示された400万円から500万円という金額は、主に業者買取を前提としたものでした。
買取会社は、購入後に次の費用とリスクを負います。
- 建物の清掃・消臭・修繕費
- 残置物の撤去費
- 必要に応じた解体費
- 人の死に関する説明と再販売リスク
- 買主が限定される可能性
- 保有中の税金、管理、金利負担
- 再販売後のトラブルに備える費用
- 事業としての利益
そのため、仲介で一般市場へ売り出す想定価格より、買取価格が低くなること自体は不自然ではありません。
買取には、
- 売却時期を決めやすい
- 内覧対応を減らせる
- 近隣へ広く広告せず進めやすい
- 現況のまま相談できる
- 契約条件を整理しやすい
というメリットがあります。
売主様が、価格よりも早さや精神的負担の軽減を優先するなら、買取が適している場合もあります。
問題は、
「400万円から500万円が、この不動産の価値のすべて」
として説明されていたことでした。
🟨 業者がリスクを引き受けてすぐ買える価格と、時間をかけて利用者を探す市場価格は、同じものではありません。
現地で感じた最初の違和感
現地は、名古屋市南区の住宅地にありました。
土地は約40坪。
築約50年の木造住宅。
最寄り駅から徒歩で移動できる範囲にあり、買物施設や生活動線も確認できました。
前面道路と接道についても、売却検討を止めるような大きな問題は見当たりませんでした。
もちろん、建物は古く、手を入れずにそのまま快適に住める状態ではありません。
孤独死があった部屋では、床材の一部が撤去されています。
室内には清掃後も使われていない期間のにおいがありました。
しかし、敷地の形、道路、周辺需要まで含めて見ると、事故歴だけで400万円台と決めることには違和感がありました。
仮に建物の評価を慎重に見るとしても、土地としての価値が消えるわけではありません。
建物を再生する可能性。
賃貸住宅として利用する可能性。
解体後に土地として使う可能性。
隣接地と合わせて検討する可能性。
複数の出口があります。
ここで必要だったのは、
「事故があるから何割減」
という一律の減点ではなく、事故歴によって狭くなる買主層と、物件そのものの市場性を分けて考えることでした。
事故物件の価格は「何割下がる」と決められない
事故物件について、
「相場の半額になる」
「3割下がる」
といった表現を見かけることがあります。
しかし、すべての物件へ同じ割合を当てはめることはできません。
価格への影響は、少なくとも次の条件で変わります。
- 死亡の態様
- 発見までの期間
- 特殊清掃や改修の有無
- 室内の現況
- 発生からの経過期間
- 物件が戸建てか区分マンションか
- 建物を利用するのか解体するのか
- 土地価格が占める割合
- 立地と周辺需要
- 自己居住用か投資用か
- 近隣やインターネット上での認知状況
- 買主個人の受け止め方
土地価格の比重が高い物件では、建物内の出来事が価格全体へ与える影響が相対的に小さくなる場合があります。
反対に、建物利用が前提となる区分マンションや、建物価値の比重が高い物件では、影響が強く出ることがあります。
また、同じ事実を聞いても、絶対に購入できない人もいれば、条件と価格を理解したうえで検討する人もいます。
事故物件の査定に必要なのは、機械的な割引率ではありません。
どの市場へ、どの状態で、どのように説明して売るかという個別判断です。
最初に考えたのは、解体ではなかった
売主様は、
「建物を壊せば、事故物件ではなくなりますか」
と尋ねられました。
この質問は、事故物件の相談でよく出ます。
しかし、建物を解体したからといって、過去の出来事がなかったことになるわけではありません。
土地として売却する場合でも、買主の判断に重要な影響を与える事情であれば、説明が必要となる可能性があります。
また、解体には費用がかかります。
建物を壊すことで、リフォームや賃貸活用を考える買主を失う場合もあります。
更地にすると固定資産税等の住宅用地特例が適用されなくなる可能性もあり、売却時期との調整が必要です。
一方、建物の劣化が激しく、安全上の問題がある場合や、土地としての需要が明らかに強い場合には、解体が有効なこともあります。
したがって、
「事故があったから解体」
ではなく、
「建物状態、清掃・改修費、解体費、土地需要、告知、税負担を比較して決める」
という順番が必要です。
今回、売主様が先に解体費を負担することはせず、古家付きの現況で検討できる市場も含めて反応を見ることにしました。
告知書をつくる前に、事実を集めた
事故物件の販売では、「どう書くか」より先に、「何が確認できるか」を整理する必要があります。
今回、売主様の記憶だけに頼らず、残っている資料を確認しました。
- 死亡と発見のおおよその時期
- 発見場所
- 警察や関係機関による確認の経緯
- 特殊清掃を行った業者
- 清掃・消臭・撤去の作業範囲
- 床材などを撤去した箇所
- 現在の臭気や汚損の状態
- 残置物の状況
- 売主様が把握していない事項
分からないことを、推測で埋めませんでした。
死亡原因について確認できる範囲を超えて断定しませんでした。
発見までの正確な日数が不明であれば、「何日」と作らず、確認できていないことを明示しました。
不動産会社が、警察や医療機関のように死因を判断することはできません。
私たちの役割は、売主様から聞いた内容と確認できる資料を整理し、買主が判断できる状態にすることです。
最初の販売で失敗した「告知事項あり」の一文
販売開始当初、物件情報には「告知事項あり」と記載しました。
事実を隠さないために必要な表現だと考えていました。
ところが、問い合わせを受けると、買主側の反応は極端でした。
「殺人事件ですか」
「室内はまだそのままですか」
「近所で有名な物件ですか」
「告知事項あり」だけでは、何も分かりません。
分からないため、最も深刻な事情を想像する方もいます。
もちろん、広告へ個人を特定できる詳細や、必要以上に刺激的な情報を書くべきではありません。
しかし、問い合わせ後も曖昧な説明を続けると、買主は「重大なことを隠しているのではないか」と感じます。
そこで説明方法を変えました。
購入を具体的に検討する方には、早い段階で、
- 室内での死亡であること
- 発見までに時間が経過していたこと
- 特殊清掃等が実施されていること
- 現況と未確認事項
- 書面でも説明する予定であること
を伝えました。
必要な情報を小出しにせず、判断に必要な範囲をまとめて説明しました。
🟥 「告知事項あり」は、告知をしたことにはなっても、買主が判断できる説明にはなっていない場合があります。
1人目の購入希望者|本人は納得したが、家族が止めた
最初に具体的な検討へ進んだのは、古い戸建てを購入して改修したいという方でした。
価格と立地を評価し、室内も確認されました。
孤独死の経緯と特殊清掃について説明したところ、本人は、
「内容を理解したうえで、リフォーム費用と合わせて考えます」
と話されました。
工事業者にも現地を見てもらい、購入申込みの手前まで進みました。
しかし、最終的に購入は見送られました。
理由は、ご両親の反対でした。
資金援助を予定していたご両親が、室内で人が亡くなっていたことへ強い抵抗を感じたのです。
買主本人が納得しても、住宅購入では家族、金融機関、建築会社など複数の関係者が判断に関わります。
売主様は、
「やはり誰も買ってくれないのではないでしょうか」
と落ち込みました。
しかし、この辞退は、説明をしたから失敗したのではありません。
契約前に家族の意向が分かったことで、後から問題になることを防げたともいえます。
事故物件の売却では、話が流れること自体を恐れ、説明を遅らせる方が危険です。
投資家なら、事故歴を気にしないのか
「投資家は数字だけを見るから、事故物件でも気にしない」
そのように言われることがあります。
しかし、これも単純化しすぎです。
投資家も、事故歴を確認します。
将来、賃貸するときにどのような説明が必要か。
入居者が見つかるか。
賃料へどの程度影響するか。
リフォームや消臭にいくらかかるか。
再売却時に出口があるか。
金融機関の評価はどうか。
自己居住用とは違う視点で、慎重に検討します。
事故歴を無視するのではありません。
事故歴を費用とリスクへ置き換えて判断するのです。
したがって、投資家へ出せば必ず高く売れるわけではありません。
むしろ、収益性が合わなければ、一般の買主以上に厳しい価格を提示されることもあります。
今回も、一般住宅市場だけに限定せず、投資家、リフォーム事業者、土地利用を考える事業者などへ情報を届けました。
ただし、どの市場にも同じ言葉で売り込むのではなく、それぞれが必要とする情報を整理しました。
2人目の買主は「事故より、分からないことの方が怖い」と話した
次に具体的な検討へ進んだのは、古家を改修し、将来の賃貸利用も視野に入れていた買主様でした。
現地案内の前に、人の死に関する事情を伝えました。
特殊清掃を行ったこと。
床材の一部を撤去していること。
現時点で確認できる資料。
確認できない事項。
今後の改修については、買主側の施工会社による確認が必要なこと。
買主様は、説明を聞いた後、こう話されました。
「事故があったことより、何があったのか分からない方が怖いです」
その言葉が印象に残っています。
買主様が孤独死を気にしなかったわけではありません。
現地では、清掃済みの室内を慎重に確認しました。
施工会社にも、床下、臭気、湿気、設備、改修範囲を見てもらいました。
将来の利用方法と、必要な工事費を検討しました。
そして、人の死に関する事情を理解したうえで、立地、土地条件、価格とのバランスを判断しました。
購入申込みが提出された後も、売主様へは、
- 価格
- 引渡時期
- 残置物
- 建物設備の扱い
- 契約不適合責任の範囲
- 人の死に関する告知内容
をまとめて報告しました。
価格だけでなく、後から争いになりにくい条件を含めて比較する必要があるからです。
契約書には「事故物件」とだけ書かなかった
売買契約では、単に、
「本物件は事故物件である」
と書くだけでは、何を説明したのか明確になりません。
「事故物件」という言葉は、人によって想像する内容が違うからです。
今回、重要事項説明や告知書などには、確認できた事実を整理して記載しました。
例えば、
- 建物内で人が亡くなったこと
- 発見までに一定期間が経過していたこと
- 専門業者による清掃・消臭等が行われたこと
- 床材の一部撤去など、確認できる施工内容
- 現況を買主が確認したこと
- 売主が把握していない事項があること
などです。
実際にどの書面へ、どの表現で、どこまで記載するかは、事案によって異なります。
法的評価に迷う場合は、宅建業者だけで判断せず、弁護士等への確認が必要になることもあります。
重要なのは、売主に不利な言葉を増やすことではありません。
買主が知っていれば購入判断が変わる可能性のある事実を、誤解のない形で伝えることです。
🟩 告知の目的は、買主を怖がらせることでも、売主を守るために形式だけ整えることでもありません。双方が同じ事実を理解して契約することです。
最終成約価格は約860万円だった
最終的な成約価格は、約860万円でした。
当初の400万円から500万円という提示額と比べると、大きな差があります。
しかし、建物や土地の状態が途中で変わったわけではありません。
孤独死の事実が消えたわけでもありません。
違っていたのは、価格を見ていた前提です。
| 比較項目 | 400万~500万円前後 | 約860万円 |
|---|---|---|
| 主な前提 | 業者による現況買取 | 仲介による買主探索 |
| 売却速度 | 比較的早い | 調査・販売期間が必要 |
| 再販売リスク | 買取業者が負担 | 自ら利用・運用する買主が判断 |
| 事故歴の評価 | 再販売上の大きなリスク | 内容と費用を確認して個別判断 |
| 土地・立地評価 | 費用等を差し引いて評価 | 利用価値を含めて評価 |
| 売主の負担 | 抑えやすい | 資料整理・説明・内覧対応が必要 |
860万円で売れた理由は、事故歴を軽く見せたからではありません。
確認できる事実を先に伝え、建物と土地の現況を見てもらい、買主が自分の利用方法に照らして判断できたからです。
また、売主様が「すぐ現金化すること」よりも、一定期間をかけて納得できる条件を探すことを選んだ点も重要でした。
🟥 400万円が不当に安く、860万円が絶対的な適正価格だったと単純には言えません。早さと確実性を買う買取価格と、時間と説明を要する仲介成約価格の違いです。
売主様が契約前に、もう一度家へ入った理由
契約条件がまとまり、買主様への説明書面も準備できた頃、売主様から連絡がありました。
「契約の前に、一度だけ家の中を見てもいいでしょうか」
売主様は、特殊清掃後、ご実家の室内へ長く入っていませんでした。
玄関までは何度か来ました。
郵便物を回収し、庭の様子も見ました。
しかし、室内へ入ることができませんでした。
当日、玄関でしばらく立ち止まった後、ゆっくり中へ入りました。
お父様が亡くなった部屋だけでなく、台所、居間、縁側も見て回りました。
そして、古い引き出しから、家族で食事をしている写真を一枚見つけました。
「この家で最後に起きたことだけが、この家の全部ではないですよね」
売主様は、そう話されました。
孤独死があった家を売ると、家族は亡くなった場面だけを何度も意識することがあります。
しかし、その家には、それ以前の何十年もの暮らしがあります。
不動産会社が、その悲しみを解決することはできません。
それでも、事故の事実だけで家のすべてを語らず、同時に事実を隠さない形で次の人へ渡すことはできます。
売却できても、売主様の不安がすべて消えたわけではない
契約は無事に成立しました。
その後、決済と引渡しも完了しました。
ただ、売主様は最後まで、
「買主様は本当に納得されていますか」
と確認されていました。
何度説明しても、不安が完全に消えるわけではありません。
後から気持ちが変わらないか。
近隣から別の話を聞かないか。
将来、問題を指摘されないか。
そうした心配が残ります。
だからこそ、口頭説明だけで終わらせず、確認できる事実を書面へ残し、買主にも十分な検討時間を持っていただくことが重要でした。
売却成立は、悲しみが終わる日ではありません。
しかし、空き家を抱え続ける不安から一つ離れ、実家を次の利用者へ引き継ぐ節目にはなりました。
事故物件の売却で避けたい7つの失敗
1.「事故物件だから半額」と一律に判断する
死亡の態様、建物状態、土地価値、立地、買主層を分けて査定する必要があります。
2.自然死なら絶対に告知不要と考える
発見までの経過や特殊清掃の有無などによって判断が変わる可能性があります。
3.賃貸の「おおむね3年」を売買にも当てはめる
国土交通省のガイドライン上、売買について一律の3年基準は示されていません。
4.「告知事項あり」とだけ伝える
何があったのか分からない表現は、買主の不安を必要以上に大きくすることがあります。
5.売れにくくなることを恐れ、説明を契約直前まで遅らせる
買主本人だけでなく家族や金融機関が反対し、話が直前で止まる原因になります。
6.先に解体すれば問題が消えると考える
解体後も説明が必要となる可能性があります。建物利用の選択肢や税負担も比較すべきです。
7.一社の買取価格を市場価値だと考える
買取と仲介では、価格の前提、売却期間、売主の負担、リスクの引受先が違います。
事故物件を相談するとき、不動産会社へ聞きたいこと
売主様は、専門用語を覚える必要はありません。
次のことを、ご自身の言葉で確認してみてください。
「この死亡事例について、どの情報を確認しますか」
「どの段階で、買主へ何を説明しますか」
「広告、内覧、申込み、契約で、説明をどのように分けますか」
「特殊清掃の記録は、どのように扱いますか」
「解体せずに売る方法も比較できますか」
「買取価格と、仲介による想定成約価格を分けて説明できますか」
「告知内容について判断が難しい場合、誰へ確認しますか」
信頼できる担当者は、
「必ず売れます」
「何年たったから言わなくて大丈夫です」
と簡単には断定しません。
確認できる事実と、判断が必要な事項を分けて説明します。
不動産会社ができること、できないこと
事故物件の売却では、関係する専門分野が複数あります。
不動産会社が行うこと
- 現地と物件資料の調査
- 周辺相場と買主層の分析
- 買取・仲介・解体等の出口比較
- 売主からの聞き取りと資料整理
- 買主への情報提供
- 告知書、重要事項説明、契約条件の整理
特殊清掃・リフォーム会社が確認すること
- 汚損や臭気の現況
- 清掃、消臭、撤去、改修の範囲
- 必要な工事と費用
弁護士等へ確認すべき場合があること
- 告知義務について個別の法的判断が難しい場合
- 過去の説明内容や紛争リスク
- 買主との間で見解が対立した場合
税理士・司法書士等の役割
- 譲渡所得や相続税などの税務
- 相続登記、抵当権抹消などの登記手続き
不動産会社だけで、すべてを断定できるわけではありません。
専門家を増やせばよいのではなく、何を誰に確認するかを整理することが大切です。
まとめ|孤独死があった家と、価値のない家は同じではない
名古屋市南区の今回の住宅では、室内で孤独死がありました。
発見までに時間が経過し、特殊清掃等も行われていました。
買主へ説明すべき重要な事情があり、一般の住宅より販売に時間と配慮が必要でした。
最初に提示された買取価格は、400万円から500万円前後。
最終的な仲介成約価格は、約860万円でした。
この差は、事故歴を隠して生まれたものではありません。
事故歴を正確に整理し、土地・建物の価値と分けて考え、内容を理解できる買主へ届けたことで生まれました。
🟥 孤独死があった事実を、なかったことにして売ることはできません。
🟩 しかし、孤独死があったという一つの事実だけで、土地も立地も建物の可能性も、すべて価値がないと決める必要はありません。
事故物件の売却で大切なのは、恐怖を煽ることでも、「気にする人ばかりではありません」と軽く扱うことでもありません。
何が起きたのか。
何を確認できるのか。
どのような処置をしたのか。
現在、建物はどのような状態なのか。
誰が、どの利用方法なら検討できるのか。
それらを一つずつ整理することです。
売主様が最後に話された、
「この家で最後に起きたことだけが、この家の全部ではないですよね」
という言葉が、今回の売却を最も正確に表しているように思います。
不動産会社の仕事は、事故歴を消すことではありません。
亡くなった方とご家族への配慮を忘れず、買主へ必要な事実を伝え、そのうえで不動産が持つ価値を正しく見てもらうことです。
名古屋市南区で、孤独死があった実家の売却に悩んでいる方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、孤独死や人の死に関する告知が必要となる可能性のある住宅、相続空き家、長期間放置された家、再建築が難しい土地などの売却をお手伝いしています。
次のような段階でも構いません。
- 室内で親が亡くなり、何から始めればよいか分からない
- 発見までに時間がかかり、特殊清掃を行った
- どこまで買主へ伝える必要があるのか不安
- 「事故物件だから半額」と言われた
- 買取価格が適正なのか判断できない
- 建物を解体してから売るべきか迷っている
- 室内へ入ることができず、家財も残っている
- 近隣に知られず相談したい
- 他社で断られた、または値下げ以外の提案がない
- 買取と仲介の両方を比較したい
最初から売却を決めていただく必要はありません。
まず、確認できる事実、建物の現況、特殊清掃や改修の記録、登記、道路、土地条件を整理します。
そのうえで、現況売却、改修後売却、解体、買取、仲介などを比較し、想定価格だけでなく、期間、費用、売主様の負担、契約上のリスクをお伝えします。
人の死に関する相談は、話しにくいものです。
しかし、すべてが片づいてから相談する必要はありません。
室内に入れない。
書類がそろっていない。
相続登記も終わっていない。
ご家族の気持ちが整理できていない。
その段階からでも、何を先に確認すべきかを一緒に整理できます。
「事故物件だから売れない」と結論を出す前に、その家と土地が持つ価値、必要な説明、売却の選択肢を確認してみませんか。
対応エリア
名古屋市南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※人の死に関する告知の要否・内容は、死亡の態様、発見までの状況、特殊清掃等の有無、経過期間、取引形態、買主からの質問、社会的影響その他の個別事情によって異なります。国土交通省のガイドラインは一般的な判断基準を示すものであり、個別事案の法的判断を一律に保証するものではありません。判断が難しい場合は、弁護士等へご確認ください。
※査定価格は成約を保証するものではありません。本記事の価格差は個別事例であり、他の物件に同様の結果を保証するものではありません。
※本記事は2026年9月時点の公表情報と実務経験をもとに作成しています。本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、所在地の一部、土地面積、築年数、価格、時期、会話、経緯などを調整しています。


