名古屋を歩いて8年。風水・住む人の心理・不動産市場から考える「土地の力」
家が売れないとき、人はだんだん、目に見えない理由を探し始めます。
価格を下げても反応がない。
室内を片づけても決まらない。
隣の家は売れたのに、こちらは動かない。
「もしかして、土地の気が悪いのでしょうか」
そう考えたくなる気持ちは、分かります。
こんにちは。
街歩き空き家マイスターの保木です。
名古屋市を歩いて8年。街を歩くことと、空き家の売却相談を通して、同じように古い家でも、その後の姿が大きく違うことを感じてきました。
暮らしが続く家。
次の持ち主へ引き継がれる家。
雨戸が閉じたまま、季節だけが過ぎていく家。
その違いは、風水なのでしょうか。
私は不動産業者ですから、土地の運気を測ることはできません。
ただ、「なんとなく嫌だ」という感覚を、具体的な不安にほどいていくことはできます。
今日は、三角地、袋小路、日当たり、鬼門の話をしながら、最後には「家を手放せない気持ち」にも触れてみたいと思います。
土地の話をしていたはずなのに、実は人の話だった。
空き家の現場では、そんなことがあるのです。
🟥 三角地は「気が悪い」? 私が先に見るのは、車を止める場所です
風水や家相の説明では、三角形の土地を好ましくない形として扱うことがあります。
尖った角に気が集中する。
落ち着いて暮らしにくい。
そんな説明を聞くと、土地の形そのものが不安になってしまうかもしれません。
でも、不動産の実務で確かめたいのは、もっと具体的なことです。
車を止められるか。
玄関まで無理なく歩けるか。
必要な間取りが収まるか。
尖った部分を、庭や植栽として使えるか。
同じ三角地でも、道路に接する位置や、敷地の広さによって使い勝手は変わります。
三角形だから売れない、と決めつけるのは早いのです。
反対に、きれいな長方形でも、道路が狭かったり、高低差が大きかったりすれば、使いにくい場合があります。
土地の輪郭だけを見て、暮らしまで判断しない。
これは、街歩きでも、売却相談でも大切にしたい視点です。
三角地の説明に必要なのは、「風水は気にしなくて大丈夫です」という一言より、そこでどんな生活ができるかを見せることだと思います。
🟥 袋小路を嫌う人と、袋小路を探す人
袋小路は「気が滞る」と表現されることがあります。
実際、現地に立つと、閉塞感が気になる場所もあります。
車を切り返しにくい。
来客用の駐車場所がない。
道路幅が狭く、工事車両の進入が難しい。
こうした条件は、購入を迷う理由になり得ます。
ところが、ここで話がひっくり返ります。
袋小路の奥を、好む人もいるのです。
通り抜けの車が少ない。
玄関の前を、不特定多数の人が通りにくい。
幹線道路から離れて、落ち着きを感じられる。
もちろん、実際の交通量や周辺の使われ方は、現地で確認する必要があります。
それでも、同じ条件を見て、一人は「不便」と感じ、別の人は「静か」と感じる。
不動産の弱点は、誰にとっても同じ弱点とは限りません。
ただし、静かさを伝える前に、道路の権利関係、車の出入り、建て替えの条件などを確かめることは欠かせません。
良い面を見つけることと、問題を見ないことは違います。
街歩きで気に入った路地でも、売却の仕事として見ると、確認する項目は一気に増えます。
【画像挿入②|三角地・袋小路の話の後】
三角地では駐車位置や庭の使い方を、袋小路では車の切り返しと落ち着いた住環境を描く比較イラスト。単純な良い・悪いの判定にせず、暮らし方によって評価が変わる構図。文字は最小限。
🟥 南向きなら安心。それも、現地に立つまで分かりません
日当たりの良い家は、魅力を伝えやすいものです。
明るい食卓。
洗濯物を干す場所。
冬の昼間、日差しが入る居間。
買主が生活を想像しやすくなります。
ただ、広告に「南向き」と書いてあれば、それで十分でしょうか。
南側に高い建物があるかもしれない。
隣家との距離が近いかもしれない。
窓は大きくても、実際にはカーテンを開けにくいかもしれない。
逆に、北側道路の家でも、南側に庭があり、居間が明るいことがあります。
方角と、実際の日当たりは、分けて見る必要があります。
風通しも同じです。
窓の数だけでは分かりません。周囲の建物、窓の位置、室内の配置も関わります。
図面では良さそうなのに、現地では少し違う。
図面では地味なのに、立ってみると心地よい。
だから私は、街を歩き、現地を見ることを大切にしています。
「良い気が流れている」と感じる場所があるなら、その心地よさがどこから来るのか、もう一歩、観察してみたいのです。
🟥 南区の空き家。2年間動かなかった物件が、3か月で動いた理由
以前、名古屋市南区の空き家について相談を受けました。
道路は狭く、周囲には古い住宅が密集している。日当たりにも課題がある立地でした。
売主様にとっては、親が大切に住んできた家です。
その家に価値を感じるのは、当然だと思います。
しかし、約2年間、問い合わせはほとんどありませんでした。
その後、建物を解体し、更地として販売方法を変更。雑草を撤去し、境界も明確にした結果、3か月で購入申込みが入りました。
ここで、「解体すれば売れる」と受け取ってほしくはありません。
建物を残した方がよい物件もありますし、解体費用や税負担、建て替えの条件などを確認せずに進めることはできません。
この事例で注目したいのは、買主から見える情報が変わったことです。
建物がある状態では、土地の広さや使い方を想像しにくい。
片づけや解体に、どれほど費用がかかるのかも分からない。
更地になり、境界が分かると、検討に必要な材料が見えやすくなりました。
ただし、売却までの時間が変わった理由を、解体や整備だけに限定することもできません。販売条件やタイミングも関わります。
風水なら「気の流れが変わった」と表現するかもしれません。
実務では、買主が判断しやすくなったという見方ができます。
家の印象が変わるとき、そこには案外、説明できる変化があります。
【画像挿入③|南区の事例の後】
古家がある状態と、解体・除草・境界確認後の状態を並べたイメージ図。敷地の広さや使い方が見えやすくなる変化を表現。実際の現場写真ではない場合は「事例イメージ」と明記。
🟥 残したい。でも、残すことを勧められないときもある
実務では、反対の迷いもあります。
「この建物、何とか残せないだろうか」
私自身、そう感じることがあります。
古い家には、新築では出せない表情があります。柱、建具、間取り。長く使われてきたものを見ると、簡単に壊す話にはしたくありません。
これまで、うまく再生できた物件も、思うように進まなかった物件も見てきました。
その経験から、雰囲気だけで「直せば使えます」と言わないようにしています。
実際、建物の傾きや、柱の腐食が気になったこともあります。
見た目を整える工事で済むのか。
構造に関わる調査や補修が必要なのか。
費用をかけた後に、住む人や借りる人が見つかるのか。
そこまで考えて、初めて再生の話ができます。
「もったいない」という気持ちは大切です。
でも、その気持ちだけで、次の人に負担を渡すことはできません。
空き家の仕事では、家への愛着と、現実の費用を、同じテーブルに載せる必要があります。
🟥 鬼門より気になる、家の裏側
鬼門は北東、裏鬼門は南西。
家相の話でよく登場する方角です。
気にする買主がいれば、購入判断に関わることはあります。ただ、方角だけで物件全体の評価を決めることはできません。
私が確認したいのは、その場所で何が起きているかです。
雨水がたまっていないか。
外壁に傷みはないか。
隣家との間が狭く、点検しにくくないか。
樹木や物置で、状態が見えなくなっていないか。
これは、北東でも南西でも、ほかの方角でも同じです。
「鬼門だから湿気がある」と決めつけるより、雨水の流れや、日照、換気、建物の状態を調べる方が、対策につながります。
鬼門を気にする方には、その気持ちを否定するより、何が心配なのかを聞きたいと思います。
方角そのものなのか。
暗さなのか。
以前聞いた話が気になっているのか。
不安の中身が違えば、必要な説明も違います。
🟥 空き家になった理由と、傷んだ理由は別です
ここは、はっきり分けておきたいところです。
管理不足だけで、家が空き家になるわけではありません。
相続、入院、施設への入居、転勤、家族構成の変化。
大切に住んでいた家でも、人が住まなくなることはあります。
問題は、その後です。
誰も住まなくなると、普段の生活の中で行われていた確認が減ります。
雨の後、天井を見る人がいない。
いつもと違う臭いに気づく人がいない。
庭木の伸び方を気にする人がいない。
雨漏りがあっても、発見まで時間がかかる。
湿気やカビの問題があっても、対応が遅れる。
空き家になった瞬間に傷み始めるのではなく、不具合を見つけて直す機会が減ることが怖いのです。
人が住んでいなくても、管理されている家はあります。
人が住んでいても、修繕が追いつかない家はあります。
居住の有無だけでなく、誰が、何を、どのくらい確認できるか。
そこまで考えると、空き家対策が具体的になります。
【画像挿入④|空き家管理の話の後】
同じ家の二つの状態。片方は庭の手入れ、郵便物の整理、雨漏りの点検がされている。もう片方は落ち葉や郵便物がたまり、雨染みが見過ごされている。管理による「発見の違い」を表現。文字は最小限。
🟥 放置したくて、放置しているとは限らない
ここで、建物から少し離れます。
遠方に住んでいる。
仕事や介護で時間が取れない。
片づけに必要な費用が出せない。
家族で方針が決まらない。
管理が進まない理由は、一つではありません。
そして、実家には、もう一つ難しいことがあります。
片づけると、本当に終わってしまう気がする。
親が使っていた湯飲み。
壁に掛かった写真。
引き出しに残る、何の鍵か分からない鍵。
物としては整理できても、気持ちは簡単に整理できません。
外から見ると「放置」でも、本人の中では、ずっと気になっていることがあります。
だから、空き家を見て「所有者の関心がなくなった」と決めつけるのは違うと思います。
気にしているのに動けない。そんな時間もあるのです。
まず、残したい物を一つ選ぶ。
写真に撮っておく。
迷う物は、保留にする。
家全体の結論を出す前に、小さな作業から始めてもいい。
売却相談も同じです。相談したからといって、その日に手放す決断をする必要はありません。
【画像挿入⑤|家族の気持ちの話の後】
実家の食卓で、古い写真と湯飲みを静かに見つめる人。そばには残したい物を入れる小さな箱。悲しみを強調しすぎず、思い出を残しながら次を考える雰囲気。文字なし。
🟥 買主が感じる「嫌な感じ」を、言葉にする仕事
環境心理学という、人と環境の関係を考える分野があります。
この記事で、風水の「気」を環境心理学によって証明できると言うつもりはありません。
ただ、不動産の現場でも、環境が人の感じ方にどう関わるかを考える場面があります。
暗い玄関。
物が多く、歩きにくい廊下。
湿気を感じる室内。
費用の見通しが立たない建物。
買主が「何となく不安」と感じたとき、そこには複数の理由が重なっているかもしれません。
清掃で改善できること。
調査しないと分からないこと。
価格や条件で検討してもらうこと。
どうしても変えられないこと。
それぞれを分け、説明する必要があります。
掃除して明るく見せることは大切です。
でも、雨漏りや腐食まで、印象づくりで解決したことにはできません。
見た目の安心と、確認された安心は、両方必要です。
売却の仕事には、曖昧な不安を、判断できる情報へ変える役割があります。
私は、それを「心理の翻訳者」と呼んでもよいと思っています。
売主の「大切な家です」を、買主に伝わる魅力へ。
買主の「何か気になります」を、具体的な確認事項へ。
その間をつなぐことも、不動産業者の仕事です。
🟥 なぜ人が住み続けるのか。答えは、家だけの中にはありません
人が住み続ける家には、手入れや暮らしやすさが関わります。
でも、それだけではありません。
家族の生活拠点が合っている。
維持費を負担できる。
周辺に必要な施設がある。
次の世代が住む理由を持っている。
家が良くても、仕事が遠ければ住めない。
思い出があっても、階段が負担なら暮らし続けにくい。
反対に、少し不便でも、その街で暮らしたい人には、大切な住まいになります。
家が引き継がれるためには、建物の状態と、人の暮らしがかみ合うことが必要なのだと思います。
だから私は、空き家になった家を「運の悪い家」とは呼びたくありません。
住む人の人生が変わった家。
次の使い方を、まだ探している家。
そう見ると、考えられることが増えます。
🟥 玄関の方角を変える前に、次に開ける人を考える
風水を暮らしの楽しみや、気持ちを整えるきっかけとして取り入れる。
それは、一つの考え方です。
ただ、空き家をどうするかという場面では、現地の状態、費用、権利関係、家族の希望も一緒に見ていきたい。
草を刈る。
不具合を確かめる。
安全にできる範囲で、清掃や換気をする。
家族で、今後の負担を話す。
使う、貸す、売る、それぞれの見通しを聞いてみる。
毎月通うのが難しければ、続けられる管理方法を考えることからでも構いません。
名古屋を8年歩いてきて、私が気になるのは、立派な家だけではありません。
小さな鉢植え。
掃かれた玄関。
補修された雨どい。
そうした、人が家に関わっている跡にも目が向きます。
でも、持ち続けることが負担になっているなら、次の人へ渡す選択もあります。
家を大切にすることは、同じ人が、同じ形で持ち続けることだけではない。
玄関の方角は変わらなくても、次にその玄関を開ける人は変わるかもしれません。
その人が、ここでどんな暮らしを始められるか。
そして、鍵を渡した人が、少し安心できるか。
私は、そこまで含めて、家のこれからを考えたいと思っています。
【画像挿入⑥|結びの前後】
夕方の名古屋の住宅街。古い家の玄関先で、家族と不動産担当者が穏やかに話している。手入れされた玄関と、少し開いた扉。次の暮らしへつなぐ希望を感じさせる構図。文字なし。
名古屋市の空き家・実家のこれからを、一緒に考えます
ふどうさんのMAGOでは、名古屋市を中心に、空き家や相続不動産の売却相談をお受けしています。
「残したいけれど、費用が心配」
「片づける前に相談してもいい?」
「この土地に、買う人がいるのだろうか」
まだ方針が決まっていない段階でも、お話をお聞かせください。
建物や土地の条件と、ご家族の気持ちを確かめながら、次の一歩を一緒に考えます。
街歩き空き家マイスター 保木 覚
ふどうさんのMAGO/アースリアリティ株式会社
対応エリア:名古屋市を中心に愛知県全域。


