「そのうちやる」で10年経った実家|名古屋で本当に増えている“動かない相続不動産”の現実

こんにちは。

趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。

「気付いたら、10年経っていました」

名古屋市内の空き家を訪ねたとき、売主様が玄関の前でそう話されました。

鍵はすぐには開きませんでした。

鍵穴に差し込むことはできても、長い間使っていなかったため、途中で引っかかります。

何度か左右へ動かし、少し力を入れると、ようやく鍵が回りました。

玄関を開けた瞬間、湿気と古い畳の匂いがしました。

下駄箱の上には、10年前の町内会の回覧板。

壁には、亡くなったお父様が使っていた帽子。

台所には、開封されていない調味料。

冷蔵庫の扉には、病院の予約日を書いた小さな紙が、磁石で留められたままでした。

売主様は、しばらく玄関から動きませんでした。

そして、もう一度言われました。

「売ろうとは思っていたんです。ずっと、そのうちやらないといけないとは思っていました」

空き家の相談を受けていると、この言葉は珍しくありません。

最初から家を放置しようと思っていた人は、ほとんどいません。

皆様、本当は分かっています。

草を切らなければいけない。

荷物を片付けなければいけない。

兄弟で話さなければいけない。

売るのか、残すのか、決めなければいけない。

それでも動けなかった。

問題の本質は、無責任に放置したことではありません。

動こうと思いながら、誰も最初の一歩を決められなかった時間にあります。

今回は、名古屋市内で実際に多い相談をもとに、「そのうちやる」で10年経った実家が、どのように動かなくなり、相談後にどんな想定外が起きたのかをお話しします。

※本記事は、複数の空き家・相続不動産の相談経験をもとに、相談者様や物件を特定できないよう、家族構成、場所、年数、会話、経緯などを再構成しています。


父親が亡くなり、3人きょうだいで残った実家

実家は、名古屋市内の古い住宅地にありました。

築50年を超える木造住宅です。

相続人は、長男、次男、長女の3人。

長男は愛知県内に住んでいましたが、実家までは車で1時間ほど。

次男は関東。

長女は関西に住んでいました。

お父様が亡くなった直後、3人とも売却するつもりはありませんでした。

正確には、売却に反対していたわけでもありません。

ただ、まだ決められなかったのです。

葬儀。

役所の手続き。

預貯金の整理。

病院や介護施設への支払い。

遺品の確認。

やることが続く中で、実家は後回しになりました。

長女は、

「四十九日が終わってから考えよう」

と言いました。

四十九日が終わると、次は一周忌。

一周忌が終わると、

「今すぐ売らなくてもいいんじゃない」

という話になりました。

誰も住む予定はありませんでした。

それでも、父親が亡くなってすぐに家を売ることが、何かを急いで捨てるように感じられたそうです。


最初の1年|まだ「空き家」ではなく、父親の家だった

亡くなってから1年ほどは、長男が月に一度、実家へ通っていました。

郵便物を取る。

窓を開ける。

庭木を少し切る。

仏壇へ手を合わせる。

台風の後に、瓦が飛んでいないかを見る。

その頃の家には、まだ生活の形が残っていました。

茶碗も、薬も、衣類も、そのままです。

居間のカレンダーは、父親が亡くなった月で止まっていました。

長男は、家へ入るたびに、誰もいないことを確認するような気持ちになったそうです。

電気は最低限残し、水道も止めませんでした。

「たまに泊まるかもしれない」

「親戚が集まるかもしれない」

そう考えていました。

しかし、実際に泊まった人はいませんでした。

不動産としての判断は、まだ誰もしていません。

この時点では、3人にとって実家は資産でも負担でもなく、父親の暮らしが一時停止している場所でした。


2年目|「そのうち片付けよう」という予定

2年目になると、少しずつ現実的な負担が見え始めました。

固定資産税の通知は、毎年届きます。

庭の草は、春に刈っても夏には元へ戻ります。

排水口に落ち葉がたまり、雨の日には庭の一部へ水が残るようになりました。

長男は、きょうだいのグループメッセージへ写真を送りました。

「そろそろ家の中も片付けないとね」

次男からは、

「夏休みに帰れたらやろう」

長女からは、

「アルバムと着物は勝手に捨てないで」

と返事がありました。

しかし、夏休みは全員の日程が合いませんでした。

次は年末。

年末は、それぞれの家庭の予定がありました。

次は春。

春には、長男の仕事が忙しくなりました。

「そのうち片付ける」という方針には、全員が賛成していました。

ただし、いつ、誰が、どこまでやるのかは決まっていませんでした。

🟨 家族全員の意見が一致していても、担当者と日付が決まっていなければ、不動産は動きません。


3年目|実家へ行く回数が減った、本当の理由

最初は月に一度だった長男の訪問が、2か月に一度、3か月に一度と減っていきました。

仕事や家庭が忙しかったこともあります。

しかし、それだけではありませんでした。

家へ行くと、やらなければならないことが増えているからです。

草が伸びている。

郵便物を確認しなければならない。

雨戸を開けると、室内の埃が目につく。

台所を見ると、食器をどうするか考えてしまう。

押し入れを開けると、父親と母親の衣類が出てくる。

一つ片付けようとすると、その物の持ち主と、捨ててよいかを考えなければなりません。

長男は、ある時から玄関まで行っても、家の中へ入らず、外の草だけ切って帰るようになりました。

「中へ入ると、何かやらないといけない気がするんです。でも、一人では決められない。だから入らない方が楽でした」

訪問頻度が落ちるのは、関心がなくなったからとは限りません。

行くたびに、自分だけでは解決できない問題を見せられるから、足が遠のくことがあります。


4年目|近所から最初の電話が入った

夏の終わり、長男の携帯電話へ、実家の隣に住む方から連絡が入りました。

庭木の枝が塀を越え、隣地側へ伸びているという話でした。

苦情というより、心配している様子だったそうです。

「誰も来ていないみたいだけど、大丈夫ですか」

長男は、その週末に実家へ向かいました。

庭木は想像以上に伸びていました。

自分では切れない高さまで枝が上がっています。

その場で造園業者へ連絡し、剪定を依頼しました。

費用は十数万円。

長男が支払いました。

次男と長女へ費用を伝えると、2人とも負担するとは言いました。

しかし、金額を3等分する話になると、長女がこう言いました。

「私は売ることに賛成したわけじゃない。管理費と売却の話は別じゃない?」

長男は、その言葉に腹が立ったそうです。

「残したいなら、管理もしてほしい」

長女は、

「近くに住んでいないんだから無理でしょう」

と返しました。

実家について、初めてきょうだいの会話が荒れました。

不動産の価値や売却価格ではありません。

誰が、これまで何を負担してきたかが争点になりました。


5年目|実家の話をすると空気が悪くなる

その後、3人が集まる法事でも、実家の話は出なくなりました。

正確には、全員が意識していました。

しかし、誰も最初に言いませんでした。

売ると言えば、長女が反対するかもしれない。

残すと言えば、長男が管理費の話をする。

貸すと言えば、誰が修繕費を出すのかという話になる。

話し合いを始めれば、結論を出さなければならない。

だから、話をしない。

こうして実家は、家族の会話から消えました。

ここに、現場と外からの見え方の大きな差があります。

外から見れば、

「兄弟で話し合えばいい」

だけのことに見えます。

しかし当事者にとっては、実家について話すことが、過去の負担や家族関係まで開くことになります。

話し合いを避けているというより、話し合った後に起きることを恐れているのです。


6年目|相続登記をしたことで、終わった気になった

相続登記が必要だと聞き、3人は司法書士へ相談しました。

話し合いの結果、実家は長男の単独名義にしました。

次男と長女は、預貯金など別の財産を取得しています。

長男としては、管理している自分の名義にした方が、手続きを進めやすいと考えました。

登記が完了したとき、長男は少し安心したそうです。

「これで、相続のことは終わったと思いました」

しかし、名義が変わっても、家の中は変わりません。

荷物は残っています。

庭木は伸びます。

建物は古くなります。

さらに、長女は登記上の所有者ではなくなっても、

「家を壊すなら、母の着物は残して」

「仏壇を勝手に処分しないで」

と話しました。

法律上、長男が所有者になったことと、家族の感情が整理されたことは別でした。

🟥 相続登記は、所有者を明確にする手続きです。家族の気持ちや、家財の扱い、売却方針まで自動的に決まるわけではありません。


7年目|天井に小さな染みが見つかった

ある秋の日、長男が久しぶりに室内へ入ると、2階の天井に染みがありました。

その時は、以前からあったものか判断できませんでした。

床は濡れていません。

雨漏りの音もありません。

長男は写真を撮り、次に雨が降った後で確認しようと思いました。

しかし、次に訪れたのは4か月後でした。

染みは広がっていました。

押し入れの中には湿気がこもり、衣類の一部にカビが出ています。

屋根業者へ見てもらうと、修理方法は一つではありませんでした。

部分補修で様子を見る案。

傷んだ範囲を広く直す案。

今後売却するなら、大きな費用をかけず現況を説明する案。

長男は、ここで初めて不動産会社へ電話しました。

しかし、電話だけで聞いた不動産会社からは、

「築年数が古いので、建物価値はありません」

「更地にした方が売りやすいでしょう」

と言われました。

解体費を聞くと、想像していたより高い金額でした。

長男は、

「今すぐ何百万円も出すなら、もう少し置いておこう」

と考えました。

相談したのに、動けませんでした。

これは現場で少なくありません。

相談すれば答えが出ると思っていたのに、解体、測量、片付けなど新しい課題が一度に見え、かえって止まることがあります。


8年目|片付けを頼んだら、見積りが想定の倍近くになった

長男は、まず家財を片付ければ前へ進めると思い、残置物処分の見積りを依頼しました。

家の外から見た印象では、それほど物が多いとは思っていませんでした。

しかし、押し入れ、納戸、物置を開けると状況が変わりました。

布団。

衣類。

古い家電。

食器。

本。

工具。

使わなくなった介護用品。

庭の物置には、植木鉢と肥料、古いタイヤもありました。

さらに、室内の一部に雨漏りとカビがあり、通常の家財と同じようには扱えない物もありました。

見積額は、長男が想像していた金額の倍近くでした。

長女へ伝えると、

「そんなにかかるなら、先に自分たちで必要な物を見ないと」

と言われました。

次男は、

「業者へ頼む前に、売れる物があるんじゃないか」

と言いました。

ところが、3人がそろう日は決まりません。

片付けは、再び止まりました。

実務では、「家財を片付けてから相談します」と言われることがあります。

しかし、片付け自体が最も重い作業になっているケースもあります。

片付いていないから売却相談できないのではなく、片付け方を決めるために売却方法を先に考えた方がよいことがあります。


9年目|近隣からの電話で、もう先送りできなくなった

きっかけは、強風の日でした。

隣地の方から、屋根の一部が浮いているように見えると連絡が入りました。

さらに、裏側の雨どいが外れ、風が吹くと音がするという話でした。

長男はすぐに現地へ向かいました。

外れた雨どいは応急的に固定しました。

屋根については、足場を組まなければ詳しく確認できないと言われました。

その日の帰り、長男は初めて、

「もう、自分だけでは持てない」

と思ったそうです。

固定資産税だけなら払えました。

年に数回の草刈りも、何とかできました。

しかし、建物の安全、近隣への影響、修繕の判断まで一人で背負うことはできませんでした。

ここで初めて、きょうだいへ、

「売却する方向で進めたい」

と伝えました。

次男は賛成しました。

ところが、長女はすぐには返事をしませんでした。

数日後、長女から電話がありました。

「売ることに反対しているわけじゃない。でも、私が反対していたから10年こうなったと言われるのは嫌」

長男は、この言葉を聞いて初めて、長女も実家のことで苦しんでいたと気付いたそうです。

長女は家を残したかったのではありません。

自分が家を手放す決断をした人になることが怖かったのです。


10年目|ようやく売却相談。しかし、問題は空き家だけではなかった

私が現地へ伺ったのは、この頃でした。

長男から事前に聞いていたのは、主に次の内容です。

  • 築50年を超える
  • 10年近く空き家
  • 雨漏りの可能性がある
  • 家財が残っている
  • 庭木が伸びている
  • 売却前に解体すべきか迷っている

正直に言えば、この段階では、古い空き家としては珍しくない相談だと思っていました。

ところが、現地と資料を確認すると、想定していなかったことが次々に出てきました。

名古屋市エリアで″売却サポート”に専門特化した
不動産売却のみを取り扱う専門店です。
空き家売却にともなう煩雑なお手続き、
空き家の遺品整理や不要品の買取まで一括してサポートしております。

〒457-0846
愛知県名古屋市南区道徳通2-51 道徳ビル1F

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目次

想定外1|増築部分が登記と合っていなかった

登記された建物面積と現況を比べると、後から増築されたと思われる部分がありました。

長男は知りませんでした。

「父が昔、台所を広げたとは聞いていました。でも、登記のことまでは分かりません」

固定資産税が課税されていることと、法務局の登記が現況どおりであることは別です。

売却方法によって、建物表題変更登記を検討するのか、現況を説明して解体前提で進めるのか、整理が必要になりました。

想定外2|隣地の物置が境界付近に建っていた

敷地の奥には古い物置があり、隣地との境界付近へ接近していました。

境界標は一部見つかりません。

長男は、

「昔からあったので、特に問題だと思ったことがありませんでした」

と話しました。

しかし売却となれば、境界、越境の有無、物置の所有者などを確認する必要があります。

想定外3|前面の道について確認が必要だった

見た目には普通の道路でした。

車も通っています。

ただし、建物の建て替えを考える買主へ説明するには、道路種別や接道状況を行政資料等で確認する必要があります。

「昔から家が建っているから大丈夫」という説明では、売却後の建築計画を判断できません。

想定外4|長女が残したい物は、着物ではなかった

家財整理の話をしたとき、長男は「妹は母親の着物を残したい」と説明しました。

後日、長女も一緒に現地へ入りました。

長女が探していたのは、高価な着物ではありませんでした。

台所の柱に残っていた、3人きょうだいの身長の印でした。

しかし、柱を持ち出すことは簡単ではありません。

そこで、日付と名前が分かるように写真を撮り、長女自身の手で寸法を測り、記録として残しました。

長女はその後、

「これで大丈夫。家を残したかったわけじゃなかったのかもしれない」

と話しました。

売却を止めていたのは、建物全体への執着ではありませんでした。

何を失うのか分からなかったことが、決断を止めていたのです。


実務と現実のギャップ|「売れば終わる」ではなかった

売却相談を受ける側は、問題を項目へ分けます。

相続登記。

道路。

境界。

建物。

残置物。

価格。

税金。

しかし、所有者様の中では、それらが一つにつながっています。

雨漏りを直すかどうかの話が、父親の家を残すかどうかの話になる。

家財処分費の話が、誰が親の面倒を見たかという話になる。

売却価格の話が、家族の思い出を安く見られたという感情につながる。

不動産会社が、

「このままでは売りにくいので、解体しましょう」

と正しい実務を説明しても、その言葉だけでは動かないことがあります。

なぜなら、所有者様が止まっている理由は、建物の状態だけではないからです。

🟨 実務では問題を分解する必要があります。しかし、人の気持ちまで分解できるとは限りません。順番を間違えると、正しい提案でも受け入れられないことがあります。


解体してから売る予定が、古家付きのまま売る方針へ変わった

長男は当初、建物を解体し、更地にしてから売るつもりでした。

築年数が古く、雨漏りもあり、家財も残っていたからです。

しかし、調査前に解体することは見送りました。

理由は3つありました。

1つ目は、道路と接道の確認前に建物をなくすべきではないこと。

2つ目は、解体時に重機や車両がどのように入るか、隣地との関係を確認する必要があったこと。

3つ目は、売主様が先に解体費を負担せず、古家付きのまま検討する買主がいるか、市場の反応を確認できることでした。

販売時には、建物をきれいに見せることはしませんでした。

雨漏りの疑い。

未登記と思われる増築部分。

残置物があること。

境界について確認が必要なこと。

道路・接道について調査した内容。

分かっていることと、分からないことを分けて伝えました。

「まだ住めます」とも、

「解体しかありません」とも決めつけませんでした。


想定外の買主|建物を壊す人ではなく、使いながら考える人だった

問い合わせの多くは、土地として検討する建築会社や一般の購入希望者でした。

しかし、最終的に具体的な話になったのは、古い住宅を自分たちで直しながら使いたいと考えていた方でした。

買主様は、建物を見て、すぐに「残したい」と言ったわけではありません。

むしろ慎重でした。

雨漏りの範囲。

床下の状態。

水回り。

増築部分。

将来、建て替える場合の条件。

建築会社と一緒に、何度か現地を確認しました。

すべてを修繕して住み続ける保証はありません。

一部を利用し、将来は建て替える可能性も含めて検討されました。

買主様が評価したのは、建物の古さではありませんでした。

奥行きのある敷地。

庭の位置。

周囲からの視線が入りにくいこと。

そして、新築では最初からつくれない、長年育った植栽でした。

売主様が負担だと感じていた庭木の一部を、買主様は残したいと言いました。

長男は、その言葉を聞いて驚きました。

「ずっと切らないといけないと思っていた木を、残したい人がいるんですね」

ただし、これは「古い家には必ず価値がある」という話ではありません。

建物の状態によっては解体が必要な場合もあります。

危険な箇所があれば、安全対策を優先しなければなりません。

この家では、買主様がリスクを理解し、建築会社と確認しながら判断できたため、古家付きのまま話が進んだということです。


契約直前、今度は次男から「もう少し高く売れないか」と言われた

買主様との条件がまとまりかけた頃、別の問題が起きました。

次男が、売却価格を聞いて、

「土地としてなら、もっと高く売れるんじゃないか」

と言い出したのです。

次男は所有者ではありません。

法律上、売買契約を締結するのは長男です。

それでも、長男は無視できませんでした。

10年前、相続財産を分けたときには、不動産の現在価値を詳しく比較していません。

次男の中には、

「長男だけが土地を持ち、値上がりしたのではないか」

という気持ちが生まれていました。

そこで、売却価格だけではなく、これまで長男が負担してきた固定資産税、剪定費、応急修繕費、今後必要になる残置物費用などを一覧にしました。

仲介でさらに高い価格を目指す場合の期間とリスク。

買取へ切り替える場合の価格と条件。

現在の買主様へ売る場合の費用負担と責任範囲。

それぞれを比較しました。

次男は、初めて、売却価格と手元に残る金額が同じではないことを理解しました。

そして、長男が10年間、金銭だけでなく管理の判断まで負担してきたことも、数字を通して見えるようになりました。

契約は予定より遅れました。

しかし、急いで次男を説得するのではなく、家族が納得できるまで説明したことで、その後の関係を壊さずに進めることができました。


引渡しの日、家が空になっても終わりではなかった

契約後、買主様が引き受ける物と、売主様側で撤去する物を分けました。

すべてを捨てるのではありません。

アルバム。

手紙。

仏壇の中の位牌。

家族が残したい食器。

重要書類。

それ以外の家財は、専門業者へ依頼しました。

片付けの途中、押し入れの奥から、お父様が書いたノートが出てきました。

そこには、固定資産税や家の修理費の記録とともに、

「この家は、子どもたちが困らないように、いずれ整理すること」

という趣旨のメモがありました。

長男は、しばらくそのノートを見ていました。

「父も残せと言っていたわけではなかったんですね」

家を売ることへの罪悪感が、完全になくなったわけではありません。

それでも、父親の家を勝手に処分するのではなく、父親が残した問題を整理して次へ渡すのだと考えられるようになったそうです。

引渡しの日、長男は空になった居間で写真を一枚撮りました。

長女は来ませんでした。

代わりに、家族のグループメッセージへ、

「長い間ありがとう。お兄ちゃんも、お疲れさまでした」

と送ってきました。

10年間止まっていたのは、不動産だけではなかったのだと思います。

家について話せなくなっていた家族の時間も、その日に少し動きました。


10年で失ったものと、10年経っても残っていたもの

時間が経ったことで、失ったものはありました。

  • 雨漏り前の建物状態
  • 比較的安く済んだ可能性のある修繕機会
  • 家財を家族全員で整理する時間
  • 長男が負担した管理費と労力
  • 早い段階で選べたかもしれない活用方法

一方で、10年経っても残っていたものもあります。

  • 土地としての価値
  • 建物を理解したうえで検討する買主の可能性
  • 庭や植栽の魅力
  • 家族で話し直す機会
  • 売る、残す、活用するという選択肢

「もっと早く動けばよかった」という言葉は事実です。

しかし、それを所有者様へ突きつけても、時間は戻りません。

現場で必要なのは、過去の判断を責めることではありません。

今残っている選択肢を、これ以上減らさないことです。


「何から始めればいいか分からない」ときに、最初にすること

10年経った実家を、一度に解決しようとすると動けません。

家財整理、相続、測量、修繕、解体、売却、税金。

全部を同時に考えるからです。

最初は、次の順番で十分です。

1.所有者を確認する

相続登記が済んでいるか、現在の名義が誰かを確認します。

2.家族の結論ではなく、希望を聞く

「売るか、残すか」をすぐに決める必要はありません。

まず、誰が何を心配しているのかを聞きます。

3.現地を確認する

建物、庭木、残置物、近隣への影響を確認します。危険があれば、安全対策を優先します。

4.資料を集める

権利証・登記識別情報、固定資産税資料、建築資料、測量図、過去の契約書など、見つかる範囲で構いません。

5.片付けや解体の前に、売却方法を比べる

古家付き売却、解体後の売却、買取、活用などを比較します。

すべての荷物を捨て、建物を壊してから相談する必要はありません。

🟩 最初の一歩は、売却を決断することではありません。現状を、誰かと一緒に確認できる状態にすることです。


まとめ|「そのうちやる」は、何もしなかった時間ではない

10年間、所有者様は何も考えていなかったわけではありません。

売った方がよいと思った日もありました。

親の家を残したいと思った日もありました。

片付けようと予定した日もありました。

兄弟へ連絡しようとして、やめた日もありました。

そのすべてが、「そのうちやる」という言葉の中に入っています。

だから私は、長く空き家にしてしまった方へ、

「なぜ、もっと早く相談しなかったのですか」

とは聞かないようにしています。

聞くのは、

「今、一番心配なことは何ですか」

です。

雨漏りなのか。

近隣なのか。

兄弟との関係なのか。

家財なのか。

お金なのか。

親の家を手放す気持ちなのか。

入口は、人によって違います。

空き家問題は、建物を売れば終わるほど単純ではありません。

しかし、すべての問題が解決してからでなければ相談できないわけでもありません。

荷物が残っていても構いません。

家族の意見がまとまっていなくても構いません。

相続登記がまだでも、何を確認すべきか整理することはできます。

10年経っていても、遅すぎると決まったわけではありません。

ただ、11年目も同じ状態で過ぎれば、建物や家族の状況がまた変わる可能性があります。

「売る」と決める必要はありません。

まず、鍵を開ける。

現地を見る。

資料を一つ探す。

兄弟へ一度だけ連絡する。

相談して、今の状態を知る。

止まっていた時間は、大きな決断ではなく、そうした小さな行動から動き始めます。


名古屋市で、長年そのままになっている実家がある方へ

ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、相続後長期間空き家になっている実家、家財が残った住宅、兄弟間で方針が決まっていない不動産、再建築や境界に確認が必要な土地などの相談をお受けしています。

最初から売却を決めていただく必要はありません。

  • 10年以上、実家へ入っていない
  • 鍵があるかどうかも分からない
  • 荷物をどこから片付ければよいか分からない
  • 兄弟へ話を切り出せない
  • 相続登記後、そのままになっている
  • 雨漏りや庭木について近隣から連絡があった
  • 解体すべきか、古家付きで売るべきか分からない
  • 他社から「建物価値はない」と言われ、動けなくなった

このような状態から始まる相談は、珍しくありません。

現地、登記、道路、境界、建物、残置物、家族のご希望を一つずつ整理し、古家付き売却、解体、買取、活用など、現在残っている選択肢を比較します。

「そのうちやる」と思いながら時間が経ってしまったことを、責める必要はありません。

今から、どこまで動かせるのか。

そこから一緒に考えます。

対応エリア

名古屋市南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区・北区・西区・東区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。

※建物の安全性、再利用の可否、再建築、境界、相続、税務などは、物件と家族の状況によって異なります。必要に応じて、行政、建築士、建築会社、土地家屋調査士、司法書士、税理士、弁護士などへ確認します。

※本文は複数の相談・実務経験をもとに、相談者様および物件を特定できないよう、家族構成、所在地、年数、会話、発生した問題などを再構成したものです。

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