こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
「相続人は、私一人だと思っていました」
名古屋市内で相続空き家の売却相談を受けたとき、長女様はそう話されました。
ご両親はすでに他界。お兄様も、お父様より前に亡くなっていました。
長女様は、実家を相続するのは自分だけだと思っていたそうです。
しかし戸籍を確認すると、相続人は一人ではありませんでした。
亡くなったお兄様には、三人のお子様がいたのです。
お父様の相続人は、長女様と三人の甥・姪。合計四人でした。
しかも居住地は、愛知県、東京都、大阪府、福岡県と全国に分かれています。そのうち一人とは、長年連絡を取っていませんでした。
名古屋にある実家を売りたい人は一人。
しかし、手続きを進めるには、会ったこともほとんどない親族を含めて相続関係を整理しなければなりません。
このとき問題になったのが、**代襲相続(だいしゅうそうぞく)**です。
相続不動産の売却相談では、決して珍しい話ではありません。むしろ、名義を変えないまま長年置かれた実家ほど、家族が考えていた人数と、法律上の相続人が一致しないことがあります。
この記事では、名古屋・愛知で相続した実家を売却する前に知っておきたい代襲相続と、よく混同される「数次相続」の違い、売却を止めないための確認事項を、現場の視点からお話しします。
代襲相続とは?
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった子や兄弟姉妹が、被相続人より先に亡くなっている場合などに、その人の子が代わって相続人になる仕組みです。
今回のように、お父様が亡くなる前に長男が亡くなっていた場合、本来長男が受けるはずだった相続分を、長男の子どもたちが引き継ぎます。
例えば、次のような家族関係です。
- 被相続人:父
- 父の配偶者:すでに死亡
- 長男:父より先に死亡
- 長男の子:三人
- 長女:存命
この場合、相続人は長女と、長男を代襲する三人の孫です。
🟨 長男の配偶者は、父の代襲相続人にはなりません。代襲するのは原則として長男の子どもたちです。
「亡くなった兄の奥さんも相続人ではないのですか」と聞かれることがありますが、兄が父より先に亡くなっているこの場面では、兄の妻は父の子でも、その子の直系卑属でもないため、父の相続人にはなりません。
ただし、死亡した順番が変わると結論も変わります。
代襲相続と数次相続は、死亡した順番が違う
相続不動産の相談で、最も注意したいのがここです。
兄が父より先に亡くなった
父の相続では、兄の子どもが兄に代わって相続します。これが代襲相続です。
父が亡くなった後、手続き前に兄が亡くなった
父が亡くなった時点では、兄自身が相続人です。その後、遺産分割や相続登記が終わる前に兄が亡くなると、兄が持っていた相続上の地位を、兄自身の相続人が引き継ぎます。
この場合は、一般に数次相続と呼ばれます。兄の配偶者や子どもが関係する可能性があり、代襲相続とは相続人の顔ぶれが変わります。
| 比較項目 | 代襲相続 | 数次相続 |
|---|---|---|
| 死亡の順番 | 本来の相続人が被相続人より先に死亡 | 被相続人の死亡後、手続き前に相続人が死亡 |
| 例 | 父より先に長男が死亡 | 父の後に長男が死亡 |
| 権利を引き継ぐ人 | 原則として長男の子 | 長男自身の相続人(配偶者・子など) |
| 実務上の注意 | 孫の人数や所在確認が必要 | 二つ以上の相続を順番に整理する必要がある |
🟥 「兄が亡くなっている」という事実だけでは、代襲相続か数次相続かを判断できません。父と兄のどちらが先に亡くなったかが重要です。
この順番を取り違えると、相続人の人数も、遺産分割協議に参加すべき人も変わります。
「二人のはずが五人」ではなく、まず人数を正確に数える
相続相談では、本人が考えている人数と、戸籍から確定する人数が違うことがあります。
ただし、相続人が増える話を強調するあまり、人数を曖昧にしてはいけません。
先ほどの家族関係なら、長女一人と兄の子三人で、相続人は合計四人です。
五人になるとすれば、例えば父が亡くなった後に兄が亡くなり、兄の配偶者と三人の子が兄の地位を引き継ぐ数次相続など、別の事情が必要です。
不動産売却で重要なのは、人数を予想することではありません。
出生から死亡までの戸籍などを確認し、法律上の相続人を確定することです。
名古屋市守山区であった相続空き家の相談
ご相談の実家は、名古屋市守山区にある築50年近い戸建住宅でした。
お父様が亡くなってから長期間、相続登記は行われていませんでした。長女様が定期的に訪れ、草刈りと郵便物の確認を続けていましたが、建物には少しずつ傷みが出ていました。
長女様は、最初こう考えていました。
「兄はもう亡くなっていますから、私の名義にして売却すればよいと思っていました」
しかし、お兄様はお父様より先に亡くなっていました。
そのため、三人の甥・姪が代襲相続人になります。
一人は東京、一人は大阪、一人は福岡。長女様が連絡先を知っていたのは一人だけでした。
ここで、実家の売却は一度止まりました。
土地の価格が低かったからではありません。
買主がいなかったからでもありません。
誰が相続人で、誰と話し合う必要があるのかが整理されていなかったからです。
突然連絡を受けた甥の反応
連絡がついた甥御様の一人は、最初こう話されたそうです。
「祖父の家と言われても、子どもの頃に数回行った記憶しかありません」
当然だと思います。
長女様にとっては、長年管理してきた実家です。
しかし甥御様にとっては、突然届いた相続の話でした。
「売却に同意してください」と結論だけを伝えれば、警戒されることもあります。
そこで、次の内容を一つずつ共有しました。
- なぜ甥・姪が相続人になるのか
- 現在の登記名義は誰か
- 建物がどのような状態か
- 固定資産税や管理費を誰が負担してきたか
- 売却する場合に必要な手続き
- 売却代金や費用をどのように整理するのか
- 売却しない場合に今後どのような管理が必要か
相続人をまとめるという言葉は、誰かを説得することではありません。
全員が同じ資料を見て、同じ事実を理解できる状態をつくることです。
相続人の一人だけでは実家全体を売却できない
遺産分割が終わっていない不動産について、相続人の一人が自分の判断だけで実家全体を売却することはできません。
一般的には、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が不動産を取得するかを決めて相続登記をしたうえで売却する方法や、相続人が共有で取得し、全員が売主となって売却する方法などを検討します。
なお、共有持分だけを処分できる場面はありますが、実家全体の売却とは別の問題です。持分のみの売却は家族関係や価格に大きな影響を与える可能性があるため、安易に進めるべきではありません。
🟨 「私の法定相続分があるから、私だけで家を売れる」という理解は正しくありません。実家全体を売るには、権利関係を整理する必要があります。
代襲相続で実家の売却が止まりやすい5つの理由
1.相続人の存在を知らない
亡くなった兄弟姉妹に子がいることは知っていても、その人たちが法律上の相続人になるとは考えていないことがあります。
2.連絡先が分からない
甥・姪と何十年も会っていない。住所も電話番号も知らない。海外に住んでいる。このようなケースでは、相続人の確定と連絡に時間がかかります。
3.実家への温度差が大きい
管理を続けた人には切迫感があります。一方、遠方の相続人には現地の劣化や近隣対応が見えません。
4.売却代金より費用負担で揉める
固定資産税、草刈り、残置物、測量、解体など、誰が負担したのか、今後誰が負担するのかが問題になります。
5.さらに次の相続が起きる
話し合い中に相続人の一人が亡くなると、その人の相続人が新たに手続きへ関係することがあります。時間が経つだけで自動的に人数が増えるわけではありませんが、その間に死亡が重なることで権利関係が広がります。
売却までに実際に行ったこと
今回のケースでは、司法書士と連携し、次の順番で進めました。
1.登記名義と相続の経過を確認
土地・建物の登記事項を確認し、誰の名義で止まっているのかを整理しました。
2.戸籍を収集して相続人を確定
思い込みで人数を決めず、戸籍に基づいて相続関係を確認しました。
3.相続関係図を作成
誰が誰の代わりに相続人になるのか、死亡の順番を含めて見える形にしました。
4.相続人全員へ現状を説明
物件資料、写真、管理費用、査定の考え方を共有し、売る場合と残す場合を比較しました。
5.遺産分割協議と相続登記
協議内容を文書にし、必要な相続登記を進めました。
6.物件調査と販売活動
接道、境界、建物状態、残置物などを調べ、買主へ説明できる資料を整えてから販売しました。
相談から売却完了まで、約一年かかりました。
契約の日、長女様はこう話されました。
「空き家が古いことより、家族の関係を調べる方が大変でした。もっと早く動けばよかったですね」
春日井市で起きたのは「代襲相続」ではなく数次相続だった
愛知県春日井市では、似ているようで法律関係が異なる相談がありました。
父親が亡くなった後も、母親が実家に住んでいたため、父名義のまま相続登記をしていませんでした。
その後、兄弟の一人である次男が亡くなりました。
この場合、次男は父が亡くなった時点では存命だったため、父の相続人です。次男の死亡後は、次男が持っていた相続上の地位を、次男の配偶者や子が引き継ぐ可能性があります。
これは代襲相続ではなく、数次相続として整理する場面です。
実家は一軒でも、相続は二段階です。
父の相続。
次男の相続。
この二つを順番に確認しなければ、実家の売却へ進めません。
🟥 「亡くなった人の子が出てくるから代襲相続」とは限りません。誰が、誰より先に亡くなったかを必ず確認してください。
相続登記の義務化と古い相続
相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。
相続により不動産を取得したことを知った人は、原則として、その事実を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
また、2024年4月1日より前に発生した相続で、相続登記がされていない不動産も対象です。原則として2027年3月31日までの対応が必要になるケースがあります。
遺産分割がまとまらない場合に利用できる「相続人申告登記」などの制度もありますが、それだけで実家を自由に売却できる状態になるわけではありません。
相続登記の義務を果たすことと、売却できる権利関係を整えることは、分けて考える必要があります。
相続放棄と「いらないと言うこと」は違う
遠方の甥や姪から、
「私は何もいらないので、相続人から外してください」
と言われることがあります。
しかし、口頭で「いらない」と言うだけで、最初から相続人ではなかったことになるわけではありません。
家庭裁判所で行う相続放棄には、原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期間があります。遺産分割協議で不動産を取得しないことと、法律上の相続放棄も同じではありません。
借金や他の財産がある場合は判断への影響も大きいため、弁護士や司法書士などへ早めに相談する必要があります。
連絡が取れない相続人がいるとき
相続人の住所が分からない、手紙を送っても返事がない、所在そのものが確認できない。
このような場合でも、勝手にその人を除外して売却することはできません。
戸籍や戸籍の附票などによる所在確認、家庭裁判所の手続きが必要になるケース、協議がまとまらず調停を検討するケースなど、事情によって対応は異なります。
不動産会社だけで法的手続きを判断せず、司法書士や弁護士と役割を分けて進めることが重要です。
名古屋で相続した実家を売る前のチェックリスト
- 登記名義は父、母、祖父母の誰になっているか
- 被相続人の配偶者は存命か
- 子どもの中に、被相続人より先に亡くなった人がいるか
- 被相続人の後、手続き前に亡くなった相続人がいるか
- 亡くなった子に子どもがいるか
- 相続人の住所と連絡先が分かるか
- 遺言書がないか
- 遺産分割協議をした記録があるか
- 固定資産税や管理費を誰が負担しているか
- 建物も登記されているか
- 売却、保有、活用について各人の希望を確認したか
一つでも分からない項目があれば、売出価格を決める前に相続関係を確認することをおすすめします。
空き家マイスターとして感じること
代襲相続の相談を受けていると、空き家問題は建物だけの問題ではないと感じます。
古い屋根は修理できます。
伸びた草は刈れます。
残置物も片付けられます。
しかし、会ったことのない相続人へ突然連絡し、家族の歴史を説明し、同じ方向を向いてもらうには時間がかかります。
だからといって、甥や姪が邪魔をしているわけではありません。
その人たちも、法律によって突然当事者になったのです。
必要なのは急いで署名を求めることではなく、事実と選択肢を丁寧に共有することです。
🟩 相続人が増えたから売れないのではありません。誰が相続人なのか分からず、話し合える状態になっていないために売却が止まるのです。
まとめ|代襲相続は「家系図の問題」ではなく、実家を動かすための最初の確認
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が被相続人より先に亡くなっている場合などに、その子どもが代わって相続する仕組みです。
相続不動産の売却では、次の問題につながることがあります。
- 想定より相続人が多い
- 甥や姪の連絡先が分からない
- 遠方に住み、実家の状態が共有されていない
- 売却への考え方が一致しない
- 手続き中に次の相続が起きる
ただし、本当に注意すべきなのは「人数が多いこと」だけではありません。
死亡の順番を確認せず、代襲相続と数次相続を混同すること。
戸籍を確認せず、家族の記憶だけで相続人を決めること。
相続人へ十分な説明をしないまま、売却の同意だけを求めること。
こうした進め方が、実家の売却を止めます。
不動産は、古くなっても売り方を考えられます。
しかし相続関係は、時間の経過と、その間に起きる新たな相続によって複雑になることがあります。
「まだ売るか決めていない」段階でも構いません。
まず、誰が相続人なのか。
代襲相続なのか、数次相続なのか。
名古屋の実家が現在どのような状態なのか。
そこを確認することが、止まっていた相続不動産を動かす最初の一歩です。
名古屋・愛知で代襲相続が関係する空き家を売却したい方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、名古屋市および愛知県内の相続不動産、空き家、共有不動産、権利関係が複雑な土地・建物の売却をお手伝いしています。
次のような段階でもご相談いただけます。
- 相続人が何人いるか分からない
- 亡くなった兄弟の子どもと連絡を取っていない
- 父母名義のまま実家を長年放置している
- 相続登記が終わっていない
- 相続人が東京・大阪・福岡など県外にいる
- 家族の一人が売却に反対している
- 空き家の管理が負担になっている
- 売却と相続手続きの順番が分からない
不動産会社だけで判断できない登記や法律の問題は、司法書士、弁護士、税理士などと連携しながら整理します。
売却を急がせるのではなく、現在の権利関係、建物の状態、家族の希望を確認し、何から始めるべきかを一緒に考えます。
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※本記事は一般的な制度と実務上の注意点を紹介するもので、個別案件への法律・税務上の助言ではありません。相続人の範囲、相続分、相続放棄、遺産分割、登記手続きは、家族関係、死亡の順番、遺言の有無などにより異なります。具体的な手続きは、司法書士、弁護士、税理士、管轄法務局などへご確認ください。
※本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、複数の相談経験をもとに所在地、人数、会話、期間などの一部を調整して再構成しています。
※制度に関する記載は、2026年9月時点の公表情報をもとにしています。


