私は名古屋の街を歩き始めて、8年になります。
車で物件まで行って、写真を撮って、査定書を作って終わり。
私は、できるだけそういう仕事をしないようにしています。
物件の前に立つ。
前面道路を歩く。
隣の家を見る。
近所の月極駐車場を見る。
スーパーまで歩いてみる。
駅までの道を歩いてみる。
そして、ときには近所の方から昔の話を聞く。
そんなことを8年間続けてきました。
なぜ、そこまでするのか。
理由は単純です。
不動産は、パソコンの画面だけでは分からないからです。
査定システムに住所を入力すれば、周辺の成約事例は出てきます。
路線価も公示地価も調べられます。
AI査定なら、数秒で価格が表示される時代です。
でも、現場へ行くと、
「これはデータ通りでは売れないな」
と思う物件があります。
逆に、
「数字だけ見たら厳しい。でも、この物件は買う人がいるかもしれない」
と感じることもあります。
私は、この8年間で成功した売却だけを見てきたわけではありません。
読み違えたこともあります。
価格設定を間違えたこともあります。
「もっと早くここを調べておけばよかった」と思ったこともあります。
だから、このブログでは格好の良い成功談だけを書くつもりはありません。
現場のホント。
私自身の失敗。
そして、不動産業界で仕事をしていると見えてくる「表と裏」。
そこまで書いてみようと思います。

不動産業界には「表」と「裏」がある
不動産業界も大きく変わりました。
インターネット。
AI査定。
一括査定サイト。
オンライン相談。
電子契約。
昔に比べれば、売主様が得られる情報は圧倒的に増えています。
これは良いことです。
ただし、仕組みが新しくなっても、不動産会社の商売の構造そのものは、それほど変わっていない部分があります。
例えば査定です。
売主様から、
「A社は2,500万円、B社は2,800万円、C社は3,200万円でした」
と言われることがあります。
当然、3,200万円と言われたらうれしいと思います。
私が売主でも、うれしいです。
でも、ここで一度考えてほしいのです。
その3,200万円は、誰が払ってくれるのでしょうか。
査定した不動産会社でしょうか。
違います。
仲介の場合、その金額を払うのは、まだ会ったこともない未来の買主です。
つまり、
査定価格と売れる価格は、まったく別のものです。
🟥 【現場のホント①】高い査定額は、不動産会社の商品ではありません。
不動産会社が3,000万円と査定しても、3,000万円で買い取ってくれるわけではありません。
仲介会社が欲しいのは、まず「売却を任せてもらうこと」です。
だから競合が多ければ、
「他社より少し高く査定したほうが選んでもらえる」
という力学が働くことがあります。
もちろん、すべての会社がそうだという話ではありません。
ただ、これは不動産売却を考える方に知っておいてほしい業界の構造です。
私は査定額を見るとき、
「いくらと言われたか」より「なぜ、その金額なのか」
を見てほしいと思っています。
「SEOを気にするな」と私が書く理由
この記事もインターネット上の記事です。
当然、検索されなければ読んでもらえません。
それでも、私は最近、
SEOばかり気にして文章を書くのは、もうやめよう。
と思うようになりました。
「名古屋市 空き家売却」
「名古屋市 不動産査定」
「相続 不動産売却」
こういう言葉を何回入れるか。
見出しをどうするか。
文字数を何文字にするか。
もちろん、最低限は必要でしょう。
でも、そればかり考えていると、どこの不動産会社が書いても同じ記事になります。
「複数社へ査定を依頼しましょう」
「信頼できる会社を選びましょう」
「メリットとデメリットを比較しましょう」
間違ってはいません。
でも、それだけでは現場は分かりません。
私が書きたいのは、検索エンジンに評価されるためだけの記事ではなく、
家の売却をどうしようか本気で悩んでいる人が読んだときに、何か一つ判断材料を持って帰れる記事です。
8年間街を歩いてきた人間にしか書けないことを書く。
そのほうが結果として、長く読まれる記事になると思っています。
1.空き家売却の失敗は「最初の判断」で決まることが多い
空き家売却の相談を受けると、
「この家、壊したほうがいいですよね?」
と聞かれることがあります。
私はすぐには答えません。
なぜなら、現場を見なければ分からないからです。
空き家の出口には、大きく分ければ、
・中古住宅として売る
・古家付き土地として売る
・解体して更地で売る
という方法があります。
ところが現場では、もっと複雑です。
再建築できるのか。
前面道路は何なのか。
間口は何メートルあるのか。
車は入るのか。
境界は確定しているのか。
越境はないか。
隣地との関係はどうか。
建物は本当に使えないのか。
残置物はいくらかかるのか。
相続人は何人いるのか。
登記名義は誰なのか。
一つ条件が違うだけで、出口が変わります。
相続登記を後回しにしていたケース
相続空き家では、登記簿を取得すると、
「お父様ではなく、お祖父様名義だった」
ということがあります。
さらに調べると相続人が増えている。
一人は遠方。
一人は連絡先が分からない。
そんなこともあります。
相続登記は2024年4月から義務化されており、原則として不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が必要です。
そして実際に相続不動産を売却して所有権を移すためには、相続登記を済ませる必要があります。
だから私は、
「いくらで売れるか」の前に「誰の不動産なのか」を確認します。
地味ですが、ここを飛ばしてはいけません。
「古いから解体」が正解とは限らない
築50年。
築60年。
それだけを聞けば、
「建物価値ゼロですね」
「解体しましょう」
という話になりがちです。
でも、私は何度も築古住宅の中に入ってきました。
外から見るとかなり傷んでいる。
ところが玄関を開けると、
立派な梁が残っている。
庭がいい。
間取りがおもしろい。
手を入れれば使えそう。
そんな家があります。
🟥 【現場のホント②】解体はいつでもできます。でも、一度壊した建物は元には戻せません。
だから私は、迷う物件ほど、
「まず建物付きで売る可能性はないか」
を考えます。
もちろん、最終的に解体することもあります。
大事なのは、
壊すことを最初の結論にしないことです。
2.私自身も、現場で判断を間違えてきました
不動産会社のブログには、成功事例がたくさん出ています。
「○日で成約しました」
「高値売却に成功しました」
もちろん、それも事実でしょう。
でも10年実務をやっていれば、全部うまくいくわけがありません。
私にもあります。
最初の価格設定が強すぎたこと。
買主像の読み方を間違えたこと。
現場確認が足りず、後から追加調査が必要になったこと。
「この条件なら大丈夫だろう」と思っていた道路について、行政へ確認すると想定より複雑だったこと。
解体工事に入ってから、現場で予想外のものが出てきたこと。
測量を始めて初めて、境界の難しさが分かったこと。
こういう経験は、正直、査定書には書きにくいものです。
でも私は、この失敗が今の査定に一番役立っていると思っています。
🟥 【私の失敗談】「たぶん大丈夫」が、不動産では一番危ない。
昔より今のほうが、
「分からないので確認します」
と言えるようになりました。
道路なら行政。
境界なら土地家屋調査士。
登記なら司法書士。
税金なら税理士。
分からないものを、知っているふりをしない。
これは失敗から覚えたことです。
3.解体して更地にすれば売りやすい。本当にそうなのか?
更地は確かに分かりやすい商品です。
買主は建物解体を考えなくてよい。
ハウスメーカーもプランを入れやすい。
土地の形も見やすくなります。
だから、
「解体して売りましょう」
という提案自体は間違いではありません。
ただし私は、
売れる見通しがないのに先に壊すことには慎重です。
住宅が建つ土地には住宅用地の税負担軽減があります。
名古屋市でも、住宅1戸につき200㎡までの小規模住宅用地について、固定資産税の課税標準は原則6分の1、都市計画税は3分の1となる特例があります。
建物を取り壊せば、翌年の課税関係が変わる可能性があります。
だから実務では、
「先に解体する」
だけではなく、
「建物付きで販売→買主が決まる→売買契約→売主負担で解体→更地で引渡し」
という方法も検討します。
これなら、売れるか分からない状態で先に解体費用を払うリスクを抑えられる場合があります。

🟥 【業界のからくり①】「更地のほうが売りやすい」と「売主にとって得」は同じではありません。
不動産会社からすると、更地は販売しやすい。
写真もきれいです。
説明もしやすい。
建物の不具合も減ります。
でも、
解体費200万円。
測量費40万円。
残置物処分50万円。
これを払うのは誰でしょう。
売主様です。
だから私は、
「売りやすい方法」ではなく「最終的に売主様の手元にいくら残るか」
まで見る必要があると思っています。
4.査定価格より「手残り」を見る
2,000万円で売れた。
それだけ聞けば2,000万円の売却です。
でも実際には、
仲介手数料。
測量費。
登記費用。
解体費。
残置物処分。
場合によっては譲渡所得税。
その他にも案件ごとの費用があります。
売却価格からこれらを引いた金額が、実際の手残りです。
私は査定相談で、
「2,000万円で売れます」
だけでは足りないと思っています。
例えば、
A案 建物付き1,800万円
B案 200万円かけて解体して2,000万円
なら、
単純にB案が200万円得とは言えません。
時間もあります。
税金もあります。
工事リスクもあります。
売れる確率もあります。
だから、
売値ではなく出口まで計算する。
これが空き家査定では非常に重要です。
5.一括査定サイトと「高額査定」の仕組み
一括査定サイトそのものを否定するつもりはありません。
複数社の意見を聞けるのはメリットです。
問題は、利用する側が仕組みを知らないことです。
複数の不動産会社が、同じ売主様に一斉に営業します。
当然、
「自社に任せてもらいたい」
という競争になります。
そこで何が起こるか。
価格競争です。
2,500万円。
2,700万円。
2,900万円。
3,100万円。
売主様からすれば、
「3,100万円の会社が一番高く売ってくれる」
と思います。
でも、本当にそうでしょうか。
🟥 【業界のからくり②】査定額を上げるのは簡単です。買主をその価格で連れてくるのは難しい。
ここは、不動産売却でぜひ覚えておいてください。
査定書に3,100万円と印刷することにリスクはありません。
問題は販売を始めてからです。
問い合わせがない。
内覧がない。
1か月。
2か月。
3か月。
そして、
「少し価格を下げませんか」
という話になります。
私は、高い査定が悪いと言っているのではありません。
高く挑戦するなら、
なぜその価格なのか。
誰に売るのか。
何か月挑戦するのか。
反響がなければ、いつ価格を変えるのか。
ここまで最初に決めておくべきだと思っています。

6.街を歩かなければ分からなかったこと
8年間、名古屋の街を歩いていると、地図では見えないものがあります。
同じ町内でも、
一本道路を越えると雰囲気が変わる。
朝は静かな道路が、夕方になると抜け道になる。
地図上では駅徒歩圏でも、実際に歩くと坂がきつい。
近くに学校があっても、通学路として歩きやすいとは限らない。
逆に、駅から少し遠くても、
静か。
道が広い。
スーパーが近い。
子どもが遊んでいる。
きれいに管理された家が多い。
そんな場所があります。
不動産の価値は、坪単価だけではありません。
私は物件を見るとき、
「ここに住む人は、どんな生活をするだろう」
と考えながら歩きます。
それが買主を考えることにつながるからです。
7.再建築不可や旗竿地は「価値ゼロ」なのか
再建築不可。
旗竿地。
袋小路。
越境あり。
共有私道。
古家付き。
心理的瑕疵。
不動産広告では、どうしてもマイナス条件として扱われます。
実際、価格に影響することもあります。
でも、
マイナス条件がある=売れない
ではありません。
例えば旗竿地。
一般的には整形地より評価が下がります。
しかし、
道路から奥まっていて人目が気にならない。
子どもが道路へ飛び出しにくい。
静かな住環境を好む。
そんな買主もいます。
袋小路も同じです。
車の通り抜けが少ないことをメリットと感じる人もいます。
大事なのは欠点を隠すことではありません。
欠点はきちんと説明する。
その上で、
「では、この条件を好む人は誰だろう」
と考えることです。
これが販売戦略です。
8.私が現場で必ず見るところ
私は空き家の査定へ行くと、建物だけ見て帰ることはほとんどありません。
まず道路を見ます。
間口を見る。
側溝を見る。
電柱を見る。
ガードレールを見る。
道路と敷地の高低差を見る。
隣地との境を見る。
ブロックを見る。
屋根を見る。
雨樋を見る。
庭を見る。
裏へ回れるなら裏も見る。
そして室内へ入れるなら、
床。
天井。
窓。
水回り。
階段。
建具。
雨漏り跡。
傾き。
匂い。
残置物。
そういうものを見ます。
ただし、それでも全部分かるわけではありません。
床下は見えないことがあります。
壁の中も見えません。
地面の下はもっと分かりません。
🟥 【現場のホント③】プロでも、見ただけで全部分かるわけではありません。
だから重要なのは、
「私はプロだから分かります」
ではなく、
「何が分かっていて、何がまだ分からないかを整理すること」
だと思っています。

9.契約不適合責任。「知らなかった」では済まないことがある
築古空き家では、所有者様自身も建物の状態を把握していないことがあります。
10年間空き家。
相続したけれど住んだことがない。
親が暮らしていたので詳しく分からない。
珍しい話ではありません。
雨漏り。
シロアリ。
給排水管。
越境。
地中埋設物。
こうした問題が後から発覚する可能性があります。
だから重要なのは、
知っている不具合を隠さないこと。
そして、
分からないことまで「問題ありません」と言わないこと。
物件の状態や売主・買主の合意によっては、契約内容を調整して売主側のリスクを整理することもあります。
築古物件ほど、
「売れれば終わり」
ではありません。
引渡し後まで想像して契約を作る。
ここも実務では非常に大切です。
10.不動産会社は「会社の大きさ」だけで選ばなくていい
大手には大手の良さがあります。
店舗数。
ブランド力。
顧客数。
組織力。
安心感。
これは間違いなく強みです。
地域の小さな会社には、小さな会社なりの強みがあります。
現場へすぐ行ける。
地域を細かく知っている。
難しい案件でも担当者が最後まで追える。
だから、
「大手がいい」
「地元会社がいい」
という単純な話ではありません。
私なら、
「この担当者は、この物件をどう売ろうとしているのか」
を聞きます。
「相場は2,500万円です」
だけではなく、
誰が買うのか。
建物を残すのか。
土地として見せるのか。
どこへ広告するのか。
業者にも紹介するのか。
何か月で判断するのか。
売れなかったら次はどうするのか。
そこまで話せる担当者なら、少なくとも物件について考えています。
11.私が8年間歩いて分かったこと
街歩きを始めたころ、
「不動産は価格がすべて」
と思っていた部分が私にもありました。
でも、8年間歩いているうちに少し考え方が変わりました。
高く売れたから成功。
安く売れたから失敗。
必ずしも、それだけではありません。
例えば、
相続人同士でもめずに終わった。
長年放置していた空き家を整理できた。
近隣との境界問題を解決できた。
残置物も含めて手放せた。
売却後の心配がなくなった。
それも立派な成功だと思います。
反対に、
相場より100万円高く売れたとしても、
1年間ずっと売却のことで悩み、
何度も価格変更し、
家族関係まで悪くなったのであれば、
果たして本当に良い売却だったのか。
不動産売却には、
金額だけでは測れない部分があります。
まとめ|空き家売却は「価格を当てる仕事」ではない
AIはこれからもっと進化すると思います。
査定精度も上がるでしょう。
不動産情報も、今以上に透明になるでしょう。
それでも私は、現場へ行くと思います。
道路を歩く。
家を見る。
周りを見る。
所有者様の話を聞く。
なぜなら、不動産は最後は人が買うものだからです。
空き家売却で大切なのは、
「一番高い査定額を出した会社を探すこと」
ではありません。
その価格の理由を説明できること。
不利な条件も説明してくれること。
売れなかった場合の次の手まで考えていること。
そして何より、
実際にその不動産を見ていること。
私はこの8年間、名古屋の街を歩きながら、たくさんの空き家を見てきました。
きれいな物件ばかりではありません。
再建築が難しい土地。
細い私道。
境界が分からない土地。
相続関係が複雑な家。
大量の残置物。
雨漏りした家。
長年誰も住んでいない家。
そして、私自身も現場で失敗しながら覚えてきました。
だからこそ、今は思います。
不動産の本当の価値は、査定システムの数字だけでは決まりません。
現場を見る。
調べる。
疑う。
考える。
そして、その不動産を必要としている人を探す。
派手ではありませんが、それが不動産売却の仕事だと思っています。
🟥 最後に ―― 空き家を「負動産」と決めつける前に
「こんな古い家、売れませんよね」
「再建築できないから価値はありませんよね」
「荷物がいっぱいだから、まず全部片付けないとダメですよね」
そんな相談をよくいただきます。
でも、私はまず現場を見たいと思っています。
片付ける前でも構いません。
古くても構いません。
権利関係が複雑でも構いません。
旗竿地、再建築不可、共有私道、越境、心理的瑕疵、相続未整理。
難しい条件があるなら、なおさら最初に整理することが重要です。
売る。
残す。
貸す。
解体する。
場合によっては、今は何もしない。
選択肢はいくつもあります。
最初から「売却ありき」「買取ありき」で考えない。
これも、私が現場を歩き続けてきて大切にしていることです。
ふどうさんのMAGO/アースリアリティ株式会社では、名古屋市を中心に、空き家・相続不動産・築古住宅・再建築が難しい土地・訳あり不動産などの売却相談をお受けしています。
良いことだけではなく、
「これは難しいです」
「ここは先に調べましょう」
「今は売らないほうがいいかもしれません」
という話も含めて、一緒に出口を考えます。
まずは、そのままの状態でご相談ください。
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