「私は売った方がいいと思う。」
静まり返った実家の居間で、妹さんがそう切り出しました。
その瞬間、お兄さんの表情が少し曇ったのを私は覚えています。
今回のご相談は、名古屋市内にある築45年の実家についてでした。
ご両親が亡くなられてから3年。
実家は空き家になっていました。
相続人は兄と妹の二人。
一見すると話がまとまりそうな案件です。
しかし実際には、なかなか前へ進みませんでした。
理由は単純でした。
妹さんは売却希望。
お兄さんは保有希望。
意見が真っ向から対立していたのです。
誰も住んでいない実家
実家は駅から徒歩圏内にあり、土地としても需要が見込めるエリアでした。
しかし建物は築年数が経過し、
- 外壁の劣化
- 雨樋の破損
- 庭木の繁茂
などが目立ち始めていました。
誰も住んでいないため、管理はお兄さんが月に一度訪れる程度。
固定資産税もお兄さんが支払っていました。
妹さんは県外在住。
年に一度帰省するかどうかでした。
妹が売却を希望した理由
妹さんの考えは現実的でした。
「誰も住まないですよね。」
「このまま持っていても税金がかかるだけです。」
「子どもたちも戻る予定はありません。」
確かにその通りです。
空き家は所有しているだけで、
- 固定資産税
- 修繕費
- 草刈り
- 管理負担
が発生します。
さらに放置期間が長くなるほど建物は傷みます。
妹さんは、
「思い出は大切。でも現実も見なければいけない。」
そう考えていました。
兄が残したかった理由
一方で、お兄さんの考えは全く違いました。
「父が建てた家なんです。」
「ここに家族みんなで住んでいました。」
「売ってしまったら、本当に終わってしまう気がする。」
これは決して珍しい話ではありません。
相続不動産の相談を受けていると、
売却の問題ではなく、
“感情の整理”
ができていないケースが非常に多いのです。
実家には思い出があります。
子どもの頃の記憶があります。
親との時間があります。
不動産会社から見ると空き家でも、
家族から見れば人生そのものだったりします。
家族会議で見えた本音
話し合いを進める中で、ある事実が見えてきました。
お兄さん自身も、
「自分が住む予定はない」
と言うのです。
賃貸に出す予定もありません。
リフォームする予定もありません。
つまり、
残したい理由は利用価値ではなく、
手放したくない気持ちだったのです。
これは現場で本当によくあります。
空き家が売れない理由は、
市場ではありません。
感情です。
業界の本音
ここで少し業界の話をします。
実はこうした案件を嫌がる不動産会社は少なくありません。
なぜなら時間がかかるからです。
価格査定をして、
媒介契約を結んで、
販売する。
その方が効率が良い。
しかし相続案件は違います。
まず家族の意見を整理しなければなりません。
時には何度も話し合いが必要です。
だから敬遠されるのです。
ですが現場では、
不動産の問題より、
家族の問題の方が大きいことがよくあります。
決定打になった一言
数回目の話し合いでした。
妹さんが静かに言いました。
「お兄ちゃんが住むなら残してもいい。」
「でも住まないなら、家を残すことと親を忘れないことは別じゃない?」
その言葉に、お兄さんはしばらく黙っていました。
そして、
「そうかもしれないな。」
と小さく答えました。
私はその瞬間を今でも覚えています。
売却を決めた瞬間ではありません。
気持ちの整理が始まった瞬間でした。
売却後に聞いた言葉
最終的に実家は売却されました。
引渡しの日、お兄さんは少し寂しそうでした。
しかし後日、こんなことを話してくださいました。
「ずっと残さなきゃいけないと思っていました。」
「でも本当は、自分の気持ちが整理できていなかっただけでした。」
そして妹さんは、
「ようやく前に進めました。」
と笑顔で話されていました。
空き家問題の本質
空き家問題というと、
- 老朽化
- 固定資産税
- 相続登記
- 管理負担
ばかりが語られます。
もちろん大切です。
しかし現場で感じるのは、
空き家問題の本質は家ではなく人だということです。
売却できない理由は市場ではなく、
家族それぞれの想いであることも少なくありません。
まとめ|実家を売ることは親を忘れることではない
相続した実家を売却することに罪悪感を持つ方は少なくありません。
しかし、
実家を残すことと、
親を大切に思うことは同じではありません。
誰も住まない家を維持し続けることが正解とは限りません。
むしろ放置によって、
- 家族関係が悪化する
- 固定資産税の負担が続く
- 管理が困難になる
ケースもあります。
今回のご家族のように、しっかり話し合うことで前へ進めることもあります。
私たちが現場で感じるのは、
空き家の売却とは不動産取引ではなく、
家族の新しい一歩を決める作業なのかもしれない、ということです。
ふどうさんのMAGOは名古屋市エリアを中心に不動産売却、空き家問題を専門とする不動産会社です。、専門家のアドバイスと革新的なアイディアで、お客様の悩みを解決いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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