こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、街歩き空き家マイスター、ふどうさんのMAGOの保木です。
海外赴任が決まると、仕事の引継ぎ、ビザの取得、引っ越し、子どもの学校、現地での住居探しなど、短期間に多くの準備が必要になります。
その中で、つい後回しになりやすいのが、日本に残す「持ち家」の問題です。
「数年後には帰国する予定だから、そのままでよいだろう」
「帰国後にまた住むかもしれない」
「海外での生活が落ち着いてから考えればよい」
このように考える方も少なくありません。
もちろん、赴任期間や将来の生活設計によっては、売却せずに自宅として残すことが最善の場合もあります。
しかし、不動産売却の現場で私が感じるのは、海外赴任後に困る方の多くは「売らなかったこと」を後悔しているのではなく、
海外へ出る前に、必要な情報と選択肢を整理しなかったこと
を後悔しているということです。
海外在住者でも、日本国内の不動産を売却することは可能です。
ただし、出国後に売却する場合は、国内に住んでいる売主様とは異なる本人確認書類や税務手続きが必要になることがあります。
特に注意したいのが、次の問題です。
- 海外転出後は、日本の住民票や印鑑証明書を取得できない場合がある
- 印鑑証明書に代わり、署名証明が必要になる
- 日本の住所証明に代わり、在留証明が必要になる
- 在外公館へ本人が出向かなければならない場合がある
- 司法書士による本人確認や売却意思の確認が必要になる
- 非居住者の売却では、代金の一部が源泉徴収される場合がある
- 売却後の確定申告や納税管理人の選任が必要になる場合がある
この記事では、海外赴任前に確認すべき持ち家の選択肢、出国前に準備しておきたい書類、海外から不動産を売却する流れ、税金、住宅ローン、代理人の注意点を実務に沿って解説します。
海外赴任が決まったら持ち家をどうする?
海外赴任中の持ち家には、主に次の3つの選択肢があります。
- 売却する
- 賃貸に出す
- 空き家として管理する
どの方法が正解かは、物件の条件や家族の事情によって異なります。
大切なのは、「海外赴任だから売る」「帰国するかもしれないから残す」と感覚だけで決めないことです。
売却が向いている可能性があるケース
- 赴任期間が長期化する可能性がある
- 帰国後に同じ家へ戻る予定が定まっていない
- 住宅ローンと維持費の負担を減らしたい
- 現在の市場で一定の売却価格が期待できる
- 築年数の経過による価格低下が心配
- 海外から空き家を管理できる人がいない
- 帰国後は別の地域で暮らす可能性が高い
賃貸が向いている可能性があるケース
- 一定期間後に帰国する予定が比較的明確
- 賃貸需要が見込める立地
- 家賃から管理費、修繕費、税金などを差し引いても収支が見込める
- 住宅ローンを利用している金融機関から賃貸の承諾を得られる
- 帰国時に借主から返してもらえる契約方法を検討できる
住宅ローンを利用して購入した自宅を賃貸に出す場合は、金融機関への確認が必要です。
また、帰国時期が決まっているからといって、普通借家契約で貸してしまうと、希望する時期に必ず明け渡してもらえるとは限りません。
定期借家契約を含め、賃貸管理会社や必要に応じて専門家へ相談しましょう。
空き家として維持することが向いている可能性があるケース
- 赴任期間が短い
- 帰国後に再び住む予定が明確
- 親族や管理会社による巡回管理ができる
- 住宅ローン、税金、保険、管理費などを負担できる
- 定期的な換気、通水、清掃、防犯対策を行える
空き家にしておけば何もしなくてよい、ということではありません。
誰も住まない住宅では、換気不足による湿気やカビ、排水トラップの封水切れ、庭木の越境、郵便物の滞留、防犯上の問題などが起こることがあります。
売るか、貸すか、残すか。
まずは3つの選択肢について、費用と将来の生活を比較することが出発点です。
「数年間だけだから大丈夫」が危険な理由
海外赴任は予定より長引くことがある
出国時には2年や3年の予定でも、実際には次のような理由で赴任期間が延びることがあります。
- 海外拠点での勤務延長
- 別の国への異動
- 現地採用への切替え
- 子どもの教育環境の変化
- 家族の生活基盤の変化
- 帰国後の勤務先や居住地の変更
赴任が長引くほど、持ち家の築年数も進みます。
「帰国してから考える」という選択は、同時に「数年間は判断を保留する」という選択でもあります。
海外からの住宅管理には距離の壁がある
日本国内に住んでいても、空き家の管理には手間がかかります。
海外から管理する場合は、さらに時差と距離の問題が加わります。
例えば、次のような対応です。
- 台風や地震の後の建物確認
- 雨漏りや設備故障への対応
- 庭木や雑草の管理
- 郵便物の回収
- 近隣からの苦情対応
- 火災保険の更新
- 固定資産税の支払い
- マンション管理組合からの連絡確認
親族へ管理を頼む方法もありますが、数年間にわたって無償で対応してもらうと、次第に負担が大きくなることがあります。
誰が、どの程度の頻度で、どこまで管理するのかを出国前に決めておく必要があります。
住んでいなくても支出は続く
海外赴任中も、持ち家には次のような費用が発生します。
- 住宅ローン
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- マンションの管理費・修繕積立金
- 空き家管理費
- 庭木の剪定費
- 建物の修繕費
売却するかどうかを考えるときは、査定価格だけでなく、持ち続けた場合の3年分、5年分の費用も計算しましょう。
出国前に準備しなかったことで起こる失敗例
失敗例1|帰国後に売るつもりが、赴任期間が延びた
出国時には築年数が比較的浅く、一定の需要が期待できる住宅でした。
所有者様は「3年後に帰国してから売ればよい」と考え、空き家として残しました。
ところが赴任期間が延長され、帰国したのは5年以上経過してからでした。
その間に築年数が進み、設備も古くなりました。周辺には新しい分譲住宅が増え、購入希望者から比較されやすい状況になっていました。
不動産は、時間が経過すれば必ず値上がりするものではありません。
特に戸建住宅では、土地の価格だけでなく、建物の築年数や管理状態が購入判断に影響します。
出国前にできた対策
- 現在の査定価格を確認する
- 3年後、5年後に想定される物件状態を考える
- 年間維持費を計算する
- 売却を再検討する時期を決める
査定を受けることは、直ちに売却を決めることではありません。
将来の判断材料を持つための準備です。
失敗例2|海外から売ろうとして必要書類が揃わなかった
海外生活が落ち着いてから売却を開始し、買主様も見つかりました。
しかし、決済準備の段階で、印鑑証明書の代わりとなる署名証明や、住所を証明する在留証明が必要になりました。
滞在地から日本大使館・総領事館まで距離があり、予約や移動に時間がかかりました。
さらに、証明書の形式について司法書士との確認が必要となり、予定していた決済日を変更することになりました。
出国前にできた対策
署名証明や在留証明は、海外転出後の住所や署名を証明するための書類です。そのため、原則として出国前に取得しておく書類ではありません。
出国前に必要なのは、
- どの書類が必要になるかを司法書士へ確認する
- 赴任先を管轄する在外公館を確認する
- 在外公館までの距離や申請方法を調べる
- 署名証明の形式を事前に確認する
- 登記上の住所と現在の住所のつながりを整理する
ことです。
書類そのものを先に集めるのではなく、「出国後に、どこで、何を取得するのか」を確認しておくことが重要です。
失敗例3|空き家管理を親族任せにした
出国前、所有者様は近くに住む親族へ、月に一度程度の換気をお願いしていました。
しかし、実際には換気だけでは済みませんでした。
庭木が道路へはみ出し、台風後には雨樋が外れ、近隣から連絡が入りました。
親族は修理会社を探し、所有者様と時差のある中で費用や工事内容を確認しなければなりませんでした。
最初は善意で始まった管理でしたが、次第に双方の負担となってしまいました。
出国前にできた対策
- 空き家管理会社へ依頼する
- 巡回頻度と確認項目を決める
- 緊急時の修繕費用について上限を決める
- 近隣からの連絡窓口を決める
- 鍵の保管場所と管理責任者を決める
親族へ依頼する場合も、口約束だけでなく、管理内容を具体的に整理しておくことが大切です。
失敗例4|住宅ローン残高と手取り額を確認していなかった
海外赴任後に売却を検討したところ、売却価格から諸費用を差し引いた金額では、住宅ローンを完済できないことが分かりました。
住宅ローンが残る不動産を売却する場合、原則として決済時にローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。
売却代金で足りなければ、不足額を自己資金などで補う必要があります。
海外生活中は、日本国内の金融機関との連絡や資金移動に時間がかかる場合もあります。
出国前にできた対策
- 住宅ローン残高を確認する
- 査定価格を確認する
- 仲介手数料などの売却費用を計算する
- 売却後の概算手取り額を計算する
- 金融機関へ海外赴任後の連絡方法を確認する
海外在住者でも日本の不動産は売却できる
海外赴任中や海外移住後でも、日本国内に所有する不動産を売却できます。
売主様が必ず日本へ帰国しなければならないわけでもありません。
郵送、オンライン面談、代理人、司法書士による本人確認などを組み合わせて進められる場合があります。
ただし、すべての取引で代理人が必要になるわけではありません。
売主様本人が海外で売買契約書へ署名し、必要書類を日本へ送付する方法もあります。
どの方法を採用するかは、次の事情によって異なります。
- 売主様の滞在国
- 売買契約の方法
- 共有者の有無
- 住宅ローンの有無
- 登記上の住所
- 司法書士の本人確認方法
- 買主側金融機関の手続き
- 決済方法と売却代金の受取口座
売却活動を始める前に、不動産会社だけでなく、所有権移転登記を担当する司法書士にも相談しておくと安心です。
海外から日本の持ち家を売却する一般的な流れ
STEP1|査定を受けて売却条件を整理する
まずは、現在の市場で売却できると予想される価格を確認します。
この段階で整理したいのは、次の項目です。
- 査定価格とその根拠
- 住宅ローン残高
- 売却に必要な諸費用
- 売却後の概算手取り額
- 建物の状態
- 境界や越境
- 残置物の処分
- 売却希望時期
査定額だけでなく、「海外にいながら何を準備する必要があるか」まで説明できる不動産会社を選ぶことが重要です。
STEP2|司法書士へ事前相談する
海外在住者の不動産売却では、所有権移転登記を担当する司法書士との事前確認が重要です。
確認事項には、次のようなものがあります。
- 必要となる署名証明の形式
- 在留証明の必要性
- 登記上の住所から現在の海外住所までの証明方法
- 本人確認の方法
- 委任状への署名方法
- 原本を日本へ送付する時期
- 抵当権抹消に必要な手続き
書類の取得後に「形式が違う」と判明すると、在外公館へ再度出向かなければならない可能性があります。
必ず、取得前に担当司法書士へ必要な形式を確認しましょう。
STEP3|不動産会社と媒介契約を締結する
売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
海外在住の場合は、郵送や電子的方法を含め、どのように手続きを進めるかを確認します。
また、販売活動中の報告方法についても決めておきます。
- メール
- オンライン会議
- 国際電話
- メッセージアプリ
- 国内代理人を通じた連絡
時差があるため、購入申込みが入った場合の連絡方法と回答期限も決めておくとスムーズです。
STEP4|販売活動と内覧対応を行う
空き家を売却する場合は、日本国内で鍵を管理する人が必要です。
不動産会社へ鍵を預ける場合は、鍵の預り証や管理方法を確認します。
室内に家財が残っている場合は、何を残し、何を処分するのかも決めておきましょう。
STEP5|購入申込みと条件交渉
購入申込みが入ったら、価格だけでなく、次の条件を確認します。
- 購入希望価格
- 手付金
- 住宅ローン利用の有無
- 契約希望日
- 引渡し希望日
- 建物や設備の取扱い
- 契約不適合責任
- 残置物の処分
- 境界明示や測量の条件
海外にいると、買主様からの質問へすぐ回答できないことがあります。
物件資料や修繕履歴、設備の状態などを出国前に整理しておくと、条件交渉を進めやすくなります。
STEP6|売買契約を締結する
売主様が一時帰国して契約する方法のほか、海外で署名した契約書を郵送する方法や、代理人を立てる方法があります。
代理人が契約する場合は、委任する権限を委任状へ具体的に記載します。
売買代金、手付金、引渡し、契約解除、契約不適合責任など、不動産売買には重要な条件が含まれます。
包括的に任せるのではなく、代理人がどこまで判断できるのかを明確にしておくことが大切です。
STEP7|決済・所有権移転・引渡し
決済日には、一般的に次の手続きを行います。
- 残代金の支払い
- 住宅ローンの完済
- 抵当権抹消
- 所有権移転登記
- 固定資産税等の精算
- 鍵や関係書類の引渡し
売主様本人が出席しない場合は、司法書士が事前に本人確認と売却意思の確認を行います。
海外在住者の場合は、書類の国際郵送にも日数がかかるため、国内取引より余裕を持った日程設定が必要です。
海外から不動産を売却するときの主な必要書類
必要書類は物件、滞在国、国籍、登記内容、司法書士の確認方針などによって異なります。
一般的に確認される書類は次のとおりです。
不動産に関する書類
- 登記済権利証または登記識別情報
- 購入時の売買契約書
- 購入時の重要事項説明書
- 固定資産税・都市計画税納税通知書
- 建築確認関係書類
- 境界確認書や測量図
- マンションの管理規約・使用細則
- リフォーム・修繕履歴
- 住宅ローン残高が分かる書類
本人確認・住所確認に関する書類
- パスポート
- 在留証明
- 署名証明
- 住所の変遷を証明する資料
- 現地の滞在資格や住所を確認できる資料
- 司法書士が指定する本人確認資料
代理人を利用する場合の書類
- 委任状
- 代理人の本人確認書類
- 売却権限や代金受領権限を確認する書類
- 必要に応じて署名証明
書類を自己判断で取得するのではなく、必ず不動産会社と担当司法書士へ確認してください。
在留証明とは
在留証明は、海外に住む日本人の現地住所などを証明するため、在外公館が発給する証明書です。
日本に住民登録がない方が、不動産登記など日本国内の手続きで外国の住所証明を求められた場合に使用されます。
申請時点で滞在期間が3か月未満でも、今後3か月以上の滞在が見込まれる場合は、発給対象となることがあります。
申請条件や必要資料は、赴任先を管轄する大使館・総領事館へ確認する必要があります。
署名証明(サイン証明)とは
日本の住民登録を抹消すると、原則として印鑑登録も抹消されます。
そのため、海外在住の日本人が不動産登記などを行う際には、印鑑証明書に代わるものとして署名証明を求められることがあります。
署名証明には、主に次の形式があります。
- 在外公館の証明書と、領事の面前で署名した文書を綴り合わせる形式
- 署名自体を単独で証明する形式
どちらが必要かは提出先によって異なります。外務省も、事前に提出先へ確認するよう案内しています。
署名証明は、通常、領事の面前で署名する必要があります。
先に委任状などへ署名してしまうと、求められる証明形式に合わなくなる可能性があります。
必ず司法書士の指示を受けてから署名しましょう。
なお、事情によっては、外国の公証人が作成した署名証明を利用できる場合もあります。
出国前に必ず確認したい12項目
海外赴任前には、少なくとも次の項目を確認しておきましょう。
1.登記名義
所有者名義が本人になっているかを確認します。
相続登記が済んでいない、旧姓のまま、住所変更が反映されていないといった場合は、売却前に追加の登記手続きが必要になる可能性があります。
2.登記済権利証・登記識別情報
紛失していても売却できないわけではありませんが、司法書士による本人確認情報の作成など、追加の手続きや費用が発生する場合があります。
出国前に保管場所を確認しましょう。
3.登記上の住所と住所履歴
登記上の住所から現在の住所、さらに海外住所までのつながりを証明できるか確認します。
転居回数が多い場合や住民票の除票等の保存期間が経過している場合は、住所履歴の証明が複雑になる可能性があります。
4.住宅ローン残高
金融機関から残高証明書や返済予定表を取得し、売却代金で完済できるか確認します。
5.金融機関への海外赴任の届出
住所変更、連絡先、返済口座、繰上返済や抵当権抹消の方法を金融機関へ確認します。
6.売却した場合の概算手取り額
査定額から次の費用を差し引いて計算します。
- 住宅ローン残高
- 仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消費用
- 測量費
- 解体費
- 残置物撤去費
- 譲渡所得税等
7.国内の連絡先
緊急時の連絡、郵便物の受取り、鍵の管理などを依頼できる人または会社を決めます。
8.鍵と物件資料
鍵、図面、設備説明書、修繕履歴、管理規約などを整理し、国内で利用できる状態にします。
9.火災保険
空き家にした場合でも現在の契約が継続できるか、保険会社または代理店へ確認します。
利用状況の変更を申告しないままでは、補償に影響する可能性があります。
10.赴任先を管轄する在外公館
大使館・総領事館の所在地、移動時間、予約方法、証明書申請方法を確認します。
11.司法書士
海外居住者の本人確認や登記手続きに対応できる司法書士へ、出国前に相談します。
12.税金と納税管理人
海外赴任中に売却する可能性がある場合は、非居住者としての税務や納税管理人について、税理士または税務署へ確認します。
海外赴任中の売却で注意したい税金
非居住者に該当すると源泉徴収が行われる場合がある
海外赴任者が税法上の非居住者に該当し、日本国内の不動産を売却した場合、買主は原則として売買代金の10.21%を源泉徴収する必要があります。
ただし、売買代金が1億円以下で、個人の買主が自分または親族の居住用として購入する場合などは、源泉徴収が不要となる例外があります。
重要なのは、10.21%が「利益」に対してではなく、原則として売買代金に対して差し引かれる点です。
例えば、5,000万円で売却し、源泉徴収の対象となる場合、決済時に約510万5,000円が売却代金から差し引かれる可能性があります。
実際の譲渡所得税額とは別の仕組みであり、確定申告によって精算し、納め過ぎた税額の還付を受けられる場合があります。
住宅ローンの完済資金や売却後の手取り額にも影響するため、契約前に確認が必要です。
「海外にいる=必ず非居住者」とは限らない
所得税法上の居住者・非居住者の判定は、住民票の有無だけで機械的に決まるものではありません。
海外勤務の期間、生活の本拠、家族の居住状況などによって判断されます。
個別の判定については、税務署または税理士へ確認してください。
納税管理人を出国前に検討する
海外赴任後、日本国内で不動産所得や譲渡所得が生じ、確定申告などの手続きが必要になる場合は、日本国内に納税管理人を定めることがあります。
納税管理人は、税務署からの書類の受取りや申告・納税に関する事務を行います。個人でも法人でも選任できます。
国税庁は、納税管理人を選任する場合、原則として納税管理人を定めたとき、または出国の日までに届出書を提出するよう案内しています。
売却予定が明確でなくても、海外赴任中に売却や賃貸を行う可能性がある場合は、出国前に税理士または税務署へ相談しておくと安心です。
マイホームの3,000万円特別控除にも期限がある
自宅を売却して譲渡所得が生じた場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
以前住んでいた自宅については、原則として、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが要件の一つです。
例えば、2026年中に自宅へ住まなくなった場合、ほかの要件を満たせば、2029年12月31日までの売却が期限となる可能性があります。
「出国から丸3年以内」と単純に判断するものではありません。
また、建物を解体して土地だけを売却する場合は、売買契約の時期や解体後の土地利用について追加要件があります。
特例を利用できるかどうかは、居住状況、売却時期、売却相手、建物解体の有無などによって変わります。売却前に税理士または税務署へ確認してください。
出国前に印鑑証明書を取っておけば十分?
「海外転出後は印鑑証明書が取れないなら、出国前に何通か取得しておけばよい」と考える方もいます。
しかし、印鑑証明書には提出先が求める有効期間があり、不動産登記では発行後3か月以内のものを求められる場面があります。
赴任から数年後に売却するのであれば、出国前に取得した印鑑証明書をそのまま使えるとは限りません。
したがって、本当に必要な準備は、印鑑証明書を大量に取ることではなく、
- 権利証などを確認する
- 登記上の住所を確認する
- 司法書士へ相談する
- 出国後に必要な証明書と形式を把握する
ことです。
代理人を決めるときの注意点
海外からの売却では、親族や専門家へ手続きを委任する場合があります。
ただし、代理人へ何を任せるのかは明確にしなければなりません。
委任内容として考えられるものには、次の事項があります。
- 媒介契約の締結
- 売買契約の締結
- 売買条件の交渉
- 手付金・残代金の受領
- 物件の引渡し
- 鍵や書類の授受
- 登記申請
- 固定資産税等の精算
- 契約解除や違約時の対応
不動産売買では大きな金額が動きます。
「売却に関する一切の件」と広く委任する方法もありますが、代理人が価格や条件をどこまで変更できるのか、売却代金を誰の口座で受領するのかは慎重に決める必要があります。
代理人を置けば、所有者本人の確認が不要になるわけでもありません。
司法書士や不動産会社は、本人の意思確認や委任関係の確認を行います。
海外赴任前の実務チェックリスト
出国前に、次の項目を確認しておきましょう。
不動産の確認
- 登記名義を確認した
- 登記上の住所を確認した
- 権利証または登記識別情報の保管場所を確認した
- 固定資産税納税通知書を保管した
- 境界、越境、建物不具合を確認した
- マンションの管理規約や修繕資料を整理した
お金の確認
- 住宅ローン残高を確認した
- 現在の査定価格を確認した
- 売却後の概算手取り額を確認した
- 3年、5年保有した場合の維持費を計算した
- 金融機関へ海外赴任を連絡した
- 税金と納税管理人について確認した
管理体制の確認
- 国内の連絡先を決めた
- 鍵の管理者を決めた
- 郵便物の受取方法を決めた
- 空き家管理の方法を決めた
- 火災保険の取扱いを確認した
- 緊急時の修繕対応を決めた
将来の売却準備
- 海外案件に対応できる不動産会社へ相談した
- 司法書士へ必要書類を確認した
- 赴任先を管轄する在外公館を確認した
- 署名証明の取得方法を確認した
- 在留証明の取得方法を確認した
- 国際郵送に必要な日数を把握した
- 代理人を置くかどうか検討した
すべてを出国前に完了させる必要はありません。
しかし、「誰へ相談し、何を用意し、どのように売却するか」という道筋だけでも作っておけば、海外赴任後の負担は大きく変わります。
よくある質問
海外赴任中でも、日本へ帰国せずに持ち家を売却できますか?
可能です。
郵送、オンライン面談、司法書士による本人確認、代理人などを組み合わせて進められる場合があります。
ただし、買主側金融機関や担当司法書士の確認方法によって必要な対応が異なるため、販売開始前に手続きの流れを確認してください。
出国前に署名証明を取得できますか?
署名証明は、日本に住民登録がない海外在住の日本人に対し、印鑑証明書の代わりとして在外公館が発給するものです。
基本的には出国後、赴任先を管轄する大使館・総領事館などで申請します。
出国前には、必要となる証明形式や申請先を確認しておきましょう。
売却するか決めていなくても査定を受ける意味はありますか?
あります。
現在の価格、住宅ローン残高、売却費用、保有を続ける費用を把握すれば、売却・賃貸・空き家管理を比較できます。
ただし、査定価格は売却を保証する金額ではありません。査定根拠も確認しましょう。
海外赴任中は必ず代理人が必要ですか?
必ずしも必要ではありません。
売主様本人が海外で書類へ署名し、郵送で契約や登記手続きを進める方法もあります。
ただし、国内で鍵の管理、現地確認、緊急対応などを行う連絡先は確保しておいたほうが安心です。
売却代金は海外口座で受け取れますか?
取引金融機関、買主側の融資、送金方法、本人確認、通貨などによって対応が異なります。
一般的には日本国内の本人名義口座を利用するほうが手続きを進めやすい場合があります。
海外送金を予定している場合は、利用する金融機関へ事前に確認してください。
海外赴任中に自宅を売ると3,000万円特別控除は使えませんか?
海外赴任中であることだけを理由に、一律で利用できなくなるわけではありません。
以前住んでいた自宅については、住まなくなった日からの売却期限など、複数の要件があります。
個別事情によって判断が異なるため、売買契約前に税理士または税務署へ確認してください。
まとめ|海外からの不動産売却は「出国前の準備」で負担が変わる
海外在住者でも、日本の持ち家を売却できます。
しかし、国内に住んでいる場合と比べると、本人確認、住所証明、署名証明、国際郵送、司法書士との連携、税務手続きなど、確認すべき項目が増えます。
海外赴任前に重要なのは、すぐに売却を決断することではありません。
次の点を整理し、将来売却できる状態を作っておくことです。
- 現在の査定価格
- 住宅ローン残高と概算手取り額
- 登記名義と登記上の住所
- 権利証などの保管場所
- 空き家または賃貸としての管理方法
- 海外から売却する場合の本人確認方法
- 署名証明・在留証明の取得方法
- 司法書士と国内連絡先
- 非居住者の源泉徴収
- 確定申告と納税管理人
- マイホームの税制特例の期限
海外赴任は、仕事や家族にとって大きな転機です。
だからこそ、日本に残す家についても、
海外へ行ってから考えるのではなく、海外へ行く前に選択肢を作っておく
ことが大切です。
売却を選ぶ場合も、賃貸に出す場合も、空き家として残す場合も、事前に情報を集めて決めた選択であれば、将来の後悔を減らせます。
名古屋市・愛知県で海外赴任に伴う持ち家売却をお考えの方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、海外赴任、転勤、相続、空き家などに伴う不動産売却をお手伝いしています。
海外赴任が決まった方からは、次のようなご相談があります。
「出国前に売却したほうがよいのか判断できない」
「海外赴任中は賃貸と空き家のどちらがよいのか」
「住宅ローンが残っていても売却できるのか」
「海外から日本へ戻らずに売却したい」
「署名証明や在留証明について相談したい」
「親族を代理人にして売却したい」
このような段階でも構いません。
売却を急がせるのではなく、査定価格、住宅ローン、維持費、赴任期間、帰国後の生活、税務上の注意点を整理し、売却・賃貸・保有の選択肢を一緒に検討します。
一般的な住宅だけでなく、空き家、旗竿地、再建築不可の可能性がある土地、境界や越境に問題がある不動産、権利関係が複雑な物件についてもご相談いただけます。
対応エリア
名古屋市南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※本記事は、海外赴任に伴う不動産売却について一般的な情報を提供するものです。必要書類や本人確認方法は、滞在国、国籍、登記内容、取引条件、担当司法書士等によって異なります。税務については税務署または税理士、登記については司法書士、法律上の判断については弁護士へご確認ください。


