なぜ今まで問題なかった土地が、土砂災害警戒区域に指定されるのか?
不動産売却のご相談を受けていると、所有者様からこのような声を聞くことがあります。
「昔からこの土地に住んでいるが、今まで何も問題はなかった」
「購入した時には土砂災害警戒区域ではなかった」
「突然、価値が下がったように感じる」
実際、こうしたケースは珍しくありません。
土砂災害警戒区域は、一度指定されたら永久に変わらないものではありません。
各自治体では、地形調査や災害リスクの見直しを行っており、新たな危険箇所が発見された場合には、後から指定されることがあります。
背景には、近年増加している集中豪雨があります。
近年では、
・線状降水帯による長時間の猛烈な雨
・短時間で発生するゲリラ豪雨
・想定を超える降雨量
などにより、これまで大きな災害が起きていなかった地域でも、土砂災害のリスクが注目されるようになりました。
また、昔は山際や斜面付近の土地について、現在ほど詳細な調査が行われていませんでした。
しかし現在では、航空測量や地形データの分析技術が進み、
「過去には見えていなかった危険性」
が明らかになることがあります。
つまり、
土砂災害警戒区域に指定された土地=以前から危険だった土地
という単純な話ではありません。
時代の変化、調査技術の向上、防災意識の高まりによって、新たにリスクが見える化された土地も存在します。
確かに、土砂災害警戒区域に指定されている土地は、一般的な土地と比較すると購入者から慎重に見られる傾向があります。
しかし、ここで大切なのは、
土砂災害警戒区域=売れない土地
ではないということです。
不動産の価値は、区域指定だけで決まるものではありません。
土地の場所、建築条件、対策方法、周辺環境、そして購入者がどのように活用するかによって評価は変わります。
土砂災害警戒区域とは?
土砂災害警戒区域とは、土砂災害が発生した場合に、住民の生命や身体に危害が及ぶ可能性がある区域として、都道府県が指定している区域です。
名古屋市・愛知県でも、対象地域について公開されているハザードマップなどで確認することができます。
まず売却を検討する場合は、
「自分の土地がどの区域に該当しているのか」
を把握することが第一歩になります。
土砂災害警戒区域には、大きく分けて2種類あります。
① 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
一般的に「イエローゾーン」と呼ばれる区域です。
この区域では、土砂災害の危険性があることを理解したうえで、建築や土地利用を行う必要があります。
ただし、
イエローゾーンだから建築できない
ということではありません。
建物を建築することは可能なケースが多くあります。
ただし、建築する場合には、
・建築計画の確認
・擁壁などの安全対策
・建物構造の検討
などが必要になる場合があります。
例えば、
・土砂が流入する方向への対策
・耐力壁の設置
・鉄筋コンクリート造などの構造検討
・開口部(窓など)の制限
など、土地の状況によって条件が変わります。
そのため、売却前には不動産会社だけではなく、必要に応じて建築士にも確認することが重要です。
② 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
レッドゾーンと呼ばれる区域は、イエローゾーンよりも規制が厳しくなります。
こちらは、土砂災害が発生した場合に建築物に損壊が生じ、住民の生命に著しい危害が及ぶ可能性がある区域です。
そのため、
・建築物の構造規制
・一定の安全対策
・建築計画への制限
などがかかる場合があります。
レッドゾーンに指定されると発生する主な制限
レッドゾーンでは、イエローゾーンよりも厳しい規制があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建築規制 | 居室を有する建築物を建築する場合、土砂災害による衝撃に耐えられる構造(鉄筋コンクリート造など)や必要な安全対策が求められる場合があります |
| 開発規制 | 宅地造成や開発行為を行う場合、都道府県知事の許可が必要となる場合があります |
| 告知義務 | 売買・賃貸の際には、宅地建物取引業法に基づき、買主・借主へ重要事項として説明する義務があります |
| 融資への影響 | 金融機関によっては担保評価や住宅ローン審査に影響する場合があります |
イエローゾーンだから安心とは限らない|レッドゾーンとの違いを正しく理解する
一般的には、
「レッドゾーンは危険で、イエローゾーンなら大丈夫」
と思われがちですが、これは正確ではありません。
イエローゾーンは、土砂災害が発生した場合に、住民の生命や身体に危害が生じるおそれがある区域です。
一方、レッドゾーンは、その中でも特に建築物に大きな被害が生じる可能性が高く、より厳しい規制がかかる区域です。
つまり、イエローゾーンも土砂災害リスクが「ない土地」ではありません。
レッドゾーンとの距離だけでは判断できない
所有者様から、
「自分の土地はレッドゾーンから○m離れているから大丈夫ですよね?」
という質問を受けることがあります。
しかし、土砂災害区域は単純な距離だけで決まるものではありません。
判断には、
・山や斜面の高さ
・傾斜角度
・地形
・土砂が流れる方向
・過去の災害履歴
・地質状況
など、さまざまな要素が関係します。
そのため、レッドゾーンから離れているように見えても、地形条件によっては将来的に区域指定の対象となる可能性があります。
将来的に区域指定が変更される可能性もある
土砂災害警戒区域は、一度指定されたら永久に変わらないものではありません。
自治体では、定期的な調査や地形の確認を行っており、新たな危険箇所が判明した場合には区域が追加・変更されることがあります。
近年では、
・線状降水帯による集中豪雨
・短時間で発生する猛烈な雨
・想定を超える降雨量
などにより、これまで大きな問題がなかった場所でも災害リスクが注目されています。
そのため、
「昔から何も起きていない」
「購入時には指定されていなかった」
という理由だけで、将来も安全とは言い切れません。
不動産売却では「区域名」だけで判断しないことが重要
土砂災害警戒区域の不動産を売却する場合、大切なのは、
「イエローだから売れる」
「レッドだから売れない」
という単純な判断ではありません。
見るべきポイントは、
・どの場所が指定されているのか
・敷地全体が該当しているのか
・建物への影響はあるのか
・建築制限はどの程度なのか
・買主がどのような利用を考えるのか
です。
売主が知っておくべき「告知義務」
土砂災害特別警戒区域に該当する不動産を売却する場合、売主には買主へ正確な情報を伝えることが求められます。
「売却価格を下げたいから伝えない」
「買主が気付かなければ問題ない」
という考え方は、後々のトラブルにつながる可能性があります。
重要なのは、
リスクを隠すことではなく、正しく説明したうえで、その土地の価値を理解してくれる買主を探すこと
です。
レッドゾーンだから売れない、ではない
レッドゾーンに指定されている土地は、確かに一般的な住宅地と比較すると売却の難易度は上がります。
しかし、
「レッドゾーン=価値がない」
ではありません。
例えば、
・土地の立地が良い
・眺望や環境に魅力がある
・価格面でメリットがある
・建築や活用方法を検討できる買主がいる
・隣地と合わせることで価値が生まれる
など、不動産は一つひとつ条件が違います。
大切なのは、リスクだけを見ることではなく、
「その土地には、どのような出口があるのか」
を考えることです。
土砂災害警戒区域の土地が安く評価されやすい理由
では、なぜ土砂災害警戒区域の土地は価格が下がる傾向があるのでしょうか。
理由は大きく3つあります。
① 購入者の心理的な不安
不動産購入では、価格だけではなく安心感も重要です。
購入者からすると、
「将来大丈夫なのか」
「家族を住ませても問題ないのか」
という心理的な不安があります。
そのため、一般的な土地より慎重に判断されます。
② 建築コストが増える可能性
安全対策が必要になる場合、
通常より建築費が高くなる可能性があります。
そのため、購入者は土地価格だけではなく、
土地代+建築費
という総額で判断します。
③ 買主層が限定される
一般住宅購入者だけを見ると、検討者が少なくなる可能性があります。
しかし、
・土地の特性を理解している購入者
・建築会社
・投資家
・専門的なノウハウを持つ事業者
から見ると、別の価値が見える場合があります。
注意したい「土砂災害区域だから安く買います」という言葉
売却相談の中で注意していただきたいことがあります。
それは、
「土砂災害警戒区域だから価値はありません」
という説明を、そのまま信じてしまうことです。
確かに、区域指定によって市場価格へ影響が出ることはあります。
しかし、
「だから相場より極端に安く売るしかない」
とは限りません。
中には、売主様が知識を持っていないことを利用し、
本来検討できる選択肢を提示せず、安価な買取を提案するケースもあります。
大切なのは、
買取価格だけを見る前に、本当にその価格が適正なのかを確認すること
です。
土砂災害警戒区域の土地売却で大切なこと
土砂災害警戒区域の土地を売却するときに必要なのは、
「売れるか、売れないか」
という二択ではありません。
確認すべきことは、
・どの区域に該当しているのか
・建築条件はどうなのか
・どんな買主なら検討できるのか
・どの売却方法が適しているのか
です。
不動産は、条件が悪いから価値がゼロになるものではありません。
見る人、使う人、活用方法によって評価は変わります。
|土砂災害警戒区域だから売れない、ではない
土砂災害警戒区域の土地は、確かに一般的な土地より売却に工夫が必要です。
しかし、
「区域指定がある」
↓
「価値がない」
↓
「安く手放すしかない」
という考え方は危険です。
本当に大切なのは、
その土地に残された可能性を正しく把握すること
です。
売却で一番避けたいことは、土地の条件ではありません。
「知らないまま選択肢を失うこと」です。
レッドゾーンの土地を放置するリスク|所有者が知っておくべき責任
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の不動産を所有している場合、売却や活用だけではなく、「所有している責任」についても考える必要があります。
中には、
「今まで何十年も何も起きていない」
「誰も住んでいない土地だから問題ない」
と考え、そのまま放置されているケースがあります。
しかし、近年では異常気象による集中豪雨や線状降水帯などにより、これまで想定されていなかった規模の災害が発生しています。
土地や建物を所有するということは、単に権利を持つだけではありません。
適切に管理する責任も伴います。
危険を認識しながら放置した場合のリスク
例えば、
・斜面の崩落リスクを把握していた
・擁壁の老朽化を認識していた
・建物や工作物の安全管理を怠っていた
・周囲へ危険が及ぶ可能性を知りながら何も対策をしなかった
といった事情がある場合、万一、土砂災害によって隣接地や第三者へ被害が発生すると、所有者の管理責任が問われる可能性があります。
民法上、土地や工作物については、所有者や管理者に一定の責任が生じる場合があります。
特に、
「危険を知らなかった」
という状況と、
「危険を知っていたが放置していた」
という状況では、責任の判断において意味が変わります。
空き家・空き地の場合は特に注意が必要
レッドゾーンにある空き家では、建物だけではなく周辺環境の管理も重要になります。
例えば、
・屋根や外壁の老朽化
・擁壁の劣化
・庭木の倒壊
・敷地内の土砂流出
・近隣への安全上の影響
などがあります。
所有者が遠方に住んでいる場合や、相続によって取得したものの現地確認ができていない場合、問題が発見されにくくなります。
国庫帰属制度という選択肢|しかし「土地を手放せる」と簡単に考えてはいけない
土砂災害警戒区域やレッドゾーンにある土地を所有されている方の中には、
「もう管理できない」
「売却も難しそうだから国に引き取ってもらえないか」
と考える方もいらっしゃいます。
令和5年(2023年)から始まった相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって取得した土地について、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらうことができる制度です。
しかし、注意しなければならないのは、
どんな土地でも国が引き取ってくれる制度ではない
ということです。
土砂災害警戒区域の土地は国庫帰属できるのか?
土砂災害警戒区域やレッドゾーンにある土地だからといって、必ず対象外になるわけではありません。
一方で、
・崖や斜面がある
・土砂災害の危険性が高い
・管理に多額の費用が必要
・隣地との境界問題がある
・建物や工作物が残っている
などの場合、国庫帰属の審査では慎重に判断されます。
特に、国が引き取った後に管理負担が大きくなる土地については、承認されない可能性があります。
国庫帰属制度には費用負担がある
国庫帰属制度は「無料で土地を処分できる制度」ではありません。
申請時には審査手数料が必要であり、承認された場合でも、土地の管理に必要となる負担金を納付する必要があります。
つまり、
「使っていない土地だから、とりあえず国へ」
という単純な制度ではありません。
放棄する前に比較すべき選択肢
土砂災害リスクがある土地の場合、国庫帰属制度だけを見るのではなく、
・売却できる可能性を探る
・隣地所有者へ相談する
・土地活用の可能性を検討する
・管理方法を見直す
・国庫帰属制度の対象になるか確認する
など、複数の選択肢を比較することが大切です。
本当に怖いのは「選択肢を知らないまま放置すること」
土砂災害警戒区域やレッドゾーンの土地は、確かに一般的な土地より判断が難しい不動産です。
しかし、
「危険だから価値がない」
「売れないから放置する」
と決めつけてしまうことが、将来的な負担を大きくする可能性があります。
不動産は、所有者が諦めた瞬間に可能性がなくなるわけではありません。
大切なのは、
売却するのか、活用するのか、国庫帰属を検討するのか。
正しい情報を得たうえで、自分に合った出口を選ぶことです。
ふどうさんのMAGOは名古屋市エリアを中心に不動産売却、空き家問題を専門とする不動産会社です。、専門家のアドバイスと革新的なアイディアで、お客様の悩みを解決いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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