はじめに|海外からの不動産売却は「出国前の準備」で難易度が変わる
「海外転勤中でも、日本にある家を売却できますか」
「売買契約や決済のために帰国しなければいけませんか」
「実印や印鑑証明書がなくても売却できますか」
海外転勤、海外移住、国際結婚などによって日本を離れた後、日本国内に所有するマンション、戸建て、土地、相続した実家を売却したい方は少なくありません。
結論からいえば、海外に住みながらでも、日本国内の不動産は売却できます。
必ずしも売買契約や決済のたびに帰国しなければならないわけではありません。
ただし、日本に住んでいる方の売却と比べて、次の準備が必要になります。
- 海外住所を証明する書類
- 本人の署名を証明する書類
- 登記手続きを担当する司法書士
- 必要に応じた日本国内の代理人
- 日本で税務手続きを行う納税管理人
- 売却代金を受け取る口座
- 非居住者に対する源泉徴収の確認
- 登記簿上の住所変更
- 国際郵便にかかる日数を考慮した日程管理
特に、これから海外赴任する方は、出国前に準備できることが数多くあります。
出国後に慌てて委任状や証明書を整えるより、日本にいる間に不動産会社、司法書士、税理士、国内連絡先を決めておく方が、売却手続きの負担を大幅に減らせます。
本記事では、
- すでに海外在住の方
- これから海外へ赴任する方
- 海外赴任中に自宅を売るか迷っている方
に向けて、外国から日本の不動産を売却する流れ、最低限の必要書類、代理人、登記、税金、出国前に済ませたい手続きを実務の視点から解説します。
海外在住でも日本の不動産を売却できる
海外に居住していることを理由に、日本国内の不動産を売却できなくなるわけではありません。
売主本人の意思確認と本人確認ができ、登記や税務に必要な書類を準備できれば、海外から売却手続きを進められます。
売却方法には、主に次の3つがあります。
1.重要な場面だけ帰国する
売買契約や決済のタイミングに合わせて帰国する方法です。
本人確認や署名を日本国内で行いやすい一方、航空券代、滞在費、仕事の日程調整が必要になります。
2.本人が海外から書類を郵送する
売主本人が海外で契約書や登記委任状へ署名し、必要な証明書とともに日本へ郵送する方法です。
代理人を立てずに進められる場合もありますが、国際郵便の遅延や書類不備に注意が必要です。
3.日本国内の代理人へ委任する
親族、弁護士など、信頼できる国内の人へ一定の手続きを委任する方法です。
代理権の範囲を記載した委任状が必要になります。
ただし、代理人を立てても、売主本人の意思確認や署名証明が不要になるとは限りません。
「代理人」と「司法書士」は役割が違う
海外からの不動産売却では、代理人と司法書士が混同されることがあります。
代理人の役割
委任状で与えられた範囲内で、売主に代わって手続きを行います。
例えば、次の権限です。
- 媒介契約の締結
- 売買契約の締結
- 手付金の受領
- 契約条件の確認
- 残代金の受領
- 鍵や書類の引渡し
- 固定資産税等の精算
- 物件に関する連絡対応
何を委任するかは、委任状に具体的に記載します。
「不動産売却に関する一切の権限」とだけ記載すると、価格変更、解除、違約金、残代金受領などの範囲が曖昧になる可能性があります。
司法書士の役割
司法書士は、主に所有権移転登記、抵当権抹消登記、住所変更登記などを担当します。
また、登記申請に先立って売主本人の意思確認、本人確認、必要書類の確認を行います。
司法書士が当然に売買契約全体の代理人になるわけではありません。
売買契約を締結する代理人と、登記を担当する司法書士を別々に選ぶ場合もあります。
誰にどの権限を与えるのか、事前に整理しておくことが重要です。
これから海外赴任する方が出国前に行うべき10の準備
海外赴任が決まっていて、将来、自宅を売却する可能性がある方は、出国前に次の準備を進めてください。
1.売却するか、賃貸するか、保有するかを比較する
出国が決まったからといって、急いで売却する必要があるとは限りません。
次の3案を比較します。
- 出国前に売却する
- 海外赴任中に売却する
- 賃貸または空き家として保有する
住宅ローン、管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険、空き家管理費、想定賃料、売却査定額を確認します。
判断基準は「いくらで売れるか」だけではありません。
売却後に手元へいくら残るのか
まで計算することが大切です。
2.住宅ローン残高を確認する
住宅ローンが残っている場合は、金融機関から残高証明書や返済予定表を取得します。
不動産を売却して所有権を移転するには、原則として残代金決済時に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消します。
想定売却価格より住宅ローン残高や売却経費の合計が大きい場合、自己資金で不足分を補う必要があります。
手取り額の概算
想定売却価格-住宅ローン残高-売却経費-税金=概算手取り額
売却経費には、仲介手数料、登記費用、測量費、解体費、残置物処分費などが含まれる場合があります。
3.海外転勤を金融機関へ伝える
住宅ローンは、本人や家族が居住することを前提としている場合があります。
海外転勤後に空き家にする場合、家族が住み続ける場合、賃貸へ出す場合では、金融機関の取扱いが異なる可能性があります。
特に、無断で第三者へ賃貸すると契約上の問題になる場合があるため、出国前に金融機関へ確認してください。
4.不動産会社を選定する
出国後もオンラインで対応できる不動産会社を選びます。
確認したい項目は次のとおりです。
- 海外在住者の売却に対応した経験
- オンライン面談の可否
- 電子契約への対応
- 国際郵便を含む日程管理
- 空き家の現地確認
- 鍵の保管・内覧対応
- 売却活動の報告方法
- 海外との時差を考慮した連絡
- 司法書士・税理士との連携
- 名古屋市の対象地域における売却経験
出国前に査定を受けておけば、住宅ローン残高と比較し、売却の必要性を判断できます。
5.司法書士へ事前相談する
海外在住者の登記手続きでは、国内居住者と異なる証明書が必要になる場合があります。
必要書類は、国籍、滞在国、登記簿上の住所、抵当権の有無などによって変わります。
売買契約が決まってからではなく、出国前または販売開始前に司法書士へ相談してください。
特に確認したいのは次の事項です。
- 登記簿上の住所
- 海外住所への住所変更登記
- 在留証明の必要性
- 署名証明の形式
- 登記委任状の書式
- 本人確認の方法
- 抵当権抹消書類
- 原本の郵送時期
6.国内の代理人・連絡先を決める
代理人は必須とは限りません。
本人が海外から契約書類をやり取りし、司法書士による本人確認を受けて売却できる場合もあります。
ただし、国内に連絡できる人がいると、次の対応がしやすくなります。
- 郵便物の確認
- 鍵の受渡し
- 台風・漏水等の緊急対応
- 管理会社や近隣との連絡
- 書類原本の受領
- 固定資産税納税通知書の確認
代理人を選任する場合は、価格交渉や契約解除まで任せるのか、書類の受領だけを任せるのか、権限の範囲を明確にします。
7.印鑑証明書等をむやみに先取りしない
出国前に印鑑証明書を何通も取得すれば安心だと思われるかもしれません。
しかし、提出先によっては発行後の期間に条件があり、売却時期が先になれば使えない可能性があります。
また、出国して住民登録を抹消すると、印鑑登録も廃止されるのが一般的です。
出国前に必要書類を取得する場合は、使用時期と提出先を司法書士へ確認してください。
書式が決まる前に署名・押印すると、作り直しになることがあります。
8.権利証などの原本を確認する
出国前に、次の書類がどこにあるか確認します。
- 登記済権利証または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書
- 購入時の売買契約書
- 建築確認済証・検査済証
- 測量図・境界確認書
- マンションの管理規約
- 住宅ローン関係書類
- リフォーム履歴
- 賃貸借契約書
権利証や登記識別情報が見つからなくても、直ちに売却できなくなるわけではありません。
ただし、司法書士による本人確認情報の作成など、別の手続きと費用が必要になる場合があります。
9.納税管理人を検討する
非居住者が日本で確定申告や納税などの手続きを行う必要がある場合、国内に納税管理人を定めて税務署へ届け出る方法があります。
国税庁は、海外勤務中に日本の不動産を売却した場合、確定申告書を提出するまでに納税管理人を定め、届出書を所轄税務署へ提出するよう案内しています。
納税管理人には、親族などの個人を選任する場合と、税理士へ依頼する場合があります。
売却益が出る可能性がある場合や、3,000万円特別控除などを検討する場合は、出国前に税理士へ相談すると安心です。
10.海外住所への変更登記を確認する
2026年4月1日から、不動産の所有者は、住所や氏名を変更した日から2年以内に住所・氏名変更登記を申請することが義務化されました。正当な理由なく義務に違反した場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。
海外住所へ転居した場合も、登記簿上の住所と現在住所が異なる状態になります。
さらに、海外住所への変更登記では、国内の連絡先となる者の情報を登記する取扱いがあります。国内連絡先がない場合は、その旨を申請することもできます。
売却予定がある場合、登記簿上の住所が古いままでは、所有権移転登記の前提として住所変更登記が必要になることがあります。
出国前に司法書士へ確認してください。
すでに海外在住の方が最初に行うこと
すでに海外で生活している場合は、次の順序で進めます。
- 登記簿上の名義・住所を確認する
- 住宅ローン残高と抵当権を確認する
- 名古屋の不動産会社へ査定を依頼する
- 海外在住者に対応できる司法書士を選ぶ
- 必要に応じて国内代理人を決める
- 在留証明・署名証明の必要性を確認する
- 売却後の税金と源泉徴収を確認する
- 納税管理人を選任する
- 販売方法と引渡し条件を決める
最も避けたいのは、先に在留証明や署名証明を取得し、後から書式が違うと判明することです。
証明書を取得する前に、司法書士へ必要な形式、記載事項、部数、使用目的を確認してください。
海外から不動産を売却する基本的な流れ
ステップ1|査定・売却方法の検討
不動産会社へ物件資料を送り、査定を受けます。
仲介で市場へ売り出す場合と、不動産会社へ直接売却する場合を比較します。
海外在住だからという理由だけで、買取を選ぶ必要はありません。
現地対応を任せられる体制があれば、仲介で一般の購入者を探すこともできます。
ステップ2|媒介契約の締結
仲介を依頼する場合は、媒介契約を締結します。
電子契約または書面郵送を利用できる場合があります。
専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の違いと、売却活動の報告方法を確認します。
ステップ3|販売活動・内覧
鍵を不動産会社や国内代理人へ預け、内覧対応を行います。
居住中ではなく空き家の場合は、換気、清掃、庭木管理、郵便物、台風後の確認など、販売期間中の管理方法も決めます。
ステップ4|購入申込みと条件交渉
価格だけでなく、次の条件を確認します。
- 手付金
- 契約日
- 引渡日
- 残置物
- 境界明示
- 建物の修繕
- 契約不適合責任
- 住宅ローン特約
- 解体・測量の負担
- 源泉徴収の有無
ステップ5|売買契約
本人が契約書へ署名する方法と、代理人が委任状に基づいて契約する方法があります。
契約締結に署名証明が必要かどうかは、取引方法、相手方、仲介会社、司法書士の確認方法によって異なります。
「売買契約用と決済用で必ず2通必要」とは限りません。
必要な書類と部数を先に確定してください。
ステップ6|決済前の本人確認
司法書士が、オンライン面談などにより本人確認と売却意思の確認を行います。
時差がある場合は、早めに面談日時を調整します。
住宅ローンが残っている場合は、金融機関とも抵当権抹消の手続きを進めます。
ステップ7|残代金決済・引渡し・登記
買主から残代金が支払われ、鍵や関係書類を引き渡します。
司法書士が所有権移転登記や抵当権抹消登記を申請します。
海外在住の売主が決済へ出席できない場合は、代理人または司法書士が事前に定めた方法で手続きを進めます。
ステップ8|確定申告
日本国内の不動産を売却して譲渡所得が生じた場合、非居住者であっても日本で課税対象になります。
源泉徴収された場合も、それだけで税務手続きが完了するとは限りません。
確定申告によって税額を精算し、源泉徴収額が本来の税額を上回っていれば還付を受けられる可能性があります。
海外在住の日本人が用意する最低限の必要書類
必要書類は案件によって異なりますが、一般的には次の資料を確認します。
本人・住所・署名に関する書類
- パスポート
- 在留証明
- 署名証明
- 海外住所から登記簿上の住所までのつながりを証明する資料
- 登記委任状
- 必要に応じて売買契約用の委任状
不動産に関する書類
- 登記済権利証または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書
- 登記事項証明書
- 公図・地積測量図
- 境界確認書
- 建築確認済証・検査済証
- 購入時の売買契約書
- マンションの場合は管理規約等
- 住宅ローン残高が分かる資料
売却・税務に関する書類
- 媒介契約書
- 売買契約書
- 物件状況報告書
- 付帯設備表
- 売却代金の受取口座情報
- マイナンバー関係書類
- 納税管理人の届出書
- 取得費・譲渡費用を確認できる領収書等
すべてが「必須書類」という意味ではありません。
物件の種類、国籍、登記内容、ローン、代理人の有無によって必要書類は変わります。
在留証明とは
在留証明は、海外に住む日本人について、現在の海外住所などを在外公館が証明する書類です。
日本の住民票に代わる住所証明として、登記手続きなどで使用されます。
外務省は、在留証明の申請について、主に次の条件を案内しています。
- 日本国籍を有していること
- 現地に住所または居所を定めていること
- 原則として日本に住民登録がないこと
- 現地に3か月以上滞在していること、または今後3か月以上の滞在が見込まれること
一定の要件を満たす場合は、オンライン申請を利用できることもあります。
申請時には一般的に、パスポート、海外住所を確認できる書類、滞在期間を確認できる資料などを求められます。
本籍地の記載が必要な場合は、戸籍関係資料が必要になることがあります。
必要書類、手数料、受取方法は在外公館によって確認してください。
署名証明とは
署名証明は、海外在住の日本人について、本人の署名であることを在外公館が証明するものです。
日本国内の印鑑証明書に代わる資料として使用されます。
主に次の形式があります。
- 委任状などの書類へ在外公館職員の面前で署名し、その書類と証明書を一体化する形式
- 単独の証明書として発行される形式
不動産登記では、委任状へ証明書を綴り合わせる形式を求められる場合があります。
先に委任状へ署名せず、司法書士が作成した書式を受け取ってから申請するのが安全です。
証明手続きの一部はオンライン申請に対応していますが、署名証明の性質上、来館や対面確認が必要となる場合があります。また、電子化された証明書についても、提出先が紙媒体を求める場合があるため、申請前に司法書士へ確認してください。
外国籍の海外居住者は書類が異なる
在留証明や日本の在外公館による署名証明は、原則として日本国籍を有する方を対象とする制度です。
外国籍の方は、滞在国の公証人による宣誓供述書、署名認証、住所証明、公的機関が発行する書類などを使用する場合があります。
国や地域によっては、翻訳文、領事認証、アポスティーユなどを求められる可能性もあります。
必要書類は国籍と居住国によって異なるため、日本側の司法書士へ事前に確認してください。
非居住者とは
所得税法上の「非居住者」は、単に海外にいる人という意味ではありません。
一般には、日本国内に住所がなく、かつ、現在まで引き続き1年以上居所がない個人をいいます。
海外支店などで1年以上勤務する予定で出国する場合、非居住者として扱われることがあります。
ただし、住所の判定は、滞在期間だけでなく、職業、家族、住居、資産などの生活関係を踏まえて判断されます。
「海外赴任=すべて同じ税務処理」とは限らないため、税理士または税務署へ確認してください。
海外在住者の不動産売却と10.21%の源泉徴収
非居住者が日本国内の土地・建物を売却する場合、買主は原則として、売買代金の10.21%を源泉徴収して税務署へ納付します。
源泉徴収されるのは「利益の10.21%」ではなく、原則として「売買代金の10.21%」です。
例えば、売買代金が3,000万円の場合、原則的な源泉徴収額は次のとおりです。
3,000万円×10.21%=306万3,000円
売主が決済時に受け取る金額へ大きく影響するため、住宅ローンの完済資金や手取り額を計算するときは注意が必要です。
源泉徴収が不要となる場合
次の条件をいずれも満たす場合は、源泉徴収が不要とされています。
- 売買代金が1億円以下
- 買主が個人
- 買主本人またはその親族が居住するために購入する
つまり、
「売却額が1億円以下なら必ず源泉徴収されない」
という意味ではありません。
買主が法人、不動産業者、投資家である場合や、賃貸・事業目的で購入する場合は、1億円以下でも原則として源泉徴収の対象になります。
契約前に買主の属性と利用目的を確認する必要があります。
源泉徴収は最終的な税額ではない
10.21%の源泉徴収額は、不動産売却による最終的な税額ではありません。
最終的な譲渡所得は、一般に次のように計算します。
譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除
源泉徴収された金額が確定申告で計算した税額より多ければ、還付を受けられる可能性があります。
反対に、源泉徴収されていなくても、譲渡所得が発生していれば納税が必要になることがあります。
所有期間5年の数え方に注意する
土地・建物の譲渡所得は、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。
判定日は売却日そのものではなく、
売却した年の1月1日現在
です。
その時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下であれば短期譲渡所得となります。
相続した不動産では、原則として被相続人の取得時期を引き継ぐため、自分が相続してからの年数だけで判断しません。
海外赴任中でも3,000万円特別控除を受けられる可能性がある
以前住んでいたマイホームを売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる可能性があります。
居住しなくなった家については、原則として、
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
に売却する必要があります。
例えば、2026年5月に海外赴任のため自宅を離れた場合、期限の一つの目安は2029年12月31日です。
なお、住まなくなった後、その住宅を賃貸していたからという理由だけで、直ちに3,000万円特別控除を受けられなくなるわけではありません。
国税庁は、期限内の譲渡であれば、住まなくなった後の用途は問わないと案内しています。
ただし、次のような場合は個別確認が必要です。
- 家屋を先に取り壊した
- 配偶者だけが日本に残っている
- 複数の住宅を所有している
- 親族や同族会社へ売却する
- 過去に別の住宅特例を利用した
- 建物と土地の所有者が異なる
- 帰国後に再び居住した
- 相続で取得した空き家を売却する
単身赴任で配偶者や子どもが日本の自宅に住み続けている場合も、一定の事情と要件を満たせば特例の対象となる可能性があります。
家を解体する前に税務確認が必要
海外赴任中に管理が難しいという理由で、先に建物を解体する方もいます。
しかし、家屋を取り壊して敷地だけを売却する場合、3,000万円特別控除には追加の要件があります。
国税庁は、主に次の要件を示しています。
- 取り壊した日から1年以内に敷地の売買契約を締結する
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
- 取り壊してから売買契約日まで、その敷地を貸付けなどに使用しない
解体してから税務上の特例を知っても、元へ戻すことはできません。
解体前に、不動産会社と税理士の双方へ相談することが重要です。
海外からの不動産売却で起こりやすい失敗
1.署名証明を先に取得した
司法書士指定の委任状を受け取る前に署名証明を取得し、形式や記載内容が合わず、再取得になったケースです。
対策:書式・部数・形式を確定してから申請する。
2.司法書士を決済直前に探した
滞在国の書類確認や本人確認に時間がかかり、予定日に登記できなくなる可能性があります。
対策:販売開始時または購入申込みの段階で司法書士へ相談する。
3.源泉徴収を手取り計算に入れていなかった
決済時に売買代金の10.21%が控除され、住宅ローン完済資金が不足する可能性があります。
対策:契約前に買主の属性と利用目的を確認し、決済時の入金額を計算する。
4.登記簿上の住所が何度も変わっていた
登記住所から現在の海外住所までのつながりを証明する資料が不足し、追加取得が必要になることがあります。
対策:国内転居歴と海外住所の履歴を整理する。
5.国際郵便の日数を考慮しなかった
契約書や登記委任状の原本が決済日までに届かない可能性があります。
対策:追跡可能な配送方法を利用し、余裕のある契約日程にする。
6.納税管理人を決めていなかった
確定申告書や税務署からの書類を受け取れず、申告準備が遅れる場合があります。
対策:売却前から納税管理人と税理士の必要性を確認する。
7.代理人の権限を広くしすぎた
売却価格の変更や契約解除まで代理人が単独で判断できる委任状になっていたケースです。
対策:任せる権限と、本人の事前承諾が必要な事項を分ける。
海外在住者に対応できる不動産会社の選び方
海外からの売却では、査定価格だけで会社を選ぶと、書類や連絡の場面で行き詰まることがあります。
次の点を確認してください。
- 海外在住者の売却経験がある
- 名古屋市の対象地域に詳しい
- オンラインで定期報告を受けられる
- 書類を事前にデータで確認できる
- 司法書士・税理士と連携できる
- 時差を踏まえた日程調整ができる
- 空き家の鍵と現地管理を任せられる
- 源泉徴収を契約前に確認できる
- 仲介と買取を比較できる
- 決済時の入金額を説明できる
海外在住者の売却では、「高い査定額」だけでなく、
誰が、いつ、何を確認するかを工程表にできる会社
を選ぶことが重要です。
出国前チェックリスト
これから海外赴任する方は、出国前に次の項目を確認してください。
- 不動産の売却査定を受けた
- 住宅ローン残高を確認した
- 海外転勤について金融機関へ相談した
- 売却・賃貸・保有を比較した
- 登記済権利証または登記識別情報を確認した
- 登記簿上の住所を確認した
- 司法書士へ相談した
- 国内連絡先を決めた
- 必要に応じて代理人候補を決めた
- 委任する権限の範囲を整理した
- 納税管理人・税理士の必要性を確認した
- 3,000万円特別控除の期限を確認した
- 源泉徴収された場合の手取り額を確認した
- 固定資産税納税通知書の送付先を確認した
- 鍵の保管者を決めた
- 空き家の火災保険・管理方法を確認した
- 海外から利用できる銀行口座を確認した
- パスポートの有効期限を確認した
- 在留届の提出方法を確認した
- 出国後の連絡方法と時差を共有した
最低限これだけは先に決める
時間がない場合でも、出国前に次の5点を決めてください。
- 売却を相談する不動産会社
- 登記を相談する司法書士
- 日本国内の連絡担当者
- 売却代金を受け取る口座
- 納税管理人・税理士の必要性
書類をすべて先取りするより、
誰が売却全体を管理し、誰が登記と税務を担当するのか
を決める方が重要です。
よくある質問
海外に住んだまま日本の不動産を売却できますか
はい。本人確認、売却意思の確認、必要書類の準備ができれば、海外からでも売却できます。
必ずしも売買契約や決済のたびに帰国する必要はありません。
国内代理人は必須ですか
必須とは限りません。
本人が海外から書類を郵送し、オンラインで本人確認を受けて進められる場合もあります。
ただし、鍵、郵便物、緊急時対応などを考えると、国内連絡先を決めておくと実務が進めやすくなります。
司法書士を代理人にすれば、すべて任せられますか
司法書士は主に登記手続きと本人確認を担当します。
売買契約、価格交渉、鍵の引渡し、残代金の受領などを当然にすべて代理するわけではありません。
依頼範囲と委任状の内容を確認してください。
在留証明と署名証明は必ず必要ですか
登記内容や取引方法によって異なります。
海外住所への変更登記や本人確認のために求められることが多い書類ですが、具体的な種類、形式、部数は司法書士へ確認してください。
サイン証明は何回取得しますか
必ず2回とは限りません。
売買契約用、登記委任状用、金融機関用など、提出先によって必要部数が変わります。
同じ証明書を使い回せない場合もあるため、取得前に確認してください。
売買代金の10.21%は必ず源泉徴収されますか
原則として非居住者から日本の不動産を購入する買主には源泉徴収義務があります。
ただし、売買代金が1億円以下で、個人の買主が本人または親族の居住用として購入する場合は、源泉徴収が不要となります。
海外赴任中に賃貸したら3,000万円控除は使えませんか
賃貸したことだけで直ちに対象外になるとは限りません。
以前住んでいた家を、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなど、所定の要件を満たす必要があります。
個別事情を税理士または税務署へ確認してください。
まとめ|海外からの売却は「証明書」より先に担当者を決める
海外転勤中でも、日本国内の不動産は売却できます。
しかし、国内居住者の売却とは異なり、
- 海外住所の証明
- 署名の証明
- 登記簿上の住所変更
- 代理人の権限
- 司法書士による本人確認
- 非居住者の源泉徴収
- 納税管理人と確定申告
- 国際郵便と時差
を考慮する必要があります。
最も重要なのは、証明書を先に集めることではありません。
不動産会社、司法書士、税理士、国内連絡先を決め、必要書類と手続きの順序を一本化することです。
これから海外赴任する方は、日本にいる間に準備を始めてください。
すでに海外で生活している方も、必要書類の形式を確認してから動けば、帰国せずに売却できる可能性があります。
名古屋市の不動産を海外から売却したい方へ
ふどうさんのMAGOでは、名古屋市を中心に、海外転勤中の自宅、海外から相続した実家、長期間空き家になっている住宅などの売却相談を承っています。
「海外から帰国せずに売却したい」
「国内代理人を誰にすればよいか分からない」
「住宅ローンが残っている」
「在留証明や署名証明の準備方法を知りたい」
「源泉徴収後に手元へいくら残るか確認したい」
このようなお悩みについて、不動産会社、司法書士、税理士等と連携しながら、売却の工程を整理します。
オンラインでのご相談にも対応し、査定、販売活動、契約、決済、引渡しまで、海外との時差や書類郵送期間を考慮して進めます。
出国前はもちろん、すでに海外にお住まいの段階でもご相談いただけます。
※本記事は一般的な情報を提供するものです。必要書類、登記手続き、本人確認、源泉徴収、譲渡所得税、居住用財産の特例は、国籍、居住国、契約内容、登記内容、売主・買主の属性などによって異なります。実際の売却では、司法書士、税理士、所轄税務署、在外公館等へ個別にご確認ください。


