名古屋で「長屋売却」が難航する本当の理由
こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
「長屋なんですが、売れますか?」
名古屋で不動産売却のご相談を受けていると、このような質問をいただくことがあります。
特に、名古屋市南区、中川区、中村区、西区、北区、熱田区など、古くからの住宅地を歩いていると、複数の住戸が壁や屋根をつなげた建物を見かけます。
一つの長い屋根の下に、玄関がいくつも並ぶ。
外壁はつながっているのに、窓や玄関の改修時期は一戸ずつ違う。
片方は人が住み、もう片方は雨戸が閉じたままになっている。
こうした長屋は、名古屋の街が歩んできた時間を残す建物でもあります。
しかし、売却となると一般的な一戸建てより確認事項が多く、話が進みにくくなることがあります。
ここで最初にお伝えしたいのは、次の二点です。
🟥 長屋だから、必ず再建築できないわけではありません。
🟩 長屋だから売れないのではなく、権利・接道・構造・切り離し・融資の条件が分からないままでは、買主が判断できないのです。
この記事では、名古屋の長屋売却が難航する本当の理由と、売却前に調べるべき事項、古家付き売却・一棟売却・隣接所有者への提案・買取などの出口を、実務の視点から解説します。
そもそも「長屋」とは?共同住宅との違い
一般に長屋とは、二戸以上の住戸が壁などを接して並び、それぞれの住戸に屋外から直接出入りできる形式の建物をいいます。
テラスハウスや連棟式住宅と呼ばれることもあります。
共同住宅との大きな違いは、共用の廊下、階段、玄関ホールなどを通らず、それぞれの住戸へ直接出入りする点です。
ただし、日常会話で「長屋」と呼ばれている建物が、登記や建築確認でも同じように整理されているとは限りません。
売却前には、少なくとも次の資料を確認します。
- 土地・建物の登記事項証明書
- 公図、地積測量図、建物図面・各階平面図
- 建築確認済証、検査済証、確認申請図面
- 固定資産税課税明細書
- 売買契約書や相続関係書類
- 隣接住戸との覚書、修繕・切り離しに関する資料
古い長屋では、建築確認関係の資料が残っていないこともあります。
資料がないことだけで直ちに違法建築とは断定できませんが、現在の状態、増改築の履歴、建て替えや切り離しの可否を慎重に調べる必要があります。
長屋売却の最初の分岐点|何を所有しているのか
同じように見える長屋でも、権利関係はさまざまです。
| 主な状態 | 売却時に確認すること |
|---|---|
| 土地・建物とも一戸分を単独所有 | 境界、接道、建物の構造的一体性、切り離しの影響 |
| 建物が区分登記されている | 専有部分・共用部分、敷地利用権、規約や所有者間の合意 |
| 建物全体を複数人で共有 | 原則として建物全体の売却には共有者全員の合意が必要 |
| 自分は建物持分だけを所有 | 持分のみの売却可能性、土地利用権、他の共有者との関係 |
| 土地と建物の所有者が異なる | 借地権・使用貸借・地代・承諾の要否 |
| 未登記部分や増築がある | 現況と登記の差、融資・契約・登記手続きへの影響 |
所有者様が「自分の一戸だから自由に売れる」と思っていても、登記上は建物全体の共有持分だったというケースがあります。
反対に、外観上は一棟でも、土地・建物が一戸ごとに整理され、単独で売買できる場合もあります。
🟨 長屋売却では、価格を査定する前に「何を売ることができるのか」を確定することが重要です。
名古屋の長屋が売れにくい理由1|「再建築不可」ではなく、接道と敷地の単位が分かりにくい
長屋は再建築不可が多い、と一括りにされることがあります。
しかし、長屋であること自体が再建築不可の理由ではありません。
名古屋市の案内でも、建築物の敷地は、原則として建築基準法上の道路へ2メートル以上接する必要があるとされています。
確認すべきなのは、次の内容です。
- 前面の道が建築基準法上の道路か
- 道路への接道長さを確保できているか
- 長屋全体を一つの敷地として建築したのか
- 一戸を切り離した後も、それぞれの敷地が接道条件を満たすか
- 私道持分や通行・掘削の権利があるか
- 42条2項道路の場合、セットバックが必要か
- 接道許可の対象となる可能性があるか
古い長屋には、路地の奥に建つものや、現在の敷地単位が建築当時と変わっているものがあります。
一棟全体では道路へ接していても、売却する一戸だけを見ると、接道条件を満たさない可能性があります。
また、建築基準法第43条の許可を受けられる可能性があっても、将来も必ず許可されると保証することはできません。建築計画を踏まえ、名古屋市へ個別に確認する必要があります。
🟥 「今、建物が立っている」ことと、「解体後に同じように建て替えられる」ことは同じではありません。
売れにくい理由2|一戸だけの解体・切り離しが簡単ではない
長屋の大きな特徴は、隣接住戸と構造的につながっている可能性があることです。
壁、柱、梁、基礎、屋根、雨どいなどが、どこまで一体になっているかは建物ごとに異なります。
そのため、一戸だけを解体するときは、単に境界線で建物を切ればよいわけではありません。
- 残る建物の構造安全性
- 切断面の外壁、防水、防火、断熱処理
- 屋根や雨どいの処理
- 電気、ガス、上下水道の分離
- 足場や工事車両の進入
- 隣家の敷地・建物を利用する必要性
- 振動、騒音、粉じん、損傷への対策
- 建築基準法上、一戸を除却した後の建物の扱い
などを検討します。
「隣の同意がなければ絶対に解体できない」とまでは一概に言えません。
しかし、共有部分に手を加える場合、隣家の敷地を利用する場合、残存建物へ構造上の影響が及ぶ場合などは、所有者間の合意や専門的な検討が必要です。
実務では、建築士、構造の専門家、解体業者に現地を確認してもらい、隣接所有者とも工法、費用負担、損傷時の対応を書面で整理することがあります。
売れにくい理由3|境界と建物の位置が一致しているとは限らない
古い長屋では、室内の界壁と土地境界が一致しているとは限りません。
壁の中心が境界だと思っていた。
実際には建物の一部が隣地へ越境していた。
屋根や雨どいが隣地へ出ていた。
給排水管が隣の土地を通っていた。
このようなケースがあります。
確認するのは、塀や壁の見た目ではありません。
土地家屋調査士による境界確認、測量図、登記された建物図面、現況の照合が必要です。
境界を確定できなくても売却できる場合はありますが、買主がどのリスクを引き継ぐのか、契約書で明確にしなければなりません。
売れにくい理由4|共有配管・雨漏り・修繕の責任範囲が曖昧になりやすい
築年数が経過した長屋では、建物の問題が一戸の中だけで完結しないことがあります。
- 屋根のどこから雨水が入っているか分からない
- 雨どいが隣接住戸とつながっている
- 給排水管が他人地や他の住戸を経由している
- 白蟻や腐朽が界壁付近まで広がっている
- 修繕費を誰が負担するか決まっていない
買主が恐れるのは、古いことそのものより、購入後に問題が起きたときの責任範囲が分からないことです。
売却前にすべて修繕する必要はありません。
重要なのは、現況で確認できる不具合、過去の修繕、共有・越境の可能性、未確認事項を分けて伝えることです。
売れにくい理由5|住宅ローンを利用できる買主が限られることがある
「金融機関は長屋を嫌がる」という表現を耳にします。
しかし、長屋だから一律に融資を受けられないわけではありません。
金融機関が確認するのは、担保としての評価と、将来処分するときの流通性です。
例えば、次の条件は審査へ影響する可能性があります。
- 再建築できるか確認できない
- 土地や建物が共有持分だけである
- 建物の登記と現況が一致していない
- 築年数が古く、大きな損傷がある
- 隣接住戸と構造・設備が分離できていない
- 私道、越境、境界、借地などの権利関係が複雑
融資条件は金融機関、商品、買主の属性、物件の状態によって異なります。
一般的な住宅ローンが難しくても、現金購入者、事業者、投資家、別の融資商品を利用する買主が検討できる場合があります。
🟨 「ローンが通らない物件」と決めつけるのではなく、どの点が審査上の問題になり得るかを整理することが先です。
売れにくい理由6|土地価格をそのまま当てはめられない
売主様から、次のように聞かれることがあります。
「周辺の土地が坪○万円なら、うちも同じくらいですよね」
しかし長屋の一戸は、更地と同じように土地を利用できるとは限りません。
切り離し工事。
隣家の外壁補修。
境界測量。
共有配管の分離。
建物解体。
再建築や接道の確認。
こうした費用と不確実性が、買主の判断に影響します。
一方、建物をそのまま利用・改修できる場合や、隣接所有者が一体利用を希望する場合には、一般の買取査定とは違う価値が生まれることもあります。
🟥 長屋の査定で避けたいのは、周辺の更地単価から工事費を機械的に引くだけの評価です。
🟩 見るべきなのは、現在の建物を誰が、どのように使えるかという価値です。
「高く売れます」という査定にも、「価値がありません」という査定にも注意
長屋の売却相談で注意したいのは、極端な説明です。
「立地がよいので、普通の戸建てと同じように高く売れます」
「長屋は売れないので、値段は付きません」
どちらも、調査前に断定できることではありません。
高い査定額を提示して媒介契約を結び、売れなければ値下げを繰り返す会社もあるかもしれません。
反対に、権利や建物を十分に調べず、最初から極端に低い買取価格だけを示す会社も考えられます。
大切なのは査定額の高さではなく、次の質問に答えられるかです。
- 何を所有し、何を売却できるのか
- 接道と再建築をどの資料で確認したのか
- 建物を残す場合と切り離す場合の違いは何か
- 想定する買主は誰か
- 売却価格からどの費用を差し引くのか
- 仲介と買取の最終手取りはいくらか
私の失敗談|「古い長屋だから買取しかない」と考えかけた
以前、名古屋市内にある築年数の古い長屋について相談を受けたことがあります。
売主様は、相続後も室内に家財を残したままでした。
雨漏りの跡があり、床にも傷みがある。
隣の住戸には人が住んでいる。
建築当時の図面は見つからない。
私は当初、一般の住宅購入者へ売るのは難しく、現況のまま事業者へ買い取ってもらう方法が現実的だと考えました。
確かに、買取は有力な出口です。
しかし、改めて登記、接道、隣接住戸との関係を整理すると、別の可能性が見えてきました。
隣接所有者にとっては、倉庫や家族の利用スペースとして一体利用できるかもしれない。
建物の雰囲気を残し、自分で改修したい人にとっては、一般的な建売住宅にはない魅力があるかもしれない。
収益だけでなく、作業場や事務所利用を考える事業者が検討できる可能性もある。
結果として、最初の買取査定だけで結論を出さず、複数の出口を比較できる状態になりました。
この案件で私が反省したのは、買取を検討したことではありません。
権利と建物の状態を整理する前に、買主を一種類へ絞りかけたことです。
※個人および物件を特定できないよう、複数の相談経験をもとに、所在地、時期、建物状態、会話、経緯などの一部を調整しています。
長屋売却で検討したい7つの出口
| 出口 | 特徴 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 1.現況のまま仲介売却 | 建物を利用したい買主へ販売 | 不具合・権利・未確認事項の説明が必要 |
| 2.リフォーム前提で売却 | DIY・再生希望者へ訴求 | 安易に「自由に改修可能」と表現しない |
| 3.長屋全体を一括売却 | 所有者間で合意できれば活用範囲が広がる | 全所有者の条件・時期調整が必要 |
| 4.隣接住戸の所有者へ提案 | 一体利用により独自の価値が生まれる | 隣家だけに絞ると価格交渉が不利になる場合がある |
| 5.一戸を切り離して売却・解体 | 土地利用を見直せる可能性 | 構造、法令、隣家補修、費用の専門確認が必要 |
| 6.専門事業者による買取 | 早期・現況売却を相談しやすい | 仲介想定価格より低くなるのが一般的 |
| 7.賃貸・倉庫等として保有 | 売却以外の収益化を検討 | 用途、改修費、安全性、管理負担を確認 |
どの出口が最適かは、価格だけでは決まりません。
売却までの期間、先行費用、近隣調整、契約上の責任、最終手取りを並べて比較します。
「片付けてから相談」「先に解体」は待ってください
長屋の所有者様から、次のように言われることがあります。
「室内を全部片付けてから相談します」
「古いので、先に壊した方が売りやすいですよね」
しかし、先に費用をかけても売却価格へ反映できるとは限りません。
特に解体は、元に戻せません。
再建築条件を確認せずに解体し、建物を利用できる選択肢まで失うと、かえって売りにくくなる可能性があります。
また、長屋の切り離しは、一般的な一戸建ての解体より調整事項が多くなります。
まず、現況のまま次の案を比較してください。
- 家財を残したまま売却する
- 必要な物だけ搬出する
- 建物を利用する買主を探す
- 切り離しの可否と概算費用を調べる
- 隣接所有者へ意向を確認する
- 買取条件と仲介条件を比較する
売却前に確認したい12項目
- 土地・建物の名義と持分
- 建物が一棟登記、区分登記、共有のどれか
- 土地と建物の所有者が一致しているか
- 前面道路の種類、幅員、接道長さ
- 再建築・増改築・用途変更の条件
- 土地境界と界壁位置の関係
- 屋根、壁、柱、梁、基礎のつながり
- 雨どい、電気、ガス、上下水道の分離状況
- 雨漏り、白蟻、傾き、腐朽などの建物状態
- 増築・未登記部分と過去の修繕履歴
- 隣接所有者との覚書・紛争・協議履歴
- 仲介、買取、一棟売却、隣接提案の最終手取り
すべての答えがそろわなければ売れないわけではありません。
重要なのは、分からないことを「問題ありません」と扱わないことです。
長屋の価値を感じる買主はいるのか
すべての購入者に長屋が向くわけではありません。
新築同様の性能を求める方、一般的な住宅ローンを前提とする方、将来の建て替え自由度を重視する方には、検討が難しいことがあります。
一方で、次のような方が価値を感じる場合があります。
- 建物を改修して住みたい方
- 取得価格を抑えて賃貸運用したい方
- 作業場、事務所、倉庫などを検討する方
- 古い建具や間取りに魅力を感じる方
- 隣接住戸・隣接土地の所有者
- 権利・建築条件を理解できる専門事業者
ただし、「古民家」「DIY物件」「店舗利用可能」といった言葉だけで魅力的に見せてはいけません。
住宅以外の用途に変更できるか、どの工事が必要かは、用途地域、建築基準法、消防法、建物状態などによって異なります。
魅力と制限を同時に伝えることが、契約直前の辞退や購入後のトラブルを防ぎます。
長屋を売却する不動産会社へ聞きたい質問
「登記上、私は土地と建物のどの部分を所有していますか」
「再建築できるという判断は、どの道路・敷地条件に基づいていますか」
「一戸だけ切り離す場合、誰に何を確認しますか」
「隣接所有者への提案と一般市場への販売を比較できますか」
「買取価格から、どの費用とリスクを見込んでいますか」
「売れなかった場合、値下げ以外にどのような方法がありますか」
会社の規模より、長屋特有の調査と説明を具体的に行えるかを確認してください。
まとめ|長屋は「売れない建物」ではなく、解く順番がある不動産
長屋は、一般的な一戸建てより確認事項が多い不動産です。
接道。
登記と持分。
土地境界と界壁。
建物の構造。
切り離し。
共有配管。
隣接所有者との関係。
融資。
この問題を一つにまとめると、「長屋だから売れない」という結論になりがちです。
しかし、一つずつ分けると、売却できる範囲と必要な手続きが見えてきます。
🟥 長屋を、普通の一戸建てと同じ条件で売ることはできません。
🟩 しかし、長屋の条件を理解し、その建物に価値を感じる買主へ必要な情報を届けることはできます。
本当に怖いのは、長屋であることではありません。
何を所有しているか分からないまま放置すること。
再建築を確認せず解体すること。
一社の低い査定だけで価値を決めること。
問題を隠したまま販売し、契約直前に話が流れることです。
不動産会社の仕事は、「難しいので安く売りましょう」と結論を急ぐことではありません。
権利を調べる。
現地を見る。
建築士や土地家屋調査士など、必要な専門家へつなぐ。
隣接所有者を含めて買主候補を考える。
複数の出口と最終手取りを比べ、売主様が選べる状態にする。
それが、長屋売却で必要な仕事だと私は考えています。
名古屋市で長屋・連棟式建物の売却にお困りの方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、長屋、連棟式住宅、再建築が難しい可能性のある土地、共有持分、借地、私道、境界や越境に問題がある空き家などの売却をお手伝いしています。
次のような段階でも構いません。
- 他社から長屋は売れないと言われた
- 自分の一戸だけ売却できるか分からない
- 隣家と壁や屋根がつながっている
- 一戸だけ解体・切り離しできるか知りたい
- 建物の登記と現況が一致していない
- 再建築できるか確認できていない
- 共有者や隣接所有者と話が進まない
- 家財を残したまま売却したい
- 仲介と買取のどちらがよいか比較したい
最初から「売れる」「売れない」と断定することはできません。
まず、土地・建物の登記、接道、境界、建物のつながり、配管、隣接所有者との関係を確認します。
そのうえで、現況売却、一棟売却、隣接所有者への提案、切り離し、賃貸活用、専門事業者による買取などを比較します。
「長屋だから価値がない」と決める前に、まだ調べられていない出口が残っていないか、一緒に確認してみませんか。
対応エリア
名古屋市南区・中川区・中村区・西区・北区・熱田区・昭和区・瑞穂区・港区・緑区・天白区・千種区・名東区・守山区・中区・東区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※長屋の売却、再建築、増改築、用途変更、一戸切り離し、解体、共有部分の変更等の可否は、登記、所有関係、接道、建物構造、建築時期、現況、建築計画および法令・条例によって異なります。不動産会社の目視だけで断定せず、必要に応じて名古屋市、建築士、構造の専門家、土地家屋調査士、司法書士、弁護士、金融機関などへご確認ください。
※本記事は令和8年(2026年)9月時点の公表情報と実務経験をもとに作成しています。
※本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、複数の相談経験をもとに所在地、時期、建物状態、会話、経緯などの一部を調整しています。


