春になると、
毎年届く封筒があります。
固定資産税の納税通知書。
その封筒を見るたび、
少し気持ちが重くなる。
そんな方も少なくありません。
- 誰も住んでいない
- 何年も帰っていない
- 片付けも進んでいない
でも毎年、
変わらず届く。
固定資産税の通知だけは、
止まらない。
街を歩き、
空き家を見ていると、
こうした“止まった実家”の存在を感じることがあります。
今回は、
「固定資産税の通知だけ届く実家」
について、
街歩き空き家マイスターとして感じる、
リアルな現実を書いてみたいと思います。
実家は、突然「空き家」になるわけではない
最初から、
放置するつもりだった人はほとんどいません。
親御様が亡くなった直後は、
皆さんこう言います。
- 「落ち着いたら整理しよう」
- 「そのうち兄弟で話そう」
- 「まだ急がなくていい」
この段階では、
まだ実家に“生活の気配”があります。
- カレンダー
- 食器
- 洗濯機
- 仏壇
- 写真
まるで、
誰かがまだ帰ってくるような空気。
だからすぐには、
動けない。
これは自然なことです。
でも時間は、静かに進んでいく
実家は止まっているように見えて、
実際には少しずつ変化しています。
- 草が伸びる
- 湿気がこもる
- 外壁が傷む
- 雨漏りが始まる
ですが一方で、
家族の時間は止まりやすい。
すると、
実家は徐々に、
“誰も触れない場所”
になっていきます。
そして毎年届く、「固定資産税の通知」
実家へ行かなくなっても、
毎年届くものがあります。
固定資産税の通知書です。
この封筒、
かなり独特です。
なぜなら、
“現実だけを運んでくる”
からです。
- 誰も住んでいない
- 誰も使っていない
- 誰も片付けていない
でも、
税金だけは続いていく。
この時、
初めて実感する方もいます。
「ああ、まだ終わっていないんだ」
と。
「兄が払ってると思っていた」
これ、
かなり多いです。
相続後の実家でよくあるのが、
“管理の曖昧化”
です。
- 草刈りは誰?
- 郵便確認は?
- 固定資産税は?
- 近隣対応は?
気付けば、
一人だけが負担しているケースもあります。
そしてその方は、
最初は黙っています。
「仕方ない」
と思っている。
でも数年経つと、
少しずつ感情が変わる。
「なんで自分だけ?」
この感情、
かなりリアルです。
実家の話になると、空気が止まる
固定資産税の通知が届くたび、
誰かが言います。
「そろそろ実家どうする?」
すると、
空気が変わる。
- 売りたい人
- 残したい人
- 関わりたくない人
- 決めたくない人
温度差が出る。
そして多くの場合、
「また今度でいいんじゃない?」
で終わる。
この“また今度”が、
5年、
10年続くケースもあります。
街を歩くと、「止まった家」が見えてくる
街歩きをしていると、
空き家には独特の空気があります。
- 閉じた雨戸
- 色褪せたポスト
- 伸びた雑草
- 人の気配がない庭
でも、
本当に止まっているのは、
建物だけではありません。
そこには、
“止まった家族関係”
が見えることがあります。
- 誰も来ない
- 誰も話さない
- 誰も決めない
そんな空気感。
「売る=親を終わらせる気がする」
これも本当に多いです。
特に長年住まれていた実家ほど、
感情が強い。
- 母親の台所
- 父親の工具
- 家族写真
- 仏壇
それを見ると、
「まだそのままにしておきたい」
という感情になる。
だから、
動けない。
でも一方で、
建物だけは時間が進む。
ここが、
空き家問題の苦しいところです。
「まだ住める」が、一番長引く
愛知県は比較的不動産市場があります。
だからこそ、
- まだ価値がある
- まだ売れる
- 急がなくてもいい
と思いやすい。
ですが現実には、
“まだ”
が積み重なって、
10年近く経っているケースもあります。
その頃には、
- 雨漏り
- 老朽化
- 解体費上昇
- 近隣問題
現実だけが重くなっています。
空き家より怖い、「家族の沈黙」
実際に怖いのは、
建物老朽化だけではありません。
本当に怖いのは、
- 実家の話題を避ける
- 誰も近寄らない
- 固定資産税だけ払い続ける
状態になること。
すると、
実家は、
“家”
ではなく、
“止まった問題”
へ変わっていきます。
「こんな状態で相談していいのかな」
これも本当によく聞きます。
- 荷物がそのまま
- 兄弟でまとまっていない
- 何も決まっていない
すると、
「整理してから相談します」
と言われる方もいます。
ですが実際には、
“止まっている状態”
から始まる相談の方が多いです。
むしろ、
完璧に整理されているケースの方が少ない。
本当に止まっているのは、「建物」ではなく「時間」
空き家問題は、
建物だけの問題ではありません。
そこには、
- 相続
- 思い出
- 家族関係
- 後悔
- 感情
があります。
だから、
簡単に動けない。
でも一方で、
固定資産税の通知だけは、
毎年変わらず届く。
この現実が、
静かに時間を知らせてきます。
最後に
固定資産税の通知は、「不動産」より“止まった時間”を思い出させることがある
毎年届く、
固定資産税の通知。
それは単なる税金の書類ではなく、
“まだ終わっていない実家”
を思い出させる存在かもしれません。
もし今、
- 実家がそのまま
- 固定資産税だけ払い続けている
- 誰も話を切り出せない
- 何から始めればいいか分からない
そんな状況でしたら、
全部を一気に決めなくても大丈夫です。
まずは、
止まった会話を少し動かしてみる。
そこから、
整理が始まるケースも少なくありません。
売れないと思われている不動産にも、
新たな出口があるかもしれません。


