実家を解体する罪悪感|親の家が売れない。本当は空き家ではなく「親との時間」を手放せないのかもしれない

こんにちは。

趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。

「家を売ることには納得しているんです。でも、解体するとなると、どうしても申し訳ない気持ちになります」

相続した実家の売却相談で、ときどき聞く言葉です。

誰も住む予定はない。

管理を続けることも難しい。

屋根や外壁は傷み、庭木も伸びている。

固定資産税や火災保険、草刈りの費用もかかる。

頭では、売却や解体を考えた方がよいと分かっています。

それでも、決断できない。

なぜなら実家を壊すことが、単に古い建物を撤去することではなく、親が生きていた時間を、自分の手で終わらせることのように感じられるからです。

この記事は、名古屋市・愛知県で実際に寄せられる複数の相続空き家相談をもとに、相談者様や物件を特定できないよう、会話や経緯を再構成して書いています。

不動産の売り方だけを説明する記事ではありません。

実家を解体する罪悪感は、どこから来るのか。

家族は、何を手放せずにいるのか。

そして、後悔を少なくするために、家がなくなる前に何ができるのか。

空き家の現場で感じてきたことを、少しゆっくりお話しします。


名古屋市エリアで″売却サポート”に専門特化した
不動産売却のみを取り扱う専門店です。
空き家売却にともなう煩雑なお手続き、
空き家の遺品整理や不要品の買取まで一括してサポートしております。

〒457-0846
愛知県名古屋市南区道徳通2-51 道徳ビル1F

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目次

誰もいない家なのに「ただいま」と言ってしまう

名古屋市内にある、昭和に建てられた一軒家。

売主様は50代の女性でした。

数年前にお父様を亡くし、その後、お母様も亡くなりました。

ご実家には、もう誰も住んでいません。

それでも月に一度、車で実家へ戻ります。

門扉を開ける。

郵便受けのチラシを抜く。

玄関の鍵を回す。

そして、誰もいない家へ、いつもの癖でこう言ってしまうそうです。

「ただいま」

返事はありません。

雨戸を開け、窓を少しずつ開けていきます。

居間には、お父様が使っていた椅子。

食器棚には、お母様の湯呑み。

壁には、何年も前の日付で止まったカレンダー。

仏壇の横には、家族旅行の写真。

人が住まなくなった家は、空っぽになるわけではありません。

むしろ、生活が突然止まった瞬間を、そのまま抱えているように見えることがあります。

台所へ立てば、夕飯を作っていた母親の背中を思い出す。

居間へ入れば、新聞を読んでいた父親の姿が浮かぶ。

階段の傷を見れば、子どもの頃に転んだ日のことまで思い出す。

家に残っているのは、家具や食器だけではありません。

そこで繰り返された、何でもない毎日の記憶です。

だから、解体という言葉を聞くと、心が止まります。


「家を壊す」ではなく「親の人生を壊す」ように感じる

売主様は、最初の相談でこう話されました。

「父が一生懸命働いて建てた家なんです」

お父様は長い住宅ローンを払い、休日になると庭木を剪定し、雨どいを掃除し、壊れた場所を自分で直していたそうです。

お母様は毎朝雨戸を開け、畳を拭き、仏壇に手を合わせていました。

家族のために手に入れ、何十年も守り続けた家です。

その家を子どもの自分が壊す。

そう考えると、親が残したものを粗末に扱うような気がする。

親の努力を無駄にするような気がする。

自分だけが楽になるために、実家を処分するような気がする。

合理的に考えれば、誰も住まない家を持ち続ける必要はありません。

しかし、感情は合理性と同じ速さでは進みません。

🟥 実家を解体できない人が手放せずにいるのは、建物ではないことがあります。その家を建て、守ってきた親の人生を、自分が否定してしまうのではないかという怖さです。


不動産のプロでも、感情だけは数字で整理できない

空き家の現地調査では、建物を冷静に確認します。

屋根。

外壁。

雨漏り。

傾き。

シロアリ。

設備。

残置物。

接道や境界。

解体費や売却価格も計算します。

しかし、家族の記憶には査定額を付けられません。

父親が作った棚。

柱に残る子どもの身長の印。

母親が植えた庭木。

正月に家族が集まった座敷。

それらは市場価格には反映されなくても、売主様にとっては代わりのないものです。

だから私は、最初から、

「古いので解体しましょう」

「誰も住まないなら早く売りましょう」

とは言わないようにしています。

まず聞きたいのは、どのような家だったのかということです。

誰が住んでいたのか。

何が心に残っているのか。

家を残したいのか、それとも親とのつながりを残したいのか。

その二つは、似ているようで違います。


「残したい」の中には、いくつもの気持ちが隠れている

実家を残したいと言う方の気持ちは、一つではありません。

親への申し訳なさ

親が苦労して建てた家を、自分の代でなくしてよいのかという罪悪感です。

帰る場所を失う怖さ

たとえ住むことがなくても、実家があるだけで「自分には帰る場所がある」と感じられます。

親が本当にいなくなる感覚

家が残っている間は、どこかに親の気配を感じられます。解体すると、その気配まで消えてしまうように思えます。

兄弟や親族から責められる不安

自分が売却や解体を提案したことで、「冷たい」「親不孝だ」と思われないか心配になります。

正解が分からない不安

解体してから後悔しても、家は元に戻せません。取り返せない決断だからこそ、動けなくなります。

荷物を捨てる苦しさ

実家じまいでは、建物より先に、親の服、写真、手紙、食器、工具などと向き合うことになります。

一つひとつに思い出があるため、片づけが進まないのは珍しいことではありません。

🟨 「家を残したい」という言葉を、保有の意思だとすぐに判断してはいけません。本当は、思い出を失いたくない、兄弟に責められたくない、親へ申し訳ないという気持ちかもしれません。


空き家は待っているように見えて、実際には変わり続けている

家族の気持ちが止まっていても、建物の時間は止まりません。

誰も住まなくなると、換気の回数が減ります。

小さな雨漏りに気づく人がいません。

排水設備を使わなくなり、臭いや虫が発生することがあります。

庭木は境界を越え、落ち葉が隣家へ入ります。

台風の後に瓦や雨どいが傷んでも、発見が遅れます。

そして、ある日、近隣から連絡が入ります。

「枝がこちらへ伸びています」

「屋根の一部が落ちそうです」

「最近、誰か出入りしていますか」

その瞬間、思い出の家は、管理責任を伴う現実の不動産へ戻ります。

固定資産税。

火災保険。

草刈り。

修繕。

遠方からの交通費。

兄弟の誰か一人だけが負担している場合、その小さな不公平感も積み重なります。

「残したい」という人と、「管理している」人が別であれば、家ではなく兄弟関係が傷み始めることもあります。

🟥 気持ちを整理するために時間をかけることと、何も決めずに放置することは同じではありません。決断を待つ間にも、最低限の管理と家族間の役割分担は必要です。


解体の日に「帰る場所がなくなる」と泣いた女性

以前、築60年を超える木造住宅の解体に立ち会ったことがあります。

庭には大きな柿の木がありました。

玄関には、古い表札が残っていました。

売主様は朝からほとんど話をせず、少し離れた場所から家を見ていました。

重機が屋根へ触れ、最初の壁が崩れた瞬間、売主様は小さく泣きました。

そして、こう言いました。

「帰る場所がなくなっちゃうんですね」

その言葉を聞いたとき、実家とは住所ではないのだと思いました。

親が亡くなり、誰も住んでいなくても、そこに家があるだけで、人は自分の過去とつながっていられる。

玄関を開ければ、子どもだった自分へ戻れる。

だから、家がなくなることは、自分の一部がなくなるように感じられます。

解体の日に涙を流すのは、決断を間違えたからとは限りません。

大切だったものへ、きちんと別れを告げているから泣くのです。

悲しいことと、間違ったことは同じではありません。


解体は本当に必要なのか。最初に比較したい4つの選択肢

感情を大切にすることと、建物の状態を正確に確認することは両立します。

解体を決める前に、少なくとも次の選択肢を比較します。

1.古家付きのまま売却する

買主が建物を利用するのか、解体するのかを判断する方法です。

売主様が先に解体費を負担せずに済み、建物を気に入る人が現れる可能性もあります。

ただし、建物状態、残置物、契約不適合責任、境界、再建築条件などの整理が必要です。

2.建物を調査し、利用・改修の可能性を探る

築年数が古くても、すべての建物が利用不能とは限りません。

一方、見た目がきれいでも、構造、雨漏り、シロアリ、基礎、設備に大きな費用がかかる場合があります。

感情だけで残すのではなく、建築士や施工会社などへ必要な確認を依頼します。

3.解体して土地として売却する

土地の形や高低差を確認しやすくなり、買主が建築計画を立てやすくなる場合があります。

しかし、再建築の可否、接道、私道、擁壁、解体費、地中埋設物、固定資産税への影響などを確認せずに解体するのは危険です。

4.一定期間、管理しながら保有する

気持ちの整理に時間が必要であれば、すぐに売らない選択もあります。

その場合は、期限と役割を決めます。

誰が換気するのか。

草刈りや修繕費をどう分担するのか。

いつ再度話し合うのか。

「しばらく残す」を、終わりのない先送りにしないことが大切です。

選択肢主な利点主な注意点
古家付き売却解体費を先に負担しない建物状態と契約条件の整理が必要
改修・活用建物や思い出を残せる可能性改修費と将来管理の検討が必要
解体後売却土地として検討しやすい場合がある再建築・接道確認前の解体は危険
期限付き保有感情を整理する時間を持てる管理者・費用・再検討日を決める

🟩 解体するか残すかを、感情と数字のどちらか一方だけで決める必要はありません。建物の状態、費用、家族の気持ちを並べて比較することが、後悔を減らします。


家がなくなる前にできる「思い出の引っ越し」

実家を残すことが難しくても、家にある記憶を別の形へ移すことはできます。

私はこれを、実家からの「思い出の引っ越し」だと考えています。

家族で最後に家を歩く

部屋ごとに思い出を話します。

正解を出す会議ではありません。

父親がよく座っていた場所。

母親が好きだった窓辺。

兄弟で遊んだ庭。

それぞれが覚えていることを言葉にします。

写真と動画を残す

外観だけでなく、玄関から室内へ入る動線、階段を上がる音、窓から見える景色も撮影します。

日常の視点を残すと、後から記憶を呼び戻しやすくなります。

間取りを記録する

簡単な手描きでも構いません。

どこに何があったのかを書き込みます。

写真だけでは残りにくい、家の中の関係が記録できます。

一部の材料や小物を残す

表札、欄間、建具、柱の身長印、庭石、植木、父親が作った棚など、家族にとって意味のあるものを保存できる場合があります。

ただし、取り外しの安全性や費用、保管場所は事前に確認します。

親の持ち物を一人で処分しない

残す物、譲る物、写真だけ残す物、処分する物に分けます。

兄弟それぞれの記憶は違います。

自分には不要に見える物が、別の家族には大切なことがあります。

家に「ありがとう」を伝える時間をつくる

仏壇に手を合わせる。

家族で食事をする。

掃除をする。

近隣へ挨拶をする。

形式に決まりはありません。

大切なのは、何となく最後の日を迎えるのではなく、自分たちで一区切りをつくることです。


家族会議で話すべきなのは「売るか、残すか」だけではない

実家について家族で話すと、議題がすぐ二択になります。

売るのか。

残すのか。

しかし、この二択から始めると、感情がぶつかりやすくなります。

先に、次のことを聞いてみてください。

「この家の何を残したいと思っている?」

「一番なくなるのがつらいものは何?」

「誰かが住む可能性は本当にある?」

「残すなら、誰が管理と費用を負担する?」

「1年後にもう一度考えるなら、それまで何をする?」

「写真や建具、庭木など、別の形で残せるものはない?」

残したい人を説得するのではなく、残したい理由を聞く。

売りたい人を冷たいと決めつけず、管理の負担を聞く。

家族の結論は、全員が同じ感情になることではありません。

違う気持ちを持ったままでも、互いの理由を理解し、現実的な役割と期限に合意できれば、少しずつ前へ進めます。


「売る=親不孝」「残す=親孝行」ではない

実家を残すことが、必ず親孝行になるわけではありません。

管理できないまま傷ませ、近隣へ迷惑をかけ、兄弟の関係が悪くなるなら、親が望んだ形とは違うかもしれません。

反対に、売却や解体を選んだからといって、親を粗末にしたことにもなりません。

親が家を建てた目的は、建物を永遠に残すことだったのでしょうか。

家族が安心して暮らすこと。

子どもを育てること。

家族が帰ってこられる場所をつくること。

その役割を、家は十分に果たしてきたのかもしれません。

役割を終えた家へ感謝し、次の人へ土地を引き継ぐことも、家族の歴史を大切にする方法の一つです。

🟨 家をなくすことと、親とのつながりをなくすことは同じではありません。建物がなくなっても、親から受け取ったものまで消えるわけではありません。


更地になった実家の前で、初めて言えた「ありがとう」

最初にご紹介した売主様は、数か月かけて兄弟と話し合いました。

すぐに解体を決めたわけではありません。

建物の状態を確認しました。

古家付きで売る場合と、解体して土地として売る場合を比較しました。

家財を整理し、写真を分け、父親の工具と母親の湯呑みを残しました。

柱に付いていた兄弟の身長の印は、写真に残しました。

庭にあった小さな石は、一つだけ新しい家へ持ち帰りました。

そして、家族全員で最後に実家へ集まりました。

特別なことをしたわけではありません。

窓を開け、掃除をし、昔よく出前を取った店の食事を囲みました。

父親の話。

母親の話。

子どもの頃の失敗。

忘れていた出来事。

何度も手が止まりました。

片づけには時間がかかりました。

しかし、その時間が必要だったのだと思います。

解体後、売主様は更地になった場所へ立ちました。

そこには、もう玄関も、居間も、台所もありません。

それでも、しばらく土地を見た後、こう話されました。

「家を壊したというより、やっと見送れた気がします」

そして小さな声で、

「お父さん、お母さん、ありがとう」

と言いました。

罪悪感が完全になくなったわけではないと思います。

寂しさも残ります。

しかし、何も言えないまま家を避けていた頃とは違いました。

実家を解体することが、親との時間を消す行為ではなく、親との時間を自分の中へ引き取る行為へ変わったのです。


不動産会社へ相談する前に、気持ちが整理できていなくても大丈夫です

空き家の相談では、

「まだ売ると決めていません」

「兄弟で話せていません」

「荷物がそのままです」

「解体の話をするだけで涙が出ます」

と言われることがあります。

その状態で相談して構いません。

売却を決めてから不動産会社へ行く必要はありません。

建物の状態を知る。

売却と保有の費用を知る。

古家付きで売れる可能性を知る。

解体前に確認すべきことを知る。

選択肢を知ったうえで、家族で考えることができます。

良い相談とは、決断を急がせることではありません。

かといって、問題を見ないまま「お気持ちが決まるまで何もしなくてよい」と伝えることでもありません。

感情と現実の両方をテーブルに載せ、今すぐ必要な管理と、後から決められることを分けることだと思います。


まとめ|手放せないのは家ではなく、親との時間なのかもしれない

実家を解体することに罪悪感を持つのは、弱さではありません。

それだけ大切な時間を、その家で過ごしたということです。

親が暮らした家。

自分が育った家。

いつでも帰れると思っていた家。

その形がなくなることを、すぐに受け入れられないのは自然です。

しかし、実家を残すことだけが、親との時間を守る方法ではありません。

家族で思い出を話す。

写真や動画を残す。

大切な物を引き継ぐ。

家へ感謝を伝える。

そして、管理できる人へ土地や建物を引き継ぐ。

そうした一つひとつの行為が、親との時間を未来へ運びます。

🟥 放置することは、思い出を守ることとは違います。

🟩 向き合い、迷い、家族で話し合い、納得できる形で見送ることも、実家を大切にする方法です。

家がなくなっても、父親が庭木を切っていた背中は残ります。

母親の料理の匂いも残ります。

家族で笑った夜も、消えません。

実家じまいとは、親との時間を終わらせることではないのかもしれません。

その時間を、建物の中から自分の心の中へ移すことなのだと、私は思います。


名古屋市・愛知県で、相続した実家をどうするか迷っている方へ

ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、相続空き家、古家付き住宅、再建築が難しい不動産、共有不動産などの売却・整理をお手伝いしています。

次のような段階でも構いません。

  • 実家を売ることに罪悪感がある
  • 解体すると親不孝になる気がする
  • 兄弟で売却への温度差がある
  • 荷物や仏壇が残っていて整理できない
  • 建物を残して売れる可能性を知りたい
  • 解体してから売るべきか判断できない
  • 県外に住み、管理を続けることが難しい
  • 売却するか決める前に、費用と選択肢だけ知りたい

最初から「売りましょう」「解体しましょう」と結論を決めるのではなく、建物の状態、土地の条件、管理費用、売却方法、そしてご家族のお気持ちを一つずつ整理します。

残すのか。

活用するのか。

古家付きで引き継ぐのか。

感謝して見送るのか。

どの選択が正しいかは、家族によって違います。

ただ、何も決められないまま苦しくなっているのであれば、最初の一歩は売却の決断ではなく、現状を知ることからで大丈夫です。

対応エリア

名古屋市南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。

※建物を解体する前には、接道・再建築の可否、建物登記、隣家との構造関係、私道、擁壁、境界、地中埋設物、固定資産税への影響など、物件ごとの確認が必要です。不動産会社の判断だけで断定せず、必要に応じて名古屋市、建築士、土地家屋調査士、司法書士、税理士などへご確認ください。

※本記事は、実際に寄せられる複数の相続空き家相談をもとに、相談者様および物件を特定できないよう、家族構成、会話、時期、建物状況等の一部を調整して再構成しています。

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