「この土地は売れないかもしれません」と言われた相続不動産の1年間
こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
「またダメでした」
電話口で、売主様は力なくそう話されました。
これで3人目でした。
問い合わせが3件あった、という話ではありません。
3人の購入希望者が現れ、条件を調整し、契約日が見え始めたところで、3人とも購入を断念したのです。
場所は、名古屋市名東区西山台。
約70坪の土地に、築50年を超えた木造住宅が残っていました。
南向きで、日当たりも悪くありません。周辺には落ち着いた住宅街が広がり、名東区で注文住宅を建てたい方にとって、検討余地のある土地でした。
ところが、道路と敷地の間に一つの問題がありました。
築造時期や構造資料がはっきりしない、大谷石の擁壁です。
売主様は、最初から大きな利益を求めていたわけではありません。
施設へ入居したお母様の費用。
誰も住まなくなった実家の固定資産税。
伸び続ける庭木。
台風が来るたびに心配になる屋根。
それらを整理し、父親が残した土地を、次の人へ引き継ぎたいと考えていました。
しかし、購入希望者が現れるたびに期待し、そのたびに契約直前で断られる。
3回目のキャンセルを受けたころ、売主様はこうおっしゃいました。
「もう、売るのをやめた方がいいのでしょうか」
この記事でお伝えしたいのは、苦労の末に売れたという成功談だけではありません。
私自身も、この土地の販売方法について失敗しました。
最初は「立地がよければ、擁壁の問題を理解してくれる買主が現れる」と考えていたからです。
しかし、それだけでは足りませんでした。
🟥 この土地が売れなかった理由は、大谷石擁壁があったことだけではありません。買主が判断するための情報を、契約前の早い段階で渡せていなかったことにも原因がありました。
※本記事は実際の相談・売却経験をもとに、個人を特定できないよう土地面積、時期、会話などの一部を調整して構成しています。
父親が残した家を「処分する」と言えなかった売主様
売主様は50代の男性でした。
数年前に父親を亡くし、実家を相続しました。その後、お母様も施設へ入居し、家には誰も住まなくなりました。
最初のうちは、月に一度程度、実家へ戻っていたそうです。
郵便物を回収する。
窓を開ける。
草木を切る。
雨漏りがないか確認する。
しかし、誰も住まない家の管理は、思っている以上に気力を使います。
夏に草を刈っても、次に訪れたときには元に戻っている。
台風の翌日は、瓦が飛んでいないか気になる。
近隣から電話が入るたびに、何か迷惑をかけたのではないかと不安になる。
売主様は何度も、
「売却ではなく、父の家を処分するようで抵抗がありました」
と話されていました。
相続不動産の売却では、価格や税金だけで話が進むわけではありません。
親が何十年も暮らした家を手放すという決断には、罪悪感に近い感情が生まれることがあります。
それでも、管理できないまま建物を傷ませることが、本当に家を大切にすることなのか。
売主様は悩んだ末に、売却を決断しました。
名東区西山台を歩いて分かる「平らではない街」の魅力
西山台という町名は、字名と丘陵地であることに由来すると名古屋市が紹介しています。
実際に西山台や西山本通周辺を歩くと、道路と敷地に高低差がある住宅や、石積み・コンクリートなどで宅地を支えた家を見かけます。
坂を上がると、道路からの視線が届きにくい家がある。
少し高い敷地には、光や風が入りやすい。
擁壁や階段を含めて庭がつくられ、その高低差が住宅の表情になっている。
平坦な土地にはない魅力です。
一方で、その魅力は売却時の負担にもなります。
擁壁の状態。
階段や駐車場の計画。
道路から建物までの資材搬入。
既存建物の解体方法。
新築時の基礎計画。
高低差がある土地では、建築会社によって工事方法や費用の見方が変わります。
🟨 名東区の丘陵地では、高低差があること自体が直ちに欠点になるわけではありません。しかし、高低差を支える擁壁について説明できなければ、その土地の魅力より先に不安が伝わってしまいます。
大谷石擁壁とは何か
大谷石は、加工しやすく、独特の柔らかな風合いを持つ石材です。
昭和期の住宅では、外壁、門柱、塀、石蔵などに使われてきました。住宅地を歩いていると、敷地の土を支える工作物として大谷石が積まれている例も見かけます。
ただし、道路沿いに立つ石積みが、法的・構造的な意味でどのような工作物に該当するかは、見た目だけでは判断できません。
単なる塀なのか。
宅地の土を支える擁壁なのか。
築造時に許可や確認が必要だったものなのか。
増し積みや補修が行われているのか。
隣地とどちらが所有しているのか。
一つずつ確認する必要があります。
また、大谷石は年月の経過により、表面の風化、欠け、目地の劣化などが生じる場合があります。
だからといって、
「大谷石だから危険」
と断定することも、
「立っているから安全」
と断定することもできません。
擁壁は、表面の石だけで成立しているものではないからです。
背面の土。
基礎。
排水。
積み方。
高さ。
傾き。
建物との距離。
これらが関係します。
不動産会社が目視で確認できること、できないこと
現地では、次のような点を確認します。
- 擁壁の傾きや膨らみ
- 石材の欠損や風化
- 目地の開き
- 亀裂やずれ
- 水抜き穴の有無と状態
- 雨水が集中している場所
- 擁壁上部の沈下や亀裂
- 補修・増し積みの形跡
- 隣地や道路との位置関係
国土交通省の安全対策資料でも、擁壁の亀裂、ずれ、傾斜、沈下、はらみ、背面土の流出、排水設備の変状や補修履歴などが確認項目として挙げられています。
しかし、不動産会社が現地を見ただけで、擁壁の構造安全性を証明することはできません。
外から大きな変状が見えなくても、基礎や背面の状態までは分からないからです。
今回の土地でも、明らかな崩落や大きなはらみ出しは目視できませんでした。
ただし、それは、
「安全が証明された」
という意味ではありません。
私たちが言えるのは、
「現地で確認できた範囲では、このような状態だった」
というところまでです。
既存擁壁を利用した建築が可能か、補修が必要か、再構築すべきかは、買主の建築計画を踏まえ、建築士、構造・造成の専門家、建築会社などへ確認する必要があります。
1人目の買主|建築会社の一言で空気が変わった
最初の購入希望者は、30代のご夫婦でした。
名東区で注文住宅用地を探しており、南向きの日当たりと土地の広さを気に入っていただきました。
現地案内後、購入申込書が提出されました。
売主様は安心した様子で、
「思ったより早く決まりそうですね」
と話されました。
ところが数日後、買主側から連絡が入りました。
「建築会社から、擁壁のやり直しが必要になるかもしれないと言われました」
まだ建物の配置も、駐車場の計画も決まっていません。
擁壁をどこまで利用できるかも、詳細な検討前でした。
しかし「やり直し」という言葉だけが、買主様の中で大きくなっていきました。
工事費はいくらなのか。
住宅ローンに含められるのか。
購入後に危険が見つかったらどうなるのか。
明確な答えを出せないまま、不安だけが増えてしまいました。
結果は、購入辞退でした。
このとき私も、
「建築会社によって見方は違います。次の買主を探しましょう」
と考えていました。
今振り返れば、それが最初の失敗でした。
買主が慎重すぎたのではありません。
買主が判断できる材料を、こちらが先に準備していなかったのです。
半年後に現れた2人目|止めたのは金融機関だった
2人目の購入希望者が現れたのは、それからしばらく後でした。
建築条件のない土地を探しており、資金計画にも大きな問題はないように見えました。
今度こそ決まる。
売主様も、私も、そう思いました。
ところが融資審査を進める中で、金融機関から擁壁に関する確認を求められました。
築造時期はいつか。
構造図はあるか。
検査済証などの資料は残っているか。
建て替え時に既存擁壁を利用するのか。
改修が必要な場合、その費用を資金計画へどのように組み込むのか。
確認事項が増え、審査に時間がかかりました。
買主様にも引越しや住宅建築の予定があります。
回答を待っている間に、条件の分かりやすい別の土地が見つかり、買主様はそちらを選びました。
売主様は、
「土地が悪いということですよね」
と落ち込みました。
しかし、私はまだ「次があります」と答えました。
正直に言えば、その時点でも私は、販売の入口を変えられていませんでした。
物件情報には、
「約70坪・南向き・閑静な住宅街」
という魅力を並べていました。
一方、買主が最も知りたい擁壁については、
「現況有姿」
「詳細はお問い合わせください」
という説明にとどまっていました。
🟥 不安の大きな物件で「詳細はお問い合わせください」は、親切な表現ではありません。買主にとっては、重要な問題が奥に隠されているように見えることがあります。
3人目の買主|最後に反対したのは、ご両親だった
3人目は、契約条件の調整まで進みました。
買主様本人は土地を気に入り、建築計画についても前向きでした。
売主様には契約予定日をお伝えし、必要書類の準備をお願いしました。
ところが契約直前、買主様のご両親が現地を見に来られました。
擁壁を見たご両親は、
「こんな石垣の上へ家を建てて、本当に大丈夫なのか」
と心配されたそうです。
買主様は、建築会社から説明を受けていました。
それでも、ご両親の不安を解消できませんでした。
住宅購入では、購入者本人だけが意思決定者とは限りません。
資金援助をする両親。
同居する家族。
家づくりを任された建築会社。
融資する金融機関。
擁壁のある土地では、一人が納得しても、関係者の誰かが判断できなければ話が止まります。
3人目も、購入を断念しました。
売主様から電話が入ったのは、その日の夕方でした。
「またダメでした」
少し間を置いて、こう続けられました。
「父が残した土地が、問題のある土地だと言われ続けているようで、つらいです」
不動産の欠点を指摘されているだけでも、相続した人には、親の生き方まで否定されているように感じることがあります。
その言葉を聞いて、私はようやく気づきました。
次の買主を探す前に、販売方法そのものを変えなければならない。
そして、3組が断った理由を「大谷石擁壁だから」で片づけてはいけない、と。
3回の失敗を並べると、本当の原因が見えた
3組の購入辞退を整理すると、理由はそれぞれ違いました。
| 購入希望者 | 表面上の理由 | 判断を止めたもの |
|---|---|---|
| 1組目 | 建築会社が擁壁リスクを指摘 | 想定工事と費用が見えなかった |
| 2組目 | 融資審査が長期化 | 必要資料と建築方針が整理されていなかった |
| 3組目 | 親族の反対 | リスクを家族へ説明できなかった |
3組とも、「擁壁が崩れそうだから」購入をやめたわけではありません。
共通していたのは、
分からないまま、大きな金額を支払うことが怖かった
ということです。
ここから、私たちは調査と販売方法をやり直しました。
「売れない理由探し」から「判断材料づくり」へ
最初に行ったのは、擁壁を安全だと証明することではありません。
現時点で分かることと、分からないことを切り分けることでした。
現地で確認したこと
擁壁の高さや延長、傾き、膨らみ、石材の風化、亀裂、目地、水抜き穴、排水状況、上部地盤の状態を改めて確認しました。
資料で確認したこと
売主様の手元に残る図面、確認関係書類、過去の工事資料、写真などを探しました。
資料がない項目は、あるように見せず「資料を確認できない」と明示しました。
行政で確認したこと
用途地域、建ぺい率・容積率、接道、造成や建築に関係する法令、行政で確認できる既存資料の有無などを調べました。
ただし、行政資料が見つからないことだけで違反と断定することも、資料があることだけで現在の安全性が保証されることもありません。
建築計画との関係
擁壁の扱いは、建てる家によって変わります。
建物の位置。
基礎の形式。
駐車場の配置。
掘削の範囲。
重機や資材の搬入。
そのため、売主側で一つの建築方法を正解として決めるのではなく、購入希望者が依頼する建築会社にも早い段階で現地を確認してもらう方針にしました。
🟨 既存擁壁を使えるかどうかは、土地だけを見て決める問題ではありません。買主が何を建てるかによって、検討内容が変わります。
調査をしたら不安が消えた、わけではない
ここは、きれいな成功談にしたくない部分です。
調査をしても、分からないことは残りました。
大谷石の内側がどのような構造になっているか。
築造当時、どのような基準と工法で造られたか。
新しい建物を建てる際、そのまま利用できるか。
将来、補修や再構築が必要になる時期。
これらをすべて断定することはできませんでした。
しかし、調査には意味がありました。
分からないことを隠さず、
「ここまでは確認できた」
「ここから先は建築計画を踏まえた専門判断が必要」
「工事の可能性も含めて資金計画を立てる必要がある」
と説明できるようになったからです。
不動産売却における調査の価値は、必ずしも「問題ありません」という答えを得ることではありません。
どこから先が買主の判断になるのかを明らかにすることにも価値があります。
4人目の買主には、最初に悪い話をした
販売開始から約1年。
4組目の購入希望者が現れました。
名東区で注文住宅用地を探していた、40代のご夫婦です。
これまでなら、最初に日当たりや土地の広さ、周辺環境を説明していたかもしれません。
今回は順番を変えました。
最初に大谷石擁壁の話をしました。
「この土地では、過去に3組の方が契約前に購入を見送っています」
「擁壁について築造時の詳細資料を確認できていない部分があります」
「既存擁壁を利用できるかどうかは、建築計画と専門家の判断が必要です」
「将来的に補修・補強・再構築の費用が生じる可能性も考えてください」
売主様にとって不利に見える情報も、最初にお伝えしました。
買主様は黙って資料を見ていました。
私は、今回も難しいかもしれないと思いました。
ところが、ご主人が言いました。
「過去に3組やめたことまで話していただけるんですね」
奥様も続けました。
「問題がないと言われるより、分からない部分を教えてもらった方が考えられます」
この言葉は、今でも覚えています。
買主様が求めていたのは「絶対に安全です」という保証ではありませんでした。
自分たちが何を確認し、どの費用を見込み、誰に相談すればよいのか。
その道筋でした。
4人目が特別に大胆だったわけではない
4組目の買主様が、擁壁のリスクを恐れない人だったわけではありません。
むしろ慎重でした。
建築会社に現地を確認してもらい、建物配置や擁壁との距離を検討しました。
融資についても、必要資料や資金計画を早い段階で金融機関へ相談しました。
将来の補修可能性も含めて家族で話し合いました。
そして、擁壁に関する未確認事項や将来負担を理解したうえで、土地の広さ、日当たり、周辺環境とのバランスを判断しました。
つまり、4組目の買主が購入した理由は、
大谷石擁壁を気にしなかったから
ではありません。
気になることを、契約前に確認できたから
です。
契約当日、売主様が何度も確認したこと
契約当日。
売主様は、いつもより早く到着されました。
書類を机に置いた後、最初に聞かれたのは契約条件ではありませんでした。
「買主様は、本当に大丈夫でしょうか」
3回も直前で話が流れています。
今回も、契約書へ署名するまでは信じられなかったそうです。
重要事項説明が終わり、売買契約書の確認へ進みました。
擁壁の現況。
資料を確認できていない事項。
買主側で建築計画に応じた検討が必要なこと。
将来、補修・補強・再構築などが必要になる可能性。
それらを契約書や説明書面へ反映し、双方で確認しました。
契約は無事に成立しました。
その後、決済と引渡しも完了しました。
最後に売主様は、静かにこう話されました。
「父の土地が嫌われていたわけではなかったんですね」
私は、
「土地が悪かったのではありません。判断するための準備に時間が必要な土地だったのだと思います」
とお伝えしました。
売却できた理由は「擁壁を直したから」ではない
今回、売主様が擁壁を新しく造り直したわけではありません。
土地を平らにしたわけでもありません。
大きな造成工事を行ったわけでもありません。
変えたのは、販売価格だけでもありません。
変えたのは、情報を伝える順番と深さです。
| 以前の販売 | 見直し後の販売 |
|---|---|
| 土地の魅力を先に説明 | 擁壁の状況と未確認事項を先に説明 |
| 擁壁は問い合わせ後に説明 | 初期段階から資料を共有 |
| 買主本人を中心に案内 | 建築会社・金融機関・家族も判断者と考える |
| 「大丈夫か、危険か」で考える | 「何が分かり、何を確認するか」で考える |
| 契約直前に詳細確認 | 購入検討の初期に専門確認 |
🟩 売却できた本当の理由は、不安を消したことではありません。不安の正体を分け、買主が一つずつ判断できる状態にしたことです。
業界の本音|大谷石擁壁は「売れない」のではなく説明に時間がかかる
正直にお話しすると、大谷石擁壁がある土地は、一般的な平坦地より手間がかかります。
現地確認が必要です。
古い資料を探す必要があります。
行政調査も必要です。
建築会社によって見解が変わることがあります。
金融機関から追加資料を求められることもあります。
そして、買主へ不安を与えすぎず、かといって安全であるかのように断定せず、正確に説明しなければなりません。
そのため、査定段階で、
「擁壁があるので難しいですね」
「擁壁工事費を引いた価格になります」
「更地にしてから考えましょう」
と言われることがあります。
実際に改修や再構築が必要な擁壁もあります。
工事費を見込むべき土地もあります。
しかし、調査前から全面的な造り直しを前提に価格を決めることも、反対に「昔からあるので大丈夫」と考えることも適切ではありません。
🟥 大谷石擁壁のある土地で避けたいのは、危険を軽く扱うことと、根拠のない恐怖だけで価値をゼロにすることです。
擁壁の専門家は何を見るのか
不動産会社、建築士、造成業者、土地家屋調査士、行政、金融機関は、それぞれ確認する目的が違います。
不動産会社
売却価格、契約条件、情報開示、買主層、周辺需要、取引上のリスクを整理します。
建築士・構造や造成の専門家
擁壁の変状、構造、地盤、排水、建築計画への影響、補修・補強・再構築の必要性などを検討します。
建築会社
予定する建物、基礎、駐車場、造成、工事車両の進入などを踏まえ、実際の建築計画を検討します。
土地家屋調査士
境界、擁壁と筆界の位置関係、測量などを確認します。擁壁の構造安全性を判定する専門家とは役割が異なります。
行政
許可記録や法令、現在必要となる手続きなど、行政で確認できる範囲を案内します。個別の擁壁の安全性を保証するものではありません。
金融機関
土地・建物の担保評価、建築計画、工事費を含む資金計画などを確認します。
誰か一人の「大丈夫です」だけで進めるのではなく、それぞれの役割を分けることが大切です。
擁壁付き土地の売主が、売却前に確認したい10項目
- 擁壁は誰の土地にあるのか
- 隣地との境界は確認できているか
- 擁壁の高さ、長さ、種類はどうなっているか
- 築造時期や施工者に関する資料が残っているか
- 許可・確認・検査に関する資料を確認できるか
- 亀裂、傾き、膨らみ、沈下、風化はないか
- 水抜き穴や排水経路は機能しているか
- 増し積みや過去の補修履歴はないか
- 解体や新築工事へどのような影響が考えられるか
- 買主の建築会社が現地確認できる販売日程になっているか
すべての答えがそろわなければ売却できないわけではありません。
大切なのは、分からないことを分かったように扱わないことです。
売主様が先に擁壁工事をするべきか
売却相談では、
「先に擁壁を直せば、高く売れますか」
と聞かれることがあります。
答えは、物件ごとに異なります。
擁壁工事は、買主の建築計画によって工法や範囲が変わる可能性があります。
売主様が先に工事をしても、買主が予定する駐車場や建物配置と合わず、再工事になるかもしれません。
一方、明らかな変状があり、近隣や道路への危険が懸念される場合は、売却以前に安全対策を検討すべきこともあります。
愛知県の案内でも、既存擁壁の改修は、位置や勾配が変わるかなどによって盛土規制法上の扱いが異なり、個別に判断が必要とされています。
したがって、
大谷石だから先に全面改修する
のではなく、
現況、法令、建築計画、工事費、売却価格を比較して決める
という順番が現実的です。
3回のキャンセルは無駄ではなかったのか
売主様にとって、3回のキャンセルは決して無駄では済みません。
期待するたびに、気持ちは削られました。
空き家の管理費用も続きました。
売却期間が長くなるほど、「何か重大な問題がある土地なのではないか」と見られる心配もありました。
私自身も、もっと早く販売方法を変えるべきだったと反省しています。
最初の購入辞退を「買主側の建築会社が慎重だった」と考えず、
なぜ判断できなかったのか
何の資料が不足していたのか
次の買主には、いつ説明するべきか
まで掘り下げるべきでした。
不動産売却の実務では、失敗を美談に変えるだけでは意味がありません。
同じ失敗を繰り返さない形へ変える必要があります。
この土地では、3回目のキャンセルでようやく、私たちの説明方法にも問題があったと認めることができました。
そして、それが4組目の成約につながりました。
まとめ|売れない土地と、まだ説明されていない土地は違う
名古屋市名東区西山台のこの土地には、大谷石擁壁がありました。
3組の購入希望者が現れ、3組とも契約直前で離れました。
建築会社の慎重な見解。
金融機関の追加確認。
親族の反対。
理由は違っても、共通していたのは「判断材料が足りない」という不安でした。
4組目の買主様に対しては、土地の魅力より先にリスクを説明しました。
過去3組が辞退したこと。
確認できたこと。
資料が残っていないこと。
専門家の確認が必要なこと。
将来、工事費が生じる可能性。
それらを隠さず伝えました。
その結果、買主様は安心したのではありません。
リスクを理解したうえで、自分で判断できるようになったのです。
🟥 擁壁がある土地を、問題がない土地として売るべきではありません。
🟩 しかし、擁壁があるという一つの理由だけで、土地全体の価値を諦める必要もありません。
売れない土地なのか。
まだ調べられていない土地なのか。
まだ説明されていない土地なのか。
まだ、その土地を理解できる買主へ届いていないだけなのか。
同じ「売れない」でも、中身はまったく違います。
父親が残した土地を手放すまでに、売主様は1年待ちました。
決して短い時間ではありませんでした。
それでも最後には、土地の状態と向き合い、将来の負担も理解した買主様へ引き継ぐことができました。
私はこの売却を通じて、改めて感じました。
不動産会社の仕事は、難しい物件を「大丈夫です」と言って売ることではありません。
何が難しいのかを調べ、誰なら判断できるのかを考え、売主様と買主様の間に理解できる言葉を置くことです。
名古屋市名東区で大谷石擁壁のある土地を相続した方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、名東区を含む名古屋市内の空き家、相続不動産、擁壁付き土地の売却をお手伝いしています。
次のような相談にも、現地と資料を確認しながら対応します。
- 大谷石擁壁があるため売れないと言われた
- 建築会社から擁壁の造り直しが必要と言われた
- 購入申込みが入っても契約直前で話が流れる
- 擁壁の築造時期や資料が分からない
- 高低差があり、査定価格が会社によって大きく違う
- 建物を解体してから売るべきか迷っている
- 県外に住んでいて、相続した実家を管理できない
- 他社で長期間売却しているが、値下げ以外の提案がない
最初から「売れる」「売れない」と断定することはできません。
まずは、土地の魅力とリスクの両方を整理します。
そして、現地確認、行政調査、境界、建築条件、擁壁の状態、想定される購入者、必要な専門確認を踏まえ、その土地に合った販売方法を考えます。
大谷石擁壁があるからといって、慌てて解体や擁壁工事を始める必要はありません。
工事を決める前に、
何を直す必要があるのか。
誰がどの段階で判断するのか。
工事をすることで売却条件が本当に改善するのか。
を整理することが大切です。
「この土地は売れないかもしれない」と諦める前に、まだ説明されていない価値が残っていないか、一緒に確認してみませんか。
対応エリア
名古屋市南区・名東区・千種区・昭和区・瑞穂区・熱田区・天白区・緑区・港区・中川区・中村区・中区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※擁壁の安全性、既存擁壁を利用した建築の可否、必要な補修・補強・再構築の方法は、擁壁の構造、築造時期、現況、地盤、排水状況および買主の建築計画によって異なります。不動産会社の目視だけで判断せず、必要に応じて行政、建築士、構造・造成の専門家、建築会社などへご確認ください。
※本記事は実際の相談・売却経験をもとに、相談者様および物件を特定できないよう、土地面積、時期、会話、経緯などの一部を調整しています。


