【名古屋市瑞穂区・八事周辺の擁壁土地売却事例】査定400万円から1,200万円になった理由

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〒457-0846
愛知県名古屋市南区道徳通2-51 道徳ビル1F

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目次

「古い擁壁をやり直さなければ売れません」と言われた相続土地

こんにちは。

趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。

「古い擁壁を全部やり直さないと、売却は難しいそうです」

初めてご相談いただいたとき、売主様は少し疲れたご様子でした。

物件は、名古屋市瑞穂区の八事周辺にある相続不動産でした。

地下鉄駅から徒歩圏内。

土地は約70坪。

周辺には、敷地にゆとりのある住宅が並んでいました。

道路から敷地を見上げると、日当たりも悪くありません。

立地、面積、住環境だけを見れば、住宅用地として検討余地のある土地です。

ところが、複数の不動産会社から提示された査定額は、400万円前後でした。

価格を大きく下げた理由は、道路と敷地の間にある古い石積み擁壁でした。

査定担当者からは、次のように説明されたそうです。

  • 擁壁の築造時期や構造資料が分からない
  • 建て替え時に補修や造り直しが必要になる可能性がある
  • 擁壁工事には多額の費用がかかるかもしれない
  • 高低差があり、解体や建築工事も難しい
  • 金融機関や建築会社が慎重になる
  • 買主が限られ、再販売にも時間がかかる

どれも無視できない指摘です。

私も現地を見ずに、

「八事だから高く売れます」

とは言えません。

しかし、売主様には一つの疑問が残っていました。

「本当に、70坪の土地が400万円でしか評価されないのでしょうか」

現地と資料を確認すると、その疑問には理由があると感じました。

擁壁は確かに大きな問題です。

ただ、400万円という金額は、土地の市場価値だけを表していたわけではありませんでした。

未確定の工事費。

調査にかかる手間。

再販売までの時間。

買い取る事業者の利益。

それらを大きく差し引いた、事業者目線の価格だったのです。

その後、この土地は擁壁を全面的に造り直すことなく、約1,200万円で成約しました。

ただし、簡単に売れたわけではありません。

一度は具体的な購入検討が止まりました。

建築会社の見方も分かれました。

売主様自身も、途中で400万円の買取を受け入れた方がよいのではないかと迷われました。

🟨 今回の価格差は、「擁壁を見抜けば土地価格が3倍になる」という話ではありません。早く確実に買い取る価格と、時間をかけて土地の条件を理解できる買主を探した成約価格の違いです。

この記事では、なぜ査定額に800万円もの差が生まれたのか、販売途中で何が起きたのか、擁壁付き土地を売る前に何を確認すべきかを、現場の視点からお話しします。

※本記事は、実際に寄せられる相談や売却実務をもとに再構成したモデルケースです。相談者様や物件を特定できないよう、所在地、面積、価格、時期、会話、経緯などの一部を調整しています。


相続した八事の実家は、築50年を超える空き家だった

売主様は、ご両親が亡くなられた後、瑞穂区にある実家を相続されました。

建物は築50年を超える木造住宅でした。

ご自身は別の場所に住んでおり、ご家族が移り住む予定もありません。

相続直後は、すぐに売却する気持ちにはなれなかったそうです。

庭には、お父様が手入れしていた木が残っていました。

室内には、ご両親の家具や食器、古いアルバムが置かれていました。

「土地として売るということは、家を壊すことですよね」

売主様は何度も、そう話されました。

相続した実家は、単なる資産ではありません。

家族が暮らした時間が残っています。

そのため、売却を決断するまでに時間がかかるのは不自然なことではありません。

しかし、誰も住まない家にも維持費はかかります。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災保険料
  • 庭木や雑草の管理費
  • 建物の換気と清掃
  • 雨漏りや外壁の確認
  • 台風や大雨後の現地確認
  • 近隣から連絡があった場合の対応

空き家になって数年がたつと、屋根や外壁の傷みも気になり始めました。

売主様は、残すことと管理することは同じではないと感じ、売却を決断されました。


最初の査定で、土地より先に擁壁が評価された

査定に来た不動産会社の担当者は、道路側の石積みを見ると、すぐに擁壁の話を始めたそうです。

「かなり古いですね」

「現在の基準でそのまま利用できるか分かりません」

「建て替えるなら、全面的な改修を考えた方がよいと思います」

擁壁の高さや延長を概算し、建物解体費と擁壁工事費を差し引く。

さらに、売れるまでの保有費と再販売リスクを差し引く。

その結果が約400万円でした。

売主様は、八事周辺の土地価格を詳しく把握していたわけではありません。

それでも、駅から歩ける70坪の土地が、擁壁一つで400万円になることには違和感がありました。

ただ、専門家から、

「危険かもしれません」

「工事費が高額になるかもしれません」

と言われると、反論することは難しいものです。

相続不動産では、所有者自身が現在の市場を知らないことも少なくありません。

最初に受けた査定が、その不動産の正解だと思ってしまいやすいのです。


現地を歩くと、400万円という数字に違和感があった

ご相談を受け、私は現地へ向かいました。

擁壁や高低差のある土地は、机上の資料だけでは判断できません。

道路からの高さ。

擁壁の長さ。

敷地上部の状態。

排水。

建物との距離。

工事車両が進入できるか。

道路の反対側に作業スペースがあるか。

隣地との距離。

実際に立たなければ分からないことがあります。

現地へ着いて最初に感じたのは、簡単な土地ではないということでした。

古い石積みには、経年変化が見られました。

築造時の詳しい図面も、その時点では確認できませんでした。

不動産会社の目視だけで、

「このまま使えます」

とは到底言えません。

一方、敷地の上まで歩くと、擁壁以外の価値も見えてきました。

  • 約70坪のまとまった敷地
  • 地下鉄駅から徒歩圏内
  • 落ち着いた周辺環境
  • 高台側の日当たり
  • 視線が抜ける方向の眺望
  • 比較的良好な道路条件
  • 周辺にゆとりある住宅が多いこと

道路側から擁壁だけを見れば、「工事費のかかる土地」です。

敷地上部から周辺を見れば、「八事周辺で日当たりと眺望を得られる住宅用地」です。

どちらも、この土地の事実でした。

🟨 問題は、擁壁を無視することではありません。擁壁だけで土地全体を評価し、その他の価値を査定から消してしまうことです。


八事周辺では、高低差も街の個性になっている

八事周辺を歩くと、平坦な土地ばかりではありません。

坂道。

道路より高い敷地。

階段の先に玄関がある住宅。

石積みやコンクリート擁壁。

高低差を生かして建てられた家。

丘陵地に形成された住宅地では、高低差が街並みの一部になっています。

もちろん、高低差には負担があります。

擁壁の維持管理。

駐車場の計画。

建築・解体時の施工方法。

擁壁や地盤への影響。

毎日の階段移動。

平坦地より建築費が増える場合もあります。

一方で、土地によっては次のような特徴が評価されます。

  • 道路からの視線を避けやすい
  • 日当たりや風通しを得やすい
  • 高台側の眺望を生かせる
  • 建物と外構の設計に変化をつけられる
  • 周辺の落ち着いた街並みに調和しやすい

高低差は、すべての買主にとって魅力になるわけではありません。

車から玄関までの段差を避けたい方。

建築費をできるだけ抑えたい方。

庭や敷地を平坦に使いたい方。

こうした方には向かない可能性があります。

しかし、眺望、日当たり、プライバシー、設計の個性を求める方には、検討価値があります。


「古い擁壁だから危険」とは断定できない

擁壁とは、土地の高低差によって土が崩れないよう支える工作物です。

状態を確認するときは、次のような要素が関係します。

  • 擁壁の高さと延長
  • 支えている土の高さ
  • 構造と施工方法
  • 基礎
  • 築造時期
  • 許可・確認・検査等の資料
  • 傾き、はらみ出し、ずれ
  • ひび割れ、目地の開き、石材の欠損
  • 水抜き穴と排水状況
  • 背面土の流出や沈下
  • 過去の補修・増し積み
  • 建物との距離
  • 道路、隣地、境界との位置関係

古い擁壁には、現在の基準や計画に照らして確認が必要なものがあります。

改修・補強・再築を検討すべき状態もあります。

しかし、築年数や見た目だけで、すべて危険と判断することもできません。

反対に、長年崩れていないという理由だけで、安全と判断することもできません。

外から大きな変状が見えなくても、基礎や背面土、地中の排水までは確認できないからです。

🟥 不動産会社が目視できるのは、現地で確認できる外観上の状態までです。擁壁の構造安全性や、既存擁壁を利用した新築の可否を保証することはできません。

必要に応じて、行政資料を確認し、建築士、構造・造成の専門家、建築会社などへ相談する必要があります。


400万円の査定は「土地の値段」だけではなかった

最初の査定内容を整理すると、400万円は次のような計算から導かれていました。

周辺の土地価値を概算する。

そこから、

  • 古家の解体費
  • 擁壁の調査費
  • 擁壁の全面撤去・再築費
  • 高低差による追加建築費
  • 測量や境界確認費
  • 再販売までの保有費
  • 売れなかった場合のリスク
  • 買取事業者の利益

を差し引く。

事業者が現況のまま買い取り、問題を調査し、再販売するなら、こうした費用とリスクを考える必要があります。

したがって、400万円という金額が、直ちに不当だったとは言えません。

ただし、その金額を、一般市場における土地価値そのものと考えることも適切ではありません。

買取価格には、スピードと確実性があります。

売主様が解体や擁壁工事を行わず、契約条件によっては契約不適合責任等の負担を抑えられる場合もあります。

一方、仲介では、買主が見つかる保証はありません。

販売期間が長くなることがあります。

専門調査や説明も必要です。

契約直前で話が流れる可能性もあります。

つまり、400万円と1,200万円は、同じ売り方の価格を比較しているわけではありません。


査定額を下げていた本当の原因は「分からない工事費」だった

擁壁工事の費用は、単純に坪単価で決められるものではありません。

  • 擁壁の高さと長さ
  • 撤去する範囲
  • 工事車両や重機が進入できるか
  • 道路使用や交通誘導が必要か
  • 土砂や資材を置く場所があるか
  • 隣地へ協力を求める必要があるか
  • 既存建物を残すか、解体するか
  • 地盤や地下水の状態
  • 新築建物の位置、基礎、重量
  • 駐車場、階段、外構の計画
  • 行政との協議や必要な手続き

これらによって大きく変わります。

買主の建築計画が決まっていない段階では、必要な工事も確定しません。

しかし、査定する側は価格を出さなければなりません。

工事費が分からない。

工期も読めない。

建築会社や金融機関の判断も分からない。

そこで最も大きな工事を想定し、価格から差し引く。

これが査定額を大きく下げていた理由でした。

🟨 擁壁そのものが400万円まで土地価値を下げたというより、何を直し、いくらかかり、誰が負担するのか分からない状態が価格を下げていました。


売却前に確認したこと

私たちは、擁壁を安全だと証明するためではなく、販売の前提を整理するために調査を進めました。

土地の基本条件

  • 登記事項証明書
  • 公図、地積測量図等
  • 接道状況
  • 用途地域
  • 建ぺい率・容積率
  • 高度地区その他の建築制限
  • 上下水道、ガス等
  • ハザード情報
  • 周辺の売出事例・成約事例

擁壁と高低差

  • 擁壁の高さと延長
  • 道路との高低差
  • 外観上確認できる変状
  • 水抜き穴と排水経路
  • 増し積みや補修の形跡
  • 行政で確認できる資料の有無
  • 建物、境界、隣地との位置関係
  • 解体・新築時に想定される課題

販売市場

  • 八事周辺で土地を探している購入者層
  • 約70坪を一体利用する需要
  • 注文住宅会社や設計事務所の見方
  • 高低差を前提に建築できる層
  • 一般仲介と事業者買取の条件差

調査をしても、すべてが分かったわけではありません。

築造時の詳細資料を確認できない部分がありました。

石積みの内側や基礎、背面の状態までは分かりません。

将来、補修・補強・再築等が必要になる可能性も残りました。

それでも調査には意味があります。

ここまでは確認できた。

ここから先は、買主の建築計画と専門家の判断が必要。

工事の可能性を含めて資金計画を立てる必要がある。

この線引きを、買主へ説明できるようになったからです。


最初の購入希望者は、擁壁ではなく「総額が読めないこと」で離れた

販売を開始すると、八事周辺で注文住宅を検討していたご夫婦から問い合わせがありました。

現地では、日当たりと眺望を気に入っていただきました。

「道路から少し上がっているから、外からの視線が気になりにくいですね」

「この方向へ窓をつくれば、光が入りそうです」

ご夫婦だけで見学した段階では、前向きでした。

その後、依頼予定のハウスメーカーが現地を確認しました。

数日後、買主側から連絡が入りました。

「擁壁を全部造り直す可能性があると言われました」

まだ建物配置も、基礎も、駐車場も決まっていません。

既存擁壁をどこまで利用できるかについて、詳細な検討が終わったわけでもありませんでした。

しかし、買主様の資金計画には、土地代、建物代、解体費に加え、上限の見えない擁壁工事が加わりました。

住宅ローンの事前相談でも、総事業費を整理できませんでした。

買主様が離れたのは、擁壁が嫌だったからだけではありません。

購入後に必要となる金額が読めなかったからです。

最終的に、最初の購入希望者は別の土地を選びました。

売主様は、

「やはり400万円で売るしかないのでしょうか」

と落ち込みました。

私自身も、土地の魅力を説明するだけでは足りないと気づきました。

買主が判断できるよう、建築会社や金融機関まで含めた販売手順を組み直す必要があったのです。


最初の販売方法にも問題があった

当初の販売資料には、

  • 八事周辺の住宅地
  • 約70坪
  • 地下鉄駅徒歩圏
  • 日当たり良好
  • 高台の眺望

という魅力を掲載していました。

一方、擁壁については、

「敷地と道路に高低差あり」

「既存擁壁あり。詳細はお問い合わせください」

という説明にとどまっていました。

事実を隠したわけではありません。

しかし、買主が最も不安に感じる問題を、問い合わせ後へ送っていました。

魅力を聞いた後で大きなリスクを説明されると、買主は、

「まだ他にも聞いていないことがあるのではないか」

と感じます。

🟥 擁壁付き土地で「詳細はお問い合わせください」とだけ記載することは、必ずしも親切ではありません。判断に必要な問題が、奥に隠されているように見えることがあります。

そこで、次の販売からは説明の順番を変えました。

土地の魅力だけを先に伝えるのではなく、擁壁について確認できたこと、確認できないこと、専門判断が必要なことを、購入検討の初期に共有しました。


想定外の展開|別の建築会社は「土地の使い方から考えたい」と言った

次に検討されたのは、設計事務所と家づくりを進めていたご家族でした。

今回は最初の現地確認から、買主様、設計者、建築会社の担当者に来ていただきました。

私は最初に、次の内容を説明しました。

「古い石積み擁壁があります」

「築造時の構造資料を確認できていない部分があります」

「既存擁壁を利用できるか、補修・補強・再築が必要かは、建築計画を踏まえた検討が必要です」

「将来、相応の費用が生じる可能性があります」

建築会社は、すぐに「大丈夫です」とも、「全部造り直しです」とも言いませんでした。

擁壁の外観。

敷地上部。

排水。

既存建物との距離。

道路からの搬入経路。

眺望が開ける方向。

一つずつ確認したあと、設計者がこう話しました。

「擁壁をどうするかだけでなく、この高低差をどう使うかから考えたいですね」

高低差をなくして平坦地のように使うのではなく、建物配置や外構、駐車場を含めて計画する。

既存擁壁を利用できるかどうかは、別途専門確認する。

全面更新が必要な場合の予備費も考える。

この瞬間、擁壁は「土地購入をやめる理由」から、「建築計画の中で検討する項目」へ変わりました。

もちろん、安全性が確認されたわけではありません。

工事費が消えたわけでもありません。

ただ、最大額の工事費を最初から確定費用として差し引く考え方ではなくなったのです。


買主本人だけが納得しても契約できない

擁壁付き土地の売却で見落とされやすいのは、判断者が買主本人だけではないことです。

建築会社。

設計者。

金融機関。

資金援助をする家族。

場合によっては、構造・造成の専門家。

誰か一人でも判断できなければ、話は止まります。

今回も、金融機関から追加確認を求められました。

  • 既存擁壁に関する資料はあるか
  • 建物と擁壁の位置関係はどうなるか
  • 擁壁関連工事の可能性を資金計画へ反映しているか
  • 土地、建物、解体、外構を含む総額はいくらか
  • 想定外の費用が生じた場合に対応できるか

買主様は、擁壁の工事可能性を予備費として考え、建物計画も調整しました。

確認には時間がかかりました。

売主様は、再び話が流れるのではないかと心配されました。

しかし、今回は初期段階から建築会社と金融機関へ情報を共有していたため、契約直前になって初めて大きな問題が出てくる状況を避けることができました。


買主が評価したのは「安さ」だけではなかった

今回の買主様は、擁壁を気にしない方だったわけではありません。

むしろ慎重でした。

将来の補修・補強・再築の可能性を考え、建築会社と資金計画を確認しました。

そのうえで、土地全体を評価しました。

  • 八事周辺の住環境
  • 地下鉄駅から徒歩圏内
  • 約70坪の敷地
  • 日当たりと風通し
  • 道路からの視線を避けやすいこと
  • 高台側の眺望
  • 周辺にゆとりある住宅が多いこと
  • 高低差を生かした設計の可能性

土地の上から周辺を見た買主様は、こう話されました。

「平らな土地では、この景色はつくれませんよね」

高低差は、建築費を増やす可能性があります。

同時に、その土地でしか得られない環境を生むこともあります。

重要なのは、欠点を長所に言い換えることではありません。

費用やリスクを説明したうえで、その特徴に価値を感じる人へ届けることです。


査定400万円から、約1,200万円での成約へ

最終的に、この土地は約1,200万円で成約しました。

当初の査定との差は、約800万円です。

販売期間中に、土地の場所や面積が変わったわけではありません。

擁壁を全面的に造り直したわけでもありません。

古家を先に解体したわけでもありません。

変わったのは、土地の評価方法、想定買主、情報を渡す順番でした。

比較項目約400万円の提示約700万円の別査定約1,200万円の成約
主な売却方法事業者買取を想定リスクを見込んだ仲介・買取個人買主への仲介
主な評価軸解体・擁壁再築・再販売リスク立地と擁壁リスク立地、面積、眺望、建築計画、擁壁条件
擁壁の扱い全面再築費を大きく見込む工事費を一定額控除買主側で専門確認し、将来負担を考慮
売却期間短期を想定条件による調査・設計・融資確認に時間を要した
成約の確実性比較的高い買主次第購入辞退・長期化の可能性あり
売主の負担条件次第で抑えやすい個別条件による調査、説明、契約条件整理が必要

この比較で重要なのは、400万円が誤りで、1,200万円だけが正しいということではありません。

400万円は、事業者が不確定な費用と再販売リスクを引き受け、短期間で購入するための価格でした。

1,200万円は、売主様が時間をかけ、買主が建築会社や金融機関と検討し、擁壁の未確認事項と将来負担を受け入れた結果です。

条件も、時間も、責任も違います。

🟩 価格差の本当の理由は、擁壁を無視したことではありません。擁壁以外の価値を査定へ戻し、その価値とリスクの両方を理解できる買主へ届けたことです。


売主様は、価格よりも「後から問題にならないか」を気にしていた

契約条件がまとまり始めたころ、売主様から連絡がありました。

「買主様は、擁壁のことを本当に理解されていますか」

当初400万円と言われた土地が、1,200万円で話が進んでいます。

売主様には、うれしさと同時に不安がありました。

高く売るために、問題を軽く説明しているのではないか。

引渡し後に、

「そんな話は聞いていない」

と言われるのではないか。

ご両親が残した土地を、次の方へ問題ごと押しつけるような売り方にはしたくなかったのです。

私は、買主様が建築会社と現地を確認したこと、資料が残っていない部分も説明したこと、将来の工事可能性を含めて資金計画を考えていることをお伝えしました。

売主様は、少し安心された様子でこう話されました。

「高く売れることより、納得して買っていただけることの方が安心です」

売主利益とは、最高価格だけではありません。

売却後の紛争を避けること。

引渡しまでの見通しが立つこと。

親が残した土地を、事情を理解した方へ引き継ぐこと。

それも大切な結果です。


契約書に「現況有姿」と書くだけでは足りない

擁壁付き土地では、販売時だけでなく、契約書・重要事項説明・告知書等での整理も重要です。

単に、

「既存擁壁あり。現況有姿」

と記載すれば、すべての責任関係が明確になるわけではありません。

物件の状況と契約内容に応じ、次のような事項を整理します。

  • 敷地と道路に高低差があること
  • 既存の石積み・擁壁等があること
  • 築造時期や構造資料を確認できていない部分
  • 不動産会社の目視で構造安全性を保証しないこと
  • 既存擁壁を利用した建築の可否は建築計画と専門判断によること
  • 補修、補強、撤去、再築等が必要になる可能性
  • 将来費用を誰が負担する契約なのか
  • 買主側が事前に建築会社等へ確認した内容

売主が知っている事実。

調査で確認できた事実。

確認できなかった事項。

買主側で判断した事項。

これらを分けて書面へ反映することが大切です。


先に擁壁工事をすれば高く売れるのか

売主様から、

「擁壁を先に直せば、もっと高く売れるのでしょうか」

と聞かれることがあります。

答えは、土地ごとに異なります。

明らかな変状があり、道路や隣地への危険が懸念される場合は、売却以前に安全対策を検討すべきことがあります。

一方、買主の建物配置や駐車場計画が決まる前に売主が工事をすると、買主の希望と合わず、追加工事や再工事になる可能性があります。

比較したいのは次の内容です。

  • 緊急性のある変状が確認されているか
  • 工事の法的な取り扱い
  • 補修・補強・撤去・再築のどれを検討するのか
  • 買主の計画がなくても工事範囲を決められるか
  • 工事費を売却価格へどの程度反映できるか
  • 工事期間中の近隣・道路の安全
  • 売主が工事責任を負う範囲

古い擁壁だから全面的にやり直す

ではなく、

現況、法令、安全性、建築計画、工事費、売却価格を比較して決める

という順番が現実的です。


古家は先に解体した方がよいのか

今回のような土地では、古家を解体して更地にすれば、土地形状が分かりやすくなる場合があります。

しかし、擁壁付き土地では、解体前に確認したいことがあります。

  • 解体重機やトラックの進入
  • 解体時の振動が擁壁へ与える影響
  • 建物基礎と擁壁の位置関係
  • 土を押さえる構造への影響
  • 隣地や道路の安全確保
  • 解体後の雨水・排水
  • 住宅用地に関する固定資産税等の取り扱い
  • 古家を利用・改修する選択肢

建物を解体した後で、擁壁や再建築上の問題が分かっても、建物を元へ戻すことはできません。

🟥 「古い家だから、とりあえず解体」は、擁壁付き土地では特に慎重に判断する必要があります。売却方法、建築計画、解体方法を一緒に考えることが大切です。


擁壁のある土地で避けたい7つの判断

1.一社の査定だけで土地価値を決める

擁壁付き土地は、想定買主と工事費の見方により査定差が出やすい不動産です。金額だけでなく、査定の前提を確認してください。

2.買取価格と仲介成約価格を同じものとして考える

買取価格には、事業者が負担する工事費、保有費、再販売リスク、利益が含まれます。価格差だけで良し悪しを判断できません。

3.「古い擁壁だから危険」と断定する

築年数や外観だけでは、構造安全性を判断できません。

4.「昔から立っているから安全」と考える

外観に大きな変化がなくても、基礎や背面土、地中の排水までは分かりません。

5.最大額の工事費を確定費用として差し引く

買主の建築計画が決まらなければ、必要な工事範囲を判断できないケースがあります。

6.調査前に解体や高額な擁壁工事を行う

工事内容が買主の計画と合わなければ、費用を価格へ反映できない可能性があります。

7.魅力だけを広告し、擁壁の説明を後回しにする

契約直前に問題が表面化すると、購入辞退や説明トラブルにつながります。


擁壁付き土地を売る前の確認項目

  1. 擁壁は誰の土地にあるのか
  2. 境界と擁壁の位置関係は確認できているか
  3. 擁壁の高さ、長さ、種類はどうなっているか
  4. 築造時期、施工者、構造に関する資料はあるか
  5. 許可、確認、検査等の記録を確認できるか
  6. 亀裂、傾き、はらみ、ずれ、沈下、欠損はないか
  7. 水抜き穴と排水経路はどうなっているか
  8. 増し積みや補修の履歴はないか
  9. 擁壁の上部・下部に建物があるか
  10. 道路や隣地へ影響する可能性はないか
  11. 盛土・造成、土砂災害関係の区域を確認したか
  12. 解体・新築工事へどのような影響があるか
  13. 買主の建築会社が現地確認できる日程か
  14. 契約書や告知書へ何を記載するか整理したか

すべての資料がそろわなければ売れないわけではありません。

古い住宅地では、築造時の資料が残っていないこともあります。

大切なのは、資料がない事実を隠さず、どこから先が専門家や買主の判断になるのかを明らかにすることです。


誰へ何を確認するのか

相談先主に確認する内容
不動産会社売却価格、買主層、販売方法、情報開示、契約条件
建築士・構造や造成の専門家変状、構造、地盤、排水、建築計画への影響、補修等の必要性
建築会社建物配置、基礎、駐車場、解体、施工方法、工事費
土地家屋調査士境界、測量、擁壁と筆界の位置関係
行政法令、区域、許可・確認記録、必要な手続きの案内
金融機関担保評価、建築計画、工事費を含む資金計画

土地家屋調査士が擁壁の構造安全性を判定するわけではありません。

行政へ相談すれば、個別の擁壁の安全が保証されるわけでもありません。

不動産会社が現地を見ただけで、既存擁壁を利用した建築の可否を断定することもできません。

それぞれの専門分野を分け、必要な確認を行うことが重要です。


空き家マイスターとして感じたこと

相続不動産の査定では、一つの強い言葉が、土地全体の価値を覆い隠すことがあります。

再建築不可。

接道不足。

高低差。

古い擁壁。

境界不明。

こうした問題は、軽く扱うべきではありません。

しかし、問題が一つあることと、不動産全体に価値がないことは別です。

今回の土地でも、擁壁は最後まで残りました。

築造時の資料がすべて見つかったわけでもありません。

将来、工事が必要になる可能性も消えていません。

それでも売却できたのは、擁壁を隠したからではありません。

安全だと断定したからでもありません。

分かることと分からないことを整理し、それでも八事周辺の立地、広さ、日当たり、眺望に価値を感じる買主へ届けたからです。

不動産会社の仕事は、

「問題ありません」

と言って売ることではありません。

問題を調べる。

分からないことを認める。

必要な専門家へつなぐ。

買主が検討できる時間を用意する。

価格、時間、責任、成約可能性を売主様が比較できる状態にする。

それが、擁壁付き土地の売却で必要な仕事だと考えています。


まとめ|査定額が3倍になったのではなく、評価する市場が変わった

今回の土地は、最初に約400万円と査定され、最終的に約1,200万円で成約しました。

数字だけを見ると、土地価値が3倍になったように見えます。

しかし、販売途中で擁壁が新しくなったわけではありません。

法令上の問題がすべて消えたわけでもありません。

変わったのは、評価する市場です。

最初の400万円は、事業者が不確定な工事費と再販売リスクを負い、短期間で買い取る価格でした。

1,200万円は、八事周辺で住宅用地を探す買主が、建築会社や金融機関と検討し、擁壁のリスクと土地の魅力を合わせて判断した価格でした。

高値成約につながった要素は、次のとおりです。

  • 八事周辺の落ち着いた住環境
  • 地下鉄駅から徒歩圏内
  • 約70坪の敷地
  • 高台側の日当たりと眺望
  • 擁壁以外の価値を査定へ戻したこと
  • 未確認事項を隠さなかったこと
  • 建築会社と金融機関へ早期に情報を共有したこと
  • 高低差を生かした建築を検討できる買主へ届けたこと

🟥 擁壁のある土地を、問題のない土地として売るべきではありません。

🟩 しかし、擁壁があるという一つの理由だけで、土地全体の価値を諦める必要もありません。

擁壁は、土地に価値がない理由ではありません。

現在の状態、建築への影響、将来負担を詳しく調べ、正確に説明する理由です。


名古屋市瑞穂区・八事周辺で擁壁付き土地を相続した方へ

ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、瑞穂区・昭和区・天白区などを含む名古屋市内の相続不動産、空き家、擁壁付き土地の売却をお手伝いしています。

次のような段階でも構いません。

  • 古い擁壁があるため、売れないと言われた
  • 擁壁を全面的に造り直す費用を差し引かれた
  • 高低差があり、不動産会社によって査定額が大きく違う
  • 購入希望者が現れても、建築会社の確認で話が止まる
  • 擁壁の築造時期や構造資料が分からない
  • 古家を解体してから売るべきか迷っている
  • 売却前に擁壁工事をすべきか判断できない
  • 県外に住んでいて、相続した実家を管理できない
  • 現在の会社から、値下げ以外の提案がない

最初から「高く売れる」「工事は必要ない」と断定することはできません。

擁壁の状態によっては、安全対策や補修・補強・再築を優先すべき土地もあります。

まずは、現地、境界、道路、高低差、排水、行政資料、建物との位置関係、周辺需要を確認します。

そのうえで、

  • 現況のまま一般市場で売る
  • 古家付きで、建築会社と検討できる買主を探す
  • 必要な調査を先に行う
  • 補修や工事後に売る
  • 不動産会社へ買い取ってもらう

といった方法を、価格だけでなく、費用、期間、責任、成約可能性まで含めて比較します。

「擁壁がある土地だから」と400万円の査定だけで決める前に、まだ調べられていない価値が残っていないか、一緒に確認してみませんか。

対応エリア

名古屋市南区・瑞穂区・昭和区・天白区・千種区・名東区・緑区・熱田区・港区・中川区・中村区・中区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。

※擁壁の安全性、既存擁壁を利用した建築の可否、補修・補強・撤去・再築の必要性と方法は、擁壁の構造、築造時期、現況、地盤、排水、境界、法令および買主の建築計画等によって異なります。不動産会社の目視だけで判断せず、必要に応じて行政、建築士、構造・造成の専門家、建築会社等へご確認ください。

※宅地造成・盛土、土砂災害関係区域、建築制限および必要な許可・手続きは、所在地と工事内容によって異なります。具体的な計画については、名古屋市その他の関係機関へ個別にご確認ください。

※査定価格は売却可能性についての意見であり、その価格での成約を保証するものではありません。買取価格と仲介による想定成約価格では、売却期間、費用負担、契約条件、契約不適合責任、成約の確実性等が異なります。

※本記事は令和8年9月時点の公表情報と実務経験をもとに作成しています。本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、実際の相談・売却経験をもとに所在地、面積、価格、時期、会話、経緯などの一部を調整したモデルケースです。

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