こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
「A社は3,000万円、B社は3,500万円、C社は4,000万円でした。やはりC社に任せるべきでしょうか」
不動産売却のご相談で、よく聞かれる質問です。
同じ家、同じ土地を見ているのに、査定額が1,000万円も違う。
売主様からすれば、最も高い金額を提示した会社に魅力を感じるのは当然です。
「高く評価してくれた」
「販売力に自信があるのだろう」
「他社より高く売ってくれるかもしれない」
そう思われるでしょう。
しかし、不動産売却の現場では、
査定価格が最も高い会社=最終的に最も高く売ってくれる会社
とは限りません。
査定価格は、不動産会社が物件を買い取る約束の金額ではないからです。
仲介による査定は、周辺の取引、市場の需要、物件条件などから導く「売却予想」です。
そして、その数字には、会社の査定方針だけでなく、営業上の思惑が入り込むことがあります。
その一つが、
まず高い査定額で売主様の期待を引き上げ、専任媒介契約を取得する
という営業方法です。
業界では、相場から離れた高値で売却依頼を受けることを「高値預かり」と表現することがあります。
最初に、誤解のないようお伝えします。
🟨 高額査定だから危険なのではありません。危険なのは、その価格で買う人、成約事例、販売期間、売れなかった場合の対応を説明できない高額査定です。
この記事では、不動産会社が高額査定を提示する理由、専任媒介契約を取得したい本音、危険な査定の見分け方、高値預かりによって売主様が失うものについて、名古屋の売却現場からお話しします。
不動産査定には「4つの価格」が混在している
高額査定の問題を理解するためには、最初に価格の意味を分ける必要があります。
| 価格 | 意味 |
|---|---|
| 査定価格 | 市場や物件条件から不動産会社が予想する価格 |
| 売出価格 | 売主様が市場へ提示する募集価格 |
| 成約価格 | 買主との交渉を経て実際に契約した価格 |
| 買取価格 | 不動産会社が自ら買主となり提示する価格 |
この4つは、同じ数字ではありません。
例えば、査定価格が4,000万円でも、4,300万円からチャレンジして売り出すことはできます。
反対に、早期売却を優先し、3,850万円から始める方法もあります。
最終的な成約価格は、買主からの申込みと条件交渉によって決まります。
また、不動産会社が直接買う買取価格は、仲介の査定価格とは性質が異なります。
買取会社は、購入後の解体、リフォーム、測量、再販売、税金、保有期間、契約上のリスクなどを負担します。そのため、通常は仲介で見込まれる成約価格より低くなります。
査定時に、
「買取ならいくらですか」
と聞くことは参考になりますが、仲介査定と買取価格の差だけで会社の誠実さを判断することはできません。
🟥 「査定価格」「売出価格」「成約予想価格」「買取価格」を区別せず、一つの数字として説明する会社には注意が必要です。
そもそも、不動産査定には根拠が必要
宅地建物取引業者が、媒介価額について意見を述べる場合、その根拠を示して説明することが求められています。
査定価格は、担当者の感覚だけで決めるものではありません。
主に、次のような情報を確認します。
1.周辺の成約事例
重要なのは「現在売りに出ている価格」だけではなく、実際に契約した価格です。
同じ町内の土地。
同じマンションの過去取引。
駅距離や築年数が近い戸建住宅。
ただし、近いというだけで同じ価値になるわけではありません。
土地面積、道路、方位、間口、築年数、建物状態、成約時期などを補正して考えます。
2.現在販売中の競合物件
購入希望者は、同じ地域・予算帯の物件を比較します。
自分の物件だけが相場より高ければ、広告が見られても問い合わせにつながらない可能性があります。
ただし、売出価格は売主の希望を含むため、成約事例とは分けて見る必要があります。
3.物件固有の条件
同じ地域、同じ面積でも価値は変わります。
- 南道路か北道路か
- 整形地か旗竿地か
- 道路幅員と間口
- 日当たりと高低差
- 擁壁や越境の有無
- 駐車計画
- 建物の劣化状況
- 再建築や権利関係
特に相続空き家、連棟住宅、再建築が難しい土地、古い擁壁のある土地は、机上査定だけでは判断できないことがあります。
4.想定する購入者
査定価格を実現するには、その価格を支払う買主が必要です。
一般の住宅購入者なのか。
建売会社なのか。
注文住宅会社なのか。
投資家なのか。
隣地所有者なのか。
「この価格で誰が買うのか」を説明できなければ、査定は数字だけの提案になってしまいます。
5.販売期間と販売戦略
1か月以内の成約を目指す価格と、半年かけて可能性を探る価格は異なります。
広告媒体。
写真や販売図面。
既存顧客への紹介。
他社への情報公開。
建築会社・投資家・隣地への提案。
価格だけでなく「どのように売るのか」があって、初めて査定価格に意味が生まれます。
3社の査定額が違ったとき、売主様の目に何が映るのか
例えば、次の査定結果が届いたとします。
| 不動産会社 | 査定額 |
|---|---|
| A社 | 3,000万円 |
| B社 | 3,500万円 |
| C社 | 4,000万円 |
売主様の目には、C社が一番「頑張ってくれる会社」に見えます。
しかし、この表だけでは判断できません。
必要なのは、数字の後ろにある前提です。
| 比較項目 | A社 | B社 | C社 |
|---|---|---|---|
| 査定価格 | 3,000万円 | 3,500万円 | 4,000万円 |
| 推奨売出価格 | |||
| 想定成約価格帯 | |||
| 想定販売期間 | |||
| 主な成約事例 | |||
| 想定する買主 | |||
| 売れない場合の対応 |
C社が、近隣の成約事例、具体的な購入希望者、販売方法を示し、4,000万円で成約する理由を説明できるなら、最も優れた提案かもしれません。
一方、
「この地域は人気です」
「弊社にはお客様がたくさんいます」
「まずは高く出してみましょう」
という説明だけなら、4,000万円は査定価格ではなく、媒介契約を取るための期待値かもしれません。
なぜ不動産会社は専任媒介契約を取りたいのか
不動産会社が売主様から正式に売却依頼を受けるときは、媒介契約を締結します。
主な種類は、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介です。
専任媒介契約では、売主様が同時に複数の宅建業者へ重ねて媒介を依頼することはできません。
不動産会社にとっては、自社が売主側の窓口として販売活動を進めやすくなります。
調査や広告へ費用と時間をかけやすい。
情報や条件を整理しやすい。
販売責任を明確にしやすい。
専任媒介には、売主様にとってもメリットがあります。
したがって、専任媒介契約そのものが危険なのではありません。
問題は、契約を獲得することが目的となり、成約可能性よりも「選ばれる査定額」を優先する場合です。
不動産会社側の収益構造
仲介会社は、売買契約が成立したときに仲介手数料を受け取るのが一般的です。
売却依頼を受けなければ、成約の入口に立てません。
さらに、自社で買主も見つければ、売主・買主双方の仲介を担当する「両手仲介」になる可能性があります。
そのため、一部の営業現場では、
まず高い査定で売却依頼を受ける
市場へ出して反響がなければ値下げを提案する
価格が現実的になった段階で成約を目指す
という進め方が行われることがあります。
これが売主様の理解と合意のもとで行うチャレンジ販売なら、問題とは限りません。
しかし、最初から値下げを想定しているのに、
「この価格で十分売れます」
と説明して専任媒介契約を取るのであれば、売主様との認識には大きなずれがあります。
高額査定が危険になる5つのパターン
パターン1|成約事例ではなく、売出事例だけを並べている
現在4,500万円で販売中の物件があっても、その価格で売れるとは限りません。
長期間売れていない競合物件を根拠に、高い査定額を出している可能性もあります。
「これは売出価格ですか、実際の成約価格ですか」
と確認してください。
パターン2|査定価格とチャレンジ価格を区別していない
現実的な成約予想が4,200万円でも、売主様の希望を踏まえて4,500万円から始める戦略はあります。
重要なのは、4,500万円を「売れる査定価格」と説明するのか、「期間を決めて試す売出価格」と説明するのかです。
パターン3|売却期間を答えない
高く売れる可能性があっても、成約まで1年かかるなら、固定資産税、管理、空き家の劣化、住み替え計画へ影響します。
価格だけでなく、何か月以内の成約を想定しているのか確認してください。
パターン4|売れない場合の提案が、最初から値下げだけ
写真、販売図面、広告媒体、情報公開、買主層、建物の見せ方、契約条件など、価格以外にも確認すべきことがあります。
それを検証せず、反響がなければ値下げするという説明だけなら、販売戦略が十分とはいえません。
パターン5|「今日決めてください」と比較を止めようとする
査定内容に自信がある会社であれば、売主様が他社の説明と比較することを過度に恐れる必要はありません。
期間限定の理由が明確でないのに、媒介契約を急がせる場合は慎重に判断してください。
名古屋市昭和区のモデルケース|4,800万円から始めた土地が長期化
ここで、複数の相談内容をもとに再構成したモデルケースをご紹介します。
物件は、名古屋市昭和区にある相続不動産でした。
売主様が複数社へ査定を依頼したところ、結果は次のようになりました。
| 会社 | 査定・提案額 |
|---|---|
| A社 | 4,700万円 |
| B社 | 4,200万円 |
| C社 | 4,050万円 |
A社からは、
「昭和区は人気があります」
「4,800万円からでも十分挑戦できます」
と説明されました。
売主様は、一番高く評価してくれたA社と専任媒介契約を締結し、4,800万円で販売を開始しました。
ところが、3か月たっても具体的な購入申込みは入りませんでした。
その後、
4,800万円。
4,500万円。
4,200万円。
4,000万円。
と価格を見直すことになりました。
最終的には、当初の高額査定を大きく下回る価格帯で成約しました。
ここで注意したいのは、
「最初からB社へ頼めば、必ず4,200万円で売れた」
とは断定できないことです。
不動産売却には、買主との出会い、販売時期、市況、条件交渉などが影響します。
ただし、B社が当初から、
「4,500万円はチャレンジ価格です。ただし、3か月以内の成約を目指すなら4,200万円前後が現実的です」
と説明していたのであれば、売主様は価格と期間の関係を理解したうえで選べました。
この事例の本当の問題は、最終価格が下がったことだけではありません。
4,800万円が、現実的な査定価格なのか、希望を含む売出価格なのか、売主様が理解できていなかったことです。
※個人および物件を特定できないよう、複数の相談内容をもとに所在地、金額、時期、経緯などを再構成しています。
高値預かりで失われる3つのもの
1.販売開始直後の「新鮮な反響」
不動産を新しく売り出すと、条件に合う物件を待っていた購入希望者や不動産会社が確認します。
この時点で価格が相場から大きく離れていると、
「よい物件ですが、予算に合いません」
と検討対象から外れることがあります。
数か月後に値下げしても、最初に見た人が必ず戻ってくるとは限りません。
ただし、「販売開始直後なら必ず高く売れる」「長期化すれば必ず安くなる」と断定することもできません。
大切なのは、最初の反響を検証できる価格設定と報告体制をつくることです。
2.売主様の時間と維持費
売却期間が長引けば、固定資産税、管理費、草刈り、空き家管理、保険、修繕などの負担が続きます。
相続人が複数いる場合は、
「まだ売れないのか」
「なぜもっと早く価格を見直さなかったのか」
という不満が生まれることもあります。
3.売主様と担当者の信頼関係
最初に「この価格で売れます」と言われたのに、数か月後から値下げの提案だけが続く。
すると売主様は、
「最初の査定は何だったのか」
と感じます。
一度失われた信頼は、その後に正しい価格提案をされても回復しにくいものです。
🟥 根拠の薄い高額査定が傷つけるのは、物件の印象だけではありません。売主様が冷静に判断するための時間と、担当者への信頼です。
反対に「高い査定」が合理的なケース
高額査定をすべて疑う必要はありません。
次のような場合は、他社より高い評価に合理性がある可能性があります。
- 同じマンションや近隣で直近の成約実績がある
- 具体的な購入希望者がいる
- 建物を利用できる買主層を把握している
- 隣地との一体利用価値を確認している
- 他社が見落とした接道・建築上の可能性がある
- 売主が許容できる期間内でチャレンジする計画がある
- 高値で売れなかった場合の見直し基準が明確
重要なのは「高いか、低いか」ではありません。
再現可能な根拠があるかです。
査定時に必ず聞きたい10の質問
- この金額は査定価格ですか、推奨売出価格ですか。
- 想定する成約価格帯はいくらですか。
- 根拠となった成約事例を見せてもらえますか。
- 売出中の競合物件と、成約事例を分けていますか。
- この価格で購入すると想定しているのは誰ですか。
- 何か月以内の成約を想定していますか。
- 最初の1か月で何を見て市場反応を判断しますか。
- 3か月売れなかった場合、値下げ以外に何を見直しますか。
- 他社からの購入希望者も積極的に案内しますか。
- 買取価格と仲介の想定手取りを比較できますか。
具体的に答えられない質問が一つあっただけで、その会社が危険とは限りません。
その場で分からないことを、後日調べて回答する担当者もいます。
見るべきなのは、すべて即答することではありません。
根拠のない断定をせず、確認すべきことを確認する姿勢です。
専任媒介契約を結ぶ前に決めておきたい「価格ルール」
高値で挑戦する場合は、媒介契約を結ぶ前に次の事項を共有しておくと判断しやすくなります。
挑戦期間
いつまで現在価格で市場反応を見るのか。
例として、2週間、1か月、3か月など、物件と売主様の事情に合わせて決めます。
判断指標
広告閲覧数。
問い合わせ数。
他社からの紹介依頼。
内覧数。
購入申込み。
「売れない」という結果だけでなく、どの段階で止まっているのかを確認します。
見直す順番
写真や広告説明。
情報公開。
内覧方法。
契約条件。
想定する買主層。
そして価格。
価格変更だけを最初の手段にしないことが大切です。
報告内容
専任媒介契約では、標準媒介契約約款上、2週間に1回以上の業務処理状況の報告が示されています。専属専任媒介契約では1週間に1回以上です。
回数だけではなく、報告の中身を確認してください。
「問い合わせなし」
という一文だけでは、販売戦略を判断できません。
空き家マイスターが感じるリアルな現実
不動産売却で怖いのは、安く査定されることだけではありません。
売れる可能性が低い価格で、期待だけを大きくされることも、売主様にとって大きな負担です。
特に相続空き家では、売却が長引く間も家は老朽化します。
草木は伸びます。
固定資産税もかかります。
遠方から管理する時間と交通費も必要です。
そして、家族の中で売却への温度差が生まれることがあります。
高値で売ることは大切です。
しかし、本当に売主様を守る査定とは、夢を見せる数字ではありません。
価格の可能性と同時に、期間、費用、リスク、売れなかった場合の対応まで示す査定です。
まとめ|高額査定を恐れるのではなく、数字の目的を見抜く
高額査定を出す不動産会社が、すべて危険なわけではありません。
他社より深く調査し、別の買主層や活用方法を見つけ、本当に高く評価している会社もあります。
一方で、専任媒介契約を取得するため、成約可能性より「売主様から選ばれる数字」を優先する会社が存在する可能性も否定できません。
だからこそ、売主様が確認すべきなのは、査定額の順位ではありません。
なぜ、その金額なのか。
誰が、その金額で買うのか。
何か月で売る想定なのか。
売れなかった場合、何を変えるのか。
この4つです。
不動産売却は、査定額を競うゲームではありません。
売主様が納得できる条件で、実際に売買契約を成立させ、無事に引き渡す仕事です。
🟩 信頼できる会社は、高い査定を出さない会社ではありません。高い査定を出すなら、その可能性と限界の両方を説明できる会社です。
名古屋市で査定価格に大きな差が出て迷っている方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、空き家、相続不動産、再建築が難しい土地、旗竿地、擁壁付き土地、連棟住宅、共有不動産などの売却をお手伝いしています。
次のような段階でも構いません。
- 一括査定で数百万円以上の差が出た
- 最高額査定を信じてよいか分からない
- 専任媒介契約を急がされている
- 現在の会社で長期間売れていない
- 値下げ以外の提案がない
- 査定根拠となる成約事例を説明されていない
- 仲介と買取のどちらがよいか比較したい
- 現在の販売方法について別の意見を聞きたい
高い査定額をさらに上回る数字を出すことが目的ではありません。
現在の査定、物件条件、市場の買主層、販売期間、必要経費、最終手取りを整理し、その価格に現実的な根拠があるかを確認します。
対応エリア
名古屋市南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※本記事は令和8年9月時点の法令・公表情報をもとに作成しています。査定価格、売却期間、成約価格は、物件の状態、市況、販売条件などによって異なります。
※本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、複数の相談・実務経験をもとに、所在地、金額、会話、経緯などの一部を調整したモデルケースです。
参考情報
- 国土交通省「宅地建物取引業法関係・標準媒介契約約款」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000266.html - 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
https://www.reinfolib.mlit.go.jp/ - 公益財団法人不動産流通推進センター「価格査定マニュアル」
https://www.retpc.jp/chosa/satei-2/


