再建築不可物件は、法的な制約により新しい建物を建てることができない不動産のことを指します。不動産を売却するにあたり、購入者が将来建て替えできるかどうかは、売却価格に非常に大きな影響を与えます。
ご当地、名古屋市南区でも戦前に建築された狭小地のエリアや、ある特定の地域では再建築できないために放置された空き家が目立ちます。
新たな購入者が新築できないために不動産流動性そのものが低い再建築不可物件は通常の不動産流通システムでは売却できなないので、格安な値段で特定の買取業者に買取ってもらうしかないのが実情です。こんな所有者にとって悩み多き再建築不可という法制度ですが
一定の条件を満たせば再建築が可能になる救済措置もあります。この記事では、再建築不可物件とはどのようなものかをもう少し掘り下げて解説。3つの主な救済措置の概要、そして法43条ただし書による救済措置の申請方法について詳しく解説します。再建築不可の条件下で不動産売却を検討されている方にとって、計画の一助となるれば幸いです。
なぜ再建築不可物件が存在するの?
再建築不可物件になった背景
再建築不可物件が生まれた背景には、戦前から戦後にかけて吐出な人口流入により形成された密集地域と、1950年の建築基準法制定による規制の強化の関係があります。
戦前の人口流入地域では無秩序に建築が進み、狭小地や袋小路に住宅が密集していました。その反面、道路の拡幅は十分に行われず、戦後になると住宅の需要増により、接道義務を満たさない建物が数多く建てられました。
その後、1950年に制定された建築基準法によって、幅員4m以上の道路に2m以上接していない土地では新築が制限されたことで、再建築不可物件が生まれたのです。
さらに、1971年の建築基準法改正では、防災や災害の観点から接道義務がより厳しくなり、それまで再建築が可能だった狭小地や木造住宅密集地の建物も、取り壊し新たに家を建てるという行為が制限される対象になりました。
これらの結果、都市部の木造住宅密集地では、再建築不可物件に該当する物件が多く残されているのが現状なのです。
1. 再建築不可物件とは?建て替えができない理由を解説
再建築不可物件とは、上記のようにかなり強力な法的な制約によって新たな建物を建設できない不動産を指します。特に日本では、建築基準法と都市計画法の厳しい規制がその背景にあります。ここでは、再建築不可物件に該当する理由を詳しく説明します。
再建築不可物件の主な理由
- 接道義務の不履行 – 建築基準法第43条に記載されているように、建物を建てるためには、道路幅4メートル以上の道路に2メートル以上接道している必要があります。この条件をクリアできていない物件は、再建築が認められないのです。 – 具体的には、道路幅が4メートルに満たなかったり、道路と接していない物件がこれに該当します。
- 敷地が道路に接していない(袋地)周りをほかの土地に囲まれているなどの理由で道路に接していない敷地も、再建築不可の対象です。道路に直接面していない土地を「袋地」と呼びます。 また、敷地の一部が道路に接していたとしても、間口が2m以上なければ建築基準法上は認められません。
- 敷地が道路と2m以上接していても、接している道路が建築基準法に適したものでなければ、再建築不可の対象となります。名古屋市であれば名古屋市が定めた建築基準法による道路でなければいけません。建築基準法第42条第2項において、例外があり。幅員4m未満の道路であっても特定行政庁の指定を受ければ、建築基準法上の道路としてみなされるという規定(いわゆる「2項道路」)です。2項道路に面する敷地は、接道義務違反に該当せず、セットバックを条件に再建築が可能となります。
- 都市計画法による制約 – 市街化調整区域にある物件については、基本的に新しい建物の建設が認められません。これは自然環境を守り、開発を制限するための政策です。 – このような地区では、住宅地の新設を抑える方針が堅持されています。
再建築不可物件の影響
再建築不可物件は、所有者にとって様々な課題を引き起こす可能性があります。以下に、主な影響をまとめました。
- 資産価値の低下
再建築ができないため、物件の市場価値が時間の経過とともに減少する可能性があります。購入希望者が見つかりにくくなることで、売却も難しくなるのです。 - 居住性の問題
古い建物は、設備や構造の老朽化が進み、住環境が悪化します。修繕を行ったとしても、法的に再建築できないため、新たな住まいを手に入れる選択肢が限られます。 - 再活用の難しさ
再建築不可物件の場合でもリフォームや改修は可能ですが、大幅な変更を行うには建築許可が必要。これにより、多くの制約が生じます。
再建築不可物件は、法律の複雑な絡み合いによって生じており、その理解は不動産売却や活用において非常に重要です。特に法改正や政策変更によって状況が変化することもあるため、常に最新の情報を保っておくことが求められます。
2. 建て替えを可能にする3つの救済措置の概要
再建築不可物件の建て替えを希望する場合、主に以下の3つの救済措置があります。それぞれの措置には、条件や手続きが異なるため、しっかりと理解しておくことが重要です。
1. 建築基準法第43条ただし書による救済措置
この措置は、接道義務を満たさない土地に対して適用されることがあります。具体的には、以下のような選択肢が考えられます。
- 既存の建物を再利用: 現在の建物を改修・リフォームし、再建築ができるようにする。
- 隣接地の利用: 隣接する土地所有者との交渉により、部分的な利用許可を受けることで接道義務をクリアする。
ただし、この手続きには多くの時間と費用がかかることがあるため、専門家の助けを借りることが推奨されます。
2. セットバックの導入
セットバックとは、建物を敷地境界から一定の距離だけ後退させることをいいます。この手法を用いることで、土地を再建築可能にするケースがあります。具体的には次のような方法があります。
- 位置指定道路の設定: 地方自治体との協議を通じて、位置指定道路の設定を行い、その結果として新たな接道を確保する。
- 前面道路の譲受け: 隣接地の所有者との交渉により、道幅を広げることによりセットバックを実現する。
3. 特例措置の利用
特定の地域や条件に基づく特例措置を利用することも可能です。その一例として、以下のようなものがあります。
- 農地転用や条例による特例: 農地から宅地への転用申請を行うことや、地域ごとの特例を利用することで再建築を可能にする。
- 市町村の独自制度: 特定の市町村では独自の制度を設け、一定条件下で再建築を認めている場合があります。
これらの救済措置を利用することにより、再建築不可物件を有効に活用する手段を広げることができますが、どの方法にもリスクやコストが伴います。しっかりとした計画と専門的なサポートが不可欠です。
3. 法43条ただし書による救済措置の申請方法
再建築不可物件の問題を解決する方法のひとつとして、建築基準法第43条ただし書の申請があります。この手続きを通じて、特定の条件を満たした場合に再建築が許可されることがあります。このセクションでは、申請手続きの詳細と必要書類について分かりやすく解説します。
申請手続きの流れ
法43条ただし書の申請には、主に以下の4つのステップがあります。
- 事前相談
- 書類の準備と提出
- 審査の実施
- 但し書き許可の取得
1. 事前相談
最初に行うべきは、地元自治体への事前相談です。名古屋市であれば、窓口は名古屋市役所住宅都市局建築指導部 建築審査課になります。
この段階では、物件が接道義務を満たしているかどうかや、申請が通らないリスクを確認することができます。相談時には、次の情報を持参することが推奨されます。
- 申請地の接道状況
- 建物の使用目的
- 周囲の環境を示す写真や地図
2. 書類の準備と提出
事前相談の結果を基に、必要な書類を準備します。以下は、一般的に必要とされる書類のリストです。
- 43条許可申請書
- 現況図
- 敷地求積図または地籍測量図
- 建物配置図
- 隣接住民の同意書
これらの書類は、申請の透明性と正確性を確保するために欠かせません。
3. 審査の実施
提出した書類は、自治体内に設置された建築審査会で審査を受けます。審査の際には、以下のポイントが考慮されます。
- 物件の安全性や交通の妥当性
- 用途適正や防火・衛生面の配慮
- 周辺環境との調和
審査に合格すれば、次のステップに進むことが可能になります。
4. 但し書き許可の取得
審査が通過した後、自治体は「但し書き許可」を発行します。この許可を得ることで、取り壊し後に再建築を行えるようになりますが、再建築の実施にあたっては、別途建築確認申請が必要となる点にはご注意ください。
注意点
法43条ただし書による申請を進める際には、次のような注意点があります。
- 申請可否の判断は専門家に相談: 自分だけの判断で行動せず、自治体や専門家の意見を聞くことが重要です。
- 申請は時間がかかることがあります: 申請から許可が下りるまでに時間がかかることがあり、あらかじめ余裕を持った計画を立てることが肝心です。
- 地域の規制は変わる可能性がある: 地元の条例や方針は時折変更されるため、最新情報を自治体で確認することが大切です。
このように、法43条ただし書に基づく救済措置は、再建築不可物件を再生するための大変重要な手段です。正確な手続きと事前の相談をおろそかにせずに進めることで、再建築可能な物件へとなる可能性が広がります。
4. 救済措置が認められるためのポイントと注意点
再建築不可物件の救済措置を活用するためには、いくつかの注意すべきポイントがあります。ここでは、それらを詳しく解説します。
1. 自治体の基準を理解する
救済措置を申請する前に、まずは各自治体の基準を確認することが不可欠です。建築基準法第43条の適用条件は地域によって異なるため、事前に以下の点をチェックしましょう。
- 接道幅の条件
- 排水や汚水の処理が整った施設の有無
- 整備された境界の存在
- 整備基準の遵守状況
これらの情報を事前に収集し、地元の役所から確認しておくことが大切です。
2. 必要書類の準備
申請に必要な書類は多岐に亘ります。スムーズに手続きを進めるためには、以下の書類をあらかじめ揃えておくことが重要です。
- 公図
- 全部事項証明書
- 周辺現況図
- 配置図
- 敷地・建物求積図
書類に関して不足がないように確認し、必要に応じて地域の建築関連部門に相談することをお勧めします。
3. 建築審査会との関係
救済措置の申請には、地域内の建築審査会の審査が求められることがあります。この審査会は月に1回の開催であるため、あらかじめスケジュール管理をしっかり行う必要があります。審査会でどのような基準が採用されるかを知ることも重要です。
4. 忍耐と計画性
申請から許可が降りるまでの時間は自治体により異なり、最短で数週間、長引く場合は数ヶ月かかることもありますので、特に名古屋市では半年以上、通常一年は見ておかなくてはなりません。また、数々の市職員との折衝がありますので忍耐強く対処することが不可欠です。
5. 専門家の相談
手続きに不安を感じる場合や、複雑な条件がある場合には専門家に相談することが賢明です。不動産や建築基準に詳しい専門家や建築士のアドバイスを受けることで、手続きを円滑に進める可能性が高まります。社内での議論も含め、様々な意見を取り入れることが成功の鍵となるでしょう。
5. 救済措置以外の再建築不可物件の活用方法
再建築不可物件は、再建築ができないため利用が制限されることが多いですが、工夫次第で様々な活用法があります。
再建築不可物件は「建て替えができない」「リフォームできる範囲の制限」など通常の不動産と比べて制約が多く、活用方法に悩む方も少なくないでしょう。
、活用が難しいように思える再建築不可物件ですが、実はさまざまな活用方法があり、収益を生み出すことも可能です。ただし、収益を目的に再建築不可物件を活用したいと考えているのなら、事前に費用対効果をしっかりと見極めることが大切です。
住居としての活用
再建築不可物件でも、既存の建物をリフォームやリノベーションにより居住空間として再利用することが可能です。具体的には以下のような取り組みがあります。
- リフォーム: 内部改修を行うことで、自分自身が住むための快適な空間を作ることができます。古い住宅でも適切な修繕を施すことで、新しい住環境へと生まれ変わります。
- 賃貸住宅としての運用: リフォームを行った後に賃貸用物件として提供することも可能です。アパートとしての機能を維持しつつ、入居者からの家賃収入を得ることが期待できます。
商業的活用
再建築不可物件を商業目的で利用するアイデアも多岐に渡ります。特に多くの人が通行するエリアに位置する物件は、収益化のチャンスが高まります。
- シェアハウス: 複数人が共同で生活するシェアハウスとして利用するのは、比較的少ない改修で実現できる選択肢です。住居を個別ではなく共同で利用することで、安定した収入源を確保できます。
- 民泊: 短期宿泊施設として民泊経営をすることも十分可能です。観光地に立地する物件であれば、特に高い需要が見込まれます。
土地の利用
物件が取り壊される場合でも、土地の有効活用が可能です。特に再建築不可物件の土地面積が広い場合、様々な利用方法があります。
- 駐車場の設置: 土地を駐車場として転用すれば、安定した収入を確保できるでしょう。特に都市部では、その需要が増しています。
- 農園や家庭菜園: 自然を生かした家庭菜園や小規模農園を作成することも考えられます。趣味を楽しむだけでなく、収益化の道も見込めます。
その他のクリエイティブな活用方法
再建築不可物件の活用方法は他にも多くあります。以下にいくつかの例を挙げます。
- コワーキングスペース: ビジネスパーソンが集うコワーキングスペースとして再生するアイデアも良い選択肢です。静かで集中できる環境を求める利用者にとって魅力的です。
- イベントスペース: 地域のイベントやワークショップを開催できるスペースとして利用することも可能です。このような運営は地域貢献にもつながります。
再建築不可物件は、その特性から利用が難しいとされていますが、工夫次第で新しい価値を創出することができます。物件の状況や立地条件に応じた最適な活用方法を見つけることが不可欠です。
まとめ:2025年の法改正により、再建築不可物件の大幅なリフォームが困難に!
再建築不可物件は、建築基準法や都市計画法による厳しい規制により、新築の建て替えが難しい物件です。しかし、法43条ただし書による救済措置の活用や、リフォーム、賃貸、駐車場など、様々な再活用方法があります。物件の特性や立地条件に合わせた柔軟な発想と、専門家のアドバイスを得ながら、再建築不可物件を資産価値の高い物件に再生することが可能です。適切な活用方法を見出せば、この ような物件を活用することで、所有者の資産管理や地域への貢献にもつながるでしょう。
2025年の建築基準法改正は、リフォームの規制がさらに厳格化されるため、慎重な対応が求められます。再建築不可物件の所有者にとって大きな試練となるかもしれません。
2025年4月法改正で「4号特例」縮小へ
2025年4月に予定される建築基準法改正で「4号特例」が縮小されることとなっており、再建築不可物件で大規模のリフォームを行う際は、建築確認申請が必要になります。
「4号特例」がどのように変わるのか見ていきましょう。
これまでは4号特例によって建築確認審査が簡略化されていたので、再建築不可でも問題なく大規模リフォームができていました。
建築物の種類 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
木造平屋建て(200㎡以下) | 不要 | 不要 |
木造平屋建て(200㎡超) | 不要 | 必要 |
木造2階建て | 不要 | 必要 |
木造3階建て以上など | 必要 | 必要 |
建築基準法の「4号特例」とは?
「4号特例」とは、建築基準法第6条で規定される「4号建築物」において、建築士が設計した、または建築士が設計した、そのまま施工が実施されたことを確認した際には、建築確認申請が不要となる特例のことを指します。
この4号特例が解除されることで、特に大きな影響を受けるのが再建築不可物件の大幅なリフォームです。
法改正を見越して、専門家の助言を得ながら適切な対応を進めることが重要です。
よくある質問
再建築不可物件とはどのようなものですか?
再建築不可物件とは、法的な制限により新しい建物を建設できない不動産のことを指します。主な理由として、接道義務の不履行、耐震基準の不適合、都市計画法による制約などが挙げられます。
再建築不可物件の建て替えはどのように可能になりますか?
再建築不可物件の建て替えには、建築基準法第43条ただし書による救済措置、セットバックの導入、特例措置の利用などの方法があります。それぞれの手続きや条件が異なるため、専門家に相談することが重要です。
法43条ただし書による救済措置の申請方法は?
法43条ただし書の申請には、事前相談、書類の準備と提出、審査の実施、そして許可の取得という流れがあります。必要書類の準備や自治体の基準の確認など、慎重に対応する必要があります。
再建築不可物件をどのように活用できますか?
再建築不可物件は、リフォームやリノベーションによる居住用物件の確保、シェアハウスや民泊としての商業利用、駐車場や農園などの土地活用など、様々な活用方法が考えられます。状況に合わせた最適な方法を見つけることが重要です。
ただし、2025年4月からの法改正により、再建築不可物件の大幅なリフォームは実質できなくなる可能性があります。
木造二階建て以上の建物でも、リフォーム内容が部分的な交換で主要構造部を触らないものであれば、確認申請の義務が発生しません。
つまり、再建築不可物件であっても、床の張り替えやシステムキッチンの交換のようなリフォームなら従来どおりリフォーできるでしょう。
ふどうさんのMAGOは名古屋市南区の不動産売却、空き家問題を専門とする不動産会社です。
(対応エリア)
名古屋市南区、名古屋市港区、名古屋市緑区、名古屋市千種区、名古屋市熱田区、名古屋市名東区、名古屋市 昭和区、名古屋市 瑞穂区、名古屋市中村区、名古屋市中川区、名古屋市 守山区、名古屋市中区、名古屋市 天白区、刈谷市、岡崎市、一宮市、豊田市、半田市、あま市、豊川市、津島市、碧南市、豊橋市、瀬戸市、安城市、岩倉市、犬山市、知立市、江南市、小牧市、稲沢市、春日井市、大府市、知多市、常滑市、尾張旭市、高浜市、新城市、西尾市、岩倉市、豊明市、長久手市、蒲郡市、愛西市、清須市、北名古屋市、弥富市、みよし市、東海市、日進市、愛知県全域