こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
不動産の相談を受けていると、所有者様から次のような言葉を聞くことがあります。
「土砂災害警戒区域なので、売れませんよね」
「行政が危険な土地に指定したのだから、価値はないと思っています」
「擁壁を直して更地にしなければ、誰も買わないですよね」
確かに、土砂災害警戒区域に含まれる土地は、区域外の土地より購入者が慎重になりやすい不動産です。
家族の安全。
建築の条件。
対策工事の費用。
住宅ローンや保険。
将来、自分が売るときの流通性。
買主が心配するのは当然です。
しかし、区域に入っているという一つの事実だけで、土地の価値がゼロになるわけではありません。
反対に、
「イエローゾーンだから何も問題ありません」
「レッドゾーンでも補強すれば普通に建てられます」
と簡単に説明することもできません。
土砂災害の種類、区域の区分、敷地内の指定範囲、既存建物の位置、斜面と擁壁の状態、再建築計画、避難経路などによって、検討内容は変わります。
🟨 土砂災害警戒区域の売却で大切なのは、危険を小さく見せることではありません。何が指定され、何が未確認で、買主はどのような対策と費用を検討する必要があるのかを見える状態にすることです。
この記事では、名古屋市・愛知県の公表情報と、私が街歩きや売却相談の現場で感じてきたことを分けながら、後から区域指定される理由、イエローゾーンとレッドゾーンの違い、売りにくい理由、管理上の注意、相続土地国庫帰属制度、売主利益を守る出口戦略についてお話しします。
なぜ今まで問題のなかった土地が、後から指定されるのか
所有者様から、よく次のような質問を受けます。
「購入したときには、土砂災害警戒区域ではありませんでした」
「何十年も住んで、一度も被害がなかったのに、なぜ今になって指定されるのですか」
「指定された日から、急に危険な土地になったのでしょうか」
結論からいえば、区域指定の日に地形が突然危険な状態へ変わったとは限りません。
都道府県は、地形・地質・土地利用状況などを調べる基礎調査を行い、その結果に基づいて区域を指定します。新たな調査対象が確認された場合や、精度の高い地形情報によって区域を見直した場合には、以前は指定されていなかった場所が新たに指定されることがあります。
反対に、対策工事や地形条件の変化、調査結果などを踏まえ、区域が変更・解除される場合もあります。
「災害が増えたから指定された」とは限らない
近年の集中豪雨や線状降水帯をきっかけに、所有者様や購入者の防災意識が高まっていることは事実です。
しかし、個々の土地が指定される理由を、
最近の雨が激しくなったから
だけで説明するのは正確ではありません。
区域は、法令に定められた基準と基礎調査の結果に基づいて指定されます。
後から指定された土地には、主に次のような事情が考えられます。
- 基礎調査が新たに実施された
- 航空写真や地形データなど、調査に用いる情報が更新された
- 土地利用や斜面周辺の状況が変化した
- 対策工事や地形変化を踏まえて区域が見直された
- 過去の指定範囲について再調査が行われた
したがって、
指定前は安全だった
とも、
指定されたから土地の価値がなくなった
とも断定できません。
🟨 区域指定とは、土地の価格に判決を下す制度ではありません。災害時の警戒避難や建築上の対策を検討するため、把握されたリスクを公に示す制度です。
過去に被害がないことにも意味はある
長年被害がなかった事実は、売主様が知る土地の履歴として買主へ伝える価値があります。
ただし、それだけで将来の安全を保証することはできません。
販売時には、
- 所有期間中に把握している土砂流入・浸水・亀裂の有無
- 擁壁や排水設備の修繕履歴
- 行政や自治会から受けた案内
- 過去の避難状況
- 指定・変更・解除の履歴
を、確認できる資料とともに整理します。
「今まで何もなかった」を安全保証として使うのではなく、土地の経過情報として正直に開示することが重要です。
土砂災害警戒区域とは?最初に「黄色」と「赤」を分ける
土砂災害防止法では、急傾斜地の崩壊、土石流、地滑りによる被害のおそれがある土地について、都道府県が基礎調査を行い、区域を指定します。
一般に、土砂災害警戒区域を「イエローゾーン」、土砂災害特別警戒区域を「レッドゾーン」と呼びます。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
急傾斜地の崩壊などが発生した場合、住民等の生命または身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域です。
区域指定を前提として、警戒避難体制の整備やハザード情報の周知などが行われます。
イエローゾーンに指定されていることだけを理由に、住宅建築が一律に禁止されるわけではありません。
ただし、次の点には注意が必要です。
- 土砂災害防止法以外の建築・造成規制を受けることがある
- 市街化調整区域、盛土規制法、がけ条例、接道などの条件が重なることがある
- 斜面や擁壁の状態によって、建築会社や金融機関が追加確認を求めることがある
- 避難場所・避難経路・情報取得方法を確認する必要がある
「禁止されていない」と「安全上の検討が不要」は同じではありません。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
イエローゾーンのうち、土砂の移動等により建築物が損壊し、住民等の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがあると認められる区域です。
ここで誤解しやすいのは、単に「災害の発生確率がイエローゾーンより高い区域」と説明することです。
レッドゾーンは、土砂が建物へ作用すると想定される力や、建物に生じる損壊などを踏まえた区域です。
レッドゾーンでは、主に次の制度が関係します。
特定開発行為に対する許可制
住宅宅地分譲や、社会福祉施設・医療施設などの要配慮者利用施設を目的とする一定の開発行為については、土砂災害を防止する対策工事等が計画されているか、許可基準に基づく審査を受けます。
レッドゾーン内の土地を売るだけで、すべての取引にこの許可が必要になるわけではありません。予定する開発行為と用途を確認する必要があります。
居室を有する建築物への構造規制
住宅など居室を有する建築物は、想定される土砂の力に対して安全な構造とすることが求められ、建築確認で審査されます。
敷地内のどこまでがレッドゾーンか、建物をどこへ配置するか、防護壁などを設けるかによって、建築計画と費用が変わります。
建築物の移転等の勧告
著しい損壊が生じるおそれのある建築物について、都道府県が移転等を勧告する制度もあります。
ただし、レッドゾーンに指定された既存住宅が、指定と同時に直ちに使用禁止や解体命令になるという意味ではありません。
イエローゾーンとレッドゾーンの違い
| 確認項目 | イエローゾーン | レッドゾーン |
|---|---|---|
| 法律上の呼称 | 土砂災害警戒区域 | 土砂災害特別警戒区域 |
| 区域の考え方 | 人的被害のおそれがある区域 | 建物損壊により著しい人的被害のおそれがある区域 |
| 住宅建築 | 指定だけで一律禁止ではない | 居室のある建物に構造規制が適用 |
| 開発行為 | 土砂法上の特定開発行為許可の対象区域ではない | 住宅宅地分譲等の一定の開発行為に許可制 |
| 売却時 | 区域該当の調査・説明が必要 | 区域該当、構造規制・開発制限等の調査・説明が必要 |
| 実務上の重点 | 避難、防災情報、斜面・擁壁、他法令 | 指定範囲、建物配置、構造・対策費、開発計画 |
🟥 黄色だから安全、赤だから建築不能、という二択ではありません。区域指定は重要な判断材料ですが、売却の結論は敷地と建築計画の個別調査によって変わります。
名古屋市・愛知県で区域を確認する方法
1.なごやハザードマップで全体を確認する
名古屋市の「なごやハザードマップ」では、住所や地点から、洪水、内水氾濫、高潮、地震、津波、土砂災害などの情報を確認できます。
売却相談では、土砂災害だけを見るのではなく、ほかの災害リスクも重ねて確認します。
2.愛知県土砂災害情報マップで区域を確認する
愛知県のマップでは、土砂災害の種類と警戒区域・特別警戒区域を確認できます。
ただし、愛知県は、ウェブ上のマップには地図・データ作成上の誤差があり、法定図書ではなく、指定内容そのものを証明するものではないと注意を示しています。
3.告示図書・関係窓口で正確な範囲を確認する
境界付近の土地、敷地の一部だけが区域に重なる土地、建物配置を検討する土地では、画面の色だけで判断してはいけません。
名古屋市は、区域の詳細について愛知県尾張建設事務所への確認を案内しています。
販売図面や重要事項説明書へ記載する際は、最新の指定状況と法定図書を確認します。
「敷地が該当」と「建物が該当」を分ける
次の三つは意味が異なります。
- 敷地全体が区域内
- 敷地の一部だけが区域内
- 現在の建物または建築予定位置が区域内
敷地の一部がレッドゾーンでも、建物位置が区域外にある場合があります。反対に、土地の面積では小さな重なりでも、予定建物の位置に重なれば設計へ大きく影響します。
区域面積の割合だけでなく、斜面・建物・道路・避難経路の位置関係を図面で確認することが重要です。
土砂災害警戒区域の土地が売りにくい6つの理由
理由1|買主が「危険」という言葉だけで候補から外す
住宅購入では、価格や利便性より家族の安全を優先する方が多くいます。
物件情報に「土砂災害警戒区域」とだけ書かれ、区域の種類、範囲、建物位置、防災情報が示されていなければ、買主は最も悪い状況を想像します。
理由2|建築費・対策費が見えにくい
レッドゾーンでは、建物の構造、配置、防護壁などにより追加費用が生じる可能性があります。
擁壁や斜面に変状があれば、補修・補強・再構築について別の検討も必要です。
「対策が必要かもしれない」という説明だけでは、買主は総予算を決められません。
理由3|住宅ローン・担保評価の確認が増える
土砂災害警戒区域だから一律に住宅ローンを利用できないわけではありません。
金融機関は、区域区分、建物の適法性、再建築計画、構造対策、擁壁、接道、物件の流通性などを個別に判断します。
建築計画や見積りが固まっていなければ、融資審査に時間がかかったり、希望額に届かなかったりする場合があります。
理由4|火災保険・水災補償を別途検討する必要がある
土砂災害が保険の対象になるかは、契約する保険商品、補償内容、免責、事故原因などによって異なります。
「火災保険に入ればすべて補償される」とは限りません。買主には、契約前に保険会社・代理店へ具体的な物件で確認してもらう必要があります。
理由5|擁壁・造成・排水の問題が重なりやすい
区域指定は、現在の擁壁が安全であるかを判定する制度ではありません。
また、区域外だから擁壁が安全という意味でもありません。
擁壁の亀裂、傾き、はらみ、水抜き穴、背面土、排水、補修履歴、所有区分などは、区域指定と分けて調査します。
理由6|売却後の再販売を買主が心配する
買主は、自分が住めるかだけでなく、将来売れるかも考えます。
そのため、売主側がリスクを曖昧にすると、買主は将来の説明責任まで背負うように感じます。
🟨 土砂災害警戒区域の売却で価格以上に大きな問題になるのは、買主が総費用と安全対策を判断できない状態です。
私の失敗談|「イエローゾーンだから建築できます」という説明では足りなかった
ここで、複数の相談経験をもとに再構成した事例をご紹介します。
場所は、名古屋市東部の丘陵地にある、相続後に空き家となった戸建住宅です。
築年数は40年を超えていました。
敷地の奥には斜面があり、道路より少し高い場所に建物が建っていました。
売主様は、親が亡くなった後も定期的に家へ通っていました。
窓を開ける。
庭木を切る。
台風の後に屋根と斜面を見る。
しかし、ご自身が住む予定はありません。
「危険な場所にある家を、誰かに売ってよいのでしょうか」
売却価格より、そのことを心配されていました。
最初の調査で分かったこと
ハザードマップでは、敷地の一部が土砂災害警戒区域、いわゆるイエローゾーンに含まれていました。
レッドゾーンではありません。
接道条件にも大きな問題はなく、既存建物に外から分かる深刻な雨漏りは確認できませんでした。
私は当初、
「イエローゾーンなので、区域指定だけで建築が禁止されるわけではありません」
と説明しました。
内容としては間違いではありません。
しかし、それだけでは買主の不安に答えていませんでした。
購入希望者から聞かれた質問
販売を始めると、購入希望者から次々に質問が出ました。
斜面は誰の土地ですか。
大雨のとき、どこへ避難しますか。
擁壁の安全性は確認されていますか。
建て替えるとき、建物を同じ位置に置けますか。
保険で土砂災害は補償されますか。
子ども部屋を斜面側にしても大丈夫ですか。
私は区域の法的説明を準備していました。
しかし、買主が知りたかったのは、その家で暮らすときの具体的な安全と費用でした。
最初の購入希望者は、判断材料が足りないまま検討をやめました。
このとき私は、
「災害リスクを気にする方だったので仕方がない」
と考えかけました。
それが私の失敗でした。
買主が慎重すぎたのではありません。
こちらが「建築禁止ではない」という説明で止まり、斜面、建物、避難、保険、将来の建て替えを一つずつ整理していなかったのです。
🟥 法的に建築禁止ではないことと、買主が安心して購入判断できることは、まったく別の問題です。
「区域を隠さない」から「判断材料を先に渡す」へ
販売方法を次のように変更しました。
指定範囲を図面で示す
敷地のどの部分が区域に重なり、現在の建物、斜面、道路がどこにあるのかを整理しました。
現地で確認できることを記録する
斜面、擁壁、排水、亀裂、樹木、雨水の流れを確認し、写真を残しました。
不動産会社の目視で安全を保証できない事項は、その旨を明記しました。
避難情報を一緒に渡す
指定緊急避難場所、避難経路、ハザードマップ、防災情報の入手方法を案内しました。
ただし、避難所が近いから安全と断定するのではなく、夜間・豪雨時の移動も買主自身に確認していただきました。
建築会社と金融機関を早く参加させる
購入後に改修・建て替えを考える方には、契約直前ではなく初期段階で建築会社に現地を見てもらいました。
保険と融資も、具体的な物件情報を基に確認してもらいました。
古家付きで販売を継続する
再建築計画を確認する前に売主様が解体費を負担することは避け、建物を利用する買主と、建て替えを検討する買主の両方へ情報を届けました。
その後、既存建物を改修して利用したい購入希望者が現れました。
この方が災害を気にしなかったわけではありません。
区域、斜面、避難、建物状態、未確認事項を理解し、建築会社や保険代理店にも確認したうえで、立地、建物、価格とのバランスを判断しました。
売却できた理由は、イエローゾーンだから問題がなかったことではありません。
問題と確認方法を、買主が一つずつ検討できる状態にしたことです。
| 最初の販売 | 見直し後の販売 |
|---|---|
| 「イエローなので建築禁止ではない」と説明 | 区域・斜面・建物・避難を分けて説明 |
| ハザードマップの該当だけを告知 | 指定範囲と建物位置を図面で共有 |
| 買主本人だけへ説明 | 家族・建築会社・金融機関も判断者と考える |
| 契約直前に詳細調査 | 購入検討の初期に資料を渡す |
| 不安を否定しようとする | 未確認事項と確認先を明確にする |
🟩 リスクのある土地で信頼を得る方法は、「大丈夫です」と繰り返すことではありません。大丈夫かどうかを、買主が確認できる状態にすることです。
※本事例は、相談者様および物件を特定できないよう、複数の相談経験をもとに所在地、築年数、会話、経緯などの一部を調整しています。
愛知県内の相談から見える4つの売却パターン
瀬戸市、豊田市、岡崎市、新城市など、丘陵・山間部を含む地域では、区域指定に加えて、擁壁、道路、農地、建物老朽化などが重なる相談があります。
ただし、「自然を求める人なら買う」「古民家需要がある」と期待するだけでは売却できません。実務では、次のように問題を分けます。
| 物件の状態 | 主な確認 | 検討する出口 |
|---|---|---|
| 敷地の一部がレッドゾーン | 法定範囲、建物位置、建築計画 | 配置を検討した土地売却、既存建物利用 |
| 古家と斜面・擁壁がある | 建物状態、擁壁、排水、所有区分 | 古家付き売却、専門調査後売却、買取 |
| 山間部で接道・インフラが弱い | 道路、再建築、上下水、管理費 | 隣地提案、用途を限定した売却、買取 |
| 古民家として特徴がある | 構造、改修費、用途変更、需要 | 住宅利用者・事業者への売却、現況買取 |
実在する地域名を並べるだけでは、成功事例の根拠にはなりません。
同じ市内でも、指定範囲、建築条件、需要は物件ごとに異なります。記事や広告で事例を紹介する場合は、実際の取引か、複数事例を再構成したものかを明示することが大切です。
売却前に確認したい12項目
- 土砂災害の種類は、急傾斜地の崩壊・土石流・地滑りのどれか
- イエローゾーンかレッドゾーンか
- 指定済み区域か、基礎調査結果の公表段階か
- 敷地全体・一部・建物位置のどこが該当するか
- 斜面やがけは誰の土地にあるか
- 擁壁の所有者、構造、許可資料、現況はどうか
- 道路と安全な避難経路を確保できるか
- 既存建物の確認済証・検査済証・図面はあるか
- 新築・増改築・用途変更にどの規制が関係するか
- 建築・対策・造成費を誰が見積もるか
- 融資と保険について事前確認したか
- 区域変更・災害・対策工事の履歴を確認したか
指定解除を前提に販売しない
対策工事や地形の変化などにより、区域が見直される場合はあります。
しかし、所有者や不動産会社の判断だけで解除されるものではありません。正式な解除が確認できない段階で、「将来解除される予定」と価格へ織り込むことは避けるべきです。
売主利益を守る5つの出口戦略
出口1|古家付きのまま一般市場で売る
既存建物を利用・改修したい買主と、土地として検討する買主の両方に届ける方法です。
売主が先に解体費を負担せずに済む一方、建物状態、区域指定、契約不適合責任を整理する必要があります。
出口2|建築・防災資料を整えて土地として売る
法定の指定範囲、建物配置の検討、構造対策の概算、擁壁・造成条件などを整理します。
売主側で建築可能性を保証するのではなく、買主の計画に必要な判断材料を準備する方法です。
出口3|隣地所有者へ提案する
隣地と一体利用することで、建物配置、接道、管理、斜面からの距離などが改善する場合があります。
ただし、隣地だけに期待すると価格交渉で不利になるため、一般市場や買取と並行して比較します。
出口4|不動産会社・専門事業者へ買い取ってもらう
調査、改修、再販売、保有期間のリスクを買主が負うため、仲介による想定成約価格より低くなるのが一般的です。
価格だけでなく、残置物、測量、擁壁、解体、契約不適合責任、引渡時期を誰が負担するかを確認します。
出口5|安全対策・解体後に売る
明らかな危険があり、近隣への影響も懸念される場合は、売却より先に安全対策が必要なことがあります。
一方、買主の建築計画が決まる前に擁壁や防護施設を施工すると、設計に合わず再工事になる可能性があります。
解体も、再建築、住宅用地の税制、補助制度、アスベスト、地中埋設物を確認してから判断します。
売却価格ではなく「最終手取り」で比較する
土砂災害警戒区域の査定で、一律に何%下がるという基準はありません。
同じ区域でも、次の条件で評価は変わります。
- イエロー・レッドの区分
- 指定されている土砂災害の種類
- 敷地内の指定範囲
- 建物位置と建築可能な範囲
- 斜面・擁壁・排水の状態
- 接道と避難経路
- 建築・対策工事費
- 生活利便性と地域需要
- 既存建物の利用可能性
- 融資・保険の条件
売却方法は、価格から次の費用と負担を差し引いて比較します。
| 比較項目 | 古家付き仲介 | 調査・設計後売却 | 隣地提案 | 不動産買取 | 対策・解体後 |
|---|---|---|---|---|---|
| 想定売却価格 | |||||
| 建物・擁壁調査費 | |||||
| 測量・境界費用 | |||||
| 対策・造成費 | |||||
| 解体・残置物費 | |||||
| 仲介手数料等 | |||||
| 維持・保有費 | |||||
| 売却までの期間 | |||||
| 売主の責任範囲 | |||||
| 最終手取り見込み |
🟩 売主利益の最大化とは、災害リスクを隠して高く売ることではありません。必要な費用、時間、責任を開示したうえで、最も納得できる手取りと出口を選ぶことです。
告知義務と重要事項説明|「ハザードマップを渡しただけ」で終わらせない
宅地建物取引では、対象物件が土砂災害警戒区域内にあるとき、その旨が重要事項説明の対象となります。
レッドゾーンでは、土砂災害防止法に基づく特定開発行為の制限など、取引に関係する法令上の制限も確認します。
実務では、次の資料と説明をそろえます。
- 指定の有無と区域区分
- 土砂災害の種類
- 指定範囲を示す図面
- 指定年月日・告示情報
- 特定開発行為や構造規制の該当可能性
- 避難場所・避難経路
- 売主が知る過去の被害・修繕・対策工事
- 擁壁、斜面、排水の現況と未確認事項
- 買主側で専門確認が必要な内容
過去に被害がないことは、将来の安全保証ではない
「何十年も住んでいたが、一度も崩れたことはありません」
これは売主が知る重要な経過情報にはなります。
しかし、将来も災害が起きない根拠にはなりません。
反対に、区域指定があるというだけで、建物の安全性や売買価格を不動産会社が断定することもできません。
売買契約で整理したい事項
- 区域指定と指定範囲を双方が確認したこと
- 売主が把握する災害・修繕・対策工事履歴
- 擁壁・斜面・排水の所有関係と現況
- 建築・構造・造成の調査主体
- 買主の予定用途・建築計画
- 行政・建築士・建築会社への確認期限
- 融資・保険の確認期限
- 対策工事・測量・設計費の負担
- 建築計画が成立しない場合の解除条件
- 契約不適合責任の範囲と通知期間
- 引渡しまでの管理・安全措置
- 未確認事項を買主が理解したこと
「現況有姿」「契約不適合責任免責」と書けば、重要な事実を説明しなくてもよいわけではありません。
売主が宅建業者か個人か、買主が消費者か、売主が事実を知りながら告げなかったかなどによって、特約の効力や責任は変わります。
土砂災害警戒区域の売却で避けたい8つの失敗
1.「黄色だから大丈夫」と説明する
建築禁止ではないことと、安全対策が不要なことは別です。
2.「赤だから絶対に建てられない」と決めつける
構造規制、特定開発行為、建物配置、ほかの法令を個別に確認します。
3.ウェブ地図の色だけで境界を断定する
境界付近では法定図書と関係窓口で確認します。
4.区域外なら斜面・擁壁も安全と考える
区域指定と構造安全性の調査は別です。
5.最初に大幅な値下げをする
価格より先に、指定範囲、建築条件、対策費を整理します。
6.買主が決まってから建築・融資を確認する
家族、建築会社、金融機関、保険会社を早い段階から判断に参加させます。
7.とりあえず解体・擁壁工事をする
再建築や買主の計画を確認せず工事すると、費用を回収できない可能性があります。
8.自然・眺望だけを強調する
魅力とリスクを同時に伝えなければ、契約直前の辞退や引渡し後の紛争につながります。
レッドゾーンの土地を放置すると、直ちに所有者責任を問われるのか
レッドゾーンの土地を所有しているというだけで、災害時の損害について所有者が自動的に責任を負うわけではありません。
区域指定は、防災上の警戒や建築規制のための制度です。民事上の損害賠償責任とは、別に判断されます。
一方で、区域の内外にかかわらず、所有する建物、擁壁、塀、樹木、排水設備などに不具合があり、それによって第三者へ損害を与えた場合には、工作物の設置・保存の状態、管理状況、被害との因果関係などに応じて責任が問題になる可能性があります。
特に注意したいのは、次のような状態です。
- 擁壁に大きな亀裂、傾き、はらみがある
- 斜面から土砂や石が道路・隣地へ流出している
- 排水溝が詰まり、雨水が擁壁や斜面へ集中している
- 倒木や建物部材が周囲へ落下するおそれがある
- 行政や専門家から危険性を指摘されたまま、確認していない
ただし、これらがあれば必ず賠償責任を負うと断定することもできません。自然災害の規模、工作物の状態、所有者が講じた措置などを踏まえた個別判断になります。
🟥 「レッドゾーンだから責任がある」のではありません。確認できる異常や危険の兆候を把握したときに、そのままにせず専門家や行政へ相談することが重要です。
空き家・空き地で続けたい管理
遠方に住んでいる場合でも、次のような管理記録を残しておくと、売却時の説明資料にもなります。
- 大雨・台風後の斜面、擁壁、建物の確認
- 亀裂や傾きなどを同じ位置から撮影した写真
- 排水溝、水抜き穴、側溝の清掃記録
- 庭木の剪定・倒木対策
- 行政や専門家へ相談した日付と回答
- 補修・応急措置の見積書と工事記録
不動産会社の巡回だけで構造安全性を判断することはできません。変状が見られる場合は、建築士、構造・造成の専門家、施工業者、関係行政窓口へ確認します。
相続土地国庫帰属制度は、売れない土地の出口になるのか
相続した土地について、
「売れないなら、国へ引き取ってもらえませんか」
と相談されることがあります。
相続土地国庫帰属制度は、相続または一定の遺贈によって土地を取得した人が、要件を満たす場合に、土地の所有権を国庫へ帰属させる承認を申請できる制度です。
土砂災害警戒区域やレッドゾーンに含まれていることだけで、一律に申請できなくなるわけではありません。
しかし、区域内だから国が無条件で引き取る制度でもありません。
建物が残る土地は、そのまま申請できない
建物が存在する土地は却下要件に該当します。
空き家付きの土地で制度を検討する場合、原則として建物を除去したうえで、ほかの不承認要件に該当しないかを確認する必要があります。
解体費を負担しても承認されるとは限らないため、先に法務局へ相談し、売却・買取との費用比較を行うことが重要です。
崖があるだけで直ちに対象外ではない
崖があるという一つの理由だけで、必ず不承認になるわけではありません。
一方、政令上の基準に該当する崖があり、通常の管理に過分な費用または労力を要する土地は、不承認となる可能性があります。
法務省が示す崖の基準は、勾配30度以上かつ高さ5メートル以上です。ただし、数値だけで機械的に結論が決まるのではなく、崩落防止措置などを含め、通常の管理負担が個別に審査されます。
審査手数料と負担金が必要
制度の利用には、申請時に土地一筆当たり1万4,000円の審査手数料が必要です。
承認後には、土地の性質に応じ、国による10年分の標準的な管理費用を考慮して算定される負担金を納付します。
審査手数料は、申請を取り下げた場合や、却下・不承認となった場合でも返還されません。
国庫帰属を検討する前の比較表
| 確認項目 | 売却・買取 | 相続土地国庫帰属制度 |
|---|---|---|
| 対象者 | 所有者一般 | 相続等で土地を取得した一定の人 |
| 建物 | 条件を決めて売却できる場合がある | 建物がある土地は申請不可 |
| 崖・斜面 | 価格・買主層へ影響 | 管理負担により不承認の可能性 |
| 境界・争い | 契約条件として整理 | 境界争い等は却下要件になり得る |
| 所有者が得る金銭 | 売却代金を得る | 売却代金は得られない |
| 主な支出 | 仲介、測量、解体等 | 審査手数料、負担金、事前整備費等 |
| 結果までの確実性 | 買主・条件による | 法務局の審査による |
🟨 国庫帰属は「無料で不要な土地を処分する方法」ではなく、売却や管理継続と比較して検討する、相続土地の選択肢の一つです。
よくある質問
土砂災害警戒区域の土地は売却できますか?
売却自体が禁止されているわけではありません。ただし、区域区分、指定範囲、建築条件、斜面・擁壁、避難、融資などが価格と買主層に影響します。
イエローゾーンなら普通に家を建てられますか?
区域指定だけを理由に住宅建築が一律禁止されるわけではありません。ただし、接道、都市計画、盛土、がけ、擁壁など別の規制や安全上の検討が必要になる場合があります。
レッドゾーンには家を建てられませんか?
一律に建築不能ではありません。居室を有する建物には構造規制があり、住宅宅地分譲等を目的とする一定の開発行為には許可が必要です。具体的な配置・構造・費用を行政と建築士等へ確認してください。
敷地の一部だけがレッドゾーンの場合はどうなりますか?
法定の指定範囲と予定建物の位置関係を確認します。指定面積の割合だけでは判断できません。建物配置、造成、防護施設、避難経路への影響を検討します。
土砂災害警戒区域だと住宅ローンは使えませんか?
一律に利用できないわけではありません。金融機関が区域区分、担保評価、建物の適法性、構造対策、流通性などを個別に審査します。
売却前に擁壁を直すべきですか?
現況、危険性、所有区分、法令、買主の建築計画によって異なります。明らかな危険があれば早急な安全対策が必要ですが、調査前の全面改修は再工事や過剰投資になることがあります。
古家付きと更地のどちらが売りやすいですか?
既存建物の利用可能性、解体費、再建築条件、税務、買主需要を比較します。土砂災害区域では、建築計画を確認せず解体すると選択肢が減る場合があります。
ハザードマップを見せれば告知は十分ですか?
区域該当の説明に加え、法令上の制限、指定範囲、売主が知る被害・修繕履歴など、取引判断に関係する事項を整理する必要があります。
購入時には指定されていませんでした。なぜ後から指定されたのですか?
基礎調査の実施や調査情報の更新などにより、新たに区域指定される場合があります。指定日に土地が突然危険になったという意味ではありませんが、過去に被害がないことも将来の安全保証にはなりません。最新の告示図書で範囲を確認してください。
レッドゾーンの土地を所有しているだけで、損害賠償責任を負いますか?
区域内という事実だけで自動的に責任が決まるわけではありません。擁壁や建物等の状態、管理状況、損害との因果関係などによって個別に判断されます。異常を把握した場合は放置せず、専門家や行政へ相談してください。
土砂災害警戒区域の土地は、国庫帰属できますか?
区域指定だけで一律に対象外とはされません。ただし、建物がある土地は申請できず、一定の崖があり通常管理に過分な費用・労力を要する土地などは不承認となる可能性があります。申請前に法務局へ相談し、解体費、審査手数料、負担金と売却条件を比較してください。
まとめ|売れない土地と、まだ判断材料がそろっていない土地は違う
土砂災害警戒区域の土地は、区域外の土地より確認すべき事項が多い不動産です。
イエローゾーンでは、警戒避難とほかの建築・造成条件を確認する。
レッドゾーンでは、指定範囲、建物配置、構造規制、特定開発行為、対策費を確認する。
斜面と擁壁を調べる。
安全な避難経路を確認する。
建築会社、金融機関、保険会社へ早期に相談する。
そして、確認できたことと未確認事項を、買主へ最初から伝える。
この順番が重要です。
🟥 区域指定を軽く扱い、買主の不安を押し切って売るべきではありません。
🟩 しかし、区域指定という一つの理由だけで、所有者が土地の価値と選択肢を自らゼロにする必要もありません。
売れない土地なのか。
まだ正確な指定範囲を確認していない土地なのか。
建築・対策費が見えていない土地なのか。
説明できる資料が不足している土地なのか。
その条件を理解できる買主へ届いていないだけなのか。
同じ「売れない」でも、中身はまったく違います。
私は街歩きで坂道や高台の住宅を見かけると、眺望だけでも、危険という言葉だけでも判断しないようにしています。
斜面はどちらを向いているのか。
雨水はどこへ流れるのか。
擁壁に変化はないか。
道路まで安全に出られるか。
建物をどこへ配置できるのか。
誰なら、この条件を理解して使えるのか。
不動産会社の仕事は、リスクのある土地を「問題ありません」と言って売ることではありません。
何が難しいのかを調べる。
誰がどこまで判断できるのかを分ける。
費用、時間、責任、最終手取りを比較する。
そして、売主様と買主様の間に、判断できる情報を置く。
それが、土砂災害警戒区域にある不動産の出口をつくる仕事だと私は考えています。
名古屋市・愛知県で土砂災害警戒区域の土地や空き家を相続した方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、土砂災害警戒区域、擁壁付き土地、高低差のある土地、再建築が難しい不動産、相続空き家などの売却をお手伝いしています。
次のような段階でも構いません。
- 土砂災害警戒区域だから売れないと言われた
- イエローゾーンとレッドゾーンの違いが分からない
- 敷地の一部だけが区域に入っている
- ハザードマップと現地の関係が分からない
- 擁壁を直してから売るべきか迷っている
- 建物を解体すると再建築できるか不安
- 住宅ローンが理由で購入申込みが流れた
- 古家付き、解体、買取のどれがよいか比べたい
- 他社から値下げ以外の提案を受けていない
- 県外に住んでいて、相続した空き家を管理できない
- 売却と相続土地国庫帰属制度のどちらを選ぶべきか迷っている
最初から「売れる」「売れない」と断定することはできません。
まずは、指定区分と範囲、建物位置、道路、斜面、擁壁、排水、建築条件、避難経路、想定する買主を整理します。
そのうえで、古家付き仲介、建築資料を整えた土地売却、隣地提案、不動産買取、安全対策・解体後の売却、相続土地国庫帰属制度などを比較します。
「危険区域だから価値がない」と諦める前に、まだ調べられていない条件や、伝えられていない価値が残っていないか、一緒に確認してみませんか。
対応エリア
名古屋市南区・緑区・天白区・名東区・千種区・守山区・昭和区・瑞穂区・熱田区・港区・中川区・中村区・中区をはじめ、名古屋市全域、瀬戸市、豊田市、岡崎市、新城市など愛知県内に対応しています。
※土砂災害警戒区域等の指定状況は変更・解除される場合があります。ウェブ上のハザードマップには誤差があり、法定図書ではない場合があります。具体的な取引では、最新の告示図書と関係行政窓口をご確認ください。
※建築、増改築、用途変更、特定開発行為、擁壁・造成工事の可否および必要な構造対策は、区域区分、災害の種類、指定範囲、建物用途・配置、地形、擁壁、ほかの法令等によって異なります。不動産会社の目視だけで判断せず、行政、建築士、構造・造成の専門家、建築会社などへご確認ください。
※本記事は令和8年9月時点の公表情報と実務経験をもとに作成しています。
※本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、複数の相談経験をもとに所在地、築年数、会話、経緯などの一部を調整しています。


