こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋の街を歩き続けて8年になる、街歩き空き家マイスターの保木です。
今回のテーマは「遺品整理」です。
遺品整理という言葉を聞くと、多くの方は、
「家の中の物を片付けること」
「不要な物を処分すること」
というイメージを持たれるかもしれません。
しかし、数多くの空き家や相続不動産に向き合ってきた中で感じるのは、遺品整理は単なる片付けではないということです。
そこには、故人が生きてきた時間があります。
家族との思い出があります。
そして、残された方の気持ちがあります。
遺品一つひとつに向き合う時間は、時に悲しみや迷いを伴います。
「これは捨ててもよいのだろうか」
「まだ父や母の気配が残っている気がする」
「思い出がありすぎて整理できない」
このような気持ちになることは、決して珍しいことではありません。
🟨 遺品整理は、早く捨てるための作業ではありません。残す物、引き継ぐ物、役目を終えた物を、家族が納得できる形で整理する時間です。

遺品整理で最初にすることは「捨てること」ではありません
遺品整理を始めようとすると、多くの方がごみ袋や段ボール箱を用意します。
しかし、最初から物を捨て始めるのはおすすめできません。
後から必要になる書類や、換金できる物、家族にとって大切な品を誤って処分する可能性があるからです。
最初に行いたいのは、次の3つです。
- 家族や相続人で方針を共有する
- 貴重品と重要書類を探す
- 「残す・譲る・売る・処分・保留」に分ける
順番に確認していきましょう。
1.家族や相続人で遺品整理の方針を決める
遺品整理では、家族それぞれの考え方が違います。
「できるだけ思い出の品を残したい」
という方もいれば、
「空き家の維持が難しいので、早めに整理したい」
という方もいます。
どちらが正しいという話ではありません。
遺品への思い入れや、実家との距離は家族によって異なります。
作業を始める前に、少なくとも次の点を共有しておきましょう。
- 誰が遺品整理へ参加するのか
- いつまでに、どこまで整理するのか
- 判断に迷う物を誰が保管するのか
- 家財を売却・処分する前に誰へ確認するのか
- 実家を今後どうする予定なのか
- 費用を誰が負担するのか
特に、相続人が複数いる場合は、一人の判断だけで高価品や思い出の品を処分しないことが大切です。
後から、
「あの時計は自分が受け継ぎたかった」
「勝手に捨てられてしまった」
という感情的な対立が生まれることがあります。
遺品整理を家族間のトラブルにしないためにも、作業前の話し合いが重要です。
2.最初に探すべき貴重品・重要書類
遺品整理で最初に確認したいのは、衣類や家具ではありません。
相続や今後の生活に必要となる、貴重品と重要書類です。
例えば、次のような物を探します。
- 現金
- 預金通帳
- キャッシュカード
- 印鑑
- 貴金属
- 有価証券
- 保険証券
- 年金関係書類
- 遺言書
- 不動産の権利証・登記識別情報
- 固定資産税の納税通知書
- 売買契約書・建築関係書類
- 借入金やローンに関する書類
- 公共料金の請求書
- スマートフォン・パソコン
- 家族や知人の連絡先が分かる手帳
重要書類は、机や金庫だけに保管されているとは限りません。
古い封筒。
本の間。
タンスの引き出し。
仏壇の中。
衣類のポケット。
故人だけが分かる場所へ保管されていることもあります。
そのため、書類や封筒を中身も見ずに処分するのは避けましょう。
🟥 遺品整理は、ごみを捨てることからではなく、失ってはいけない物を確保することから始めます。

3.遺品を5つに分類する
貴重品と重要書類を確保したら、遺品を次の5つへ分類します。
① 家族が残す物
写真、手紙、形見、故人が日常的に使っていた物など、家族の思い出として保管する物です。
② 家族や知人へ譲る物
親族への形見分けや、故人と親しかった方へ渡す物です。
渡す相手の意向を確認してから分けます。
③ 売却・寄付できる物
貴金属、時計、骨董品、着物、未使用品、比較的新しい家電など、買取や寄付を検討できる物です。
価値が分からない物を、自己判断で処分しないことが大切です。
④ 処分する物
使用できない日用品、傷みの激しい衣類、壊れた家具などです。
自治体の分別ルールや専門業者の案内に従って処分します。
⑤ 判断を保留する物
その場で残すか処分するか決められない物です。
「保留箱」をつくり、後日改めて判断します。
保留は、決断を避けるためのものではありません。
感情が強く動いている時に、無理な判断をしないための仕組みです。

遺品整理で感じる「捨てられない」という気持ち
遺品整理を経験した方から、よく聞く言葉があります。
「母の洋服を見ると手が止まってしまう」
「父が使っていた机を簡単には処分できない」
「家から物がなくなると、両親との時間まで消える気がする」
これは、片付けが苦手なのではありません。
その物を通じて、故人との時間に向き合っているからです。
大切な人を亡くした後、残された家族は悲しみの中で多くの判断を求められます。
葬儀。
相続手続き。
公共料金の解約。
空き家になった実家の管理。
その中でも遺品整理は、故人の存在を最も身近に感じる時間になることがあります。
タンスから出てくる昔の写真。
大切に保管されていた手紙。
長年使われていた湯飲み。
使い込まれた家具。
物そのものの価格ではなく、そこに家族の記憶が残っています。
だからこそ、遺品整理を「早く終わらせること」だけを目的にする必要はありません。
気持ちを整理するために大切な3つのこと
1.小さな範囲から始める
家一軒分の荷物を一度に見れば、誰でも気持ちが重くなります。
最初は、
- 引き出し一つ
- 机の上だけ
- 写真だけ
- 書類だけ
- 一日一部屋
というように、小さく区切って始めます。
作業範囲を限定すれば、「今日はここまで進んだ」という実感も得やすくなります。
2.思い出を家族で話す
写真や思い出の品を見ながら、
「これはどこへ旅行した時の写真だったかな」
「父はこの時計をいつも使っていたね」
と話すことで、一人では知らなかった故人の一面が見えてくることがあります。
遺品整理は、物を分ける作業であると同時に、家族の記憶を共有する時間でもあります。
3.感じたことを書き残す
悲しみ。
感謝。
後悔。
懐かしさ。
気持ちが整理できない時は、思ったことを書き出してみる方法もあります。
品物そのものを残せなくても、
「母は、この食器をお正月に使っていた」
「父は、この道具を大切に手入れしていた」
という記憶を書き残すことはできます。
すべての物を残さなくても、思い出まで失われるわけではありません。
名古屋の街を歩いて8年、遺品が残る空き家で感じること
名古屋の空き家や相続不動産を見ていると、「時間が止まったままの家」に出会うことがあります。
何年も前の日付で止まったカレンダー。
机の上に置かれた眼鏡。
台所に残る食器。
押し入れのアルバム。
玄関に置かれたままの靴。
外から見れば、庭木が伸びた一軒の空き家です。
しかし、玄関を開ければ、そこには何十年分もの家族の暮らしがあります。
以前、ある相続空き家を確認した時のことです。
室内には多くの家財が残っていました。
売主様は、父親が使っていた机の前で長い間立ち止まっていました。
そして、
「この机を片付けたら、本当に父がいなくなる気がします」
と話されました。
その言葉を聞いた時、遺品整理は作業の早さだけで考えてはいけないと、改めて感じました。
しかし、その一方で、誰も住まない家は少しずつ傷んでいきます。
換気されない室内には湿気がたまります。
紙類や衣類にカビが発生することもあります。
庭木は伸び、雨漏りや害虫の発見も遅れます。
気持ちの整理を待つことは大切です。
ただし、家の劣化は待ってくれません。
🟨 気持ちを急がせず、建物の管理は止めない。この二つを同時に考えることが、相続空き家の遺品整理では重要です。

家族で行うか、遺品整理業者へ依頼するか
遺品整理は、ご家族自身で行うこともできます。
一方、次のような場合には、専門業者への依頼も現実的な選択肢になります。
- 相続人が遠方に住んでいる
- 仕事や介護で時間を確保できない
- 家財の量が非常に多い
- 大型家具を運び出せない
- ごみの分別方法が分からない
- 室内の汚損や臭いが強い
- 精神的につらく、作業を続けられない
- 売却や引渡しの期限が決まっている
専門業者へ依頼することは、故人との思い出を他人任せにすることではありません。
家族が判断すべき物を先に確認し、運搬や分別、処分などの重い作業を専門家へ任せる方法です。
家族で行う場合と専門業者へ依頼する場合
| 比較項目 | 家族で行う | 専門業者へ依頼する |
|---|---|---|
| 費用 | 抑えやすい | 作業量に応じて費用が必要 |
| 作業期間 | 長くなりやすい | 短縮しやすい |
| 思い出の確認 | 一つずつ丁寧にできる | 事前の仕分け指示が重要 |
| 身体的負担 | 大きくなりやすい | 運搬や処分を任せられる |
| 遠方からの対応 | 難しい場合がある | 立会い回数を減らせる場合がある |
| 精神的負担 | 家族だけで抱えやすい | 作業を分担できる |
どちらか一方だけを選ぶ必要はありません。
写真、手紙、形見、重要書類は家族で整理し、大型家具や生活用品の搬出は業者へ依頼する方法もあります。
遺品整理業者を選ぶ時の確認事項
遺品整理業者を選ぶ際は、金額の安さだけで判断しないことが大切です。
見積もり時には、次の点を確認してください。
- 見積書に作業範囲が明記されているか
- 追加料金が発生する条件
- 買取品がある場合の査定方法
- 写真や手紙などが見つかった時の対応
- 家電や大型家具の処分方法
- エアコンや物置の撤去を含むか
- 作業後の清掃範囲
- 廃棄物が適切に処理されるか
- 損害賠償保険などへの加入状況
- 鍵を預ける場合の管理方法
「家一軒、すべて処分」という依頼でも、家族にとって大切な写真や書類が作業中に見つかることがあります。
それらを勝手に処分せず、別に保管してくれる業者かを確認しましょう。
🟥 「何を捨てるか」だけでなく、「捨ててはいけない物をどのように守るか」で業者を選ぶことが大切です。

大切な思い出を残す方法
遺品整理で多くの方が悩むのが、「何を残し、何を手放すか」という判断です。
形見を選ぶ時に大切なのは、金額ではなく意味です。
故人らしさを感じる品を選ぶ
例えば、
- よく身に着けていた時計
- 毎日使っていた湯飲み
- 趣味の道具
- 手紙や日記
- 家族写真
- 故人が作った作品
- 愛読していた本
などです。
大きな家具を残すことが難しくても、写真を撮って記録する方法があります。
衣類の一部を小物へ作り替える方もいます。
家族写真や手紙をデジタル化すれば、複数の家族で共有できます。
形見分けは家族の記憶を分け合うこと
形見分けは、物を公平に分配するだけではありません。
「この品には、こんな思い出がある」
という話を家族で共有する機会でもあります。
ただし、価値の高い品や相続財産に該当する可能性のある物については、相続人間で確認してから分けることが大切です。
すべて残せないことを受け入れる
家一軒分の物を、すべて保管することは現実的ではありません。
残す物を選ぶことは、残さない物を決めることでもあります。
つらい判断ですが、物を手放すことと、故人を忘れることは同じではありません。
写真に残す。
思い出を書き残す。
家族で話す。
一つだけ形見を選ぶ。
物の量を減らしても、故人との関係までなくなるわけではありません。
遺品整理と空き家売却は、どちらを先に進めるべきか
空き家を売却する場合、
「全部片付けてから不動産会社へ相談した方がよいですか」
と聞かれることがあります。
結論として、すべての遺品整理を終えてから相談する必要はありません。
売却方法によって、必要となる整理の範囲が異なるからです。
仲介で売却する場合
一般の買主へ売却する場合は、内覧や引渡しまでに家財を撤去する条件が多くなります。
ただし、販売開始時点ですべて空にしなければならないとは限りません。
写真撮影や内覧に必要な範囲を先に整理し、売却活動と並行して片付ける方法もあります。
不動産会社が買い取る場合
買取では、残置物を残したまま売却できる場合があります。
家財撤去費用を買主が負担するのか、買取価格から差し引くのかは、契約条件によって異なります。
建物を解体する場合
解体費用とは別に、家財や生活用品の撤去費用がかかる場合があります。
解体見積もりに残置物撤去が含まれているかを確認してください。
古家付き土地として売却する場合
建物を利用しない前提でも、契約時に残置物の扱いを決める必要があります。
売主が撤去するのか。
買主が引き取るのか。
残してよい物を個別に定めるのか。
売買契約書へ明確に記載することが重要です。
🟩 先にすべて捨てるのではなく、売却方法を確認してから、どこまで整理する必要があるかを決める方が、費用と負担を抑えられる場合があります。
遺品整理から空き家の今後を考える
遺品整理が進むと、次に実家をどうするかという問題が見えてきます。
- 空き家として管理する
- 家族が住む
- 賃貸として活用する
- 中古住宅として売却する
- 古家付き土地として売却する
- 不動産会社へ買い取ってもらう
- 建物を解体して土地を売却する
どの方法が適しているかは、築年数だけでは決まりません。
建物の状態。
接道。
再建築の可否。
境界。
越境。
地域需要。
解体費。
相続人の意向。
これらを確認して判断します。
特に注意したいのは、再建築できるか確認せずに古い建物を解体することです。
建物を壊した後で再建築が難しいと分かれば、売却の選択肢が狭くなる可能性があります。
遺品整理と並行して、土地と建物の状態も確認しておきましょう。

無理をしないことが、最も大切です
遺品整理には、すべての人に共通する正解はありません。
大切なのは、速さではなく、家族が納得できる形で進めることです。
- 少しずつ始める
- 迷った物は保留する
- 家族と話す
- 必要な部分だけ専門家へ任せる
- 気持ちがつらい日は作業を休む
- 建物の管理だけは止めない
どれも間違った進め方ではありません。
故人との関係を終わらせるために整理するのではありません。
故人が残した物と向き合い、自分たちが受け取るものを選び、心の中で新しい関係へつなぎ直していく。
それが遺品整理なのだと思います。
まとめ|遺品整理は、故人が生きた証を未来へつなぐ時間
遺品整理は、過去を消す作業ではありません。
故人がどのような人生を歩んできたのか。
何を大切にしていたのか。
家族へ何を残したのか。
一つひとつ確認しながら、未来へ引き継ぐものを選ぶ時間です。
最初にすることは、捨てることではありません。
家族で方針を共有する。
重要書類や貴重品を確保する。
遺品を分類する。
判断に迷う物は保留する。
必要に応じて専門家の力を借りる。
そして、遺品整理の後に、空き家をどのように管理し、引き継ぐかを考える。
この順番が大切です。
🟥 遺品整理を急ぐあまり、大切な書類や思い出まで捨ててしまっては、元に戻せません。
🟩 しかし、何も決められないまま空き家を放置すれば、建物の劣化と管理負担は進んでいきます。
気持ちを急がせず、現実の問題は一つずつ整理する。
その間をつなぐことが、私たち空き家に関わる専門家の役割だと考えています。
名古屋市で遺品が残る空き家・相続不動産にお困りの方へ
ふどうさんのMAGOでは、名古屋市を中心に、遺品や家財が残る空き家、相続不動産、築古住宅などの売却相談をお受けしています。
次のような段階でも構いません。
- 遺品が多く、何から始めればよいか分からない
- 遠方に住んでいて整理へ通えない
- 家族の意見がまとまらない
- 家財を残したまま売却できるか知りたい
- 遺品整理の費用と売却後の手取りを比較したい
- 建物を解体するべきか迷っている
- 相続登記が終わっていない
- 他社から、片付けなければ査定できないと言われた
すべて処分してからご相談いただく必要はありません。
室内に家財が残っている状態でも、建物や土地の確認はできます。
遺品整理をどこまで行うのか。
現況のまま売却できるのか。
家財撤去費用はいくらか。
仲介と買取のどちらが適しているのか。
売却後の最終的な手取りはいくらになるのか。
一つずつ整理し、ご家族が納得できる方法を一緒に考えます。
遺品整理は、故人との思い出を捨てるための作業ではありません。
大切な人が生きた証を受け取り、ご家族が次の未来へ進むための時間です。


