こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
「兄は実家を残したい。私は売却したい。話すたびに喧嘩になります」
「固定資産税も草刈りも私が負担しています。ほかの共有者は何もしてくれません」
「自分の持分だけでも売りたいのですが、家族には知られたくありません」
相続した不動産について、このような相談をいただくことがあります。
相続問題は、単に財産を分ける話ではありません。
親への感謝。
介護を担った人の思い。
実家を離れた人の罪悪感。
兄弟姉妹の間に長年残っていた不満。
一つの不動産をきっかけに、それまで言葉にされなかった感情が表面へ出ることがあります。
特に注意したいのが、相続不動産を複数人で持つ「共有」です。一般には「共有名義」と呼ばれます。
共有は、相続人へ公平に権利を残したように見えます。しかし、誰が使うのか、誰が費用を負担するのか、いつ売るのかという出口まで決めていなければ、時間の経過とともに問題が大きくなる可能性があります。
🟥 共有の怖さは、今すぐ揉めることではありません。何も決めないまま次の相続が起き、共有者と感情の当事者が増えていくことです。
この記事では、共有不動産で親族が対立する理由、共有持分だけを売る場合の注意点、家族関係を壊しにくい話し合いの進め方、解決方法の比較についてお話しします。
最初に確認したい|「遺産分割前」と「共有登記後」は同じではない
共有問題を考えるとき、最初に確認したいことがあります。
その不動産は、まだ遺産分割が終わっていないのか。
それとも、遺産分割を終え、兄弟姉妹などの共有名義で登記されているのか。
この二つは似ているようで、解決の組み立てが異なります。
遺産分割前の場合
誰が不動産を取得するのかを、相続人全員で話し合う段階です。
一人が不動産を取得し、ほかの相続人へ代償金を支払う「代償分割」や、不動産を売却して代金を分ける「換価分割」などを検討できます。
共有登記後の場合
すでに各人が持分を所有しています。一人がほかの共有者の持分を取得するなら、通常は持分の売買や贈与などとして進めることになり、遺産分割中の代償分割と同じ扱いになるとは限りません。
税金や登記費用も含め、司法書士、税理士、弁護士などへの確認が必要です。
🟨 「誰が相続するかを決めている途中」なのか、「相続後の共有を解消する段階」なのか。ここを曖昧にしたまま価格交渉を始めると、話がかみ合わなくなります。
共有不動産で、できること・できないこと
共有不動産では、すべての行為に全員の同意が必要なわけではありません。一方、一人の判断だけで不動産全体を売れるわけでもありません。
一般的な整理は次のとおりです。
| 行為 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 不動産全体を売却する | 原則として共有者全員の合意が必要 |
| 自分の共有持分だけを売却する | 原則として本人の判断で可能 |
| 現状を維持するための保存行為 | 各共有者が単独でできる場合がある |
| 共有物の管理に関する決定 | 原則として持分価格の過半数で決める |
| 共有物へ重大な変更を加える | 原則として共有者全員の同意が必要 |
ただし、修繕、賃貸、建て替え、解体、使用方法の変更などが、保存・管理・変更のどれに当たるかは、行為の内容や期間によって判断が変わります。
また、自分の持分だけを売却できるとしても、買主が取得するのは不動産全体ではなく、その持分です。家や土地を自由に単独使用できるわけではありません。
🟥 法律上できることと、家族関係への影響が小さいことは別です。
なぜ共有名義は親族間で揉めやすいのか
1.権利の割合と、利用の利益が一致しない
兄弟二人が2分の1ずつ実家を共有していても、実際に住んでいるのは兄だけということがあります。
住んでいない弟から見れば、
「兄だけが家を使っている」
と感じます。
一方、兄から見れば、
「日常の管理も修繕も、自分が引き受けている」
という思いがあります。
同じ不動産を見ていても、一方は「利用利益」を、もう一方は「管理負担」を見ています。
居住者へ当然に賃料相当額を請求できると一律に決まるわけではありません。使用の合意、従前の経緯、費用負担などにより判断が変わるため、早い段階で使用条件を書面にしておくことが大切です。
2.売りたい人と残したい人で、守りたいものが違う
売却したい人は、固定資産税、老朽化、管理、次の相続を心配しています。
残したい人は、親との思い出や、実家がなくなる寂しさを抱えています。
表面上は「売る・売らない」の対立ですが、実際には、
負担を終わらせたい人
と、
思い出を失いたくない人
の対立になっていることがあります。
3.介護や親への貢献を、相続で精算したくなる
「親の介護をしたのは私です」
「兄は生前に援助を受けていました」
相続をきっかけに、過去の不公平感が表へ出ることがあります。
ただし、介護をしたという気持ちが、そのまま当然に共有持分や取得額へ反映されるわけではありません。寄与分、特別寄与料、特別受益などには法律上の要件があります。
感情として受け止める話と、法的に評価できる話を分け、必要に応じて弁護士へ確認することが重要です。
4.負担した費用の記録が残っていない
固定資産税。
火災保険。
草刈り。
雨漏り修繕。
残置物の片付け。
誰か一人が支払い続けても、領収書や共有者間の合意が残っていなければ、数年後に精算しようとして揉めることがあります。
共有者間では持分に応じた負担が問題になりますが、税金の納税関係や、誰がどこまで負担すべきかは個別事情によります。
「あとで分ければよい」と考えず、支払日、目的、金額、負担者を記録しておきましょう。
5.時間がたつほど、共有者が増える
兄弟二人の共有なら、二人で話し合えます。
しかし、一人が亡くなれば、その持分を配偶者や子が相続する場合があります。
次の相続、その次の相続が起きれば、会ったことのない親族が共有者になる可能性もあります。
連絡先が分からない。
海外に住んでいる。
判断能力や代理権の問題がある。
こうした事情が増えると、不動産全体の売却や管理を決めるまでの時間と費用も増えていきます。
共有持分だけを売る前に知っておきたい現実
共有者は、原則として自分の持分だけを第三者へ売却できます。ほかの共有者の同意が常に必要というわけではありません。
しかし、持分売却には慎重な判断が必要です。
持分価格は「不動産全体の価格×持分割合」とは限らない
例えば、不動産全体の市場価値が3,000万円で、持分が2分の1だからといって、持分単独で1,500万円になるとは限りません。
持分の買主は、不動産全体を自由に利用・処分できません。
ほかの共有者との調整、占有状況、将来の持分取得、共有物分割に関する交渉や手続などを見込むため、持分単独の流通価格は低くなる傾向があります。
知らない第三者が共有者になる
持分を売却すると、買主が親族に代わって共有者になります。
買主は、ほかの共有者へ持分の買取りを提案したり、不動産全体の売却を求めたり、共有物分割の手続を検討したりする場合があります。
これは直ちに不当な行為という意味ではありません。共有者として権利行使をする可能性があるということです。
だからこそ、価格だけでなく、買主の方針、売却後に起こり得ること、家族への説明方法まで確認する必要があります。
🟥 「自分の持分を手放せば、自分だけ問題から抜けられる」とは限りません。売却後に家族との関係が悪化し、別の形で負担が残ることがあります。
共有持分売却で避けたい6つの判断
1.高い査定額だけで依頼先を決める
査定額ではなく、誰が、どの条件で、いつまでに買う可能性があるのかを確認します。
2.共有者へ何も伝えず、突然売却する
法的に可能な場合でも、家族にとっては「知らない人が家族の不動産へ入ってきた」と感じることがあります。安全上・交渉上の事情がなければ、先に共有者へ買取りの希望を確認する方法も検討します。
3.感情的なメールやメッセージだけで交渉する
文字だけの応酬は、相手の意図を悪く受け取りやすくなります。事実、希望、期限を分け、議事録を残せる場をつくります。
4.一人で払った費用を記録しない
領収書、振込記録、写真、修繕内容を保存し、共有者へ定期的に報告します。
5.共有のまま次世代へ送る
「今は売らない」という選択をするなら、管理方法と将来の出口も同時に決める必要があります。
6.不動産会社だけで法律・税務まで決める
不動産会社は価格、需要、売却方法を整理できます。しかし、紛争の代理交渉、登記、税務にはそれぞれ専門領域があります。案件に応じて連携できる相談先を選ぶことが大切です。
感情的な対立を避ける6つの手順
手順1|登記と相続の現在地を確認する
- 登記名義人は誰か
- 遺産分割協議は終わっているか
- 各人の持分はいくつか
- 相続人と連絡先を確認できているか
- 遺言書や過去の合意書はあるか
まず、事実をそろえます。
なお、相続登記は令和6年4月1日から義務化されています。相続により不動産を取得したことを知った日から原則3年以内の申請が必要で、制度開始前の相続も対象です。
手順2|「感情」と「希望条件」を分ける
家族それぞれに、次の二つを別々に聞きます。
この家について、どのような気持ちがありますか。
現実的には、いつまでに、どのような状態にしたいですか。
「親の家を失いたくない」という感情と、「5年間は残したい」という条件は違います。
気持ちを否定せず、条件へ置き換えると比較できるようになります。
手順3|利用と費用を見えるようにする
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 利用 | 誰が住むか、鍵を持つか、荷物を置くか |
| 費用 | 税金、保険、修繕、管理、草刈りを誰が払うか |
| 収益 | 賃料や駐車場収入をどう分けるか |
| 連絡 | 緊急時の窓口を誰にするか |
| 期限 | いつ再検討するか |
売るか残すかを決められなくても、当面の管理ルールは決められます。
手順4|同じ資料を全員で見る
一部の共有者だけが査定書を持っていると、不信感が生まれます。
登記事項証明書、固定資産税の資料、修繕履歴、残債、査定書、想定費用を全員へ共有します。
査定は高い数字を一つ見せるのではなく、成約事例、販売期間、必要経費、売却条件まで確認します。
手順5|価格・時間・感情の優先順位を決める
家族会議では、次の質問が役立ちます。
- 不動産を残したい人は、誰が、いつまで、どの費用を負担するのか
- 売却したい人は、いつまでに、最低どの条件なら合意できるのか
- 一人が取得する場合、代金を準備できるのか
- 建物の解体や家財処分を誰が決めるのか
- 次の相続まで共有を続ける場合、誰へ何を引き継ぐのか
手順6|第三者を「説得役」ではなく「整理役」として入れる
第三者が誰か一人の味方になると、対立が深まります。
役割を分けて相談します。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| 不動産会社 | 市場価格、売却方法、買主層、費用・期間の比較 |
| 弁護士 | 対立時の交渉、権利関係、調停・訴訟など |
| 司法書士 | 相続登記、持分移転、登記手続 |
| 税理士 | 譲渡所得、贈与、相続税などの税務 |
| 土地家屋調査士 | 境界、測量、分筆 |
共有状態を解消する主な7つの方法
| 方法 | 向いている状況 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 遺産分割で一人が取得し代償金を払う | 遺産分割前で、残したい人がいる | 資金力、評価額、税務を確認 |
| 不動産全体を売り代金を分ける | 全員が売却に合意できる | 売出価格、費用、分配方法を先に合意 |
| 共有者がほかの持分を買い取る | 共有登記後、一人が使用・保有したい | 持分価格、登記費用、税金を確認 |
| 土地を現物で分筆する | 分けても利用価値を保てる土地 | 接道、面積、建築条件、測量費 |
| 賃貸・使用ルールを決め共有を続ける | 今すぐ処分しない | 期限、費用、修繕、収益分配を書面化 |
| 自分の持分だけを売る | 合意が困難で、早期離脱を優先 | 価格低下、第三者共有、親族関係への影響 |
| 調停・共有物分割請求等を検討する | 話し合いだけでは進まない | 手続、時間、費用、結果の不確実性 |
遺産分割前の問題は家庭裁判所の遺産分割調停が関係する場合があります。共有成立後の紛争では、民事調停や共有物分割請求などが検討される場合があります。
どの手続になるかは、現在の登記と遺産分割の状況によって異なります。法的手続を考える段階では、早めに弁護士へ相談してください。
話し合いがまとまらないときの「暫定合意書」
すぐに最終結論を出せない家族もいます。
その場合は、何も決めずに放置するのではなく、半年や1年の暫定ルールをつくる方法があります。
- 居住者と使用範囲
- 固定資産税、保険、光熱費、修繕費の負担
- 家賃・使用対価を検討するか
- 家財を処分してよい範囲
- 緊急修繕を誰が判断するか
- 査定や内覧への協力
- 再協議する日
- 合意できない場合の次の相談先
家族だけで作成することが難しい場合は、弁護士や司法書士などへ相談します。
🟩 最終結論を急ぐことだけが解決ではありません。「次に揉める原因を増やさない」暫定ルールを決めることも、前進です。
よくある質問
共有者の一人だけで、不動産全体を売却できますか?
原則としてできません。不動産全体を売却するには、共有者全員の合意が必要です。
自分の持分だけなら売却できますか?
原則として可能です。ただし、価格、売却後の第三者との共有、親族関係への影響を確認したうえで判断してください。
実家に住んでいる共有者の権利が強くなりますか?
住んでいる事実だけで、当然に所有持分が増えるわけではありません。ただし、使用の経緯、合意、費用負担などが争点になる場合があります。
持分2分の1なら、不動産価格の半額で売れますか?
必ずしもそうではありません。持分単独では利用・処分に制約があるため、不動産全体を売る場合の按分額より低く評価されることがあります。
一人だけ売却に反対しています。多数決で売れますか?
不動産全体の売却は、原則として持分の多数決だけでは進められません。現在の権利状態を確認し、買取り、売却条件の調整、調停・法的手続などを専門家と検討します。
まず誰へ相談すればよいですか?
親族間に大きな対立がなく、価格と売却方法を知りたい段階なら、相続・共有不動産の経験がある不動産会社が入口になります。交渉が対立している、連絡を拒否されている、法的主張が対立している場合は、先に弁護士へ相談した方が安全です。
まとめ|共有問題の出口は、権利より先に「理由」を聞くことから始まる
相続した不動産の共有が揉めるのは、家族の仲が悪いからとは限りません。
利用する人と利用しない人。
費用を払う人と払わない人。
売りたい人と残したい人。
介護を担った人と、遠方から支えた人。
それぞれが違う場所から不動産を見ているためです。
だからこそ、最初から「誰が正しいか」を決めようとすると、話し合いは止まります。
先に確認したいのは、
なぜ売りたいのか。
なぜ残したいのか。
何を負担でき、何を負担できないのか。
という理由です。
そのうえで、登記、利用、費用、価格、期限という事実を全員で共有します。
🟥 共有状態を放置することは、中立な選択ではありません。管理費用と建物の劣化、そして次の相続による複雑化を受け入れる選択でもあります。
🟩 一方、共有持分を急いで第三者へ売ることだけが出口でもありません。全体売却、親族間買取り、一時的な利用合意、分筆、法的手続などを比較して初めて、自分たちに合う答えが見えてきます。
不動産を整理することは、家族の思い出を否定することではありません。
これ以上、家族が不動産によって苦しまない状態をつくることも、親から受け継いだものと向き合う一つの方法だと私は考えています。
名古屋市で相続不動産・共有持分に悩んでいる方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、相続した実家、共有名義の空き家、共有者が遠方にいる不動産、売却への意見がまとまらない土地などについて、状況を整理しながら売却方法を一緒に検討しています。
次のような段階でも構いません。
- 兄弟姉妹で売却への意見が分かれている
- 誰が固定資産税や管理費を負担するか決まっていない
- 一人が実家へ住み続けている
- 共有者と長期間連絡を取っていない
- 持分買取会社から提案を受け、判断できない
- 全体売却と持分売却の手取りを比較したい
- 相続登記や遺産分割が終わっているか分からない
- 弁護士、司法書士、税理士のどこへ相談すべきか迷っている
最初から売却を迫るのではなく、まず、現在の登記、共有者、利用状況、費用負担、皆様の希望を確認します。
そのうえで、不動産全体の売却、親族間の持分買取り、共有持分の売却、賃貸・活用、専門家への相談などを比較します。
家族だけで話すと感情的になってしまう場合こそ、結論を出す前の情報整理から始めてみませんか。
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名古屋市南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※共有物の利用・管理・変更・処分、共有持分の売却、共有物分割、遺産分割、費用精算などの扱いは、登記、合意内容、占有状況、行為の内容その他の事情によって異なります。本記事は一般的な情報であり、個別案件の法律・税務判断を示すものではありません。
※対立が生じている場合や法的手続を検討する場合は弁護士へ、登記は司法書士へ、税務は税理士へご相談ください。
※本記事は令和8年9月時点の法令・公表情報をもとに作成しています。


