「もう解体するしかないと思っています。」
ご相談者様は、そう言って一枚の写真を見せてくださいました。
そこに写っていたのは、築70年を超える古民家でした。
黒ずんだ外壁。
傾いた雨樋。
長年使われていない庭。
空き家になってから10年以上が経過していました。
相続されたご実家でしたが、ご本人は名古屋市内に住んでおり、その家に戻る予定はありません。
定期的に草刈りには通っていたものの、年齢とともに管理も難しくなっていました。
近所からは、
「そろそろ何とかした方がいいんじゃないですか」
と声を掛けられることも増えていたそうです。
ご相談者様は申し訳なさそうにこう話されました。
「こんな家、誰も欲しがりませんよね。」
「解体して土地で売るしかないと思うんです。」
実は、この言葉を私はこれまで何度も聞いてきました。
そして、そのたびに思うことがあります。
それは、
所有者が思う価値と、市場が感じる価値は必ずしも同じではない。
ということです。
誰も住まなくなった実家
その古民家は、かつて三世代で暮らした家でした。
お正月には親戚が集まり、
庭では子どもたちが走り回り、
縁側では祖父母がお茶を飲んでいた。
そんな思い出がたくさん詰まった家でした。
しかし時代は変わります。
子どもたちは独立し、
両親が亡くなり、
気が付けば誰も住まなくなっていました。
実家というのは不思議な存在です。
住んでいた頃は当たり前だったのに、誰もいなくなると急に時間だけが止まったようになります。
カレンダーは何年も前のまま。
食器棚には昔の食器。
押入れにはアルバム。
そこには確かに家族の歴史があります。
しかし市場は思い出に値段を付けてはくれません。
そのため所有者は次第にこう考えるようになります。
「古いだけの家」
「価値のない建物」
「解体するしかない建物」
と。
解体見積もりまで取っていた
ご相談者様もすでに解体業者へ見積もりを依頼していました。
解体費用は約250万円。
さらに庭木の撤去。
残置物処分。
境界確認。
諸費用を含めると300万円近くになる計算でした。
「売るためにお金を払うんですね。」
そう言って苦笑いされていたのを覚えています。
確かに現実的に考えれば自然な判断です。
築70年超。
雨漏りあり。
シロアリの形跡あり。
現代の住宅性能とは比較になりません。
多くの不動産会社も、
「建物価値はゼロです。」
「更地にした方が売りやすいです。」
と説明するでしょう。
しかし私は現地を見て少し違和感を覚えました。
本当に価値がないのだろうか
その家には独特の雰囲気がありました。
太い梁。
立派な柱。
味わいのある木製建具。
広い土間。
職人の手仕事が随所に残っていました。
もちろん一般的な住宅購入者には向かないかもしれません。
しかし世の中には様々な価値観を持つ人がいます。
古いものが好きな人。
リノベーションをしたい人。
古民家カフェをやりたい人。
アトリエを作りたい人。
最近では古民家再生を目的に物件を探す方も珍しくありません。
私はご相談者様へこう提案しました。
「解体する前に、一度市場の反応を見てみませんか。」
半信半疑で始まった販売活動
正直、ご相談者様はあまり期待していませんでした。
「問い合わせが来ればラッキーですね。」
その程度だったと思います。
ところが販売を開始して間もなく、反応がありました。
問い合わせの多くは一般住宅を探している方ではありません。
建築関係者。
設計士。
古民家好きの方。
店舗利用を検討する方。
普通の住宅とは違う層から関心が寄せられたのです。
その中に、一人の購入希望者がいました。
購入希望者が見ていたもの
その方は家の中をじっくり見て回りました。
普通なら気になるはずの傷みや古さにはあまり反応しません。
代わりに、
梁を見上げ、
柱を触り、
建具を眺めていました。
そして帰り際にこう言いました。
「今ではこの材料はなかなか手に入りませんね。」
ご相談者様は驚いていました。
自分には古く見えるだけの柱が、その方には価値ある素材に見えていたのです。
売主と買主で見える景色は違う
不動産売却の現場ではよくあることです。
売主は欠点を見ます。
買主は可能性を見ます。
売主は雨漏りを見ます。
買主は吹き抜けを想像します。
売主は古い建具を見ます。
買主はデザイン性を感じます。
売主は解体費用を考えます。
買主はリノベーション後の姿を思い描きます。
同じ建物でも、見ている景色が違うのです。
契約の日に聞いた言葉
購入希望者との交渉は順調に進みました。
最終的には解体せず、そのままの状態で売却が成立しました。
契約の日。
ご相談者様がぽつりと話されました。
「親父が建てた家なんです。」
少し沈黙がありました。
そして続けて、
「壊さなくて済んでよかった。」
その言葉がとても印象に残っています。
不動産売却は単なる取引ではありません。
そこには家族の歴史があります。
思い出があります。
感情があります。
今回の売却では、お金以上の価値があったのかもしれません。
古民家は売れないのか
結論から言えば、古民家だから売れないわけではありません。
ただし売り方が重要です。
一般住宅として売るのか。
古民家として売るのか。
店舗利用を想定するのか。
投資対象として売るのか。
対象となる買主によって見せ方は大きく変わります。
すべての古民家に価値があるとは言えません。
しかし、
「古いから価値がない」
とも言えません。
実際には市場に出してみなければ分からないケースも多いのです。
解体はいつでもできる
私は空き家相談の現場でよくお話しします。
解体はいつでもできます。
しかし一度壊した建物は二度と戻りません。
もちろん安全上の問題や法的な問題で解体が必要なケースもあります。
それでも、
「古いから」
という理由だけで解体を決めるのは少し早いかもしれません。
その建物を必要としている人がいる可能性もあるからです。
まとめ
今回の古民家は、所有者にとって「解体予定の空き家」でした。
しかし購入希望者にとっては、「探し求めていた物件」でした。
この違いが不動産売却の面白さでもあり、難しさでもあります。
空き家を所有している方の中には、
「こんな家は売れない」
と思っている方も多いでしょう。
けれど、本当にそうでしょうか。
市場には様々な価値観があります。
一般住宅としては難しくても、別の用途では価値を持つことがあります。
解体費用を払う前に。
価値がないと決めつける前に。
一度、その不動産の可能性を見つめ直してみてください。
思い出の詰まった家を、「古い家」で終わらせるのか。
それとも次の誰かへ引き継ぐのか。
その選択肢は、まだ残されているかもしれません。
空き家マイスターが見た現実。
売主は「終わった家」だと思っていました。
しかし買主は、その家の「これから」を見ていました。
不動産の価値とは、建物の新しさだけで決まるものではない。
そう教えてくれた一軒の古民家でした。
ふどうさんのMAGOは名古屋市エリアを中心に不動産売却、空き家問題を専門とする不動産会社です。、専門家のアドバイスと革新的なアイディアで、お客様の悩みを解決いたします。まずはお気軽にご相談ください。
(対応エリア)
名古屋市南区、名古屋市港区、名古屋市緑区、名古屋市千種区、名古屋市熱田区、名古屋市名東区、名古屋市 昭和区、名古屋市 瑞穂区、名古屋市中村区、名古屋市中川区、名古屋市 守山区、名古屋市中区、名古屋市 天白区、刈谷市、岡崎市、一宮市、豊田市、半田市、あま市、豊川市、津島市、碧南市、豊橋市、瀬戸市、安城市、岩倉市、犬山市、知立市、江南市、小牧市、稲沢市、春日井市、大府市、知多市、常滑市、尾張旭市、高浜市、新城市、西尾市、岩倉市、豊明市、長久手市、蒲郡市、愛西市、清須市、北名古屋市、弥富市、みよし市、東海市、日進市、愛知県全域


