「道路に1.8mしか接していません」から始まった、相続空き家の3か月
こんにちは。
趣味は街歩き。名古屋市の街を歩き続けて8年になる、空き家が大好きな宅建士、ふどうさんのMAGOの保木です。
「この家、売れないと思うんです」
ご相談者様は、椅子に座る前からそうおっしゃいました。
物件は名古屋市西区にある木造住宅。
築年数は約60年。お父様から相続した実家で、すでに7年以上、ほとんど使われていませんでした。
そして、売主様が何度も見せてくださった査定書には、同じ言葉が並んでいました。
接道約1.8m。再建築不可。
建築基準法では、建築物の敷地は原則として、建築基準法上の道路へ2m以上接する必要があります。条件を満たさなければ、既存建物を取り壊した後、同じように家を建て直せない可能性があります。
住宅ローンを利用する一般の購入者にとっては、大きな不安です。
しかし、この案件で最初に調べるべきだったのは、売却価格ではありませんでした。
その1.8mは、いったい何を測った数字なのか。
塀と塀の間なのか。
敷地が道路に接する長さなのか。
前面通路そのものの幅なのか。
そして、その通路は建築基準法上の道路なのか。
似ているようで、意味はまったく違います。
🟨 「接道1.8m」と聞いただけで再建築不可と決めることも、「昔から家があるから建て替えられる」と考えることも危険です。必要なのは、道路・境界・建築の問題を分けて調べることです。
この記事では、名古屋市西区で接道条件に課題を抱えた相続空き家が売却に至るまでの経緯を、私自身の失敗も含めてお話しします。
※本文は実際の相談・売却経験をもとに、相談者様や物件を特定できないよう、所在地、築年数、期間、会話、経緯などの一部を調整して再構成しています。
7年間、「そのうち考える」と言い続けた実家
お父様が亡くなられた後、売主様は一人で実家を相続しました。
ご自身はすでに別の場所に家を持っており、戻って住む予定はありません。
最初のころは、月に一度、実家へ通っていたそうです。
郵便物を回収する。
窓を開ける。
庭木を切る。
台風の後には、瓦が落ちていないか確認する。
ところが、時間がたつにつれて訪問の間隔が空いていきました。
家へ入ると、玄関にはお父様が使っていた靴べらが掛かったままです。
台所には、文字が薄くなった薬局のカレンダー。
押し入れには、古い背広とアルバム。
片づけようと段ボールを持って行っても、何を捨ててよいのか決められない。
結局、窓だけ開けて帰る日もあったそうです。
「空き家を放置していたと言われれば、そのとおりです。でも、父の家をゴミのように片づける気になれませんでした」
空き家が長期間残る理由は、所有者が無責任だからとは限りません。
売ると決めれば、親がもう戻らないことを認めるようでつらい。
だから結論を少し先へ延ばす。
その少しが、7年になることがあります。
一方、気持ちが止まっていても、建物の時間は止まりません。
雨戸は重くなり、庭木は隣地へ伸び、給湯器の配管にもさびが目立つようになりました。固定資産税、火災保険、草刈り費用も続きます。
売主様が売却を決めたきっかけは、税金ではありませんでした。
隣家の方から届いた、一本の電話でした。
「雨どいが外れかけています。風の強い日が心配です」
叱られたわけではありません。
むしろ、申し訳なさそうに知らせてくれたそうです。
その優しさが、かえって胸に残りました。
名古屋市西区を歩くと、地図だけでは分からない道に出会う
名古屋市西区には、名古屋駅に近い都市的な地域がある一方、美濃路沿いや押切、枇杷島など、昔からの町の記憶が残る地域もあります。
街を歩くと、新しいマンションの脇に、軒先の近い住宅が続く路地が現れます。
車が通り抜けられない道。
途中で幅が変わる通路。
舗装はされていても、公道か私道か見た目では分からない道。
道路側から家が見えず、細い通路の奥に玄関がある敷地。
それらは、現在の車中心の住宅地とは違う成り立ちを持っています。
今回の住宅へ向かう通路も、最初は「狭い」の一言で片づけたくなる場所でした。
しかし、私は現地へ行くとき、入口だけを見ないようにしています。
道路の反対側まで下がって見る。
境界標を探す。
側溝の位置を見る。
電柱やメーター、雨水の流れを確認する。
通路の途中で幅が変わっていないか歩いてみる。
朝と夕方で、近隣の自転車や車の置かれ方が変わることもあります。
今回、売主様が聞いていた「1.8m」は、通路の入口で、既存の塀から反対側の工作物までを簡易に測った数字でした。
それだけでは、法的な接道長さも、所有権の境界も確定しません。
🟥 メジャーで1.8mだったことと、法律上の接道が1.8mであることは同じではありません。
「道幅1.8m」と「接道1.8m」は別の問題
再建築の可否を考えるとき、少なくとも次の三つを分ける必要があります。
1.前面にある道の幅
人や車が通る空間そのものの幅です。
道が4m未満でも、一定の要件を満たす建築基準法第42条第2項の道路として扱われる場合があります。名古屋市の案内では、基準時以前から建築物が立ち並んでいた道で、市が管理する幅員1.8m以上の道などが、2項道路に該当する場合があるとされています。
したがって、「道の幅が1.8mだから直ちに再建築不可」ではありません。
2.敷地が道路に接している長さ
こちらが、いわゆる接道間口です。
原則として、建築基準法上の道路へ2m以上接する必要があります。接している長さが本当に1.8mであれば、原則的な接道条件を満たさない可能性があります。
3.道路と敷地の間にある通路の権利
見た目では自宅へ続く通路でも、その一部が他人の土地である場合があります。
所有権があるのか。
私道持分があるのか。
通行承諾はあるのか。
上下水道やガス管を修繕する際に掘削できるのか。
接道の問題と、私法上の通行・利用の問題は別に確認しなければなりません。
名古屋市も、道路調査では指定道路図による道路種別、道路法上の認定と幅員、現地の幅を確認するよう案内しています。
🟨 再建築できるかを調べる作業は、定規で幅を測ることではありません。道路の法律上の位置づけ、境界、権利、予定建築物を重ねて確認することです。
接道が2m未満なら、必ず再建築できないのか
原則と例外を分けて考える必要があります。
建築基準法上の道路へ2m以上接していない敷地は、原則として接道要件を満たしません。
ただし、一定の条件を満たし、交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認められる場合には、建築基準法第43条第2項による認定または許可で建築できる可能性があります。
名古屋市にも接道認定・接道許可の制度があります。
しかし、ここで注意が必要です。
「申請すれば許可される」
わけではありません。
通路の幅や長さ。
管理状況。
敷地が通路へ接する長さ。
建物の用途・規模・階数。
避難や消防活動への影響。
周辺の状況。
個別の建築計画を踏まえて判断されます。売却前の時点で、将来の買主が希望する建物について許可を保証することはできません。
今回の案件では、指定道路図、現地、所有関係、過去の資料を確認し、行政窓口にも相談しました。
その結果、通常の接道要件を満たしていると積極的に説明できる状況ではなく、将来の建て替えについても、買主の具体的な計画なしに可能と断定できませんでした。
そこで販売上は、安易に「再建築できます」と期待させず、再建築が難しい可能性を前提に判断できる買主を探すことにしました。
🟥 例外許可の可能性があることと、許可を受けられることは別です。査定価格を上げるためだけに、未確定の可能性を確定事項のように広告してはいけません。
私の最初の失敗|「投資家なら買う」と簡単に考えた
調査を終えた私は、売主様へこうお伝えしました。
「一般の住宅購入者には難しくても、投資家やリノベーション事業者なら検討する可能性があります」
方向性は間違っていませんでした。
ただし、私は一つ重要なことを見落としていました。
投資家なら、再建築不可でも無条件に買うわけではありません。
最初の問い合わせは、販売開始から約1か月後でした。
地元で賃貸経営をする方で、現地を見るなり、こう聞かれました。
「近隣の家賃はいくらですか」
私は、手応えを感じました。
建て替えではなく、現在の建物を直して貸す前提なら話が進むかもしれない。
駅までの距離。
買物環境。
想定賃料。
表面利回り。
数字を並べれば購入判断ができると思ったのです。
ところが、買主候補から返ってきた次の質問に、私は即答できませんでした。
「その賃料を取るために、建物へいくらかける必要がありますか」
雨漏りはないのか。
床下はどうなっているのか。
給排水管は使えるのか。
シロアリ被害はないのか。
改修工事は法的にどこまで可能なのか。
再建築できない建物では、残っている建物そのものが収益の土台です。
その建物の状態が分からなければ、賃料相場だけを説明しても投資判断はできません。
1人目の投資家は、購入を見送りました。
私は「価格が合わなかった」と売主様へ報告しました。
しかし、それは半分しか正しくありませんでした。
本当は、価格を判断するための建物情報が足りなかったのです。
🟥 再建築不可住宅の販売で、買主を変えるだけでは足りません。買主が見る数字とリスクに合わせて、用意する情報も変えなければなりません。
売れない原因を「接道」に集めすぎていた
最初の買主が離れた後、もう一度、物件の弱点を整理しました。
これまで私たちは、接道1.8mという問題に注目しすぎていました。
しかし、買主が引き受けるのは接道だけではありません。
築約60年の建物。
7年間の空き家期間。
残置物。
境界の未確認部分。
設備の劣化。
融資の難しさ。
売却後に建物が使えなくなった場合の出口。
接道という大きな問題の後ろに、複数の小さな不明点が隠れていました。
そこで、販売をいったん立ち止まり、判断材料を作り直しました。
現地と建物で確認したこと
- 屋根、外壁、雨どいの目視状況
- 室内の雨染み、床の沈み、建具の動き
- 給排水設備と電気設備の現況
- 残置物の量と処分方法
- 通路幅、接道部分、境界標、越境の可能性
- 工事車両や資材搬入の経路
不動産会社の目視だけで、建物の安全性や耐久性を保証することはできません。必要な範囲で建築士や工事業者にも確認を依頼し、分からない部分は「未確認」としました。
資料と行政で確認したこと
- 登記事項証明書、公図、地積測量図などの資料
- 建築確認関係資料や過去の増改築資料の有無
- 指定道路図上の道路種別
- 道路法上の認定、現況幅員
- 接道認定・許可に関する一般的な取り扱い
- 用途地域、建ぺい率、容積率など
調査をしても、将来の再建築が保証されたわけではありません。
建物があと何年使えるか、正確に分かったわけでもありません。
しかし、買主へ次のように説明できるようになりました。
ここまでは確認できた。
ここは資料が残っていない。
改修内容については建築士・施工会社への確認が必要になる。
将来の再建築は、具体的な建築計画をもとに行政判断を受ける必要がある。
難しい物件では、「問題ありません」という言葉より、分かる範囲の境界線を示す方が信頼につながります。
2人目の買主が見たのは、利回りではなく「隣の家」だった
販売開始から3か月ほどたったころ、2人目の購入希望者が現れました。
地元で小規模な賃貸住宅を管理している事業者でした。
現地では建物の中を時間をかけて確認し、通路を何度も往復しました。
私は当然、想定賃料や改修費の話になると思っていました。
ところが、買主が最も長く見ていたのは、対象物件ではありませんでした。
隣の家でした。
「隣も同じような時期の建物ですか」
聞けば、その事業者は数年前から近隣で物件を保有しており、この路地の暮らし方を知っていました。
車を持たず、自転車や公共交通で生活する入居者。
新築の広さより、家賃と立地を優先する単身者。
古い建物の雰囲気を好み、自分で家具を工夫する人。
万人向けではありません。
しかし、その地域には確かに需要がありました。
さらに、その事業者は隣接する住宅の所有者とも面識があり、将来、周辺の土地利用が変わる可能性も長い目で見ていました。
今回の住宅を買った理由は、再建築不可を気にしなかったからではありません。
再建築できない可能性、建物改修費、融資、賃貸需要、将来の出口をまとめて計算し、それでも価格との釣り合いが取れると判断したからです。
購入条件は、一般的な再建築可能物件と同じではありませんでした。
売主様が期待していた最高価格でもありません。
その代わり、残置物の一部を現況で引き継ぐこと、建物の不具合と未確認事項を明示すること、引渡し時期を売主様の片づけに合わせることなど、価格以外の条件を整理できました。
売主様には、買取案や、さらに時間をかけて一般市場で探す案も並べて説明しました。
そのうえで、売主様はこの買主を選びました。
🟩 接道1.8mの家が売れた理由は、欠点を消したからではありません。欠点を価格へ押し込めるのではなく、その欠点を理解して使い方を描ける相手へ、判断材料ごと届けたからです。
契約前、売主様が捨てられなかった一箱
契約条件がまとまった後、売主様と残置物を確認しました。
大きな家具や古い家電は、処分するものとして淡々と仕分けが進みました。
しかし、押し入れの奥から小さな菓子箱が出てきたとき、売主様の手が止まりました。
中に入っていたのは、古い領収書、家族旅行の切符、子どものころの通知表、お父様の字で書かれた短いメモでした。
「こんなもの、価値はないですよね」
売主様は笑いましたが、箱を処分する袋には入れませんでした。
私は、持って帰ることをおすすめしました。
家を売ることと、すべての記憶を捨てることは同じではありません。
残置物をそのまま引き取る条件は便利です。
ただし、便利だからこそ、必要なものまで勢いで手放してしまうことがあります。
売却実務では、価格や契約条件だけでなく、売主様が後から取り戻せないものを確認する時間も必要だと感じています。
業界の本音|再建築不可住宅は「安い」のではなく、出口が少ない
率直に言えば、再建築が難しい住宅は、通常の住宅より売却条件が厳しくなりやすいです。
一般の住宅ローンを利用しにくいことがあります。
建物を解体すると利用価値が大きく下がる可能性があります。
大規模な改修や用途変更では、建築基準法上の確認が必要になる場合があります。
火災、地震、老朽化などで建物が使えなくなった後の出口も限られます。
買主が負うリスクが大きいため、その分、価格へ反映されるのは避けにくいでしょう。
また、不動産会社側にも本音があります。
道路と境界の調査に時間がかかる。
行政へ確認しても、具体的な建築計画がなければ断定できない。
購入者が限られ、広告への反響も少ない。
契約前に説明すべき事項が多い。
成約まで手間がかかる一方、売買価格が低ければ仲介報酬も大きくなりません。
そのため、調査を深める前に、
「再建築不可なので値段は付きません」
「専門業者の買取しかありません」
と結論を急ぐ会社があることも否定できません。
ただし、低い査定がすべて不誠実という意味ではありません。
本当に利用が難しく、維持・改修・再販売のリスクを考えれば、厳しい価格になる物件もあります。
見るべきなのは、査定額の高低だけではありません。
🟨 どの道路資料を確認したのか。境界をどこまで見たのか。誰を買主に想定したのか。建物を残す案と買取案を比較したのか。その説明がある査定かどうかです。
再建築不可住宅を売る5つの出口
再建築不可と考えられる住宅でも、出口は一つではありません。
出口1|既存住宅として一般市場で売る
建物を利用する購入者へ、現況を開示して売却する方法です。
立地や建物状態によっては、自己居住用、セカンドハウス、アトリエなどの需要が考えられます。
ただし、融資、改修範囲、将来の再売却リスクを理解できる買主に限られやすく、販売期間が長くなる可能性があります。
出口2|投資家・賃貸事業者へ売る
現在の建物を修繕し、賃貸運用する買主を探します。
重要なのは、表面利回りだけではありません。改修費、空室期間、維持費、想定賃料、建物が使えなくなった後の土地価値まで含めた収支が必要です。
出口3|不動産会社へ買い取ってもらう
現況のまま短期間で売却できる可能性があります。
一方、買取会社は改修、保有、再販売、契約リスクを負うため、仲介による想定成約価格より低くなるのが一般的です。
「安いから損」と決めつけず、売主が負担しなくてよくなる費用・責任・時間を確認します。
出口4|隣地所有者へ提案する
単独では利用しにくい土地でも、隣地と一体になれば利用価値が変わることがあります。
ただし、隣地だけに頼ると価格交渉で不利になる場合があります。売主様の了承なく突然訪問することも避けるべきです。
出口5|接道条件の改善可能性を調べてから売る
隣地の一部取得、借地、境界整理、通路整備、接道認定・許可などにより条件が変わる可能性を調べます。
ただし、費用をかければ必ず再建築可能になるわけではありません。
境界、道路種別、必要幅、建築計画、行政判断を確認する前に土地取得や工事を始めると、費用だけが残る危険があります。
「解体して更地にしましょう」が危険な理由
築60年と聞けば、先に解体した方が売りやすいと考えるかもしれません。
再建築可能な土地では、更地化が有効な場合があります。
しかし、再建築が難しい可能性のある土地では、順番を間違えてはいけません。
現在の建物があるから、居住・賃貸・倉庫などの利用を検討できる。
その建物を解体した後、新しい建物を建てられなければ、買主層がさらに狭くなる可能性があります。
また、狭い通路では重機やトラックが入りにくく、解体材の小運搬費が増えることもあります。
🟥 再建築の可否を確認する前に解体すると、売主様が自費で不動産の利用価値を減らしてしまう場合があります。
危険が迫っている建物では安全対策を優先すべきですが、「古いから」という理由だけで先に壊すのではなく、建物を残す売却、解体条件付き売却、買主負担の解体などを比較することが大切です。
修繕すれば、そのまま使い続けられるのか
ここも単純ではありません。
再建築が難しい住宅でも、日常的な補修が直ちにすべて禁止されるわけではありません。
一方、増築、改築、大規模な修繕・模様替え、用途変更などでは、工事内容や建物の状態に応じて建築確認や現行規定への適合が問題になる場合があります。
近年は、一定の既存不適格建築物について、安全性などを前提に増改築や大規模修繕時の規制を合理化する制度改正も行われています。
しかし、一般論だけで今回の建物に適用できるとは限りません。
買主が予定する工事について、建築士、指定確認検査機関、名古屋市などへ事前に確認する必要があります。
また、建てられた当時は適法でも、法改正により現在の基準に合わなくなった「既存不適格」と、建築当初から法令に適合していない「違反建築」は同じではありません。
築年数が古いだけで、どちらかを決めつけることもできません。
専門家は、それぞれ別のものを見ている
再建築不可住宅では、一人の専門家にすべてを尋ねないことが重要です。
| 専門家・窓口 | 主に確認すること |
|---|---|
| 不動産会社 | 市場価格、買主層、販売方法、契約条件、情報開示 |
| 名古屋市・確認検査機関 | 道路種別、接道認定・許可、建築確認に関する制度と個別計画 |
| 建築士 | 建物の法適合状況、予定工事、構造・改修計画 |
| 土地家屋調査士 | 境界、接道長さ、現況測量、分筆の可能性 |
| 司法書士 | 相続登記、所有権、担保権などの登記関係 |
| 税理士 | 譲渡所得、取得費、相続空き家に関する特例の適用可能性 |
行政は売却価格を決めません。
土地家屋調査士は建物の安全性を保証する専門家ではありません。
不動産会社も、目視だけで再建築可能と断定できません。
質問に合った専門家の見方を集め、それを売主様と買主様に分かる言葉へ直すことが、仲介会社の仕事です。
売却前に確認したい12項目
- 「1.8m」は何を、誰が、どこからどこまで測った数字か
- 前面の道は建築基準法上の道路か
- 指定道路図の表示と現況に違いはないか
- 敷地が道路へ接する法的な長さは何mか
- 境界標や確定測量図を確認できるか
- 通路の所有者と私道持分はどうなっているか
- 通行・車両通行・掘削に必要な権利はあるか
- 過去の建築確認・増改築資料は残っているか
- 接道認定・許可を検討できる余地はあるか
- 建物を利用する場合、どの修繕が必要か
- 解体した後の土地利用は何か
- 仲介・買取・隣地提案を、手取りと期間で比較したか
すべての答えがそろわなければ売却できないわけではありません。
大切なのは、未確認事項を「たぶん大丈夫」で埋めないことです。
査定価格ではなく、最終手取りと出口を比較する
再建築不可住宅では、最も高い査定書が最善とは限りません。
例えば、仲介なら買取より300万円高く売れる可能性があっても、次の費用と時間が必要になるかもしれません。
- 測量・境界確認費
- 残置物処分費
- 建物調査や応急修繕費
- 長期販売中の固定資産税・保険・管理費
- 契約不適合責任への対応
- 売却できなかった場合の追加値下げ
反対に、買取価格が低くても、残置物を引き継ぎ、短期間で決済し、契約上の売主負担を限定できる場合があります。
| 比較項目 | 仲介売却 | 不動産買取 | 隣地提案 |
|---|---|---|---|
| 想定価格 | 市場反応で変動 | 早期に提示されやすい | 隣地の利用価値で変動 |
| 売却期間 | 長くなる場合がある | 比較的短い | 交渉次第 |
| 買主の融資 | 成約に影響しやすい | 業者の資金計画による | 個別事情による |
| 残置物・修繕 | 条件調整が必要 | 現況対応の可能性 | 条件調整が必要 |
| 売却後の責任 | 契約内容による | 限定できる場合がある | 契約内容による |
| 最終手取り | 費用を差し引いて比較 | 価格以外の免除も換算 | 測量等を含めて比較 |
🟩 売主様の利益とは、最高値だけではありません。手元に残る金額、終わる時期、売却後の責任、家族の気持ちまで含め、納得できる出口を選べることです。
契約当日、「もっと早く相談すればよかった」の後に続いた言葉
契約当日、売主様は印鑑を押した後、しばらく売買契約書を見ていました。
そして、こうおっしゃいました。
「もっと早く相談すればよかったですね」
よく聞く言葉です。
ただ、この方は少し間を置いて続けました。
「でも、7年前の自分には売れなかったと思います」
私は、その言葉がこの売却の本当の結論だと感じました。
空き家問題では、早く動くことが経済的には有利な場合があります。
しかし、人には決められる時期があります。
大切なのは、迷っている人へ「すぐ売りましょう」と迫ることではありません。
売る場合。
残す場合。
今後も維持する場合。
それぞれの費用とリスクを示し、本人が決められる状態をつくることです。
今回、売主様は菓子箱だけを持ち帰り、建物と土地を次の人へ渡しました。
家を失ったのではなく、管理できない状態を終わらせた。
そう考えられるまでに、7年必要だったのだと思います。
よくある質問|接道不足・再建築不可住宅の売却
接道が1.8mなら、必ず再建築不可ですか
必ずとは限りません。
まず、1.8mが敷地の接道長さなのか、前面道路・通路の幅なのかを確認します。前面の道が建築基準法上どの種類に該当するか、法的な境界がどこにあるかによっても判断は変わります。
原則的な接道要件を満たさなくても、個別条件により建築基準法第43条第2項の認定・許可を検討できる場合があります。ただし、将来の許可を売却時に保証することはできません。
再建築不可住宅でも住宅ローンは利用できますか
金融機関や物件によって判断が異なります。
再建築が難しい物件は、建物が失われた場合の担保価値や将来の換金性を評価しにくいため、一般的な住宅ローンの利用が難しくなることがあります。現金購入、事業性融資、別の不動産を担保にする方法などを検討する買主もいますが、融資の可否は金融機関の審査によります。
古い家は解体してから売った方がよいですか
再建築の可否を確認する前の解体はおすすめできません。
既存建物を利用したい買主がいる可能性があります。解体後に新築できないと分かれば、住宅・賃貸物件としての選択肢を失うおそれがあります。安全上の問題がある場合を除き、古家付き売却、解体条件付き売却、買取を比較してから決めます。
リフォームすれば賃貸住宅として使えますか
建物状態、工事内容、用途、法令への適合状況によって異なります。
小規模な補修と、確認申請が問題となる増改築・大規模修繕・用途変更は同じではありません。購入前に建築士や施工会社へ相談し、必要に応じて行政や指定確認検査機関へ確認することが重要です。
再建築不可住宅は相場の何割で売れますか
一律に「何割」と決めることはできません。
立地、建物状態、接道改善の可能性、賃貸需要、通行・掘削権、融資、隣地需要などによって価格は大きく変わります。「再建築可能な土地価格から一定割合を引く」だけではなく、誰がどのように利用できるかから査定する必要があります。
接道不足を改善するため、隣地を少し買えばよいですか
目測だけで交渉を始めるのは危険です。
必要な幅、境界、前面道路の種別を確認し、土地取得後に本当に建築条件が改善するかを行政や建築士へ確認します。測量・分筆・登記・工作物移設などの費用をかけても、目的を達成できない場合があります。
まとめ|接道1.8mの家が売れた本当の理由
名古屋市西区にあった築約60年の相続空き家。
簡易計測では接道約1.8mとされ、再建築が難しい可能性を抱えていました。
売れた理由は、接道条件が突然よくなったからではありません。
特別な許可を取れたと約束したからでもありません。
大幅に改装して、新築のように見せたからでもありません。
理由は、次の五つです。
- 1.8mという数字の意味を分解した
- 道路、境界、権利、建物を別々に調べた
- 再建築の可能性を誇張せず、未確認事項も開示した
- 一般の住宅購入者だけでなく、既存建物を使える買主へ届けた
- 価格だけでなく、改修費、収益性、将来の出口を判断できる資料を用意した
最初の投資家には、買主が必要とする情報を渡せず、話が止まりました。
その失敗から、販売方法を変えました。
2人目の買主は、再建築不可を無視したのではありません。
リスクを理解し、立地、建物、地域需要、購入価格との釣り合いを判断しました。
🟥 接道不足を隠して高く売ることはできません。
🟩 しかし、接道不足という一つの言葉だけで、その不動産に残るすべての価値を消す必要もありません。
再建築不可住宅は、誰にでも売れる不動産ではありません。
だからこそ、誰に売るのか。
何を先に調べるのか。
何を正直に伝えるのか。
その順番が結果を変えます。
私がこの売却を通じて改めて感じたのは、不動産会社の仕事は「売れます」と励ますことでも、「無理です」と早く結論を出すことでもないということです。
売れないように見える理由を分解し、買主が判断できる状態へ変えること。
それが、難しい不動産を扱う仕事だと考えています。
名古屋市西区で再建築不可住宅・接道不足の空き家を相続した方へ
ふどうさんのMAGOは、名古屋市南区を拠点に、名古屋市西区を含む市内全域で、再建築が難しい可能性のある住宅、接道不足、狭い通路、長屋、相続空き家、共有不動産などの売却をお手伝いしています。
次のような段階でも構いません。
- 接道が2m未満だから売れないと言われた
- 「1.8m」と査定書にあるが、何を測った数字か分からない
- 前面の道が建築基準法上の道路か確認できていない
- 接道認定・許可の可能性を調べたい
- 私道持分や通行・掘削の権利が分からない
- 再建築不可と言われ、極端に低い買取価格を提示された
- 解体してから売るべきか迷っている
- 築古住宅を活用できる買主へ届けたい
- 県外に住んでいて、実家を管理できない
- 他社で長期間売却しているが、値下げ以外の提案がない
机上の数字だけで「売れる」「売れない」を決めるのではなく、現地を確認します。
道路の入口。
通路の途中。
境界標。
側溝や配管。
建物の状態。
工事車両の進入。
隣地との関係。
そして、その地域で既存建物を必要とする人がいるか。
そのうえで、仲介、買取、投資家向け販売、隣地提案、接道条件の改善可能性などを比較します。
「接道1.8mだから価値がない」と決める前に、何が確定し、何がまだ調べられていないのかを一緒に整理してみませんか。
対応エリア
名古屋市西区・南区・港区・緑区・瑞穂区・熱田区・昭和区・天白区・中川区・中村区・中区・千種区・名東区・守山区をはじめ、名古屋市全域および愛知県内に対応しています。
※接道義務、道路種別、再建築の可否、接道認定・許可、修繕・増改築の可否は、敷地、通路、建物、工事内容、建築計画および関係法令によって異なります。不動産会社の簡易計測や目視だけで断定せず、必要に応じて名古屋市、指定確認検査機関、建築士、土地家屋調査士、弁護士、司法書士などへご確認ください。
※相続した空き家の売却では、一定の要件を満たす場合に譲渡所得の特別控除を利用できる可能性があります。適用期限や耐震・解体等の要件があるため、売買契約や工事を行う前に税務署または税理士へご相談ください。
※本記事は令和8年9月時点の公表情報と実務経験をもとに作成しています。本文の事例は、相談者様および物件を特定できないよう、所在地、築年数、期間、会話、経緯などの一部を調整しています。
参考にした公的情報
- 名古屋市「接道許可(建築基準法第43条)」
- 名古屋市「建築基準法上の道路について」
- 名古屋市「道路の調べ方」「指定道路図」
- 名古屋市「敷地と道路との大切な関係」
- 国土交通省「既存建築ストックの長寿命化に向けた規定の合理化」
- 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」


